会場に行くと、壇上に姉ちゃんが立っているのがまず1番に俺の目を引いた。手にマイクを持っており、何か演説しているらしかった。姉ちゃんの顔は赤くなっていて、いつも冷静なのに対し今はテンションが上がっているように見える。もしや酒を飲んだのだろうか。
アリス「噂をすれば本人が来たわ!エスカルゴ、ちょっとこっちにいらっしゃい!」
カルゴ「はぁ…?」
首を傾げつつも、周りをキョロキョロと見ながら壇上に向かう。客の視線は俺に固定されていて、知らず知らずのうちに、心臓がドクドク高鳴る。
フランもレミリアも咲夜さんも、ちゃんと会場に居て、レイチェルはレミリアと何か話している。妖夢は疲れた顔で幽々子さんの元に戻っており、夢子も母さんの元に戻っていた。従者らしい。
そして、道中、通路の近くのテーブルで七面鳥を食べている霊夢に、この状況を訊ねる。
霊夢「アリスから、何か発表があるんだってさ。早く行って、気になるから」
カルゴ「お、おう…」
もう察した。この後の全員の反応も。
カルゴ「何さ。…姉ちゃん」
ニコッと微笑んだ姉ちゃんは、マイクで叫ぶ。
アリス「そう!幻想郷でモッテモテのこの男は、私の弟だったのよぉぉぉぉっっ!!!」
キーン、と耳障りな音が会場に響く。しかしそれ以上の声で、参加者たちが驚きの声を漏らす。
参加者「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっっっ!??!?」
マイクの声量を超える音量で叫ぶ参加者の反応を見た姉ちゃんは満足気にドヤ顔をする。これまで見たことの無いほどの、最高のドヤ顔だ。
霊夢「どういう事!?エスカルゴは元人間よ!?まさかあんたも元人間で、幻想入りしてきたってそう言いたいワケ!?」
両手に骨付きチキンを持って叫ぶ霊夢。
アリス「それは違うわ。私は魔界人から魔法使いに変わった。そう、私は魔界神神綺の子なの!」
ニコニコとした屈託の無い笑顔で頷く母さん。
アリス「そして!エスカルゴもまた魔界神神綺の息子となったの!つまり私たちは姉弟よっ!!」
そこまで言い切ると、何故か静まり返った会場。
しかし、やはり霊夢が、誰よりも先に口を開く。
霊夢「そういう意味!?姉弟って義理って事!?ビックリさせんじゃないわ!割と本気でビビったじゃない!!」
アリス「何とでも言うがいいわ!義理とはいえど姉弟、あなた達には芽生え得ない絆が私たちにはあるのよっ!姉弟にしか芽生えない絆がね!」
霊夢「フンッ!それじゃーその絆とやらを見せてもらおーじゃないの!」
完全に酔ってるよ霊夢も姉ちゃんも…あーあ…。
アリス「勿論、見せてあげるわ!エスカルゴ!」
カルゴ「ん?────ッ!?」
何気なく、自然体で振り向くと、姉ちゃんがその柔らかな唇を、俺の唇へと強く押し付けてきた。ほんのり酒の匂いがする。
霊夢「ちょっ…!?」
魔理沙「うおっ…マジかアリス…」
神綺「まぁ♡」
ロリス「わぁ…♡」
唇を離した姉ちゃんは、再びマイクで叫ぶ。
アリス「どう!?これが仲良しのチューよ!!」
霊夢「アリスゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!」
アリス「何か文句ある!?」
文句しかないと思う。
霊夢「何で恋人でもないあんたがキスなんてしてそんなドヤ顔して@☆↑¥〆∀♀♂*♡〒!?」
アリス「何を言ってるのかわかんないわよー?」
霊夢「だぁかぁらぁ!何で&@#*⑨◀★!?」
アリス「?」
霊愛「完全に酔っ払ってるから、気にしないで!外で夜風に当ててくるから!!」
と、霊愛が叫んで、霊麗と2人で霊夢を引っ張り会場の外へ連れていった。らしくないが、最強であると信じている母親がこれ以上キャラ崩壊する様を見たくない、または見せたくないのだろう。
アリス「えーっと…とりあえず私からは以上よ!次は私の可愛い弟から発表があるみたいよ!皆、心して聞くのよっ!!」
カルゴ「はいぃぃ!?どゆことよ!?」
すると、俺にマイクを渡すと同時に、ボソボソと耳打ちをする姉ちゃん。
アリス「さっきお母さんから聞いたわ。あの悪魔2人も自分のモノにしたんですってね?その事、黙ってていいのかしら?」
カルゴ「あぅ…」
アリス「じゃ、パーティー楽しませてもらうわ。あなたは頑張ってね♪」
カルゴ「ちっ…。ったく、姉ちゃんってばよ…」
だが次は俺の発表だと姉ちゃんが知らせたお陰で全員の視線が俺に集まっている。…いいや、馬鹿息子は父ではなく主を真っ直ぐ見ている。まぁ、いいだろう。馬鹿ではあるが、妖舞の忠誠心には素晴らしいものがある。下心が無ければ最高だ。
後は、鳥獣伎楽のライブのように、ノリと勢いで何とかするしかあるまい。
カルゴ「えーっと…何だろな…。沢山あるから、聞き漏らさずに聞いててくれ」
手前のテーブルでは、フランが笑顔で頷いているのが目に入る。癒される。
カルゴ「まずは、姉ちゃんの発表の延長だ!今、この会場にいる魔界のアリスは俺の妹だ!だからみんな、仲良くしてくれ!!」
はーい、と会場のどこかで声が上がった。誰かと見てみれば既にロリスと仲良くしている巫月だ。巫月なら大丈夫。喧嘩する心配は無い。
カルゴ「もう1つ!」
某芸人の「トゥース!」のように人差し指を上に向けてそう叫び、スキマを開く。するとステージ上に、ピザを持ったまま夢幻姉妹が落ちてきた。
幻月「きゃっ!今ピザ食べてるんだけど!?」
夢月「わわっ…」
カルゴ「翼のある方が幻月、メイドの方が夢月!見た目は天使だが種族は悪魔!この2人も先日、俺の女になったーーーッ!!」
酒無しで酒有りのときのようなテンションを出すのは限りなく難しく、恥ずかしい。
妹紅「はぁ!?おい待てよ、何でお前それをOKしたんだ!?流石のお前でも、そいつらは断れるだろう!?幻月の方は知らんが!」
慧音「妹紅、夢月とやらの方は知ってるのか?」
妹紅「ああ、この前の異変解決の時に────」
カルゴ「妹紅の言う事は正しい!だが馬鹿で甘いのが、そう!この俺!夢月のめちゃくちゃだった告白にもOKしちまった!!だが!!幻月には俺から告ったァァァァァァァ!!!!!」
マイクに向かってそう絶叫すると、へカーティアたちは耳を塞ぎ、レミリアをはじめとするフランより後から俺に告白したメンバーは、凡そ乙女の顔とは呼べぬほどの驚きの表情を浮かべ、初めて俺から告白しようとしたフランは「おぉー!」と言わんばかりに笑顔で手を叩いている。
妖忌は…平静を装っているが、こめかみに青筋が浮かんでいるのを隠しきれていない。
幻月「…何もさ、マイクあるんだからそんな大声出さなくてもいいんじゃないの…?///」
夢月「あはは…。ホントにこんなに居たんだね、部屋いっぱいじゃん…」
口元についた赤いケチャップを紙ナプキンで拭き取って、クシャッと丸めてポケットに突っ込む。照れて俯く幻月が可愛い。
鈴仙「で、でもさ!その2人とはこの前出会ったばかりなんでしょ!?」
ステージの下で鈴仙が声を張り上げる。
カルゴ「そのとぉぉぉり!!」
鈴仙「その日のうちにって事!?一目惚れ!?」
カルゴ「察しがいいな鈴仙!そのとーりだ!!」
鈴仙「へ〜…あなたから告白するなんて、何だか不思議な感じがする…」
私と同じ気持ちになったのかなぁ、とでも考えているのだろうか、鈴仙の顔が少し明るくなった。
同じ境遇だからこそわかることがある。…まぁ、俺のこれも一目惚れだから、間違ってはいない。
カルゴ「質問カモン!答えてやるYo!」
疾風…いや、音速の如き圧倒的速さで手を上げるのは、文花帖を取り出しペンを持つ文、新聞記者見習いの穹だ。
カルゴ「どーぞあやや!!」
文「吸血鬼も悪魔の一部とは過去にレミリアさんから聞いた事がありますが、そちらのお2人は、本物の悪魔という事でしょうか!?」
カルゴ「イエス!!!」
文「酷く禍々しい力を感じますが、そこは大丈夫なのでしょうか!?それと幻想郷では見掛けない方々ですが、出身地はどこでしょう!?幻想郷のルールについてのご理解はあるのでしょうか!?主にスペルカードルールについてです!何故か、嫌な予感しかしないのですが!!」
超早口で矢継ぎ早に質問してくる文。母上に先に言われてしまった、と言わんばかりに、穹の顔は苦虫を噛み潰したような顔になる。
カルゴ「禍々しいけど大丈夫!いざとなれば俺が鎮める!出身地は夢幻世界!それについてはまた後で!ルールについては話してあるが、あんまり乗り気じゃないから挑戦するな!館が消える!」
レミィ「何ですって!?ちょっとみんな、絶対にあの2人に挑戦するんじゃないわよ!!!」
館が消えると聞き、家主レミリアは叫ぶ。これは脅しではない。先日戦ったあの場所は特殊な防備か何かあったのだろうが、ここには無い。つまり壊れる可能性が多分にあるわけである。
そして俺の答えを聞いた文は急いでメモをとる。
その隙に、質問を思いついたらしい穹は再び手を上げる。
穹「父上が人間だった頃のクリスマスは、どのように過ごされたのでしょうか!?」
カルゴ「Single Hell, Single Hell, Single Always♪
…こんな感じだーッ!!」
ジングルベルジングルベル鈴が鳴る〜、のようなリズムで適当に歌い上げる。
レミィ「…ボッチだったのね…」
みすちー「次のライブで、その歌の続きを歌ってくれませんか?」
カルゴ「恥ずかしっ!?」
恥じることは無いぜー!!と魔理沙が冷やかす。
全く、人の気も知らずに…。まぁ、1人ゲームも楽しかったので大して文句はないのだが。
カルゴ「俺からは以上だ!…悪いな、2人とも。戻ってくれて大丈夫だぞ」
幻月「これからは急に呼び出さないでよね、そこそこビックリするから」
夢月「私は大丈夫だけどね」
カルゴ「はは…」
夢幻姉妹に続いて俺も壇上から降り、レミリアにマイクを返却。
レーテ「ねーねおとーしゃま!きょう、ほんとにサンタさんくるの!?」
カルゴ「そーだな、レイチェルは良い子にしてたからちゃんと来ると思うぞ。だが、靴下の準備は終わってるのかな?」
レーテ「うん!ばとみんとんするの!」
カルゴ「バドミントン、だぞ。」
レーテ「えへへー、そーだった!」
レミリアがスポーツ関連の漫画を読んでいる時、レイチェルはバドミントンに興味を示したのだ。故に彼女のプレゼントはバドミントン道具一式。吸血鬼の力に耐えられる道具を創るのは、本当に苦労した。母さんの手伝い無しには、絶対に実現不可能だっただろう。
…だが、やはり11人も子供が居れば、頭を悩ます願いだってある。俺は、「欲しいものが無いならどうすればいいかな?」という問に対し、「七夕みたいに願い事でも書けばどうだ?」と返した。だがそれが良くなかった。
巫月と弦月姫…それから、ロリスだ。ファザコン姉妹と妹が、とにかく暴走してしまった。
その点、妖舞の願いは簡単なようで少し難しい。
カルゴ「なぁさとり…今こうしてる間も子供らの願いは変わってないのか…?」
オレンジジュース片手に、さとりたち地霊殿組のところへ行くなり、そう問うてみる。
さとり「全く変化ありません。あなたと同じく、自分に忠実な子供たちですからね。良くも悪くも
『我が強い』。これですね」
カルゴ「はあぁ〜……今年は少し憂鬱だな……。来年に期待するか…」
さとり「ふふっ、来年の方が大変なのでは?」
カルゴ「くぅ……」
巫月……父との交わり
霊愛……特に無し
穹………技術
弦月姫…父との少し進んだ関係
妖舞……強さ
霊麗……外の服
茜………不明
樹里愛…自由
レーテ…バドミントン道具一式
ここあ…特に無し
シガー…特に無し
ロリス…兄からのキス
カルゴ「…これで合ってるんだよな?まともなのレイチェルだけじゃねーか」
特に無し、が一番困るんだがな…。後日、団子や何かのお菓子でも買ってあげればいいかな?
さとり「ええ、間違いないです。ただお空のは…叶えてあげたいですが、難しいですね…」
カルゴ「お空?どんな願い?」
さとり「サンタさんに会いたい、と……」
カルゴ「めっちゃお空らしくていいな」
さとり「そうなんです。良い子にしていたので、叶えてあげたいんですが…」
カルゴ「うむむ…」
さとり「ところであの2人は…?ブン屋もさっき言っていましたが、酷く禍々しいですね?本当にここに居させても大丈夫なのでしょうか?」
カルゴ「あっ、そうだ!何考えてるかわかるか?幻月…翼のある方!」
さとり「あなたから言った方ですね。あちらは、隙あらばあなたを襲おうとしていますよ。まぁ、用心して下さい」
カルゴ「どっちの意味で?」
さとり「意味深な方で」
カルゴ「マジか」
さとり「あなたに興味津々なんですね、あの人。独占欲が欠如しているのがせめてもの救いです。もし彼女が霊夢さん並の独占欲に目覚めたら……その時はとんでもないことになるでしょうね」
カルゴ「そんな事はさせないから安心しろって」
さとり「今の所はそんな予兆は無いですからね、一応は安心して良いでしょう。……あ、お母様がこちらに来ますから一旦失礼しますね」
カルゴ「おーよ」
くるりと背を向けると、お空とお燐の間に戻ったさとり。こいしはまたどこかに行ったらしいが…どこに行ったのだろう。ある意味、夢幻姉妹より危ないかもしれない。
神綺「カルちゃんちょっと助けて!大きいアリスちゃんがね、ベロベロに酔っ払っちゃって…」
アリス「酔ってないわよぉ〜おかぁさぁん…」
こちらに来た母さんは、酔った姉ちゃんを背負いヒィヒィ言っていた。弟…息子の出番らしい。
カルゴ「わかった、部屋で寝かせてくる」
神綺「ごめんね、よろしくね……。小さいアリスちゃんのお願い、あの子に見てもらったの?赤い目玉があるあの子…」
俺に姉ちゃんを背負わせながら、訊ねる。重くはないが軽くもない。姉ちゃんの上海は、今は娘の元に戻った俺の上海蓬莱と喋っている。可愛い。
カルゴ「うん。…どーしよ母さん、アリスの願い知ってるでしょ?」
神綺「叶えてあげて?思いっきり甘えたいのよ、アリスちゃんも。大きいアリスちゃんが、小さいアリスちゃんに教えたのよ、そういうふうに」
カルゴ「うへぇ…」
アリス「…酔ってないよぉ〜〜……」
カルゴ「とっ、とりあえず姉ちゃん置いてくる!母さんはパーティー楽しんでて!」
神綺「ええ、そうさせてもらうわ」
ガヤガヤと騒がしいパーティー会場を後にする。
主賓ではないがハーレムの中心にいる俺ゆえに、あまりみんなには見られたくなかった。しかし、そこからスキマで離れる俺を見逃さなかった者が数人、その会場にはいた。
諏訪子「ふっふふ…とうとうこの時がきたー!」