へカーティアの服が欲しいが買えなくてイライラしてたらいつの間にか夜が明けてました。
ヘカT《エスカルゴく〜ん!到着したわよん♪》
頭の中に独特な語尾の言葉が響いた、その直後。玄関から、鈴仙の声が聞こえてきた。
鈴仙「エスカルゴ〜、純孤さんたち来たわよ〜」
カルゴ「はいよ、今行く〜」
今日は月に攻める予定の日である。そして、宿泊場所はこの永遠亭。月と言えば、やはりここだ。
永遠亭の自室で剣の手入れをしていると、来客の対応に向かった鈴仙から、そう呼びかけられた。そういえば、前回月に攻め入った時はレミリアがこうして教えてくれたんだったか。
さらに、連絡できるようにという理由で、へカーティアにも“加護”してもらっている。なぜ彼女にそれが出来るのかと言われれば…女神だからだ、としか答えようがない。
月都侵攻が終わればそれも終わりにする話だが。
あくまでも連絡用だ。
カルゴ「…あの時に埋めたカバン、まだあそこに埋まってるのかな」
タイムカプセルと称して、衣服を入れたカバンを月の大地に埋めたことを思い出す。今日がそれを掘り返しに行く日だろう。戦いが終わって、帰る間際にでも掘り返せばいいと思う。
今回は、腕や足などのバックアップは取らない。
もう、死を恐れぬ不老不死の吸血鬼なのだから。
素粒子レベルに浄化と言えど、魂まで浄化できるとは思えない。恐らく物質のみだろう。…多分。
カルゴ「お待たせ」
鈴仙、巫月、永琳と一緒に玄関から出ると、その目の前には純孤、へカーティア、クラウンピースの3人が居た。生命力に溢れる妖精達は、向こうで準備するのだろうか?
ピース「Good evening、エスカルゴ!」
純孤「こんばんは、エスカルゴ君…♪」
ヘカT「あらぁ、腹が決まったようなイイ顔付きしてるわねぇ。張り切って攻めましょう♪」
ピース「楽しみだぜー!Foooooo!!」
純孤は少し照れながら小さく手を振って、へカーティアはパチッとウインクし、クラウンピースは何故かハイテンションで松明を振り回す。
永琳「約束、覚えてるわよね?」
カルゴ「もちろんです。例え暴走しても、殺しはしませんよ。兎達もね」
永琳「綿月姉妹と兎
カルゴ「もし姉妹と兎以外が襲ってきた場合は?例えば都の中…商店街?とか」
永琳「気絶させるぐらい造作もないでしょうに。それに、都に入れるなんてありえないわ。…仮にあなたを都に入れる場合は、依姫がそばにつく。そんな状況であなたを襲おうとするヤツはきっといないでしょう」
カルゴ「それもそうですね。んじゃ、ちょっくら月まで
鈴仙「依姫様と戦うのを遊びって…」
カルゴ「スペルカード戦は元から遊びだろう?」
鈴仙「…それもそうね♪」
永琳(依姫はスペルカード作ってないけどね…。今回はどういう戦いをするのかしら。エスカルゴ本人と依姫本人からの報告が今から楽しみだわ)
背中に二振りの剣があることを確認して、居残りメンバーに向き直る。
カルゴ「いってきます!」
鈴仙「いってらっしゃい!」
巫月「頑張ってね!」
永琳「くれぐれも、殺生には気を付けて頂戴ね」
カルゴ「わかってますって」
コクンと頷いた俺は、そこに月へ繋がるスキマを開き……足を踏み入れた。純孤、へカーティア、ピースも俺に続き、スキマへと飛び込む。
そしてスキマが閉じるその瞬間─────。
巫月「とぉっ!」
永琳「ッ!!」
鈴仙「巫月っ!?ちょ、待っ………」
巫月が飛び込み、鈴仙は手を伸ばそうとしたが…手が背中に触れる前に、スキマは閉じ切った。
巫月「はぁ〜、危なかった〜…」
カルゴ「うん、かなりギリだったが上出来だな!閉じる瞬間、よく見切れたな。偉いぞ!」
巫月「えへへっ、まーね♪」
月面で、娘の頭をポフポフと撫でる。幼女特有の甘い匂いがふわりと漂ってくる。落ち着かねば。
ピース「Wow!作戦成功だね!」
巫月「いえい♪」
ピースと巫月は、いつの間に仲良くなったのか、ガッチリと肩を組んでいる。ピースは、チルノや三妖精とも繋がりがあるが…そこからだろうか。
ヘカT「これで賢者を出し抜けた…かしらん?」
純孤「多分…ね。でも、まだ油断は出来ないわ。エスカルゴ君、先に裏に回ってるわ。始まったら都に侵入するわね」
純孤からデレの気配が消え、代わりに恨みの黒い気配が湧いてきた。恐ろしい…恨みというのは、ここまで黒い気配を放つようになるというのか。
カルゴ「うん。とはいえ、念の為に気を付けて。永琳や依姫達のことだ、穢れとやらを警戒して、妖精が湧いてきたら警備を引っ込ませるはずだ」
純孤「そうね。ここからはお互いに、作戦通りに動く事にしましょう」
カルゴ「ああ」
ヘカT「まさか、純孤の仙界で本当の作戦会議をしていたとは予想してないでしょうね〜♪」
純孤「さぁね。地上に堕ちても賢者は賢者、油断してはいけないわ。…さぁピース、風が吹くまま気の向くまま、好きに暴れてらっしゃい。妖精を引き連れたままね」
ピース「へいっ、友人様!!Let's go!!」
拳を振り上げ、意気揚々と飛び出していった。
ポン、と純孤に触れられたピースは、目に見えて強化されていた。純化とは強化なのだろうか?
カルゴ「純化って強化なの?」
純孤「妖精に対してはね。それ以外には死を招く事すらある力よ。人間ならイチコロね」
カルゴ「そーなのかー…」
純孤「じゃ、私達も行くわ。行きましょ、へカーティア。……ククッ…待っていろ、嫦娥…!」
「嫦娥嫦娥嫦娥嫦娥嫦娥嫦娥…」と壊れたように繰り返し呟きながら、都の裏側へ向かった2人。あとには、俺と巫月だけが残された。
カルゴ「…どうだ巫月、ここが月だぞ。どうだ、何か感想あるか?」
巫月「身体が軽いね。月の重力は地球の6分の1っていう話は本当だったんだ。数値は兎も角」
カルゴ「そうだよな。月なら、いつもより6倍も素早く動ける。良いよな、そういうの」
巫月「うん。……でも、空気あるね」
カルゴ「それは…月の裏側だからじゃないか?」
巫月「どういう事?」
カルゴ「俺が思うに、月の都ってのは二重の結界で囲まれてるんだよね。1つは、裏側全体を囲む巨大な結界。もう1つは都だけを特に囲む結界。で、その大きい結界の外だと、空気が無いんだ。夢の自分と戦った時に、間違って月に来たけど…息が出来なくて呆気なく死んじまった」
つまり、外側のはスキマで楽に通過できる結界、内側のは紫さんでも解除に手こずるほどの強さを持っている結界…という仮説だ。
巫月「そう…なんだ。それじゃ、あの宇宙の本が間違ってたってワケじゃ無いんだ」
カルゴ「ああ」
巫月「良かった…」
俺と同じく宇宙が好きな巫月は、読んだ本の内容が何とか説明出来ると知り安堵した。そして裏へ向かった純孤が見えなくなった頃…前回のように前方に一筋の雷が落ちた。
あの光…どうやら、転送装置を使ったらしい。
カルゴ「来たか」
依姫「…久しぶり、だな」
カルゴ「ああ、久しぶり」
相変わらず、依姫は物凄く長い刀を持っている。豊姫はやはり扇子だけなのだろうか。だとしたら今回は戦わないべきだろうか。豊姫が戦うと絶対殺し合いになりそうだ。
依姫「…!その子は確か…レイセンとの…」
カルゴ「そう、長女の巫月だ。ずっと前に会ったことがあるんだったな」
依姫「10年ほど前にな。では手っ取り早く始める事にしよう、仕事が残っている」
祇園様の剣とやらを構え、ニヤリと笑う。負けることは有り得ないと思っているらしい。しかし、それは俺も同じ事だが。
カルゴ「じゃあ手っ取り早く
依姫「なるほど、要求は都に入ることか」
カルゴ「
そう、
純孤は今頃、都に入れた頃かな?
ピース「ご主人様ー、友人様ー!妖精たちとpartyしてたら玉兎兵が引っ込みました…って…あれ?お2人共、どうしたんです?」
結界を見上げ、眉間にシワを寄せる2人を見て、ピースは首を傾げる。
ヘカT「あっれェ…おっかしいわねん…都を囲む結界ってこんなに強かったのかしらん…?結界の存在は知っていたけど、ここまでとは……」
純孤「嫦娥め…我々に気付き守備を強化したか!じょおおおおおおおおおおおおおおおがああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」
純孤「じょおおおおおおおおおおおおおおおがああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」
姉妹「!?」
カルゴ「なんだ…?」
この雄叫び…純孤の声だが、一体何があった…?
ヘカT《緊急事態発生よん…結界がキツくて都に侵入出来ないわ。至急、応援求むわよん》
カルゴ《結…界……あぁぁ忘れてた…でも俺今、丁度綿月姉妹と対面したとこなんだよね…》
ヘカT《なんてタイミング…!》
依姫「お姉様、今のはもしや…」
豊姫「大丈夫よ。八意様の手紙通りなら、敵は、あの結界を破る術は持ち合わせていない。私達はここで、ただ彼と戦えばいいの。あちらは放っておいても構わないわ」
依姫「…ですね。では、まずは私から行きます」
豊姫「気を付けて」
依姫「はい」
豊姫は下がり、剣を構えた依姫が進み出る。俺は巫月を下がらせ、自身が前に出る。その手は背に掛けられている二振りの魔剣に触れている。
カルゴ「…よく見ておけ、巫月。依姫の戦い方…そして、対神の戦い方をな。いつか、あいつにも俺の子供たちの腕試しに付き合ってもらうことになるだろうが…その時は巫月が指揮を執るんだ。ま、いつも通りのことだが」
巫月「はい…!頑張って!」
カルゴ「大丈夫さ。……多分」
そして剣を抜き、依姫に斬り込んでいった──。