永琳「さぁ皆、1年で永遠亭中に溜まった汚れを綺麗にするわよ」
鈴仙「はい!」
巫月「はーい!」
カルゴ「はい」
てゐ「はーい(サボろ)」
輝夜「だるーい、ねたーい、ゲームしたーい」
永琳「あぁ、そのゲームなら、私にしか解けない封印を掛けておいたわ」
輝夜「えええ〜!?」
大晦日。1年最後の日、俺は朝からその日の宿泊場所へやってきた。それは、大掃除やらを手伝う為である。よりによって永遠亭…今年は不運だ。
永遠亭は広い。兎達はあまり働かないので、実質いつものメンバーだけでの大掃除となるのだ。
永琳「エスカルゴ、てゐへの処罰は任せるわ」
カルゴ「了解です」
てゐ(エスカルゴは単純だから、ある意味逃走は楽かもしれないウサね……へっへっへっ…。一度逃げられたら私の勝ちウサ…)
永遠亭は和造りだ。モップなんてある訳が無い。つまり手作業である。ただただ雑巾掛けをする。作業方法は紅魔館より少ないが作業箇所は紅魔館よりも多いかもしれない。障子の骨組みなどの、細かい箇所もキッチリと掃除しなければ。
掃除さえ終われば俺が「今年は永遠亭で不幸」と思った理由は消えるが。つまりは、掃除が面倒なだけである。だって面倒だもの。
いっその事、てゐと逃避行でもしたいくらいだ。
永琳「もちろん、スペルの使用は禁止だからね?巫月ちゃん、エスカルゴ?」
巫月「使い所無いんじゃ……あるか。…はーい」
カルゴ「分身は非スペルなのでノーカンですね、ノーカンノーカン」
永琳「しばかれたい?」
カルゴ「鈴仙になら」
永琳「バカじゃないの?」
カルゴ「バカですが」
永琳「うーん…まぁこの広さでこの人手じゃ掃除だけで1日が終わりそうだものねぇ……。丁寧に出来るのなら分身出しても構わないわよ」
カルゴ「よっし…!」
永琳「分身だけに任せないなら、も追加ね」
カルゴ「や、やだなー永琳センセー…俺そんなに不誠実じゃないデスヨー?」
永琳「…ま、てゐじゃないからね。はい、指示はもう出さないから、各自分担して掃除して。私は薬品倉庫の片付けするから何かあったら言って」
一同「はーい」
軽く返事をして、俺たちは解散した。永琳は薬品倉庫とやらに向かって、てゐはすぐに逃げられるようにするためか玄関の掃除を、巫月は縁側を、鈴仙は台所、輝夜は自室の掃除を始めた。
俺は屋内の廊下の掃除を始めるべく、解散直後に妖怪兎に似せた分身を作成したので、俺も自室へ向かった。勿論掃除はするが。
何としても午前で終わらせて、午後は休みたい。
当然ながら幻想郷にテレビ等は無く、紅白〇合戦などの行事も無いので、やる事は無いのだ。
だからといって、この掃除ばかりはゴメンだ。
テレビといえば、にとり達河童はラジオの普及を目指してるのだそう。トランシーバーが作れるのだから、ラジオも作れるだろう。
勿論、俺はそれに便乗して一儲けするつもりだ。
カルゴ「うーん…コロコロでもあればなぁ…」
細かい所や深い所に入り込んでいるゴミを見て、俺はそう呟く。コロコロ…そう、外の世界では、カーペットの掃除などに使われるコロコロだ。
畳に使えば、余計にケバケバしているささくれを取れるだろう。…無ければ、創ればいい。今こそ創造魔法を有能活用する時だ。
カルゴ「よし出来た。…あれ?」
畳に乗せてみたものの、粘着力が強すぎるあまり普通の力では全く動かせなかった。少し吸血鬼の力で動かしてみると、バリバリと大きな音を立てて畳の目が壊れてしまった。
カルゴ「うわわわわ…やべっ、畳が壊れたっ…」
壊れたならひっくり返せば…あぁコロコロ邪魔!
うわやべぇ、こんなザマ誰にも見られたく……
てゐ「おやぁ〜?誰かさんは破壊行為ウサ〜?」
声がする方を見ると、てゐがニヤニヤとしながら廊下からこちらを見ていた。しまった。
カルゴ「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッ!!!なんでこういう時に来るんだてゐぃぃぃっ!!」
てゐ「お師匠様に報告ウサ〜♪」
カルゴ「待っ……ヴォエッ!?」
てゐを捕らえようと飛びかかると、てゐはそれをヒラリと避け、俺が床に倒れると同時にその床はバキッと音を立てて壊れ、頭から突き刺さる。
てゐ「あーっ!まーた壊したウサー!これはもう大目玉確定ウサ〜!ウササササ〜!」
そんな声を床下で聞いた俺は、さすがにヤバイと思い、急いで抜け出してゐの追跡に移行した。
屋内での「神速『スウィフト』」は、制動距離やその他諸々の理由で使えないが、こちらならまだ容易に扱える。
カルゴ「雷速『クイック』」
曲がり角に消えたはずのてゐの背中が、次の瞬間には俺の目の前に迫っていた。
てゐ「もうすぐでっ…ゲェッ!?」
カルゴ「捕まえた♡」
満面の笑みでてゐの襟を捕まえた俺は、その場に急ブレーキをかけて急停止する。
てゐ「クッソ〜…まさかそんな手を使うとは〜…しかも襟首掴むとか酷いウサ…」
カルゴ「マジでこれは言わないでくれ…。説教で時間が潰されるのはゴメンなんだ…」
てゐ「あれ?説教されるの好きなんじゃ…」
カルゴ「それは咲夜さんだけだっつの!」
てゐ「鈴仙は?」
カルゴ「いやまぁその…」
てゐ「霊夢は?」
カルゴ「いやそうじゃなくて!とにかく永琳先生には黙っててくれってこと!1つだけ、言うこと聞いてやっから!」
てゐ「ほぉ〜…ホントウサ?」
カルゴ「…おう!ドンと来い!」
てゐ「じゃあサボらせろウサ!」
カルゴ「っ…よし、良いだろう。だがこの周辺に居たら見つかるぞ…?」
てゐ「なんでそんなにすんなりOKするウサ…?そんなにバレたくないウサ?」
カルゴ「まぁな。だから分身をてゐの姿にさせて働かせればてゐは自由の身だし…」
てゐ「交渉成立ウサ」
ガッチリ握手した俺はてゐを永遠亭から逃がし、壊れた畳のある自室へと戻った。自室前の壊れた床板はサイズを合わせた板を創造して修復した。
カルゴ「…さて」
剥がせないのなら仕方ない。畳も創造して一気に直すのが1番手っ取り早い方法だろう。
カルゴ「12枚か…ちと重いが、まぁいいだろ」
俺の部屋は、12畳ある。親子3人で寝ているし、丁度イイ…いや、少し広めだ。
カルゴ「どれ、掃除用スキマ開いて、と…」
後で消滅させる用のスキマ空間を開いて、そこに畳をポイポイと全て投げ込んでいく。畳の下は、埃が多かったので雑巾で拭き掃除をする。すると雑巾はあっという間に黒くなってしまった。
カルゴ「うん、やっぱ総取っ換えって名案だな」
それから俺は、永遠亭の全室の畳を新品にした。
因みに輝夜は、自室でゲームしていた。封印したというのは輝夜にも掃除をやらせるための永琳のジョークだったらしい。せっかくなので、それは見逃した。バレて怒られるのは俺ではなく輝夜。それに怒られる様を見てみたいというのもある。
それから、障子も総取っ換えしようと思ったが、紙の質をどうしても模倣出来なくて、結局は全て手作業であの破れやすい障子を掃除した。
巫月「エスカルゴ〜」
カルゴ「んー?」
襖の掃除中に、巫月が背後から話しかけてきた。
どうやらもう縁側の掃除が全て終わったらしい。
巫月「エスカルゴの分身たち、終わったらしくて暇してるよ。私も終わったけどね♪」
カルゴ「そか、わかった。俺、後は襖だけだから巫月も休んでな」
巫月「はーい。…そうだ、来年初のエスカルゴのチューは私が貰うからね♪」
カルゴ「それはどうだろうな」
巫月「鈴仙には渡さないから」
まだ幼いのにも関わらず、そこそこ妖しい笑みを浮かべた巫月は、部屋へ戻って休み始めた。俺は分身を遠隔操作で消去し、襖の掃除を終え鈴仙の掃除場へ向かった。
カルゴ「鈴仙、こっちは終わったぞ」
鈴仙「うわっ、早いね…」
カルゴ「数と素早さと楽さにものを言わせたから多少はね?何か手伝うよ、何やればいい?」
鈴仙「油汚れだけ落ちなくって…。これだけでも落ちれば終わりなんだけどさ…」
そう言って、いくつかのフライパンを出す鈴仙。
油がドギツく残ってしまっている。
カルゴ「あー…」
油汚れに〜、ジ〇イ♪
あれがあればなぁ。うーん、外から持ってくる?
でもそんなに勝手にポンポン持ち込んでいいのかわからんな…。まぁそんなの今更なんだけどさ。
カルゴ「貸してみ。力で解決する」
鈴仙「壊さないでよ?」
カルゴ「流石に加減はするよ…」
濡らして石鹸をつけ、ギュッギュッ、と重い音がするほどの力で強く擦ると、布に油汚れがついてフライパンは綺麗になった。ついでに黒い焦げも取れたのでよかった。
鈴仙「相変わらずすごい力ね…」
カルゴ「まぁね。あとさ、これで午後はゆっくりできるよな?」
鈴仙「何して過ごす?」
カルゴ「んー…ま、昼飯食べながら考えようぜ」
鈴仙「それもそうね!」
その後、みんなでお昼を食べ、食後は暫くの間、てゐと2人で説教を受けた。何でも、竹林の中に対てゐ用罠があったらしく、てゐはまんまと罠に引っかかって永琳に見つかり…てゐは俺が故意に逃がしたと暴露して俺も呼び出され、しっかりとキツイ説教をされた。
これなら、畳を壊したことをバラされて弁償する方が遥かに楽だったなと後悔した俺だった……。