夕方。人里にて、残虐非道な殺戮が始まった頃、妖怪の山にある守矢神社内では、ある異変が発生していた。
早苗「うっ……!?」
味噌汁を作っていた早苗は、味見に使用していた小皿をカランと取り落とし、その場に倒れ込む。居間で夕飯の完成を待っていた樹里愛は、その音を聞いて慌てて台所へ駆けてくる。
樹里愛「ママっ!どうしたのママ!?」
早苗「力が抜けて……立てなくなっちゃった…」
樹里愛「どこか痛いの!?お腹!?」
早苗「そうじゃなくて…」
樹里愛「あそこに行かなきゃ、あそこ!えっと、お医者さん居るところ!…永遠亭!」
早苗の腕を引っ張り永遠亭へ連れていこうとする樹里愛だが、他でもない早苗が手を振りほどく。
早苗「ううん、痛いとかじゃないから大丈夫…。ちょっと休めば治るから…。少し、クリスマスの疲れが出ただけかもしれないから…ふふっ……」
樹里愛「…本当に?」
早苗「ええ、大丈夫…」
樹里愛「そっか…なら良かった…」
しゅんとする娘に、笑いかけようと気を使う早苗だったが、その瞬間、別室で悲鳴が上がった。
諏訪子「うわああああああっ!?」
神奈子「うおおおおおおおっ!?」
この神社で祀っている2柱の、諏訪子と神奈子の悲鳴であった。
早苗「諏訪子様たちの様子…見てきて…」
樹里愛「わかった!」
未だ台所で座り込む母に頼まれ、樹里愛は神々の休んでいる部屋に急いで向かう。勢い良く開けた襖の向こうにあったのは、身体が半透明になった諏訪子と神奈子の姿だった。
樹里愛「諏訪子様、神奈子様!?どうしたのその身体!向こうが透けてる!!」
諏訪子「あわわわわ、どうしよう神奈子ぉ!?」
神奈子「一体何が起こっている!?信仰が著しく減少している…!?」
諏訪子「うわあああああ、下手したら外くらいになっちゃうんじゃないの!?」
神奈子「里で何が……うっ…!?」
諏訪子「どしたの神奈、子……あれ…?」
外の様子を確認しようとする神奈子だが、早苗と同じようにその場に倒れ込み、それを助けようとした諏訪子もまた、畳に倒れる。
樹里愛「神奈子様ぁ、諏訪子様ぁっ!」
諏訪子「あはは……おっかしーなー…。力が全然入らないよ…?」
樹里愛「何があったのっ!?」
神奈子「信仰心が減っている…。私たちはそれを糧に存在しているから、それが途絶えれば…消滅してしまう……!」
樹里愛「消滅っ!?」
消滅、つまり消えると聞き、樹里愛は悲痛な声を上げる。生まれてからずっと傍にいた存在が、今ここで消えようとしている。それは、樹里愛には到底受け入れられるものではなかった。
諏訪子「何で急にっ…!?こんなに信仰が揺らぐ事があるの…!?」
神奈子「樹里愛、早苗の様子を見てきなさい…!あの子も恐らく……」
樹里愛「ママも今、台所で倒れてて…!」
神奈子「何、だと…!?もしや…里で何かあったのか…!?」
諏訪子「うっそぉ…」
神奈子(どうする…こんな幼子に、何が起こっているかわからない人里の調査に行かせるわけにはいかない…!だが、早苗も今消滅の危機に…!)
諏訪子「あれ…?エスカルゴと話せないし…頭も覗けない…あれれ…?」
神奈子「私もだ諏訪子…神の力をほぼ失った…。力の次はこの身体…最早これまでか…!」
樹里愛「ヤダよぉ!消えちゃヤダぁ!神奈子様、諏訪子様ぁっ!!うわああぁぁぁんっ!!」
まだ幼い樹里愛は泣き叫び、その場でゴシゴシと強く目を擦るが、溢れる涙は止まらない。
諏訪子「樹里愛っ…エスカルゴ呼んできてっ…!今日は確か、文のとこだったはずだから…。近くだから、暗くても行けるでしょ…?」
樹里愛「う、ん…!行ってくる!行こ、蓬莱!」
常に自分の隣にいる蓬莱に声を掛けるが、蓬莱は首を横に振り、無機質な、けれどもどこか感情が篭もった声でこう告げる。
蓬莱「シャンハイニツタエタッ! エスカルゴニ、ジョーキョーツタエサセルッ!」
樹里愛「…だってさ!」
諏訪子「そっか…それなら安心、かな…?」
神奈子「そうか…。ならばせめて、最期は4人でお話でもしようじゃないか、樹里愛……。早苗を連れてきなさい…」
樹里愛「最期とか言わないで!絶対最期なんかにさせないからっ…!うっ、うぅぅ……!」
神奈子「わかったわかった…最期じゃないから…話し合いをしよう。だから…連れてきてくれ…」
樹里愛「ぐすっ……わかった、連れてくる…!」
涙を拭った樹里愛は、蓬莱と共に早苗を引っ張りに台所へと駆け出した。
カルゴ「さァて…残りはどこに隠れてるのかな?はあああァァァッ!!」
電力弾を発射し燃える建物を破壊する。攻撃力、破壊力を極めて高めてある弾幕なので、痺れる、痺れないの次元を遥かに超えている。
生身で喰らえば、焦げて灰となるほどだ。これを喰らってまともでいられるのは、特別な不導体を使用しているアリスの人形や、特別な肉体を持つ神、一定レベル以上の電力を操れる者、既にその肉体が滅びている、所謂霊と呼ばれる類の者だ。それに加え妖怪の中でも特に強靭な肉体を持つと言われている鬼、悪魔なども含まれる。
カルゴ「もう少し…もう少しだ…!完全にここをブチ壊す…!」
だが、思っているよりも里は広く、破壊するにも手間取っていた。破壊力があるとはいえこちらは4人のみ。今は4人がそれぞれ別行動だが、互いにすぐ連絡を取れるように、4人共屋根より高い位置に浮かんでいる。
上からだと動くものが見やすい。風に飛ばされる木片や紙も、メラメラと燃える火に照らされて、上から視認できる。
カルゴ「燃えろ…燃えろ…ッ!アッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」
360°火に囲まれている。それはまるで、失敗して大爆発を起こしたキャンプファイヤーのようだ。
カルゴ「燃え尽きろ、全て…!要るも要らぬも、全て俺の思い通りに……!」
傲慢に、自己中に、ワガママに…。嫌悪や苦手、不都合を全て消し去り理想の世界を作る。いや、作り変えると言った方が正しい。
俺には、イチから世界を作る力は無いのだから。
カルゴ「……そうか。そうだ…そうだよ……!」
ある事に気がついた俺は歪んだ笑みを浮かべる。
頂点には興味が無かった。だが頂点ではない故に人間に舐められた。かなりぶっ飛んでいてかなり現実味に欠けるが、その可能性も無くはない…のかもしれないと、己の考えを1人で正当化する。
逆に、「コイツが頂点だ」とわかっている者に、真っ向から逆らうものだろうか?
俺はそうは思わない。人間は圧倒的強者の前では無力。逆らう心すら、その存在を前にしただけで無残に砕かれる。
ならば、人間に楯突かれたのは己が弱かったからという事になる。認めたくはないがこれが現実。受け入れるしかない。
カルゴ「…強く…!」
つまり争いの起きなくなる程の力を手にしたいと俺は思い始めた。これが正しいかはわからない。だが少なくとも、俺の中では正しい。
たとえ俺が頂点に立ったとしても支配はしない。
「君臨すれども統治せず」。俺は、これを望む。
皮肉なことに、妖怪の賢者…紫や、博麗の巫女…霊夢と変わらないのだが。
だとすれば、俺が強く在れば…こんな事は起きず人間を殺さずとも済んだのではないか?…そんな疑念が、心の内に湧いてくる。
カルゴ「違うッ…!これはコイツら人間が始めた戦争だ…俺は売られた喧嘩を買っただけ…ッ!」
勢い良く首を振って、責任転嫁をして心に湧いた疑念を掻き消す。責任転嫁…そう、責任転嫁だ。もしくは、ただの正当化だ。
本当は、俺だってわかっているんだ。出来るなら人間とも争わずに暮らしていきたい、と。
けれど、わかっていても己を抑えきれなかった。愛する人、愛する娘などに手を出されて、無性に怒りが湧いてきた自分を。
だから気に入らぬ人間を滅ぼして、満足しようとこうも殺戮を繰り返してきた。言ってしまえば、これは自己満足のための殺戮だ。
償ったところで、決して許されるものでは無い。
そう、頭ではそこまでわかっている。だがもう、俺に後戻りはできない。後戻りは許されない。
だから、この歪んでしまった信念を貫く為にも、やりきらなくてはならない。
カルゴ「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッッ!!!」
今更襲ってきた罪悪感のようなものを振り払うが如く叫び、強力な電力弾を前に放つ。また何かの建物に当たって、火の手が増す。
カルゴ「完全に……全てを……!!融解『地上の人工太………」
上海「マッテ!」
カルゴ「!」
空に手を掲げてアークによる火球を作り出そうとした直後、背後から上海の無機質だが可愛らしい声が聞こえた。俺は詠唱をやめ、手を下ろして、後ろを向く。
カルゴ「…?確か霊夢のそばに居たはずだが…」
先程の博麗神社の倒壊に巻き込まれそうになった上海は、予め込められていた力でバリアを張り、傷1つ負っていなかった。神社を創造して霊夢を寝かせた際、見守るように傍についていたのだ。
上海「スワコ! カナコ! サナエ! キエチャウヨッ! モウヤメテ、モトニモドシテッ!」
カルゴ「…………え?」
諏訪子や神奈子様や早苗が消える?何故?ワケがわからない。だが頭を回す内にこの3人の共通点を見つけた。3人は八百万の神で、信仰心によりその存在を保っている。消えかけている…つまり信仰心が失われているからだ。
ならば何故その信仰心が失われる事態に陥った?
カルゴ「……嘘、だろ?なぁ……」
上海「ホントダヨ! ホーライカラ、レンラクキタノ! サンニン、タオレテルッテ!」
カルゴ「俺が…あの3人を消す事に……?早苗や諏訪子…神奈子様を………?」
いや、それだけじゃない。その他の八百万の神もそんな状況にあるというわけだ。幻想郷に住まう妖怪の大半は、神を信仰したりはしていないが、ほとんどの人間は神を信仰している。
そして、その人間は今、全滅に近い状態にある。
もうじき全滅するだろう。その時が、その神達の最期である。
幻月「ダ〜ぁリ〜ン♪」
夢月「ただいま〜」
純孤「ふふっ……」
各方面から、明るい笑顔を浮かべる幻月、夢月、それから黒い笑みを浮かべる純孤が戻ってきた。
幻月「見つかる限りは消し飛ばしたわ♪」
夢月「私も♪」
純孤「ええ…私も、エスカルゴ君の恨みをとくと思い知らせてやったわ………うふふふふっ…♪」
カルゴ「─────ッ!!」
彼女たちの言葉は、幻想郷に住まう人間の全滅を意味していた。
諏訪子や早苗が暴走する彼に声掛けをしなかったのは、「常に覗いてる訳では無いから」。異変に気付いてから声掛けをしなかったのは「それすら出来なかったから」。
少ないとはいえ人間達からの信仰心はありましたから、それが更に減れば消滅の危機に陥ります。
そして、神々は
気付いた彼は一体どうするのか……?
拙い文章力のせいで、狂った感じ>人への憎悪の構図が成り立たなくなってきているような…。
予想していたとはいえ、やはり賛否両論ですね。しかしこんな下手糞胸糞鬱展開でもお気に入りが1しか減ってないという事は、“否”の意見を持つ方も、見届けて下さる予定…という事ですかね。
もしもそうなら、とてもありがたいです。途中で読むのを辞められるのは、俺としても「この人は結末を知らないまま読むの辞めるのかな」と少し不完全燃焼になりますし。
どうかこの事件の行く末を見守ってて下さい…。
(小説書いてるくせに語彙力無くてすみません。)
ただ「最後はいつもの」とだけ言っておきます。
いつものとは何でしょう、予想してみて下さい。
結局「
いっその事結末もぶち壊して(闇堕ちで終わる)
とか考えましたが、それはもうこの作品の終わりそのものなので、それは絶対にやらないです…。
というか、どうしてこんな黒い内容を書けたのか自分でも不思議です。
ある人から、「お前今病んでるのか!?」と心配されたんですが、別に病んではいませんよ。
もしも俺が本当に病んでいたら、こんなに文章は書けないでしょうね。
前回の後書きでは「2勢力」と書いたんですが、思い返してみると、もう片方は勢力と呼んでいいのか甚だ疑問ですね。アレの扱い方が……。
「2勢力」のうち1つは今回の守矢神社ですね。
さて、ここで忘れがちなのが(そうでもない)、彼は狂気を使用してない事ですね。正気で辺りを荒らす……確か、もう1人居ましたね。
今回の長編に出た人物以外で、彼の身近な人に。