※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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懺悔

小町「ふあ〜ぁ、冬はやっぱ寒いねぇ…そろそろあたいも帰れる時間かなぁ?」

 

三途の川の渡守の小野塚小町は、今日も今日とて死者を運ぶ仕事をしていた。結構な頻度で仕事をサボっている小町だが、今日は珍しくしっかりと職務を全うしていた……が、そういう日に限って死者が全くやってこない。ゆえに、鎌を適当に振って、時間が経つのをただただ待っていた。

サボるにしても、どうせ、そんなに時間はない。

そうしているうちに辺りが暗くなり、小町ももう帰ろうとしていた、その時。

 

小町「ん〜…?あれは……」

 

中有の道から、大量の幽霊がやってきた。それは数十や数百なんて数ではなかった。文字通りの、

「数え切れないほどの」幽霊だった。

 

小町「ぎゃあああっ!?何でこのタイミングで、こんな沢山来るのさぁ〜〜〜!?」

 

帰ろうとしていた小町は、仕事の続行を余儀なくされた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルゴ「消し…飛ばした…?」

 

幻月「ええ、終わったわ。…何よ、そんなに暗い顔しちゃって」

 

カルゴ「……」

 

幻月「あ、もしかして、『最後の美味しい所は、俺が持っていきたかった』って?フフッ、偶には美味しい所も分けてよね♪」

 

全て…消した?人間が消えた?それって………?

諏訪子たちが消滅したってことじゃ…。

 

幻月「ねーね、そろそろ夕飯の時間だから、私と夢月は帰っていーい?」

 

幼い子供のような、甘い口調で訊ねてくる幻月。

俺は黙って頷き、彼女らの家にスキマを繋げる。

 

幻月「じゃぁねん♪」

 

夢月「バイバイ、またね♪」

 

手を振ってスキマを通り、彼女たちは帰宅した。すると今度は、黒い笑みから一転して、柔らかな笑みを浮かべる純孤が口を開く。

 

純孤「そうね、私ももうお夕飯の時間だから……申し訳ないんだけど、お願いできるかしら?」

 

それにも黙って頷き、純孤の仙界にスキマを繋げ彼女はそれを通る。

 

純孤「流石にお疲れかしら。ゆっくり休んでね」

 

カルゴ「……ああ」

 

小さな声でそう言葉を返して、スキマを閉じた。

あとには、俺と上海だけが残った。

 

カルゴ「…俺は…」

 

何のためにこんな事をしたんだ?霊夢を辱められ娘達を誘拐されたり誘拐されかけたりして、皆を守るために障害を消した…。だがその結果、逆に諏訪子や早苗、神奈子様を消す事になっただと?

…ふざけるなよ。愛する誰かを守るために、他の愛する誰かを消すだと?そんなの望んでいない。

愛する全員を守る…。障害を消すことも、全てはそこに繋がると思ったからだ。そう、守ることが俺の望みだ。

なのに…それなのに、俺は………!

 

カルゴ「何で…何でだよ何でだよ何でだよッ!!何でこんな事になんだよ、クソォォォッ!!」

 

皮膚が傷付き血が滲むほどに強く頭を掻き毟り、奥歯にヒビが入るほど強く歯を食いしばり、俺は叫ぶ。傍にいる上海は、俯き加減に、そんな俺を見ていた。答えを見つけた俺は、スキマを開く。

 

上海「ドコイクノ?」

 

カルゴ「魔界…パンデモニウム…。俺にはもう、どうすれば良いのかわからないんだ…」

 

俺が諏訪子たちを殺しかけた。その事実が俺には受け入れ難く、同時に恐ろしいものだった。

 

上海「ワタシモイク!」

 

カルゴ「ああ…」

 

パンデモニウムの玄関ではなく、直接母の部屋へ繋ぎ、俺と上海は駆け込む。まるで悪い事をした子供が親に泣きつくかのように。

 

カルゴ「母さんっ……どうしよう、俺っ……俺、取り返しのつかない事をっ………」

 

母さんは部屋に居た。そして、とても暗い表情を浮かべながら、俺を見ていた。一体、何を考えているのか俺には知る由もない。しかし、その背中からは紫色の6枚の翼が出ている。

ヤバい雰囲気だ。

 

神綺「…やってしまったわね」

 

カルゴ「どうしよう……母さん、助けて…っ…」

 

神綺「さてね…。あなた、自分が何をしたのか…本当にわかってる?懺悔しなさい。今、ここで。私の目を見て。嘘偽り無く」

 

一人称が「お母さん」ではなく「私」となる程、いつになく真剣で、静かで激しい怒りをその瞳に映して俺に接する母さん。

 

カルゴ「あの人里の人間が、霊夢を辱めて…娘を誘拐して……もう何て言えばいいのか分からないくらいムカついて…その気持ちのまま、里を蹂躙してしまった…」

 

神綺「してしまった(・・・・・・)…?おかしな事を言うわね。あなたは自分に真っ直ぐに生きる事を信条としているはずよね?なのにどうして後悔してるの?」

 

カルゴ「この行動の結果…諏訪子達を失うことに気付いて…。俺が望んだのはそんなのじゃない…ただ、大好きなみんなを守りたかっただけで…。もう会えなくなるなんて嫌なんだ……」

 

神綺「それで?あなたはどうしたいの?」

 

カルゴ「っ……さ…里、を………」

 

神綺「里を?」

 

カルゴ「元通りに…して欲しい……。そうすれば諏訪子達を蘇らせられるはずなんだ…」

 

神綺「…お母さんにお願いする時は、どうするのだったっけ?」

 

カルゴ「…元通りに、して下さい…」

 

神綺「……それで良いのね?それで元に戻したらあなたはもう幻想郷では暮らせないわよ」

 

カルゴ「え…?」

 

神綺「里の破壊者が幻想郷に住まうのでしょう?そんなの皆が許すかしら。私が許すとしてもね、私はこの魔界の神なの。幻想郷とは無縁だもの。私が許そうが許すまいが、結末は変わらないわ」

 

カルゴ「そん…な…」

 

とんでもなく重い何かが心にのしかかってくる。

普通に考えればわかる事だ。何故、里を破壊した者が何食わぬ顔でのうのうと幻想郷で暮らせる?

暮らせるはずがない。俺は大量殺人犯なのだ。

 

カルゴ「じゃあ俺は…どうすればいいんだ……」

 

情けなくなり、思わず涙が出てくる。

 

神綺「あなたは少し、ワガママになりすぎたわ。これからはそれを胸に留めて、罪と向き合って…それでいて自分には真っ直ぐに生きなさい。その意味が、分かるかしら?」

 

カルゴ「…まだ、よく分からない…」

 

神綺「そう…隠さずよく言えたわね。それはね、何事もほどほどに…って意味よ。自分の意見を通すのは大事。でもその結果として…こうなってしまったのよね?」

 

カルゴ「…うん…」

 

神綺「時には意見を殺したり、理不尽を受け入れたりすることも必要ってことよ」

 

カルゴ「うん…」

 

神綺「あと、あなたには足りないものがあるわ。それが何か、分かるかしら?」

 

カルゴ「…………」

 

少なくとも、「強さ」ではない。今聞かれているのは、そんな事ではない。

 

カルゴ「…わからない…」

 

神綺「慈悲の心よ」

 

カルゴ「…慈悲…?」

 

神綺「『汝の敵を愛せよ』…の言葉がある通り、時にはそういう心が必要になることもあるのよ。あなた、過去にはレミリアちゃんたちの従兄妹を今回みたいに殺してしまったのでしょう?」

 

カルゴ「うん…」

 

神綺「紅魔館の皆が殺されかけたのだから、怒るのはわかるわ。でも、生きて罪を償わせるつもりにはならないのかしら?」

 

カルゴ「…思い付かない…。頭に血が上って……何も考えられなくなって…。殺す事しか…」

 

神綺「……」

 

カルゴ「諏訪子たちが消えたって本当…?もう、母さんの力で甦らせるしかないのか…?」

 

神綺「いいえ。魔理沙ちゃんの時のように肉体が残っているなら『甦らせる』だけど、諏訪子さんは神で、消えてしまったのなら『創造し直す』になるわ。それでも良いかしら?」

 

カルゴ「……ああ…それで良い…。母さんなら…記憶すら創造出来ちまうもんな…」

 

神綺「覗いた分はね。一応全部創造し直せるから安心するといいわ」

 

カルゴ「良かった…」

 

神綺「じゃあ、私を幻想郷に連れて行きなさい。人里を復活させましょう」

 

カルゴ「ああ、分かった、すぐに……」

 

神綺「ただし。あなたには罰を与えるわ」

 

カルゴ「っ…はい…」

 

神綺「皆から今回の事に関する記憶を消した場合あなたのみが今回の事を知っている。その場合、かなり孤独感を感じることになるし、今まで通り諏訪子さんたちに接せるかどうかもわからない。でも、今まで通り接しなさい。悟らせないように努めなさい。孤独感に耐えなさい。自分の怒りをコントロールしなさい。もしそれが出来なければいつまでもこんな事を繰り返すことになるわよ」

 

カルゴ「孤独、感…」

 

苦手な事だ。だけど、それを守れば諏訪子たちとまた過ごせるなら…答えは1つだ。

 

カルゴ「わかった……全部に耐える…。だから…復活させて…下さい…」

 

「罪と向き合って」ということは、母さんは俺の記憶を消すつもりは無いのだろう。だがその罪と向き合う事で諏訪子たちとまた過ごせるのなら、全然安いものである。

そう思った俺は、赤くなった瞼を尚も擦り、深く頭を下げて再度お願いする。

すると母さんは、いつも通りの明るい顔になる。

 

神綺「任せなさいな。私はあなたのお母さんよ。時に親は、子の行動の責任を取るものだからね。さぁ、スキマお願い」

 

カルゴ「わかった」

 

 

 

人里の上空に来た俺たちは、ほぼ燃え尽きて灰となったそこを見る。

 

神綺「…よっぽど、怒ってたのね」

 

カルゴ「……」

 

神綺「諏訪子さんたちの様子、見ないの?」

 

カルゴ「だって…まだ消えたまま…でしょ…?」

 

神綺「まずは見てから言いなさい」

 

カルゴ「……」

 

目の前に小さなスキマを開く。そこに居たのは、身体がほぼ透明になっている諏訪子、神奈子様、早苗の姿で、その傍で樹里愛が泣いていた。

どうにか存在しているが、喋ることもかなわないという様子だった。

 

神綺「後先考えず行動するとどうなるか、これで分かったかしら」

 

カルゴ「わかった…」

 

神綺「よろしい」

 

再び、紫色の6枚の翼を背中に出して、魔界神の本気を出そうとしている。概念をも操れる神が、本気を出さねば今回の事には対処できないほど、やはり余程深刻なことらしかった。

 

 

 

幻想郷は広いわね……。こんな全員の頭をイジるなんて…凄い無茶ぶりしてくれるわね、息子は。

でも、怒り狂ったあなたの気持ちは分かるわ…。

いつもあなたの心を覗いている私は、霊夢ちゃんたちくらいにあなたをよく知っている。

あなたは誰よりも優しい…。だから、大事な人が傷付けられて、その人のためにここまで怒れる。かなり破壊的で、私でも近寄り難いけれど…ね。

他人の気持ちにそう寄り添えるのは優しさの証。

だけどあなたは少し排他的ね。排他的な月を少し嫌いながらも、あなたの優しさは、少し排他的。

だから、それ以外を滅ぼす、という結論になる。

穢れを嫌い、入り込んできたそれを排除しようとする月とあまり変わらないのよね…。違うのは、カルちゃんの方が深く他人の気持ちに寄り添えるという根本的な所…かしらね。

 

神綺「ねぇ、カルちゃん?」

 

カルゴ「何?」

 

神綺「本当に…本当に、これまでの自分を装えるかしら?嘘は苦手、隠し事も苦手なのに」

 

カルゴ「…大丈夫…やり通す。俺だって死んでも守りたいものはあるから…」

 

声は震えているが、真っ直ぐな目で私に言い切る息子。決してそれは簡単な事では無い。でももう戻れない。「やり通す」と口にしたのだから。

 

神綺「もう紫ちゃんにあんな口を聞いてはダメ。あなたをこの世界に巡り合わせてくれた、大切な恩人なのだからね」

 

カルゴ「はい…」

 

諏訪子さんたちはカルちゃんの頭を覗けるから…この記憶だけ覗けないようブロックしましょう。俗に深層心理と呼ばれる部位に隠して…。

地獄の女神の頭もイジるのは流石に難しいけど…まぁ、やれないことは無いわね。

 

 

 

カルゴ「ありがとう、母さん…」

 

数分後、俺たちの眼下には、いつも通りの人里が戻っていた。友人宅である鈴奈庵と稗田家は俺が元の位置に戻して、混乱していたらしい記憶を、母さんが跡形もなく消し去って、代わりの記憶を用意した。

 

神綺「ふぅ…。阿求って人と紫ちゃんは、本当に凄いわね…。阿求って人は量が多く、紫ちゃんは能力が中々効かなくて苦戦したわ…。でも、里にいた妖怪さんたちも連れ戻したしね、もう心配は無いわね。あと、人間たちの意識も変えたわよ。

『思想は自由で、行動は常識の範囲内では自由。ならぬものはならぬもの』って。これならもう、あなたの子供たちが攫われたりとか誰かを辱める事件は起こらないわ」

 

カルゴ「ああ…ありがとう、母さん……。なんて言えばいいのかよくわからないけど……本当に、ありがとう…」

 

神綺「これからはよく気を付けるのよ?失敗から学んでくれれば、それで構わないわ」

 

カルゴ「っ…ありがとう…」

 

我慢しようとは思ったが、また涙が溢れてくる。

罪を許してくれた…ワケではないが、これもまた慈悲の心なのだろうか。

 

神綺(ただ問題なのは、少し時間が経ってるから元々の魂が運ばれてしまっていて…全く同じ魂が2つ存在するような状態になった事かしらね…。肉体が完全に滅びているから、肉体から創造するしかなかった……けどまぁ、大丈夫よね)

 

カルゴ「…母さん?」

 

どこか暗い表情をしている母に声を掛けてみる。

しかし返ってきたのはいつも通りの明るい顔だ。

 

神綺「何でもないわ。もうお夕飯の時間だから、スキマお願いできるかしら」

 

カルゴ「うん」

 

1つ頷き、先程の部屋にスキマを繋ぐ。母さんはそれを通り、俺を振り向く。

 

神綺「くれぐれも気を付けるのよ」

 

カルゴ「もうわかってる。気を付ける」

 

神綺「お正月は私たちも初詣行くからね」

 

カルゴ「わかった」

 

神綺「お年玉、期待してなさい♪」

 

カルゴ「ううん、お金も能力も要らないよ」

 

神綺「あら残念♪」

 

じゃあね、と最後に言い合ってスキマを閉じた。

これで全て都合良く記憶などが書き換えられて、全ては丸く収まった。やはり、凄い。圧倒的だ。あまりにも圧倒的な神の力に俺は為す術もない。

結局の所、俺もまだまだ未熟者って事だ。まぁ、紫さん1人を俺1人で倒せないのだから、確かに言うまでもなく未熟者だ。

もっと力を付けよう。ただし、その力の使い道で今回のような罪を犯さないと諏訪子たちに誓う。

力を付けても使い道を誤ってはいけない。今回のことでそれがよく分かった。殺さず、生きて罪を償わせることも可能。ならそうさせた方がいい。今俺がそうしているように。

 

カルゴ「……行くか」

 

上海「…ドコニ?」

 

カルゴ「守矢神社だ」

 

スキマを開き守矢神社に行くと、諏訪子と神奈子様が何食わぬ顔でトランプで遊んでいる姿が目に入った。そして早苗は台所で料理中で、樹里愛はそんな母親のそばにいる。

 

神奈子「おっ」

 

諏訪子「エスカルゴ〜!やっほ…ぶぉえっ!?」

 

トランプをバサッと置いて此方を見た諏訪子に、思い切り抱きつく。もう会えないかもしれないと思っていた諏訪子に、早苗に…神奈子様に、またこうして会えた。それだけでもう満足だ。

 

諏訪子「お〜…?いつになく甘えんぼさんだね♪

ヨシヨシ、ヨシヨシ♪」

 

カルゴ「会いたかった…諏訪子………」

 

諏訪子に泣き顔を見られないよう、彼女の背中を見るように抱きつく。声だけで泣いていることはバレているだろうが…。

 

諏訪子「私もだよ…♪」

 

結局、涙が収まるまで、俺が消しかけてしまった諏訪子本人に慰められていた。そんな中で俺は、罪を犯す力の使い方は二度としない、と心の中で再び諏訪子に誓った。




はい来ました、「神の力(いつもの)」。
エスカルゴは悔い改めて、どうぞ。

因みに、里の人間が消えても神々は完全に消えてないのは、忘れがちですがエスカルゴも神を信仰してるからですね。


大晦日編、前回は紅魔館だったから今回はどこにしようかなー、なんて。大晦日編がそこだったらお正月編もそこになるんですよね。
まぁほぼ決まってますけど。
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