流れ込んでくる神の力に耐えられなかった俺は、堪らず胸を押さえ、苦しさに悶え、絶叫する。
カルゴ「ゔっ………うあ゙あぁああ゙ぁあぁああ゙ぁあっ……あぁ゙ああ゙あぁあっっ!!!」
すると、溢れるエネルギーが一部爆発し、周囲に猛烈な風と光が迸る。光が晴れると、やっとその姿を視認出来るようになった。
ヘカT「な…何があったの…?」
カルゴ「……」
しかし、そこに居たのは明らかにいつもの俺ではなかった。気配や力はともかく、風貌までも変質していた。
巫月「何その姿…。あれ、妖力感じない…?髪が逆立ってるし…なんかすごい…」
ヘカT「なんか変身しちゃったわよん…!?」
ピース「Cool!Cool!Miracle!」
諏訪子《あわわわ…なんか凄いことになった…》
建御雷《あーあ…。どうやら、器が我らの神力に耐えきれなかったらしいな。なぜ死なんのかは…普段から我を喚んでて神力に慣れていたからか、霊夢とやらの修行のおかげか》
ヘカT《彼の妖力が神力に上書きされてて、全く感じられなくなってるわよん。皆して注ぎすぎ!限度ってものを知らないわけぇ?》
諏訪子《だって負けたくなかったんだもん!》
神綺《それは私も同じです!》
建御雷《この器と最高に合うのはこの我ぞ!》
ヘカT《あんたらが注ぎ過ぎたおかげで、妖怪の枠を超えてえげつないことになったのよん?もう神の眷属みたいになってるわよん》
諏訪子《ふおおぉぉ!私の眷属!?》
神綺《私のです!義理とはいえ息子ですから!》
建御雷《何を言うか!我の眷属に相違ないぞ!》
ヘカT《どう考えても個人じゃないでしょうよ、この状況からして。全員よ、全員。…本人からの返信が無いし思考も読めなくなってる…やっぱり神に近い存在になったわね。それか、人格が消滅してしまったk…》
カルゴ「……ふぅ……」
ヘカT「あっエスカルゴ君!どうしたのよずっと黙り込んじゃって〜…って、目が…!」
カルゴ「力が溶け合うような、なんだか不思議な感覚を体験してた…。目がどうかした?」
ピース「Wow!左目が黄色に光ってる!上にある天使の輪っかもイカすぜー!」
ヘカT「いや…天使の輪じゃなくてそれは…多分光輪だと思うわよん。本人の身体共々、何故だかすごく帯電してるけど」
カルゴ「そう、なのか…。自分じゃ触れないからよくわからないな…。光輪って何?」
ヘカT「えーとねぇ…キリスト教芸術において、神的人格や聖人の頭の上方に描いた、金色の輪の事よん。確か…ね。実際に見たのは久しぶりね。これ、滅多にお目にかかれないものよ」
カルゴ「へー…」
やけに気持ちが落ち着いてるな…。それに、何だこの不思議な感覚…。黙ってても力が溢れてくるような感覚…だけど、建御雷を喚んだ時のようなあの感じとはまた少しだけ違ってる。何だろう、今ならあのセリフを真面目な顔で言えそうだよ。
「新世界の神となる」と。
ヘカT「複数の神の加護を一身に受けたあなたは無敵!今のうちに結界を壊して頂戴!」
カルゴ「ああ。でもその前に、もっと力を上げておかないと。紅眼『吸血鬼の本質』」
だが、ステータスは上がらず、変化は無かった。
電力が今よりも上がった感じがしない。
カルゴ「おっかしいな…。まぁいいや、暴走して飛躍的に上げよ。暴走『オーバードライブ』」
何故か、暴走すらも出来ない。どうやらこれ以上力を上げるのは不可能な段階に来たらしい。
カルゴ「暴走も出来ない…どうしたんだろう俺…大丈夫かな…」
ヘカT「…そのステータス上げも暴走も、本質は妖力によるもの。暴走は吸血鬼特有ね。でも今のあなたにはそれが無い。だから出来ないのよん」
カルゴ「妖力が無いって…俺妖怪なんだけど…」
ヘカT「あなたが経験した、“力が溶け合うような変な感覚”。これは、あなたの力が神の力に上書きされたって事よ」
カルゴ「えー…」
ヘカT「加護のレベルを今までのように落とせば治ると思うわよん。でも今は破壊が先よ」
カルゴ「わかってる」
…頭の中は諏訪子や母さん達の会話でうるさい。だけど、邪魔には感じないな。頭は覗かれずに、会話だけをする…ホントに神に近くなったのか。気分はスッキリしてるし、思考も割と捗る。結構良い気分だ。悪くない。
カルゴ「ちょっと離れて。今度こそ危ないから」
ヘカT「了解よん。ピース、純孤、巫月ちゃん、ちょっと下がりましょ」
巫月「はい」
純孤「じょーがー♪」
ピース「いつまで歌ってんですか友人様…」
ヘカT「発作はもう少しで治まるはずよん」
それって発作なのかよ…。
背中の二振りの剣に手をかけ、溢れる力を剣にも流し込む。自分で言うのも烏滸がましいが…少し神々しさを感じるような気がする。
カルゴ《一発でキメる。もう少し…力を貸して。俺なら大丈夫、もう耐えられるから》
諏訪子《わかったっ!》
神奈子《ホントに耐えられるのか?》
建御雷《ぬはははははっ!相変わらずの貪欲さ、さすがだぞ我が器よ!どこまでも我と似ておる!お前ならば相棒と呼べそうだ!》
神綺《無理はしないで!でも、お母さんが最大限サポートするから安心して!》
ヘカT《はいはい、お喋りはここまでよ!純孤の恨みの発作は、このピークを超えたら治まるからその前に襲わせるのよん!》
へカーティアと神奈子様だけがまともだなぁ…。
神の中の神って感じがする。特にへカーティア。
へカーティアが指揮を執り、神々の力が再び俺の身体に流れ込んでくる。それらは、先程発現した俺の“神に近い力”と合わさり、更に力が高まる。
カルゴ「神双剣『
高々と飛び上がり、最大限に力を込めて、双剣で結界に斬りかかる。バチバチバチと激しく火花を散らし、尚も力を込め続けると………次の瞬間、ガラスが砕けたような高い音が響き渡って、都を囲む薄紫色の結界が破裂した。
永琳「────ッ!! この感じ…まさか…!!」
鈴仙「準備終わりました〜。どうしたんですか?難しい顔して。新薬でも思い付いたんですか?」
永琳「…都を囲む結界が破壊されたわ…」
鈴仙「えっ!?そ、それって…エスカルゴが?」
永琳「いや…暴走しても生命力を削っても、彼は
鈴仙「エスカルゴ…今何してるの…?巫月からも返信来ないし…」
永琳「…まぁ…手を出すのは嫦娥だけって約束をしているし…そこら辺は信用していいと思うわ。エスカルゴ達が都に入ったのなら、桃のお饅頭や桃を持って帰ってくるでしょう。お土産として」
鈴仙「あのお饅頭、凄く美味しいんですよね〜。豊姫様がたまに差し入れとして持ってきてくれるのが密かな楽しみでした」
永琳「あの子は相変わらずねぇ…」
建御雷《とうとう結界を破ったな!よくやったぞ器よ!やはりお前は我にとって歴代最高の器よ!ハッハッハッハッ!!》
諏訪子《やったねエスカルゴ!またナデナデしてあげるよ〜♪》
神綺《よく出来ました、カルちゃん!今度魔界に来た時はパーティね!》
神奈子《何というか……ご苦労だったな。色んな意味で…》
ヘカT《で、私達神の力を使った感想は!?是非教えて欲しいわ!》
カルゴ《あの力…何かうまく抑えられなかった。多分、スペルカード戦では使えない。まぁ、使う気ないけど。いちいち力借りるわけにいかんし。
…仮に練習しても…何ていうんだろうな、これ…
使いこなせるようになる気がしないんだよね…》
神奈子《力を貸した内の1人が破壊神紛いな事をしてるからじゃないか?有り余る力をドバドバと流すから制御不能になりかけるんだ》
建御雷《そうだぞ諏訪子》
諏訪子《いやいやいや!!建御雷でしょ!?》
建御雷《我は雷神、剣神ぞ。破壊神ではない》
諏訪子《昔から暴れまわってあちこち破壊して、雷神の中では浮いてる存在じゃない!日本神話の中では破壊神と言っても過言じゃないよ!》
建御雷《そうか?自分ではわからん。ただまぁ、強さこそが全てだろう?》
神達(駄目だこいつ…早くなんとかしないと…)
ヘカT《多分、神綺さんもその一端を担ってる。一番エスカルゴ君に力与えてたの神綺さんだし。好き放題しすぎよん?》
神綺《しゅん…》
ヘカT《大体ね、八百万の神が力を与えて対象が変身するなんて、創造神が関与してなきゃ絶対に起こりえないのよん?霊夢が住吉三神を宿した時変身なんてしてないでしょう?》
カルゴ《変身したなんて話は聞いたことないな。多分してない》
ヘカT《そこが、八百万の神と唯一神の違いね。まぁ、そのおかげで結界が破壊出来たんだから、感謝しているわよん♪…じゃあ、そろそろ皆さん力抜きましょうか?慣れない力は身体に毒よん》
諏訪子《ん、わかった》
神奈子《うむ》
建御雷《今日はいつもより楽しめたぞ器よ!また何かあったらすぐに喚べ!》
神綺《お母さんの事もね!》
すると、エレベーターで別な階へ移動するときのような、フワリとした感覚に襲われる。神の力が抜けたらしい。
ピース「あ、光輪が消えた!」
巫月「でも左目は黄色のまま…」
カルゴ「ええええ…」
ヘカT「明るめの紅と黄のオッドアイ…綺麗ね!大丈夫よ、多分それは後遺症だから。力が完全に抜け切れば元の目に戻ると思うわよん」
カルゴ「なるほど。ま、見る分には問題無いし、このままでもいいかもな」
ヘカT《…ね、エスカルゴ君。ホントならここで通信切るつもりだったけど…案外居心地良かったから、私もあの人達みたいにいつでも通信出来るようにしておいて良いかしら?》
カルゴ《お好きに。口論は別なとこでお願いね》
ヘカT《口論するつもりは無いわよん♪》
諏訪子《また増えた!?》
ヘカT《よろしくね、諏訪子さん♪》
諏訪子《唯一神やら外国の神やら…なんだか調子狂うなぁ。とりあえずよろしくね。でも、エスカルゴと初めて繋がったのは私だから、そこだけは忘れないことだね!えっへん!》
カルゴ《俺の脱童貞は鈴仙だよ?》
諏訪子《そっちの『繋がった』じゃないよぉ!》
カルゴ《ははっ、わかってるって♪》
ヘカT「(ふふっ、これから面白くなりそうね♪)
…あれ?そういえば純孤は…?」
ピースと巫月のそばにいたはずの純孤は、いつの間にか忽然と消えていて、そこにはすまなそうに肩を竦める幼女2人が居るばかりであった。
ピース「あー…エスカルゴが元に戻った辺りで、
『じょおおおおおおがああああああ!!!』って叫びながら入っていきました…」
巫月「止める間もなく…」
ヘカT「何てこと…!すぐに追うわよ、ピース!エスカルゴ君達はゆっくりしてて!帰る時には、また連絡するから!」
カルゴ「了解」
へカーティアとピースは急いで都の方へと飛んでいき、後には俺と巫月がポツンと取り残された。
カルゴ「…行くか、巫月」
巫月「うんっ!」
父娘は再び手を繋いで、月の都へ向かい始めた。
独自設定・神様について
建御雷は戦闘狂。過去に破壊神紛いな事してる。
八百万の神の中でも突出して戦闘狂で、周囲から少し浮いてる存在だが本人は全く気にしてない。
建御雷にとっては強さと戦いこそが全て。
魔界編の神綺戦の時のように、特殊な呪文を詠唱
(祈祷)すれば、分霊として器に憑依が可能。
あくまでも分霊であり、その神様本人では無い。
(本人だとしたらそれは完全憑依と同じだしね )
その身に降ろす時は、八百万の神よりも唯一神と外国の神の方が負担は大きいが、力も強い。
(本小説ではそれを『加護』という表現にしてるだけなので細かい詮索は無しでお願いします…)
八百万の神…日本の神様(建御雷、諏訪子など)
唯一神………神綺
外国の神……へカーティア
神となった早苗は八百万の神という位置付け。
技名について
技名に「究極」の文字が入っているスペルは神の助けが無しには使用不可能。力量不足で。
究極雷『神の加護を賜りし雷』…建御雷が必須。
魔双剣『究極月面衝撃波』…同じく建御雷必須。
神双剣『神・究極月面爆雷撃』…雷神形態時しか使えない。
エスカルゴ・雷神形態について
神綺+武甕槌命+ほかの八百万の神の3柱以上が揃って初めて発現する特別な形態。破壊に重きを置いてるために、スペルカード戦では絶対に使用不可能。何柱もの神の力を使用したこの攻撃は、エスカルゴ本人が手加減しても、神一柱の本気の攻撃と大して相違ないため、喰らえば妖怪だって致命傷は免れない。
彼に力を貸す神が多ければ多いほど強力となる。
やはり殺し合いで真価を発揮するタイプ。
この形態の時は左目が黄色に輝く。使用後は暫く目が黄色いままだが、いつ戻るのかは全く不明。もしかしたらずっと戻らない…のかもしれない。
更に、光輪(天使の輪のようなもの)がバチバチ帯電しながらの状態で頭上に浮かんでいる。
妖力、闇の力が0なのでステータス上げも暴走も闇堕ちも出来ない。扱える力は電力、霊力、力を貸してくれている神が持つ神力の3つ。
尚、八百万の神が力を貸せるのは3柱までというのは諏訪子の虚言である。しかし、対象の負担が大きくなるのは事実。
下手をすれば神の力に呑まれる…かもしれない。
思えば、頭の中(?)で神様と話すのって、一応原作設定でしたね。漫画版儚月抄の中巻にて、
霊夢「もうすぐロケット二段目も捨てるから上に昇る準備して」
咲夜「あら。もうそんなに来たのかしら?」
霊夢「上筒男命(うわつつのおのみこと)から、『退屈だからそろそろ代われ』って」
なんて会話がありますし。
あの時霊夢は3柱を同時にその身に宿してたな。
エスカルゴ・雷神形態の挿絵は、友人のAHさんに描いていただきました!!
オッドアイ挿絵は紅石朔夜さん作です!
411話あたりに出したいと言ってたアレは、413話あたりになりそうです。( ´・ω・`)