禍霊夢「…なっ…何ヨ、ソノ姿…!?」
3までカウントした禍霊夢はそのカウントを一時中断し、結界の中で突如姿を変えた俺を食い入るように見つめる。
残念だが、あまり遠くまでは見えないらしい。
人間よりかは遥かに良いが…数値にすると10〜20くらいだろうか。吸血鬼の目が懐かしく思える。
カルゴ「牙も無いし翼も無い…。そして神の声も聞けなくなった…か」
声が聞こえなくなる直前に母さんが言った通り、今の自分についての記憶のを探ってみる。するとすぐに自分に関するデータを見つけられた。今の俺は、目はオッドアイのまま、天使の輪は無く、翼は無く、吸血鬼の特性も無く、闇の力、霊力、電力、妖力、魔力の全てを失い、その代わりに、神力と《万物を創造し操る程度の能力》…つまり母さんとほぼお揃いの能力を有している。
神の加護も無い。自分自身が神だからだ。ならばいずれ、神同士で話せる理由もわかるだろう。
…どちらにせよ、早く脱出せねば。
カルゴ「『《雷を操る程度の能力》を育て上げた状態で自分に付与する』」
創造神の能力で雷の能力を己に付与する。すると建御雷に力を借りた時のように電気の力が溢れるようになった。成功らしい。
記憶によると、「体を作り替える際には、能力は一度リセットされる」とか。面倒だが仕方ない。
そして、神力と電力を合わせ、結界を破るためのスペルの詠唱をする。
カルゴ「聖行『神明裁判』」
先日、魔理沙の殺害に関与した里の人間達を一旦皆殺しにした時に使用したスペル。これは、俺が
「気に入らない」と思った存在を全て消す聖なる光を放つスペルだ。
あの時は、あの人間達が気に入らなかったから、全て消し飛ばした。ならば今俺が気に入らないと思っているものは何なのだろうか。
そう、この結界である。
禍霊夢「あぁっ……結界ガ消さレタ…。フンッ、ならマタ作れバイイだけヨ!」
カルゴ「させるか」
禍霊夢に手を翳し、能力剥奪の要領で、禍霊夢の霊力と妖力を封じた。もちろん一時的にである。能力という概念的存在の操作だってこの力ならば思うがままである。
こんなに簡単なら、母さんが重力の能力をポンと軽い調子で与えてくれたのもよくわかる。
禍霊夢「なんデっ…どうシてっ!?」
カルゴ「一瞬で決着を付けなかったのが敗因だ」
そう告げると、禍霊夢は「どうしてどうして」と壊れたように繰り返しつぶやくのみだ。ここで、ふと疑問に思ったことがある。ここで俺が彼女の狂気を消すことは可能ではあるが、発現した理由などは知っておきたい。
しかし今の禍霊夢が話してくれるとも思えない。
そこで、《深層心理まで読み通す程度の能力》を追加で付与する。俺にはサードアイがないので、
「読もう」と思えば対象の心が読める。
禍霊夢(ここで封印が出来なきゃ、私はあなたと一緒に死ぬ事が出来ないでしょ!邪魔しないで!あなたを独占するにはこれしか方法がないのよ!本当だったら皆殺しにしたいけどそれはあなたが悲しむからあなたを殺すだけで抑えているのよ!素直に殺されて!永遠に2人で過ごしましょ!)
表の心はこんな感じ。かなり荒れている。ならばもう少し深く読み込んでいけば─────。
禍霊夢『こうしなきゃあなたはまた他の女の所に行く…。もっと私と一緒に居てよ…一緒に居れるだけで…私はそれだけで良い…。あなたに会いたすぎて心が落ち着かないのよ!私ともっともっと一緒に居てよ…お願いだから…!私は、あなたが居ないとダメなの!あなたがそばに居なければ、何も出来ないただの女なのよ!そばに居てよ…!それが叶うのなら、私は何でもするから…』
カルゴ「……さて」
原因はわかった事だからな、禍霊夢の狂気、ちょちょいのちょいと取り除きましょうかね…。
何だか少し申し訳ない…。まさか霊夢がここまで俺のことを好きで居てくれてるなんて…幸せだ。霊夢の独占欲は強いが、そこをこれからどうにかしていけば…いいだろう。どうしようか。
カルゴ「…霊夢」
禍霊夢「!」
カルゴ「ずっとそばに居てやれなくてごめんな。でも…俺も、霊夢のこと…愛してるよ。おいで」
目の前でどうしてどうしてと呟いている禍霊夢に向かって、両手を広げる。今の俺は不老不死ではないので、もしもここで殺されたら一巻の終わりだが、俺は彼女の愛に賭けることにした。
禍霊夢「どぉして……うぅぅっ…どうして、封印出来ないのよぉ…ひっく…うっうぅっ…」
フラフラと歩み寄ってきた禍霊夢は、俺に自分の体重を預け寄りかかってくる。するとそんな風にボロボロと涙を流しながら泣き出してしまった。
カルゴ「『《狂気を操る程度の能力》、付与』。
それから『狂気の解除』。…ごめんな、霊夢…。優柔不断な俺を許してくれ…」
禍霊夢「うっ…うあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙っ…!!」
白い光に包まれ苦しそうな悲鳴を上げる禍霊夢。しかし、その光が収まるとそこには、いつも通り白と明るい紅の巫女服を纏い、文様などのない、綺麗な肌をした霊夢が、俺の腕の中に居た。
カルゴ「…霊夢。起きて」
霊夢「っ…私…何で─────…ハッ!!」
能力を付与したおかげで、この狂気の事は霊夢の記憶に残ったらしい。顔は青ざめ、焦り始める。
カルゴ「大丈夫?」
霊夢「あっ…え、と……私の方こそ、ごめんね…余計な迷惑かけちゃって……」
カルゴ「大丈夫だよ。霊夢が元に戻ってくれて、本当に良かった」
霊夢「でもっ…おかしくなった私、あなたの事を永遠に封印しようとして…」
カルゴ「それだけ独占欲が強いってことだろう?良いんだよ霊夢…気にしないで…」
霊夢「…うん…」
優しく諭すように言い彼女をそっと抱きしめる。
焦りや混乱のためか一瞬はピクリと反応したが、ゆっくりと俺の背中にも手を回して、俺たちは、荒れた境内でしばらくの間抱き合っていた。
カルゴ「気持ちは落ち着いた?」
創造神の能力で境内を修復した俺は、ゆっくりと抱擁を解きながら霊夢に話しかける。しかし彼女から返ってきた言葉は少し大人しめだった。
霊夢「少しはね。でも…」
カルゴ「『あなたを永遠に封印しようとしたとは自分でもビックリだ』って?」
霊夢「え、ええ…。でも…妖力を感じないあなたなんて、なんか不思議なものね」
カルゴ「そう?少し待ってて」
霊夢「…?」
やっぱり俺は、神なんて似合わない。力を使って思ったが、何でもかんでも思い通りになったら、この日常はきっと凄くつまらなくなってしまう。やはり、多少の不自由はあった方がいい。
『神である存在から吸血鬼という存在へ』
霊夢「あれっ、翼が…!?」
『魔力は鍛えた後の量と質だけ付与する』
『人間らしい心を付与し、闇を増幅させる』
『鍛えたあとの量と質の霊力を付与する』
『日光、流水、ニンニクへの耐性』
『神化する前の肉体に戻す』
『《深層心理まで読み通す程度の能力》の剥奪』
『時間停止の影響を受けない特性の会得』
『薬は効くが、それ以外は蓬莱人の能力を付与』
『複数の神の加護を一身に受ける』
『狂気を操れる特性の会得』
『《重力を操る程度の能力》付与』
諏訪子《エスカルゴ!よかった、また繋がった!てことは無事なんだね!無事なんだよね!》
神綺《ふふっ、安心したわ♪》
建御雷《やるな、器。いや、もう器じゃないか。
…これまた中途半端な存在になったなぁ…どんな立ち位置なんだ、これは…。神の眷属か?》
これで、元通りの俺だな。また頭の中がうるさくなったけれども、悪くない。楽しいしな。
…おっと、1つ忘れていた。
『《万物を創造し操る程度の能力》の剥奪』
カルゴ「…ただいま、霊夢♪」
霊夢「…?よくわかんないけどおかえり」
狂気が発現した霊夢を元に戻した俺は、美しくも楽しいこの幻想郷を、ただの1人の吸血鬼として生きていく事を改めて決意したのだった……。
それからしばらくして、俺を探しに行ったらしい霊愛が文の仕事場から帰宅。その際に、途中から霊麗と合流したらしく、揃っての帰宅だった。
事情を軽く説明すると目を剥いて驚いていたが、それでも何とか説き伏せ、無理くり納得させた。
狂気に支配されていた記憶が残っているからか、霊夢のデレは、いつもよりも激しいものだった。
☆圧倒的、間抜け────!!
これじゃあ敵に間抜けと呼ばれるのも仕方ない。
なんせ、詰めが甘い。
魔力に関しては量を設定しているのに、雷の方の力にはなんの制約もつけていない。
創造神化した時に雷の能力を付与して、創造神&雷神のようになっているのに、そこには何も設定していない。つまり雷だけは雷神級の力量に…!
まぁそれが無限になった所でスキマを好きなだけ開けるとかそれくらいしか変わらないのだが…。
わざわざ闇の力を入れたのはルーミアの為です。
ルーミアは彼の肉(闇)が大好物なので。
重力の能力を入れたのは、母からのプレゼントを大事にしたいという思いの表れ…かも?
次回、多分エロです。(霊夢じゃない)