※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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人気者ゆえに…

早苗「…というワケで、我々守矢神社の神々にはそれはそれは素晴らしい御利益があるのです!!定まりかけてしまった、来年の『大凶作』という運命を、今こそ神を信仰して乗り越える時です!心から信仰すれば、必ずや神はその手を差し伸べ人々に救いを与えて下さいます!」

 

ある日、早苗はいつもの様に、人里に布教活動に来ていた。守矢神社跡取り兼風祝見習いの身である樹里愛は、そばでそんな母の様子を見ている。戦闘やサポートなどで、何か凸出した才能があるわけではない樹里愛だが、風祝になる為の特訓は地道にこなしていた。

布教活動を見るのも大事な特訓である。…まぁ、そばに小さい自律人形、蓬莱人形が居るのだが。蓬莱は彼女の大事な話し相手であって、父からの借り物である。

そしてそんな人形が、食い入るように布教中の母を見つめる樹里愛に声を掛ける。目立たぬよう、あくまでも小声で。

 

蓬莱「ジュリア、ココカラハナレテ! カエロウ!」

 

樹里愛「なんで?」

 

蓬莱「ウシロ、キケン! キケン!」

 

樹里愛「え────」

 

樹里愛が振り向いた瞬間に、口に布を噛まされ、身体の両脇にあった手は後ろでロープで結ばれ、彼女の身体はフワリと浮かび上がる。

神と吸血鬼の子ですら反応出来ぬほどのあまりに迅速な行動…。そう、1人による誘拐ではない。複数犯による行動である。人間とて誘拐の対象が何なのかは承知している。

 

樹里愛「ん゙ーっ!ん゙ん゙ーーーーっ!!!」

 

抱え上げられて運ばれる樹里愛は叫ぶが、声にもならぬ呻き声がほんの僅かに漏れただけだって。人混みに紛れ、誘拐犯は立ち去ろうとする。

 

蓬莱「ニン、ゲン…!」

 

蓬莱は考えた。自分がここで弾幕を発射して樹里愛を助けることは容易である。しかし、こちらはたかが人形1体。人間に簡単に捕まってしまう。

それに、相手は複数だ。蓬莱の中のエネルギーが先に尽きてしまわないとも限らないのである。

故に蓬莱の出した結論は「助けを呼びに行く」。

とはいえ、早苗は布教活動中。何年も守矢神社で生活していた蓬莱には、布教が何より大事である事はよくわかっていた。しかしながら、周囲には他に頼れる者は誰一人として居ない。

そこで蓬莱は、連れ去られた樹里愛を尾行して、行き先を特定し、それを上海人形に…つまりその持ち主である、樹里愛の父親に伝えようとした。

25日朝に、自分たち人形の創造主であるアリス・

マーガトロイドにより通信機能も備わっていた。

今こそそれを活用する機会である。

しかし行き先の特定より先に、背後をついて行く私に気付いた人間が居た。

 

里人「おいおいぃ?何で人形が、フヨフヨ浮いて俺らについてくるんだぁ?」

 

蓬莱「ホラッ……」

 

抜かった。蓬莱は柔らかな笑みを浮かべつつも、内心では酷く動揺していた。自分の容姿を、全く考えていなかった。人形が浮いて自律行動をするのは、人里では普通ではない。それでなくとも、西洋らしい見た目の蓬莱は目立つ存在なのだ。

 

里人「もしかして俺らの行き先を知ろうとしてたワケじゃあねぇだろうなぁ?」

 

取り巻きの1人が言う。そして、蓬莱を捕まえて投げ飛ばそうとするかのように、手を伸ばす者が出てくるが、他でもない樹里愛を抱えている男が他の男たちに声を掛ける。

 

里人「その人形この娘のだよ。どーせアレだろ?ご主人様のピンチだーつってよ、ついてきただけじゃね?おそばに居させて下さい〜ってよ」

 

声真似にもなっていない、気味の悪い中途半端な裏声でそう喋る。否定したかったが折角良い方に勘違いしてくれたのだ。蓬莱はノることにした。

 

蓬莱「ソーダヨッ! ワタシモツレテッテ!」

 

顔を合わせどうしようかと目で話し合う男たち。

そして、たかが人形と判断したか、蓬莱の同行を許可したのだった。蓬莱は、常に樹里愛のそばについていた。当の樹里愛は恐怖で体が凍りつき、怯えた目で周囲を見ている。

 

蓬莱「…ドコイクノ?」

 

樹里愛を抱える男に問う。この男は比較的情報を引き出しやすいと蓬莱は判断した。それは先程の蓬莱を庇うような発言からくる結論だった。

 

里人「自警団の牢屋にこの娘をぶち込む。あぁ、お前のこともだけどな」

 

蓬莱「ジケーダン、コッチジャナイ」

 

里人「へぇ、里の地理も把握してるか。賢いな。だが甘い。真正面から堂々と行くか?」

 

蓬莱「……イカナイネ」

 

里人「そう。俺らも自警団に所属してはいるが、後から自警団に来たコイツのオヤジが次々と功績を残すのが気に食わねーのさ」

 

蓬莱「ヨーカイタイジハ、ニンゲンニハムズカシイ。…ショーガナイヨ」

 

里人「どうやらお前は人間寄りらしいな。だが、安心しろ。この娘は、守矢神社の巫女が来たら、すぐに解放してやる。お前もな」

 

蓬莱「ドーユーコト? サナエ、アソコイカナイ…」

 

巫女じゃなくて風祝だ、のツッコミを言いそうになるが、必死に堪えた蓬莱。

 

里人「だから、この娘を人質にして呼ぶんだよ。手紙はもうじき届く頃だ。俺らは、全て計算ずくなんだよ」

 

蓬莱「…サナエニ、ナニスルノ?」

 

里人「そこは、お前は知らなくていい。あとな、この行動は自警団の中でも下っ端のみの、独断で行われたものだ。お上にすら見つかったらやべぇっていう、まさに綱渡りなんだ」

 

得意げにそう話すその男に同調して、取り巻きもアレコレ話し出す。

 

里人「お上ァホントおっかねーよな。退魔師とか祓魔師とかよ、そんなのもゴロゴロと居るしよ。しかも頭の硬ぇヤツだし」

 

里人「だが、お上はお上で犯罪に手を染めているっていう話も聞いた事あんぜ」

 

里人「あーそれなー。んでも、前にこっそり張り込んでみたが、なぁんも動き見せなかったなー」

 

そんな話をしている内に、自警団の建物が見えてきた。当然、正面からは行かない。裏口からだ。

 

里人「俺ら普通の人間より、退魔師などの連中は多少頭がキレる。俺らみてーな下っ端には、全く悟らせねぇだろうさ」

 

里人「ケヘヘッ、自警団に入っててまともな奴はコイツのオヤジと元寺子屋の教師とその友人だけってか?おかしな話だぜ」

 

里人「いやいや、コイツのオヤジはぜってー頭のネジぶっ飛んでるっての!女を取っかえ引っ変えしやがって、ホントムカつくぜ!妖怪なら、里の外で遊んでこいっつーの!」

 

里人「外って妖怪の領域だろ?料理とかそういう文化が発達してねぇんじゃねーの?」

 

里人「ぶははっ、妖怪ってかわいそーだな!何の為に生きてんの?って感じだぜ、ははははは!」

 

里人「俺らの方が、よっぽど楽しく生きてるぜ!はっははははは………は?」

 

自警団の建物の裏口に到着した蓬莱はホッと胸を撫で下ろした。脳内通信改め、思念通信が上手くいったことによって、樹里愛の父親がその裏口にスタンバっていた。

 

 

 

 

 

博麗姉妹に続いて樹里愛か…なかなかどうして、里は俺を歓迎してくれるようだ。

 

カルゴ「娘を抱えてどうしたんだ、お前ら」

 

里人「えっ…エ、エスカルゴさんこそ、どうして裏口なんかに…?」

 

カルゴ「質問に答えろクズが。どうしたんだって聞いてんだよ俺は」

 

すると、樹里愛を抱えている男が顔色一つ変えず答え始めた。

 

里人「里の巡回中にとある空き家を見たところ、悪党共が娘さんを縛り襲おうとしていたのです。我々はそれを助けて、母上様の布教活動が終わるまでこの自警団の建物にて保護しようとここまで連れてきた次第にございます」

 

なるほど、蓬莱から聞いた通りそこまで馬鹿では無いのかもしれない。だがやはり馬鹿だ。

 

カルゴ「解せねぇ。悪党はどこに行った?まさかこれだけの人数が居ながら、悪党に逃げられたとは言わないよな?」

 

里人「はっ。既に他の者が悪党を捕縛し、牢屋に入れています。父上様が来られたならばもう安心でしょう、娘さんはお返し致します」

 

カルゴ「フン」

 

縛られたままの樹里愛を受け取り、もう一度その男たちを一瞥する。

 

カルゴ「──────娘を返せば許してもらえるとでも思ったか?」

 

里人「何を───ごぶぉっ!?」

 

鬼に匹敵する拳圧で空気を殴り、風圧で男の腹に大穴を開ける。他の男は逃げようとするが同じく拳を入れていく。しかし殺しはしない。

 

カルゴ「あぁ、脆い脆い。人間って脆いな。治癒『範囲完全回復(ベホマズン)』」

 

5、6人の男たちを全員、完全に回復させる。

普段は「治癒『味方完全回復(ベホマズン)』」だが、魔法式を少し弄り特定範囲にのみ効果が及ぶようにした。

 

里人「ぐっ………何を為さるのですか…我々は、娘さんを助けたのですよ……!?」

 

カルゴ「ふむ。尚も嘘をつくか。これを見ろ」

 

小さめのスキマを作りそれを見せる。その景色は牢屋。しかし牢屋には誰も居ない。

 

里人「─────……」

 

カルゴ「『悪党を捕縛し、牢屋に入れています』だと?お前さっき断言したよな?なぁ?何で牢に誰も居ねぇんだよ?おかしいよなぁ?」

 

里人「そっ、それ、は………と、逃亡したものと思われ────」

 

カルゴ「どこからだ?この塀は、ハシゴ無しには登れないようなツルツルした木材だ。そして犯罪者の逃亡防止のために、自警団の建物にハシゴは無い。表は人通りが多くて、到底、犯罪者なんか逃げられっこないよな。裏口は俺が居た。なぁ?屋内に留まろうと、犯罪者を入れたら看守がつくから、逃げても無駄だ。…もう詰んでるんだよ、いい加減にしろや。悪足掻きすんな」

 

里人「〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

カルゴ「ダンマリか。まぁいい」

 

里人達(ホッ…)

 

カルゴ「牢屋にでもぶち込んでおくか」

 

里人達「え?う、うわああああああああっ!!」

 

足元、もしくはへたり込んでいた地面にスキマを開かれ、男たちは落下する。落ちた先は牢屋。

犯罪者を拘束する、鉄格子の壁に囲まれた監獄。

そして、天井にスキマを開いたまま声を掛ける。

 

カルゴ「『今日も人里は平和だった』…そう報告しておくよ」

 

自警団に所属しているゆえにそれの意味する所がわかったのだろう、中の男たちは途端にその顔を青ざめさせて慌てる。

 

里人「おっ、お許しを…!どうかそれだけは…」

 

カルゴ「何か言った?虫の声とか聞こえなーい。せいぜい苦しんで死ぬがいいさ。じゃあな」

 

『今日も人里は平和だった』…つまりその言葉の通り、犯罪者は居なかった、という意味だ。だがこの言葉は『牢屋には誰も居ないぞ』という裏の意味もある。

犯罪者が居れば牢屋に入れる。だが、牢屋に誰も居ないのなら、自警団の連中は見回りもしない。当然、掃除すらしない。

ヤツらに与えられた結末は餓死のみ。せいぜい、死なないように醜く共食いでもしているがいい。

 

カルゴ「大丈夫か、樹里愛?」

 

樹里愛「ぷはっ…ありがと、お父さんっ…!」

 

縄を解かれた樹里愛は、霊愛たちと同じように、父親に抱きつく。以前、鴉天狗に誘拐された時もこのような状況だったのだろうか。

…それにしても、顔見知りである自警団の連中がこんな行為に及ぶとは、にわかには到底信じられるものでは無かった。

 

カルゴ「樹里愛。俺と妖舞、妖忌以外はお前らに触れなくする結界魔法を開発中だ。それまでは、あまり大っぴらに出歩くな。もう少し力をつけるまではな。さっきみたいに口を塞がれては、詠唱すら出来ないだろう?」

 

霖之助も触れるようにしても、大丈夫だろうか。

…………まぁ、霖之助ならばこんなアホなことはしないと思うが…。

 

樹里愛「わかった…。もう帰るね…」

 

カルゴ「スキマで送る。…蓬莱、よくやったぞ。おかげで樹里愛を助けられた」

 

蓬莱「ホラーイッ♪」

 

どうせ、早苗を呼び出してから「樹里愛を返して欲しければその身体を差し出せ」とか言って脅すつもりだったのだろう。

早苗は娘のためなら何でもする奴だ、下手すればその思惑にハマった…かもしれない。もしも仮にそうなれば、俺は理性を保てなかっただろう。

 

そして、とうとう不信感が爆発する日が来た…。








Q.人里にそこまで嫌悪感を抱くのは何故ですか?
A.俺が百合百合以外のエロ同人誌が大嫌いなのはご存じでしょうか?恐らくそれの影響でしょう。独占欲がおかしいくらい強いんですよ、俺。
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