純孤の仙界に来た俺は、まずは彼女の家の玄関を軽くノックする。すると、すぐに返事が来た。
純孤「はーい、今行くわねー!」
まさか、今回も寝巻きなんてことはないだろう。
もしそうだったら流石に可愛すぎる。
純孤「おはよう、エスカルゴ君」
カルゴ「おはよ。突然来ちゃったけど大丈夫?」
純孤「大丈夫よ」
ふむ。今日は普段着だったか。やはり大人っぽい女性といえば純孤だな。部屋も綺麗だし。
衣玖「へくしっ…」
天子「風邪?」
衣玖「ですかねぇ…」
純孤「どうぞ、上がって♪」
カルゴ「それじゃ遠慮無く。お邪魔します」
純孤「ふふっ、そんな畏まらなくてもいいのよ?私とあなたの仲じゃない♪」
どんな仲だ。…カレカノか。
カルゴ「まーね」
うーん…癒されるなぁ。フランや霊夢とも違う、この癒し。何なんだろうな。大人っぽい雰囲気で癒されてくって感じか。母さんは大人っぽいけど心配性だからな…ある意味、夢子の方が大人だ。
居間に通され、お茶を出され、木のテーブル越しに向かい合って座る。ただそれだけで、俺たちの間に会話らしい会話は無い。
純孤は口元を緩ませて身体をモジモジさせているが、何かあったのだろうか。その頬は少しばかり紅潮している。純孤の頬は触ったことが無いが、さぞかし柔らかいのだろうな。
カルゴ「純孤」
純孤「!?ひゃいっ!」
カルゴ「!?」
突然話しかけたからか、身体をビクンと跳ねさせ声が裏返った返事をする。俺が驚いてしまった。
純孤「ご、ごめんなさい…。ど、どうしたの?」
恥ずかしさからか、顔の下半分を隠して照れる。
なかなかどうして、こんなに可愛いのだろうか。
照れ姿は千差万別で、実に楽しみ甲斐がある。
カルゴ「どうしたのはこっちのセリフなんだが…まぁいいや。…ちょっとさ、デート行かないか?甘味処とか散歩とかさ」
純孤「あふっ……」
カルゴ「おい!?」
正座をしていた純孤は、そのまま後ろに倒れる。
ゴスッと畳に頭をぶつける音が部屋に響き、その衝撃で純孤は目を覚ました。
純孤「────はっ!」
カルゴ「おいおい、どうした急に…」
彼女の傍らに膝をつき、帽子の取れた頭を優しく撫でる。…というかこれは帽子なのだろうか?
純孤「だって…で、デートって…言われてっ…」
カルゴ「顔真っ赤だし…」
純孤「恥ずかしいわよぉぉぉぉ……!」
待て待て、可愛すぎかよ。デートに誘っただけで気絶するほど喜んでくれたり、顔真っ赤って…。能力に違わず、純孤自身も純粋なのかなぁ…。
カルゴ「そんなに恥ずかしい…のか?」
純孤「ちょっと待ってて、準備してくるわ!!」
カルゴ「えっ────」
ピョンと勢いよく身体を起こした純孤は、急いで隣の部屋に駆け込んだ。準備と言っても、普段着だった彼女に準備するものなんてないのだが…。お金なら俺が出すし。
人間だった頃は割り勘を望んでいたが、幻想郷の女性たちになら払わせてほしい。女性の性格にもよるのだろう。
純孤「お待たせ〜!!」
部屋から出てきた純孤は、いつも通りの格好で、荷物も何も持っていなかった。何を準備してきたんだ?…と聞こうと思った、その時。
ヘカT「どうも〜、お邪魔するわよん♪」
ピース「おっ邪魔しまぁーす!」
カルゴ「んなっ…!?え、ちょ、どゆこと!?」
純孤「ごめんなさい、2人きりだと恥ずかしくて私の心がもたないの…。興奮して何するかわからないし…」
カルゴ「???」
ヘカT「つまりね、恥ずかしすぎるから、友人の私とピースも呼んだってことよん♪」
純孤「ちょっ、へカーティアっ…本人居るのに、そういうこと言わないでよっ…///」
カルゴ「あー…な、なるほど…?恥ずかしすぎて援軍が欲しくなるほどって…マジで可愛すぎか」
純孤「っ!?」
ヘカT「あなたも、本人が居るのに…よくそんな直球に言えるわねぇ。ま、そういう素直なとこを気に入ったんだけど♪」
カルゴ「あれぇ丘people?!声に出てた!?」
ピース「普通に出てたぞー」
カルゴ「思考ダダ漏れはっず…」
ヘカT「良かったわね、相思相愛よん♪」
純孤「へカーティアぁぁぁぁっ!!私っ…うぅ…私、幸せよぉ〜……うぅぅ…」
ヘカT「よしよし、可愛いわねん♪」
ピース(友人様が泣くほどってどんだけだ…)
急に泣き出した純孤はへカーティアに抱きつき、へカーティアは純孤をよしよしと宥める。こんな喜ばれたのはいつぶりだろうか。
しばらくして純孤が泣きやんだ頃には、その目は赤く腫れぼったくなっていた。
純孤「行きましょっ♪」
カルゴ「ああ。大丈夫?」
純孤「ええ、もう落ち着いたわ♪」
カルゴ「そっか。よかった。……」
チラリとへカーティアの方を見ると、彼女は少し微笑み、こう告げた。
ヘカT「大丈夫。私とピースは、後ろから2人を見守ってるだけだから!」
カルゴ「了解。…行こっか、純孤」
純孤「あうっ……」
カルゴ「おい!?」
手を差し出すと、これまた後ろに倒れそうになるので、今度は慌てて彼女を抱きとめる。一体全体何があったというのだ。
純孤「…手ぇ…」
カルゴ「手?」
純孤「手を繋ぐなんてぇ…照れるわよぉぉ……」
カルゴ「そ、そういうことね…」
ヘカT「ほらぁ、あなたが手を出すから、純孤が喜びすぎて卒倒してるじゃないのよ〜」
カルゴ「俺のせいなの!?」
ヘカT「…まぁ、デート中は手を繋ぐものよん?純孤、頑張って!」
純孤「大丈夫かしら……また倒れて迷惑かけたりしちゃわないかしら…」
ヘカT「その程度で迷惑には感じないわよ♪」
その言葉にうんうんと繰り返し大きく頷く。
純孤「そう…かしら…。うん、わかったわ!さ、気を取り直して行きましょ!」
カルゴ「行くか」
ピース(エスカルゴが普段どんなデートしてるか見物だな。たっぷり見てやるぜ…ふっふっふ…)
玄関から出て、その場にスキマを開いて、活気が溢れる人里へ繋げる。建御雷が居ないので、あの夢のようにはならないだろう。ピースは居るが、そばにへカーティアも居るしピースは地獄の妖精だと鈴仙も知っているので、例え3人になってもどうにか説明はつく。
カルゴ「さて…。甘味処って言っても、もうお昼だったよな。先に昼ご飯食べちゃわないか?」
純孤「うん、そうするわ♪」
ヘカT「さり気なくお食事に誘うのねぇ♪」
カルゴ「これくらい別に何でもないよ」
ピース(何でもない…のかな?)
近くの定食屋に純孤をエスコートすると、そこの店員が声を張り上げる。
店員「っしゃーせー!何名様ですか?(うわぁ何か変な服着てる人居る…あのボールはなんだ…?)」
カルゴ「4人で」
店員「4に…え?」
カルゴ「え?」
店員「え?……あ、あぁ、あとから1人来るってことっすね!空いてるお席にどーぞー!」
「いや4人居るでしょ」と反論しようとした時、へカーティアが後ろから小声で話しかけてくる。
ヘカT「穢れすぎた地上人には、純孤の姿は目に見えないのよん」
カルゴ「ひえっ…んじゃ、あと1人どうしよう?分身でも店に呼ぼうか?」
ヘカT「なら一度退店しなきゃかしら?」
カルゴ「…とりあえず席につこう」
窓際の4人席に座り、俺と純孤、へカーティアとクラウンピースがそれぞれ横に並んで席につく。傍から見れば俺の隣には誰も居ないのか。それはそれでおかしな話だ。俺も穢れてるはずだが…。
カルゴ「スキマ…からの『分身』」
足元に、店の裏に繋がるスキマを開いて、そこへエネルギーを流して分身を作成して、純孤の姿にさせた後、店に入ってこさせる。
店員「っしゃーせー!何名様ですか?」
分身「えっと…友人と待ち合わせをしていて…」
店員「あ、でしたらそこの窓際のお席ですぜ!」
分身「ありがとう」
軽く店員をいなした分身は小走りで俺たちの方へやってきて、純孤の姿と声のまま喋り続ける。
分身「ごめんなさいね、遅れちゃった?」
カルゴ「いや、大丈夫」
分身「そう、それなら良かったわ。…ちょっと、御手洗行ってきてもいいかしら?」
カルゴ「どーぞお好きに」
分身「ごめんなさいね」
席につくことなく、分身はトイレへ向かった。
こうして敢えてトイレに行かせておけば、店員が俺たちの席を見ても、1人欠けていることに何の疑問も持たないはずだ。まぁもっとも、「トイレ長すぎじゃないか?」とは思うだろうが。
ヘカT「流石の策士っぷりね♪」
カルゴ「この程度で策士は無いよ。とりあえず、何にするか決めようぜ。俺はもう決まってるよ」
純孤「そうなの?なら私は、エスカルゴ君と同じメニューにするわね♪」
カルゴ「俺のはスタミナ定食だけど大丈夫?純孤食べ切れる?」
スタミナ定食の写真を見せる。すると、その量に圧倒されたのか、ピクリと頬が動いた。
純孤「大丈夫よ…!お腹ペコペコだからね!」
カルゴ「ニンニクとか効いてるけど?」
純孤「バッチコイよ!」
カルゴ「ならいいんだ」
外の女性なら口臭を気にして食べないだろうが、そんな気遣いは無用だったらしい。因みに俺は、やはりニンニクの味が忘れられないので、永琳の人体実験に付き合って、対ニンニク用ワクチンを打ってもらったのでもう大丈夫だ。
カルゴ「へカーティアとピースも、好きなの注文しちゃっていーよ。まとめてお会計するから」
ヘカT「あらそぉ?ならお言葉に甘えて♪」
ピース「よっ、太っ腹!」
カルゴ「デートに付き合ってくれるお礼さ。2人居なきゃこうして純孤とデート来れなかったし」
ヘカT「その通りね!ピースは決まった?」
ピース「決まりました!」
ヘカT「オッケー!店員さーん!」
店員「へい!」
ヘカT「焼肉定食1つお願いするわ♪」
ピース「あたいは日替わり定食1つ!」
カルゴ「スタミナ定食2つ」
店員「へいっ!焼肉定食が1つ、日替わり定食が1つ、スタミナ定食が2つ!少々お待ちを!」
カルゴ「あっ、スタミナの方は片方ニンニクとか生姜とかマシマシで」
店員「あいよ!」
店員は注文内容を反復し、厨房に向かう。あとは届くのを待って、食べたら散歩、甘味処で団子を食べて、今日はおしまい。うむ、今日のところはとりあえずこんな感じのデートプランでも大丈夫だろうか。…デートといえば、やはり里でこんな風に食べ歩くのが楽しい。
咲夜さんのように普段から忙しい人は、どこかでまったり過ごすのが良いのかな、と思う。
店員「へいお待ち、スタミナ定食2つな!片方は足してるよっ!」
ドスンとテーブルを揺らして、ニンニクや生姜が乗った巨大なハンバーグ(?)とライスとスープのセットを置く。あまりの大きさから食べる人は里の中でも限られている、と聞いたことがある。
ピース「うっ…ニンニクの匂いキッツ…」
ヘカT「スゴい強烈ねぇ…しかも多いし…」
カルゴ「マシマシだからね。これくらいペロッと食べなきゃスタミナなんてつかないさ♪」
店員「へい、焼肉定食と日替わり定食!」
ヘカT「わっ…スタミナ定食見たあとだと私のが少なく見えるわね。こっちの倍はあるでしょ…。あなた、そんなに食べれるの?」
カルゴ「俺ってこう見えても結構食べるんだよ?
ヘカT「運動という言葉に変な意味が含まれてるような気がするのは私だけかしらね、ピース?」
ピース「あたいもですご主人様…」
ヘカT「もしかしてあなたの底なしのスタミナはここから来てたり?」
カルゴ「そうかもしれないしそうじゃないのかもしれないね。多分関係ない」
ヘカT「そ、そう…とりあえず頂きましょうか」
一同「いただきまーす!」
その後は、普通に色々会話しながらそれぞれ定食を食べ続けた。が、やはり純孤にスタミナ定食の量はキツかったらしく…。
ヘカT「ご馳走様〜…美味しかったわ〜♪」
ピース「そーですねー…」
純孤「美味しいけどお腹いっぱいね…ふぅ〜…」
ヘカT「くっさ!?うわっ、息吐かないで純孤!ニンニクの臭いが!」
純孤「そんなに?自分では分からないものね…」
カルゴ「純孤、この錠剤を」
そう言って、緑色の直径5mm程度の粒を渡す。
純孤「これは?」
カルゴ「口臭改善の錠剤。ハーブが匂い消して、更にはイイ匂いにしてくれる。紅魔館のハーブを永琳がイジッた錠剤さ」
純孤「そうなの?有難く頂くわね」
ヘカT「なるほどぉ、それを持ち歩いているから所構わず彼女にキスできるのねん♪」
カルゴ「言い方はアレだけど…そんな感じかな」
ヘカT「で?で?純孤とはどこまでイッたの?」
カルゴ「…キスも何もしてないよ」
ヘカT「あなたならもっとイってると思ったわ」
カルゴ「実は…うん…。今日キスしようかなぁ…って考えてたんだけどさ…。手を繋ぐだけでアレだから、もう少し後でいいかなって思ってね」
純孤「キスなんてしたら私…私……はぅぁぁぁ〜………」
ピュア過ぎんだろ…。照れすぎだがそれがイイ。
可愛いとか言われ慣れてないのかな?
ヘカT「キスシーン見てみたいわね〜♪」
カルゴ「見られながらするのは恥ずかしいな…」
ピース「霊夢とは堂々としてるのによく言うよ」
カルゴ「霊夢とするのと純孤とするのはまた違うからね、多少はね?」
ピース「どこが多少なんだか…」
ヘカT「さっ、お会計して次行くわよん!」
カルゴ「あ、待って待って。純孤、それ残すなら俺食べてもいい?」
へカピー「!?」
純孤「ふぇっ!?ででででもそれって…かかかか間接キスになっちゃうんじゃないの!?」
カルゴ「俺は気にしないけど。ていうか普通に、残すのが勿体無いじゃん」
純孤「そ、そうだけど〜…………好きにして…///」
まぁ他人には意地汚いと思われるだろうが、俺がどう思われようと関係無い。食材が残されるのが嫌なだけなのだから。まして俺の好きなメニューだから、特にそう思うのだ。
純孤の残りは0.5人分ほど。この程度なら余裕だ。
そしてペロリと平らげ、俺たちは会計をする。
店員「お会計6080円になりやす!」
ヘカT「思ったより高いわねん…」
カルゴ「スタミナが高いし、俺がニンニクと生姜マシマシにしたからね」
いつも通り万札で済ませて、今回はお釣りも全部受け取り、店を出る。人数が減っていることには特にツッこまれなかったので安心した。
ヘカT「次はどこに行く?」
カルゴ「さぁ。純孤はどこに行きたい?」
純孤「お腹いっぱいだから…お散歩したいわ♪」
カルゴ「じゃ、そうしよっか。ほい♪」
純孤「!……うんっ♪」
手を差し出すと、純孤は笑顔でその手を取って、今度はブラブラと散歩を始めた。やはりデートはこのようにまったり過ごすのが一番好きだな、としみじみ感じたのだった────。
もうちょっと書きたいけど他にも書きたいことがめっさあるのでキリいいところで切りますぞ。
次は少しアレかも。いや、エロじゃなくて。