豊姫「へぇ…なかなか面白い提案ね」
カルゴ「でしょ。でも豊姫、さすがにその扇子を2つとか持ってたりは────」
豊姫「持ってるわ」
カルゴ「ひえっ」
ポケットから2つ目の扇子を取り出したのを見て思わず間抜けな声が漏れてしまう。なぜ、そんな恐ろしい兵器を2つも持てるのだろうか。
もし持ってなかったら、扇子を創造しようかなと思っていたのだが…。
豊姫「さぁ、始めましょう?最大限美しく…ね」
カルゴ「どっちが勝つかな?雷武器『雷刀』!」
豊姫は、両手にトンデモ兵器を持って美しい舞を踊り始める。時折その扇子を仰ぎ、素粒子レベルまで浄化させる風を起こす。
俺が提案した決闘法……それは、“舞”だ。豊姫は依姫と違って神を喚べるわけじゃないし、まして弾幕を発射できるわけでもない。そのことから、
「舞で戦う」という決闘法を編み出した。
豊姫は舞いながらその扇子で風を起こして、接近する俺を一度でも殺せたら豊姫の勝ち。俺が剣舞で豊姫を気絶させられたら俺の勝ち。
だから俺は魔剣を仕舞って両手に雷刀を出した。
風だから、そこまで有効範囲は広くない。だが、警戒をするに越したことは無い。
舞いながらどうやって切り込むか…この判断が、勝負を分けることになるだろう。
豊姫「様子見では勝てないわ…よっ!」
カルゴ「うおっ…!!」
剣舞をしながら様子見をしていると、豊姫がその扇子を俺に向かって仰いだ。多少動きは乱れたが何とか避けられ、体勢を立て直し、再び舞う。
豊姫「今ので決まったかと思ったけどね。上手く避けられちゃった♪」
カルゴ「あっぶねー…今のマジで危なかった…!
…舞も踊れるとか、豊姫マジで強すぎかよ」
豊姫「あら、まさかあなたから褒め言葉が貰えるなんて思ってなかったわ♪」
余裕の笑みが崩れねぇぇ…ポーカーフェイスか?
仕方ない、俺1人じゃ少し分が悪いな。都の結界とかも何とかしないとだし、早く決着つけよう。
カルゴ「禁忌『エスカルゴ・カルテット』!!」
豊姫「なっ、4人に…!」
カルゴ「どれが本物か、豊姫に読めるかな?」
豊姫「だったら、全て無に返せばいいだけよ…!私に死角は無いわ!」
分身達「あっ」
扇子を真一文字に振るい、分身を2体消し去る。
何とか回避が間に合った分身1体と俺で、豊姫を倒さねばなるまい。これ以上分身に分身を重ねたところで、強度が落ちるだけだ。
カルゴ「綺麗な舞だな豊姫、見惚れそうだ」
豊姫「地上の殿方はNGよ♪」
カルゴ「奇遇だな、俺も月のご婦人はNGさ!」
豊姫「
カルゴ「あいつは
豊姫「何人も女性を囲っといて、よくもまぁ…」
くるくると舞いながらも毒づき、ハッ、と乾いた笑いを漏らす。
カルゴ「それ以上言えばその首が飛ぶぜ、豊姫♪
『雷神の剣舞』!」
分身「『雷神の剣舞』!」
豊姫「ちょっ────!!」
舞う速度と電力を上げ、分身と2人で豊姫を囲むように、クルクルと剣を振りながら舞い続ける。対する豊姫は、段々と余裕がなくなってきたのか柔らかな笑みにも焦りが見え隠れし始めた。
カルゴ「そぉ〜れっ!『雷撃刃』!!」
分身「『雷撃刃』!」
豊姫「ちょっと待っ……このっ!!」
カルゴ「うわっ!!」
分身「あ」
カルゴ「おいコラ!!」
俺と分身が左右から電撃の刃を飛ばすと、豊姫は慌てつつも扇子を用いてそれを消す。分身はその風に巻き込まれ消えてしまって、残るは俺1人になってしまった。
豊姫「全く…危ないことしてくれるわね…油断も隙もあったもんじゃないわ」
カルゴ「今ので被弾してくれたらなぁ…。豊姫、舞ってるくせに隙が見つからねぇんだもんよ」
豊姫「ふふっ、それはどうも♪」
カルゴ「…次で決めてやるぜ、覚悟しな」
豊姫「あなたこそ消される覚悟は良いかしら?」
カルゴ「言うぜ…!」
ニタリと口角を上げて笑って、雷刀に送る電力を更に上げていく。やがてバチバチと音まで立てるほどになり、刀は長刀、太刀へと姿を変え、その持て余すエネルギーを溢れ出させる程になった。
カルゴ「『サンダートルネード』!!」
更に俺自身が電気を纏い、さらには竜巻となり、猛烈な回転を始める。目が回るなどと言っている場合ではない。さっさとへカーティア達の援護に行かなくてはならない。ベイゴマのようにギュルギュルと回転すると、景色が横に飛んでいく。
豊姫「か、風が効かない…何故…!?」
カルゴ「ふぅははぁ!こっちの方が強い風を出してんだぁぁぁあはははははは!!!」
豊姫「…もう…風が効かないんじゃ勝てっこないじゃないのよ…」
負けを確信した豊姫は扇子を閉じて、自らを斬り裂く(硬度を落とした)太刀にその身を預けた。
カルゴ「うっ…おrrrrrrrrrrr.........」
回転が止まった俺は、地面に四つん這いになって胃の中のモノを吐き出す。あまりに回り過ぎた。ここまで回転したのは人生初だ。
巫月「お疲れ様、エスカルゴ!…大丈夫?」
カルゴ「お゙っ…げほっ……あ゙ぁ゙…げふっ…」
巫月「大丈夫じゃ無さそうだね…」
カルゴ「ちょっと…待って……」
スキマを開き、俺はその中に落ち込む。その中で派手に自爆し、即座に再生し、クラクラする頭や吐き気などを全てリセットさせてしまう。
カルゴ「お待たせお待たせ。よし、行こうか」
巫月「依姫さんたちは?」
カルゴ「家が分かれば連れてってもいいが…多分月人に見つかったら面倒だからな、やめとこう。2人はここに置いてく。風邪は引かないだろう」
巫月「置いてけぼり可哀想〜。ま、いいけどね。
ねぇ、早く都に行こ?」
カルゴ「いやー、それが…強い結界のせいでまだ純孤達が中に入れてないらしくてさ。買い物よりまずはそちらを優先しなきゃな」
巫月「おっけ、わかった!」
父娘で手を繋いで、景色を眺めながらまったりと結界の裏側へ向かおうとする。しかしそんな俺の頭の中に、へカーティアの声が響いてきた。何か焦っている様子だ。
ヘカT《おーいっ!今すぐにヘルプミーよ、エスカルゴくーん!純孤がとうとう狂っちゃったわ!いや、それは元々なんだけど!恨みとイラつきが最高まで達したわ、今すぐにこっち来てぇ!》
カルゴ《く、狂った!?わかった、今すぐ行く!今純孤たちが居る所って正門から見たら正反対の位置でいいんだよね!?》
ヘカT《そうよん!今すぐお願い!!》
カルゴ《わかった、今行く!!》
カルゴ「巫月、スキマで行くぞ。なんか緊急事態発生らしい。しかもかなりヤバい感じの」
巫月「わかった!行こう、純孤さんのとこに!」
カルゴ「おうよ!」
結界の正反対にスキマを開き、俺達はそれに飛び込む。その先には、確かに狂った純孤が居た。
豊姫があの物騒な扇子を2つ持ってるのは、一応原作設定ですね。庭の木から桃を取る為に二本の扇子で挟み取りしようとしてた場面があるんで。
桃を取る為にそんなもん使うなよおっかねぇ…。