サリエルを気絶させて、確実な勝利を収めた俺と妹紅は、その足で魔界観光へと赴いた。母さんと夢子とロリスとも街の中でバッタリ(嘘)出会い、妹紅と母さんの顔合わせまで果たした。
夢子はいつも通りにクールだったが、義妹であるロリスがやけに甘えてきたのが印象的だった。
妹紅なんかは母さんから俺の話を聞かされていたらしく、別れる頃には少しげんなりとしていた。
俺が妹と戯れている間に何をやっているのか…。後になって「お前の話聞かされたぞ」と言われた俺の身にもなってほしいものである。
いや、それ以前に、ただ単に恥ずかしい。
「お前の親バカは母親似なのか?」と言われた時は顔から火が出るかと思うほど顔が熱くなった。
俺の親バカは母さん似…ありえない話ではない。
というか俺はそんなに親バカなのだろうか。よく慧音にも言われるが、そんなに言うほどではないような気がする。
妹紅「ここまででいいよ」
カルゴ「そっか。じゃ、またな」
妹紅「ああ。今度は、お前にあの技を喰らわせてやりたいもんだ。手加減の必要が無いからな」
カルゴ「楽しみにしてる」
異変解決をした日の夜、魔界観光を終え、竹林の入口まで妹紅を送りそこで別れた俺は、真っ直ぐ永遠亭に向かう。
カルゴ「ただい…ん?」
玄関に霊愛の靴がある。昼間遊びに来る事は多々あれど、夜に遊びに来るなど、俺の知る限りでは初めての事だ。父としては、夜遊びは大概にしてほしい…というかやめてほしいものだ。
カルゴ「よう、霊愛」
霊愛「あ、やっと来た。解決するまで意外と時間かかったんだね。…いや、遊んでたのかな?」
自室に入ると、巫月と霊愛が何か話している姿が目に入った。何の話をしていたのかは俺にもよく聞こえなかった。娘にもプライバシーがあろう、余計な詮索はしないのが吉だ。
…ノックや声掛けをしないのは、自室だからだ。永遠亭に巫月の部屋は無い。巫月は、常日頃から俺の部屋でまったりと過ごしている。
カルゴ「妹紅に魔界を案内してたんだよ。霊愛はなんでこんな夜にここに居るんだ?」
霊愛「お父さんが帰ってくるの待ってたんだよ。博麗神社にお父さん宛に矢文が届いてたからさ、それ持ってきたんだ」
カルゴ「矢文とか古典かよ。中見た?」
霊愛から矢と文を受け取りながら、そう訊ねる。
矢から解かれているので、高い確率で手紙の中を見られていることだろう。
霊愛「私は見てないけどお母さんがね。それ見て顔色変えてたよ。よく分からないけどドンマイ」
カルゴ「俺宛の手紙見るのか…今度、説教だな」
霊愛「説教というか触り合いでしょ」
カルゴ「そうとも言う」
巫月「また霊夢さんとなの?私とも触り合いっこしようよ?」
カルゴ「会う度にしてるだろうに」
巫月「えへへっ♪」
霊愛「…妹が居るのによくデレ発言出来るね…」
巫月「別に、誰が居ようと関係ないよ?私は私の思ってることをそのまま言うだけだから」
時と場合にもよるだろうが、巫月はそんな事全く考えていなさそうだな。ま、俺もだけどな。
カルゴ「そうだな。本音を溜め込んでも自分には毒になるだけだ。で、本音を聞いただけでその人から離れる奴がいりゃ、所詮はその程度の奴だ。本音で向き合える奴とだけ付き合うようにな」
巫月「うん。…その『付き合う』ってあくまでも
『人付き合い』の意味だよね?恋愛的な付き合いなんて絶対にしないからね?私にはエスカルゴが居るし」
霊愛「それも…そうかも。本音って大事だよね。あと手紙見ないの?」
カルゴ「今見る」
手紙の中身は、達筆な文字でこう書かれている。
吸血鬼のエスカルゴ・スカーレットさんへ
妹の夢月がお世話になったようね。夢月は何故かあなたを認めているようだけど、私の妹が簡単に負けるなんて信じられないわ。私と戦いなさい。それで勝てたなら認めてあげてもいいわ。でも、下手したらあなたの事なんて殺しちゃうかもね♡
妹に近づく虫は容赦なく葬り去るから♡
あなたを探しに外に行かせてみたら「近くにある神社からあの人の妖気を強く感じた」って夢月が言っていたから、神社にこの矢文を届けたわ。
私たちは夢幻世界に居るからあなたが来なさい。
こちらへ来る方法は巫女が知っているでしょう。
来なかった時はそっちの世界を破壊しちゃうからそのつもりでいてね♡
幻月より
カルゴ「なんとも素敵な宣戦布告。嬉しいね」
巫月「ハートが好きなのかな」
霊愛「イタイ」
カルゴ「言うな」
えー何これ、面倒くさー…近付いたんじゃなくて向こうから近付いてきたんだけどなぁ。サリエルとの契約だったらしいが…。
もしかして、幻月ってシスコンなのかな。まぁ、幻月を倒せばそれでOKなんだろ?もしそれなら明日の朝、行き方聞きに博麗神社に行こうかな。
今日はもうね…夜だから寝たいね。吸血鬼なのに夜に寝るなんておかしな話…ってうるせーやい。
霊愛「夢幻世界なんて聞いた事ないけど」
巫月「永琳先生なら知ってるかな?」
カルゴ「流石に知らなさそう。じゃー霊愛、今日はもう帰りなさい。明日の朝神社に行くって、霊夢にも伝えておいてくれ」
霊愛「送ってって。外寒いから」
カルゴ「………なら今ここで霊夢に言うか」
畳に胡座をかいたまま、目の前にスキマを開く。
見える景色は霊夢の背中だ。
カルゴ「よっ、霊夢」
声をかけるとビクリと肩を大きく震わせた。
霊夢「びっくりした…。どうしたの?」
カルゴ「手紙見た。夢幻世界ってのはどーやって行くのかわかるか?」
霊夢「ええ、さっきわかったわ。霊愛をそっちに行かせてから納屋の資料漁ってみたの。これも、先々代の巫女が行ったみたいね」
カルゴ「先々代も中々の活躍してるなー」
霊夢「私には劣るわ。…行き方としては、裏山に湖があって、夢幻館っていう舘があって…そこが夢幻世界との境になっているらしいわ。あ、でもちゃんとした行き方が載ってる訳じゃないか…。これくらいしか載ってなかったわ」
カルゴ「ほーん…中々面白そうだ。でも湖なんて裏山にあったか?」
霊夢「行ったことがないから私はわからないわ」
カルゴ「霊夢でも分からないのか。…明日もまたちょっとした冒険になりそうだぜ」
霊夢「明日は魔理沙の所行く予定なのよねー…。でもこっちも行ってみたい…」
カルゴ「じゃ、俺が邪魔者をボコしてくるから、今度2人で夢幻世界?とやらに遊びに行こーぜ?明日は俺が下見するってことでさ」
霊夢「うーん……まぁあんたなら心配は無いか。面倒事は任せるわ」
カルゴ「アイアイサー。ほれ霊愛、スキマだぜ」
霊愛「うん。またね。あ、靴取らなきゃ…」
カルゴ「スキマでそっちに送った」
霊愛「お父さんの割に気が利くね。ありがと」
カルゴ「俺は多分気が利くぞ。んじゃな、霊夢」
霊夢「ええ。でもこっち来たら声掛けなさいよ」
カルゴ「言われなくとも」
霊夢「それならいいわ」
スキマ越しにそんな会話をし、スキマを閉じた。
霊愛も居なくなり部屋に束の間の静寂が訪れる。
巫月「よーし、エスカルゴも来たし、もう一緒に寝ちゃおっ♪」
カルゴ「風呂入らせてくれ…あとご飯もまだだ。というか鈴仙は…?」
巫月「今月のお月見の準備」
カルゴ「なるほど。じゃ風呂行ってくる」
巫月「私も入る!背中流してあげるね♡」
カルゴ「お、マジ?それじゃお言葉に甘えて♪」
そしてその後、長女の成長具合を思い知らされた俺であった─────。