カルゴ「やれやれ、『秋の日は釣瓶落とし』とはよく言ったものだな。まだ夕方のはずだが、もう夜みたいになってやがるな」
衣玖「すみませんご主人様…また掃除を手伝って頂いて…」
カルゴ「初めて来た時も掃除したんだっけ。ま、退屈しなかったからこれはこれで楽しかったよ。相変わらず中の締め付けはイイ感じだしな♪」
衣玖「また何回もイカされちゃいました…♡」
カルゴ「お互いにな。…それじゃ、俺はそろそろ地上に戻るよ。娘と嫁が待ってるからさ」
衣玖「はい。…お掃除のお礼はいつか…///」
カルゴ「掃除のお礼なら、掃除の前のセックスで受け取ったから大丈夫だよ。んじゃな♪」
衣玖「はい♪」
衣玖に玄関まで見送ってもらい、次は守矢神社に向かって急降下する。衣玖の自宅に来る場合は、大抵「性行為→掃除」なので、スキマを開く為の体力は戻っている。しかし、やはり疲れたので、闇に染まりつつある大空を、ひたすら滑空する。
敢えてスキマを使わない理由は「疲れたから」。
我ながら、実にシンプルな理由である。
しばらく、グライダーのように滑空し続けると、眼下に守矢神社及び大きな湖が見えてきた。あの諏訪子が俺に見せたいと思っているものとは一体何なのだろうか。全く、検討もつかない。
カルゴ「何かあるという訳では無さそうだが…。虫か何かかな?」
境内にも庭にもこれといった何かがあるワケでもなく、それを見つけられなかった俺は、縁側から居間の襖を開ける。
カルゴ「オィイイイイイッ↑ス!どうも〜、エスカルゴで〜す」
樹里愛「パパー!」
早苗「おや、テンションアゲアゲですねぇ!」
カルゴ「えー、今日は…諏訪子に呼ばれて来たんですけども………特に何も……見つけられませんでした…。一切何も見つけられなかったでスゥ…。一体何がダメだったんでしょうかね〜……不思議ですね〜…」
早苗「あ、多分アレの事ですね!境内の隅っこに小さな分社がありますので、よく見て下さい!」
カルゴ「おっ、そうなのか。分社って…博麗神社にもあるアレ…だよな?」
早苗「そうですそうです!寒いので私は出ませんけど、よく探して下さいね!」
カルゴ「はいよ」
再び外に出た俺は、境内にあるというその分社を探し始める。が、風が冷たくて確かに寒いので、早く見つけてしまおうと思い、反響定位で探し、引っかかったモノを見に行く。そこには、確かに小さな分社があった。
しかし、一体どの神様を祀ったものなのだろう。
カルゴ《ねー、この分社って誰を祀ってるの?》
諏訪子《おー、やっと連絡来たー。って、それ、裏に隠れてるはずだけど?》
カルゴ《…?どゆこと?てか今どこに居るん?》
諏訪子《裏に祀られてる神様が居るって事だよ。今ね、紅魔館でティータイム中なんだ〜♪(今連絡来たところで、時すでに遅しだよねぇ…)》
カルゴ《なるほど。また何かあったら聞くわ》
諏訪子《はいはーい♪》
カルゴ「裏…誰か居ますか?」
その相手はきっと神様だと思うので、敬語で話しかける。しかし返事は無い。
カルゴ《返事が無いけど、ホントに誰かいるの?呼ばれたら出てくると思うんだけど…》
諏訪子《え、居ない?…まさか、待つのに飽きてどこか行ったのかなぁ…》
カルゴ《あーやっぱりそうかー…。探す?》
諏訪子《うん、お願い!もう少ししたら私も神社帰るからさ!》
カルゴ《了解》
つまり見慣れない神様を探せってことだね。余裕でしょそんなの。住み慣れた幻想郷で見慣れない妖怪とか神様って言ったら野良妖怪とか野良神様くらいだもん。八百万を除くと。
カルゴ「つっても、どこから探せば………ん?」
男子「すぅ……すぅ……」
分社の裏を見てみると、それに寄りかかって眠る子供の姿があった。座高はフランやレミリアらとあまり変わらない。恐らく、起立してもそんなに彼女らと変わらないだろう。神社に参拝に来た、ショタっ子らしい。
その子が、フランたちの従兄妹…クレイドールに少しだけ似ているのが腹立たしい。当然ながら、翼は無いし、妖力も感じない。
俺は生意気な糞ガキを思い出し、気が付くと拳を握っていた。嫌いな奴を思い出してイラつくなどおよそ俺らしくもない。
フランたちを瀕死にまで追い込まれた事がよほど憎たらしいのだろう。分身をアイツの姿にして、粉々にぶち壊してやろうか。
カルゴ「…フン」
自分の器の小ささに、思わず笑いが漏れる。
それに、クレイに似ているということは、とあるアニメのギド・ルシ〇〇・デビル〇〇にも似てるという事だ。この子は将来かなりモテるだろう。うん、そう前向きに考える事にしよう。
もう夕方…というより夜に近い。神を探す前に、人里にこの子供を送り届けなければなるまい。
人に戻った時にも山に来たからわかるが、やはりこの山は危険だ。吸血鬼になった今となっては、まるで恐るるに足らないのだが。
カルゴ「おーい、そこの男子ぃ。こんなところで寝てると風邪引くぞー」
男子「っ…ふあぁぁ……。あれ、何だここ…」
案外すんなり起きてくれた男子は、すぐにハッと目を覚まし、キョロキョロと辺りを見回す。
カルゴ「妖怪の山にある守矢神社だぜ。この山を登るのに疲れて、寝ちまったんだろう。この山は危ないから、人里まで送るぞ?」
男子「妖怪の山?守矢神社?人里?」
カルゴ「…?そうだぞ?」
目は覚めたように見えるが、頭がぼんやりしてるらしく、俺が言った幻想郷の各場所を小さな声でボソボソと繰り返し呟いている。
男子「なるほど、わかったぞ!」
いや、何がわかったのかわからないんだが。
カルゴ「そうか。よし、帰ろうぜ」
男子「我に家なんて無いぞ!」
カルゴ「えっ………」
あ、もしかして孤児ってやつ…?ちょっと待てよなんだこの状況、神様探し所じゃないんだが…。
とりあえず、自警団の連中に引き渡せばなんとかなりそうだけど…孤児?初めてだなこんな事は。
カルゴ「そっ…か…家が無いのか…。なんか悪い事言ったな、ごめんな。…ところで……」
あれ?待て、こういう時ってなんて言うんだ!?
「お前の名前は?」上からだ、俺ならイラつく。
「坊主の名前は?」いや、なんか少し違うな…。
「ボク、お名前は?」俺そんなキャラじゃねぇ。
「君の名前は?」なんか、少しだけ上から目線な気がするけど…この中で一番無難なのはこれか?
君って言われるの結構嫌いなんだよなー、俺…。
「汝、名を名乗れ」神様とか魔王じゃねぇから。
…そうか、聞き手が上から目線に感じないような声の調子と表情で言えば悩むこと無いじゃんか。
カルゴ「名前はなんて言うんだ?」
男子「よくぞ聞いてくれた!我が名は武甕槌命!剣神でもあり雷神でもある、八百万の神々の中で最強の神なり!」
カルゴ「…?いや、君の名前を聞いたんだが…。そーか、この分社は武甕槌命の神社の分社だったのか。諏訪子が俺に見せたがるわけだな」
男子「おい器、我を無視とはいい度胸だな?」
名前も知らない子供に器呼ばわりされたことに、内心イラつくが、そんな様子はおくびにも出さず
「優しい吸血鬼のお兄さん」を演じ続ける。
カルゴ「いいかい?その名前は神様の名前だぞ?君は神様に詳しいようだが、軽々しく神の名前を名乗っちゃダメだ。怒らせちまうかもだぜ?」
男子「いつまで三文芝居を続けるつもりだ器め。我が幻想郷にやってきた…と言っているんだぞ?クカカッ、素直に喜ぶがいい」
カルゴ「その悪役みたいな笑い方…!ちょっ…、マジで建御雷なわけ?…それとも…厨二病か?」
男子「厨二病はお前だろ」
カルゴ「!?」
男子「我はまだ外の世界で忘れられていないから神社本体は置いてきたよ。その代わりに、活動の拠点とするために分社を持ってきたわけだがな。どうだ、驚いたろう?」
カルゴ「建御雷の声はもっと野太い声だぞ。お前みたいな、The・元気な子供って声じゃない」
男子「…はぁ…」
溜め息ひとつついたかと思うと、今度はニヤリと口角を上げ、野太い声で話し出した。
男子「どうだ器。これでわかったか?」
カルゴ「えぇ…。いやいや、まだ疑わしいぞ…。本物なら雷落とせるはず…俺に落としてみてよ」
すると、今度は声を元の子供のような声に戻す。
男子「Mか貴様。…まぁいい。そら、喰らえ」
人差し指を向けたかと思うと、天から一筋の太い雷が俺の頭を撃つ。信じるほか無いらしい。
カルゴ「…わかった、信じる。でもなんでそんな子供の姿してるんだよ?」
建御雷「お前が過去に自分で言ったんだろうが。子供の姿の方が便利だと」
カルゴ「まぁ…。ただあの頃はお前と知り合って無かったと思うが?」
建御雷「頭の中を見れば考えを読めるだろうが、このバカタレハナタレ小僧」
カルゴ「ハナタレじゃねぇっ!あとな、子どもの姿とはいえ、俺の女には触らせねぇからな!?」
建御雷「女に興味など無い。我はお前とは違う」
カルゴ「うっ…。で、どこに住むんだよ?野良神にでもなるつもりか?」
建御雷「それならば心配ないぞ。この守矢神社に居候する話で神奈子と諏訪子と合意している」
カルゴ「もし諏訪子や早苗、樹里愛、上海、蓬莱に手出ししたらぶっ潰すからな」
建御雷「フハハ、神相手にそんな心配をするか」
カルゴ「男だからな。俺もお前も」
建御雷「そうさなぁ…。幻想郷での生活は、常に寝ているか散歩しているかのどちらかだろうな。頭の中ではいつも通り話せるからな。だからまぁ心配するな」
カルゴ「ずっと寝てやがれ。もし事前に連絡とかくれれば、家とか建てたんだが?」
建御雷「サプリメントってやつだ。ちょっとな、お前を驚かせてみたかったんだ」
カルゴ「健康補助食品?」
建御雷「何だそれは」
カルゴ「それを言うなら『サプライズ』だぜ」
建御雷「あーそれだそれ!横文字は苦手なんだ。日本の神だからな」
カルゴ「諏訪子だったら多分両方出来るけどな。
…多分だけど」
建御雷「確かになぁ。…ところで、さっき『手を出すな』と言った中に神奈子が入ってなかったと思うが…忘れてたのか?」
カルゴ「いや。俺の女じゃないから執着してないっていうだけ。加護はしてくれてるけど、嫁でも彼女でも娘でも無いからな。神奈子様と建御雷が恋仲になろうとどうなろうと俺には関係ないよ」
建御雷「上海と蓬莱は?」
カルゴ「あいつらは俺のだ。アリスが俺のために作ってくれたんだからな。可愛いだろ?」
建御雷「珍しいな、男子が人形とは。まぁ、趣味なんて人それぞれだから否定はしない。ちなみに我の趣味は戦闘だぞ」
カルゴ「だろうな。…外の人間も、お前みたいに他人の趣味に寛容なら良いのにな…。批判に次ぐ批判で、ホント馬鹿らしく思えてくる」
建御雷「だな。いつか外の世界を壊そうか?我とお前ならば日本人根絶・日本終焉も可能だろう」
カルゴ「日本になんの恨みが!?気持ちはわかるけど、日本壊そうとしたら幻想郷も壊れちまう」
建御雷「それもそうか。やれやれ、神代のように暴れ回れなくて欲求不満だぞ、我は」
カルゴ「梅雨になりゃ雷落とし放題だろが」
建御雷「威力落とさにゃ穴だらけになる。それに少しでも喰らえば大抵の人間は死ぬぞ。本当に、戦闘狂にとっては生きづらい世の中よの」
カルゴ「さいですか」
それからしばらく、雷使いの2人は夕飯の時間になるまでずっと話し込んでいたそうな。そして、その頃霊夢は、紅魔館でのティータイムを終え、とっくに博麗神社に向かって飛び立っていた。
蝙蝠を巨大化・筋肉質になるように品種改良して人間の背中に神経とか繋げるようにちゃんと移植すれば見た目だけ吸血鬼になれんじゃね?なんて考えている俺氏。