新章開幕です。(特に何も変わらないけどね。)
時系列としては前話の次の日です。2日に1回の流れを昔ながらに戻した初日ですね。
中立者として
霊夢とフランたちが戦ったという次の日。俺は、夕方頃に次の宿泊場所へ向かう事にした。橙色に輝いていた夕陽もとうの昔に没し、冷たい風が、落ち葉の多い博麗神社に吹き込んでくる。ここは高台なので、紅魔館や里などの場所と比べても、ひとたび風が吹けば夏は風通しが良く、冬はより寒いという環境だ。つまりは、善し悪しである。
そんな環境下であるにも関わらず、面倒臭がりな霊夢は、俺を見送ろうと外まで出てきてくれる。彼女なりに、思う所があるのだろう。
因みに、俺が寝泊まりする各地に分身を飛ばし、昨晩の霊夢の考え及び決意は、予め伝えてある。当然だが、霊夢に許可を得ての行動だ。反霊夢派だったフラン達は小躍りして喜んだに違いない。それか、「どうしたんだろう?あの霊夢が…」と疑うかの二択であろう。
カルゴ「それじゃ…行ってくるよ」
霊夢「うん…またね」
カルゴ「そんな寂しそうな顔すんなよ、全然霊夢らしくないぞ」
霊夢「寂しくなんて…無いし…」
カルゴ「んー?声が小さくて聞こえんなぁ?」
霊夢「寂しくなんてないって言ってんの!あんた本当は聞こえてんでしょ、この地獄耳っ!馬鹿!助平!変態!底無し性欲!」
余計な言葉がいくつか混ざっていると思うけど…少しは普段の霊夢が戻った…かな?
カルゴ「そーそー。その調子で、いつもみてぇに強気で居てくれ。欲を言うなら…やっぱ霊夢には笑っててほしいな。いや、皆もだが。しょげてる霊夢よりも、笑ってる霊夢の方が、ずっとずっと可愛いんだからさ」
そう少しだけ励ました俺は、ポフッと霊夢の頭に手を乗せる。一瞬だけピクリと反応したが、特に手を払い除けたり、威嚇をするという拒否行動は見られなかった。
カルゴ「…愛してるよ」
霊夢「私も……っ」
そっと霊夢の唇にキスをした俺は、頬をサラッと撫でて境内から飛び立った。
霊夢「すぐに来てよね…」
霊愛「お母さんが黄昏てる…」
霊麗「あーあ、お姉ちゃんがさっさとしないからデレる前に行っちゃったじゃん」
霊愛「デレ方とか知らないし」
霊麗「巫月お姉ちゃんの真似すればいいのに」
霊麗がそう言うと、霊愛はぷいっと目を逸らす。まるで、照れた時の母親のような行動だ。流石に血が繋がった母娘なだけある。
霊麗「急に抱きつかれたら、お父さんどんな反応するんだろ。……それにしても、お母さんって…あんな寂しそうな顔するんだね」
霊愛「そりゃーお母さんだって完璧じゃないってコトでしょ。これで夜もすぐに眠れるよ」
霊麗「最後の方は敢えて聞き耳立ててたけどね。私もお姉ちゃんも」
霊愛「秘密だからね?」
霊麗「わかってるよ。ラブラブなお父さんとお母さん、すっごく仲良さそうだったよね〜♪」
霊愛「普段からだけどね」
カルゴ「ただいま」
文「あややややっ、思ったより早かったですね!まだ夕飯の準備が終わってませんよ!?」
カルゴ「あとは俺やるから文は休んでていいよ。新聞作成で疲れてるだろ?」
文「いえいえ、私がやります!」
カルゴ「…じゃ、2人でやらないか?」
文「良いですね!お願いします!」
今日は文の仕事場だ。しかし、文のテンションは初っ端から高い。やはり霊夢のアレが関係してるのは間違いないだろう。
カルゴ「穹は?」
文「えーと、今日は確か…風見幽香さんの所に、季節の花の取材に行ってますね!」
カルゴ「大丈夫かなぁ…あの人は強いぞ…」
文「大丈夫です!鍛え上げた能力もありますし、最悪の場合は逃げますからね!」
カルゴ「まぁ…そうだね。流石の幽香も穹からは逃げられないだろうし」
文「そうですよっ!」
やはりテンション高いな…昨日戦ったメンバーに文は入ってなかったはずだが、なにか関わってるのかな?うーむ…聞いてみるかな。
カルゴ「昨日の霊夢のアレ…文はどう思った?」
文「!」
すると、卵を掻き混ぜていた文の手がピッタリと止まり、表情が強ばる。
文「どういう…意味ですか?」
カルゴ「いや、特に意味は無いよ?けど、そんな反応をするってことは…何か考えてたか?」
文「…大したことは考えてませんけどね。昨日の戦いを見て……皆さん、本当にエスカルゴさんが好きなんだなぁと感じまして」
カルゴ「…照れる。どんな戦いだったんだ?」
文「そうですねぇ…。穹が眠ったあとに、写真をお見せしますよ。その方がわかりやすいですし」
カルゴ「わかった」
夕飯の準備を終わらせたところに、穹が無事帰宅した。中々に有意義な取材だったようで、本人は俺の心配を知らずにニコニコとしている。まぁ、穹が無事で何よりなのだが。
そして親子3人で夕飯を食べ、穹、文、俺の順で風呂まで済ませて、穹は取材の疲れからかすぐに眠りについた。
それから、文は第三者目線でその戦いについて、写真を交えて話し始めた。
文「これは、霊夢さんと他の7人が向き合ってるシーンですね。咲夜さん、キレてましたよ〜!」
カルゴ「咲夜さんがキレるなんて想像出来ない…美鈴や俺を叱る時とは違うんだろうね」
文「そうですね…なんていうんでしょうか、あの様子は…。静かに怒りをぶつけ、威圧する感じと言えば伝わりますか?」
カルゴ「怒鳴るわけじゃないの?」
文「いえ、全然違いましたよ。…ん?咲夜さんに怒鳴られた経験でも?」
カルゴ「ガラスを割った時と、咲夜さんが風呂に入ってる時に間違って入った時に」
あの時はしばらくムラムラしっぱなしだったからそれを小悪魔にぶつけまくってたな…。あれは、咲夜さんと付き合い始める前だったから怒鳴られたんだよな。てことは今なら大丈夫…?
文「ほ、ほう…。…ああいった静かな怒りほど、恐ろしいものはありません。本当に、殺気がダダ漏れでしたから」
カルゴ「咲夜さん怖っ…」
文「ですね。しかし、それだけあなたを愛してるからこそ、そこまで殺る気になるんですよ」
カルゴ「…そうかもな。だけどさ、こんな争いになるなら、最初からハーレムなんて作らない方が良かったんじゃないかな…なんて思っちゃうよ。文はどう思う?」
文「いや…ハーレムに入ってる私に聞きます?」
カルゴ「すまん」
文「作ってよかったに決まってますよ。だって、そうしなきゃ私が入れませんでしたからね」
カルゴ「…第三者目線で頼む」
文「うーむ…やはり作ってよかったと思います。その方が、断る際のあなたの精神的苦痛も少ないですし、OKされなかった女性の精神的苦痛も…断られなければそんな苦痛は無い訳ですしね」
カルゴ「でも、こうして争って…それで心苦しく感じてたら意味が無いよ…。一体俺はどうすりゃ良かったのか…よくわからないや」
文「大丈夫、自信を持ってください。あなたには多くの女性を纏める力がありますから。今回は…霊夢さんが少しやり過ぎただけじゃないかな、と思っています。第三者目線から見ても。皆さんの話からも、あなたへの批判は一切なく、霊夢さんへの文句ばかりでしたから」
カルゴ「…恋は盲目…。俺が悪いのはわかってるけど、その事を認めたくないから、霊夢を悪者に仕立てあげてる…なんてことは無いよね?」
文「そんな様子は無かったですよ。大丈夫です、今回の件に関してはあなたは悪くないですから。いや、誰が悪いとかは無くて、独占しようと思うその心自体が良くなかったのかもしれませんね。咲夜さんたちも、何だかんだ言ってあなたを独占しようとしていましたから。喧嘩両成敗ですよ」
カルゴ「…向こうはそれで納得しているのかな。霊夢は…自分が悪かったって理解して、ちゃんと納得もしてた。でも…塞ぎ込んでる霊夢は見てて辛かった…」
文「…そうやって他者に寄り添い、思いやる事が出来るからこそ、自然と女性が寄ってくるのかもしれませんね」
カルゴ「……ん」
そして、文は次の写真を取り出す。
文「皆さんが臨戦態勢に入ったシーンです。写真越しでも緊張が伝わってきそうですねぇ」
カルゴ「そういや、弦月姫は居なかったんだな。巫月は居るのに」
文「それについてはですね、咲夜さんから直接、お話を聞いてますよ!美鈴さんの見張りと仕事を任せていたそうです!」
カルゴ「やっぱそうなのね。…それにしてもだ。何でここに萃香が居るんだ?」
文「…へ?」
カルゴ「ん?」
文「だって萃香さんもあなたの愛…じゃなくて、彼女の1人でしょう?」
カルゴ「え?」
文「え?」
カルゴ「ちょっと何言ってるか分からないな…。萃香が俺の彼女の1人?告白されてないけど…」
文「…!そうか、わかりました!酔ってたから、その事を忘れてるんですよ!」
カルゴ「どういう事か教えてくれ…」
文「ふっふっふ…これです!」
そう言ってドヤりながら、文は新たな写真を机の上に乗せる。それを見た俺は口をあんぐりと開き驚きを露わにした。その写真は、先日萃香と酒を飲んだあの場所で交わっている己の姿だった。
カルゴ「え…これ……え?ヤってる…よね?」
文「ヤッてますね。ちなみに、中出しまで完璧にキメてましたよ!」
カルゴ「おいおいおいおい…何やってんだ俺…」
サァッと一気に血の気が引いていく感覚がする。今の俺はどんな顔をしているのだろうか。
文「しかし、あなたは萃香さんの告白をOKしたらしく、しかも合意の上での行為なので問題無いですよ。失礼ながら、盗み聞きしてたので!」
カルゴ「う…む……今度萃香に聞いてみるよ…。何でこうなったのかとか…。だって萃香本人からそんな話聞いたこと無かったし…」
文「あやややや…。あ、話は戻りますが、これが戦闘中の霊夢さんたちですね」
交わっている生々しい写真の上に激しいぶつかり合いの写真を乗せる。綺麗な弾幕が飛び交う中、咲夜さんと霊夢が殴りあっている。そこに、拳を握ったレミリアが突っ込んでくる瞬間の写真だ。
文「激しいでしょう?」
カルゴ「こんな殴り合いしてたのか…」
文「ええ。それと、これが萃香さんの巨大な拳を受け止めているシーンですね」
カルゴ「うわ足元の地面が陥没してやがる」
文「さすがの吸血鬼でも、ボキボキグシャアッと潰れるかと焦ったんですけど、そんなことは全くありませんでしたね。……それから、霊夢さんの背後に回り込んだ巫月さんの写真…おっと失礼、ブレている写真が残ってましたか。……あ、これですこれ。さっきのアレは、余りに速くてブレてしまったんですよ。凄いですよねぇ、私のカメラから逃れそうになるなんて」
霊夢の背後に上手く周り込めたからか、ニィッと笑って弾幕の準備をしている娘と、背後の気配に気付いたのかハッとしている霊夢の写真だ。
目線としては、霊夢が話していた人目戦…という感じがする。
カルゴ「この写真買い取る。いくらでも払う」
文「無料でどうぞ!旦那様からお金を取るなんて有り得ませんから!」
カルゴ「…今度、お菓子か何か奢る」
食べ物で払うと遠回しに伝え、写真を受け取る。
額に入れて永遠亭の自室に飾ろう。
文「あやっ…ミスりましたぁぁ……。順番は飛びましたが、これが夢想天生中の霊夢さんですね。実物は初めて見ましたよ」
カルゴ「拳は地面を殴って、弾幕や武器は通過…やっぱ通じなかったか」
文「風すらも吹き抜けてますからね、私の能力も及ばない状態なのでしょうね…。そしてこの時、やけに諏訪子さんと咲夜さんがお喋りでしたよ」
カルゴ「そうなのか。…ふーん…何だろうね」
文「あいにく私は地獄耳では無いので…。次は、巫月さんのスペルを喰らって倒れ伏した霊夢さんですよ。手足は動かせないようでした」
カルゴ「流石巫月だな」
文「で、これが、指輪が光り始めた瞬間ですね。驚きのあまり接近した皆さんは目を覆ってます」
次の写真では、立ち上った霊夢の指輪から大量の雷の弾幕が発射された瞬間だった。
文「あの指輪はエスカルゴさんお手製ですから、こうなるように仕組んだのではないですか?」
カルゴ「そうだね」
文「おおっ…!流石ですね!」
カルゴ「この程度の事なら何とか」
文「次の写真がラストですよー。…今度は、霊夢さんが皆さんを見下ろしてます。この後、いつも通り夢想封印でトドメを刺しましたね」
カルゴ「かなり激しい戦いだったんだな…」
文「ですねー…それでも勝てるとは、やはり霊夢さんは凄いです。何か質問はありますか?」
カルゴ「今度は文目線から答えてほしい。文は、この戦いで、どっちに勝って欲しかった?正直に頼む」
文「…レミリアさんたちですね。私とてあなたを独占したい気持ちは同じですから」
文の答えを聞いて、俺は思った。「多くの女性が独占したいと思っているうちは、真の平和は訪れないのではないか」と。
文「ですが、私はこんな風に争いを起こしたり、その中に交じったりはしませんから。あなたは、そんなこと望んじゃいないでしょう?」
カルゴ「…うん。ありがとね、文…」
文「いえ!これからもよろしくお願いしますね!良き夫婦として!」
カルゴ「ああ。よろしくな」
笑顔で頷いた俺は文とガッチリ握手を交わした。