カルゴ「んー…?参拝客居ないじゃないか…」
永遠亭から出て博麗神社に手伝いに来た俺だが、やはり参拝客は居なかった。ガラガラなのは少し寂しくもある。皆は、これから来るのだろうか。
人間の参拝客は尽く守矢神社に流れた、と諏訪子から聞いている。早苗と樹里愛による母娘宣伝は効果が絶大らしい。
お御籤の屋台だけでは少し寂しいかもしれない。
カルゴ「おはよー。あけましておめでとう霊夢、霊愛、霊麗。今年もよろ……」
例によって縁側から入った俺は絶句した。何と、この寒い中、霊愛が上半身裸で霊夢と向き合って何か話し込んでいるからだ。勿論、霊愛の傍には霊麗も居るが。
霊愛「あ……あ……!」
霊麗「あちゃー…」
カルゴ「あいや、すまん霊愛、別に新年早々娘の裸見たからって何も変な事は考えn」
霊愛「見るな馬鹿ぁ!!『封魔針』!!」
カルゴ「ぎゃあああああああああっっ!!!」
極めて至近距離から、一体どこから取り出したのかもわからぬ針を、俺の目を狙って投げ放った。
反射的に目を閉じたので、瞼ごと貫かれ一時的に目が開けられなくなる。数秒後、その針を抜いて何とか目を開けられるようになるが、霊愛は既に服を着ていた。別段、残念には思わないが…。
霊愛「ったく、新年早々お父さんは……!油断も隙も無いよね、ホントさ…」
カルゴ「着替えでも無いのに、何でそんな格好で霊夢と向き合ってんだよ…。てか着替えなら霊夢と向き合う事ねぇか」
霊愛「そ、それ、は…その…///」
霊夢「サラシを巻きたいって言うから、サラシの巻き方教えようとしてたのよ」
カルゴ「なるほど。でも霊愛って……」
霊愛「何?」
ギロリと睨みを利かせ、凄む霊愛。可愛いが少し怖いかもしれない。どうしてこうなった…。
カルゴ「…いや、何でも」
霊夢「『サラシ巻くほど胸あるのか?』って?」
カルゴ「ッ!?」
霊愛「お母さっ…このスケベオヤジィィィ!!」
顔を赤くさせた霊愛は俺に飛びかかって、胸倉を掴み、腹をゲシゲシ蹴りつける。手加減しているのか、あまり痛くは無い。
カルゴ「何で俺ぇ!?言ったの霊夢じゃんか!」
霊愛「お母さん言った時、反応したじゃん!あれ図星だったからでしょ!」
カルゴ「娘の成長具合は気になるからな。いや、変な意味は無いが」
すると諦めたように手を離し、俺から飛び降りる霊愛。更に大きなため息をついた。
霊愛「ストレート過ぎだよお父さん…。イラつきすら失せた」
カルゴ「そりゃ良かった」
霊夢「新年早々、騒がしい2人ね。という訳で、あけましておめでと、今年もよろしく。お賽銭かお年玉、ちょーだい?」
カルゴ「ほい、お年玉」
ポケットから万札を取り出して、そのまま渡す。
去年の宝くじのお陰で、一生遊んで暮らせる程の大金が俺の手元にある。一生とは言っても、もう不老不死なのでいつかは絶対に尽きるのだが…。
霊夢「相変わらず無造作よねぇ…。くれるんなら良いけどさ」
カルゴ「良いんかい…」
霊麗「私も私もー!」
カルゴ「霊麗はまだ子供だから5000円だな」
霊夢「甘いわねぇ…随分大きい額でしょうに…。霊麗、お年玉は私に預けるのよ」
霊麗「えっ?」
霊夢「『えっ?』じゃなくて。去年もその前も、そうしてたでしょ?」
霊麗(あれ、そうだっけ…?)
カルゴ「騙されるな霊麗、これは罠だ。お正月の恒例行事、『預けたら帰ってこないお年玉』だ。預けちゃダメだぞ」
霊麗「うん、わかった」
霊夢「チッ」
カルゴ「そういう事する奴にお年玉はやれんな、返してもらおっかな〜?」
霊夢「わ、わかったわよ、もうしないわよ…」
お年玉に危機感を覚えたか、大人しく引き下がる霊夢。俺に蹴りをくれた霊愛は、静かにこちらをチラ見している。お年玉は欲しいが、蹴ったり、罵声を浴びせたりしたので、貰えるか心配してるのだろう。
カルゴ「霊愛は欲しくないのか?」
霊愛「…欲しい…」
カルゴ「ほい」
霊愛「…ありがと」
年齢によって渡す額は変えているので、霊愛も、霊夢と同じく1万円だ。
カルゴ「今年もツッコミよろしくな、霊愛」
霊愛「うん。…ツッコミ?」
カルゴ「霊愛はツッコミ役だろ、どう考えても」
霊愛「それもそっか。世話が焼ける両親だよ」
霊夢「えっ私もツッコまれる側なの?私ツッコミ役でしょうよ」
霊カル「それは絶対に無い」
霊夢「ええ…」
霊夢と魔理沙のコンビでも霊夢はボケ役なのに、ましてや俺と霊夢なんて…ボケボケコンビだ。
カルゴ「俺は別な意味ではツッコミ役だな。で、霊夢はツッコまれ役」
霊夢「何でボケって言わな…朝から何言ってんのこのバカ!変態!」
カルゴ「どーれ、お御籤でも引こうかな」
霊夢「無視すんな!……でもそろそろアイツらが来る頃よね」
カルゴ「ああ」
霊麗(お母さんの切り替えも早い…)
霊愛(いつまでもこんなノリだから、これまでも仲良くやってこれたんだろうなぁ…)
そんな話をしているうちに、ワイワイガヤガヤと境内が賑わってきた。どうやら、大して参拝すらしない参拝客が集まってきたらしい。初詣には、あの妖忌やパチュリーまで来ているらしい。少し珍しく思える。
フラン「あけましておめでと!今年もよろしく、エスカルゴ♪」
カルゴ「ああ、今年もよろしくな♪」
その後も新年の挨拶周りをした。へカーティアや純孤、クラウンピース、母さんに夢子、ロリス、輝夜までいる。いつもの宴会と何ら変わらない。違うのは、諏訪子たち守矢陣営が居ないことだ。
カルゴ「あけましておめでとう、妖忌」
妖忌「うむ。…お年玉はやらんぞ」
カルゴ「えー、良いじゃんか爺ちゃ〜ん」
妖忌「やらぬ。妖夢と妖舞にはやったがな」
相変わらずで何よりだ。孫や曾孫には甘いねぇ。
てか妖忌の収入源は何だ?妖夢は給料貰ってないらしいが、妖忌には給料あげてるのかな?
カルゴ「あ、超大吉」
フラン「私も超大吉〜!」
レミィ「え、何それ…私小吉…」
レーテ「なにこれなにこれ!」
カルゴ「レイチェルは…ありゃ、小凶か」
パチェ「また末吉…。
咲夜「あら、大吉ですわ♪」
美鈴「むぅ、中吉ですか…。凶じゃなかっただけまだマシでしょうか」
弦月姫「吉、です…!」
小悪魔「中吉ですか…まぁまぁですね」
ここあ「超大凶……私何かしましたか…?」
シガー「親子なのにヤッたからかなぁ…?」
ここあ「お父様とヤラないなんて無理、我慢とか絶対出来ないよぅ…」
シガー「うんうん…」
双子の発言を、周囲の者は引き攣った顔で聞いている。この2人は、俗に言うセックス依存症だ。更に小悪魔のようには己を制御できないで居る。彼女らは、目覚めた本能に従って行動する。
図書館内で俺を見つければ、即座に襲いかかる。
近くにパチュリーが居てもお構い無しだ。こんなはずじゃなかった、とパチュリーは少しガッカリしていた。しかし仕事は卒無くこなすらしいのでまだマシだろう。
現在境内にて俺を襲わないのは、小悪魔が2人の首根っこを捕まえているからだと思われる。
霊夢「超がつくのは私作ったの。面白いでしょ」
フラン「うんうん♪」
カルゴ「最高レアを引き当てるとは流石俺だな」
するとそこにドヤ顔をした魔理沙が来た。
魔理沙「残念だが最高レアは超大吉じゃないぜ」
カルゴ「何…だと…!?」
魔理沙「最高レアはだな、私が作った、ウルトラデラックス超吉だ!!」
うわぁ、子供が何かの技名につけそうなやつだ!ウルトラ、デラックス、ハイパー、マキシマム!
霊夢「ちょっとぉー、末吉とかもだけど、勝手に入れないでくれる?」
魔理沙「じゃー賽銭箱に葉っぱでも入れてこよ、葉っぱならタヌキのせいにできるし」
霊夢「それはやめて!」
魔理沙「へへへっ」
カルゴ「でも大体全員引き終わったみたいだが…誰だそのラッキーな奴は…」
その時、境内で声が上がった。
???「ハーッハッハッハッ!!どうやら我は、クジ運も最強らしいな!!」
カルゴ「このショタ声は…」
ショタ化した、建御雷である。外から持ってきた分社を守矢神社に置いて、守矢神社に居候中だ。名目上はそうなっているが、実際は、幻想郷中のあちこちを放浪しているらしい。
カルゴ「あけおめ、建御雷。来てたのか」
建御雷「おう、器!強い力が神社に集まっているから何事かと思ったら…初詣か!」
カルゴ「強い力ぁ?」
建御雷「皆々、我よりずっと下だがとんでもない力を持っておる!面白い、面白いぞ…!」
カルゴ「うわぁ戦闘狂」
建御雷「ハッハッハッハッ!」
すると、魔理沙が苦笑を浮かべながら建御雷と俺の傍にやってきた。
魔理沙「建御雷って、初めて魔界に行った時に、エスカルゴに憑依した神様だろ?何で子供の姿でこんな所に居るんだ?」
建御雷「おお、あの時岩に潰されかけてた白黒!久しぶりだな!」
魔理沙「お、おう、久しぶりなんだぜ…。やけにテンション高くないか?」
カルゴ「最高レアが当たって浮かれてるんだよ。見た目通り中身も子供だから」
魔理沙「ええ…」
建御雷「聞こえておるぞ器ァ。なんなら、今すぐここで勝負してやるぞォ?」
カルゴ「何でそうなる!」
建御雷「我を子供扱いしたのだぞ、お前は子供である我を楽に超えられるのであろう?」
カルゴ「許して下さい、何でもしますから」
建御雷「ん?今何でもすると言ったな?」
カルゴ「何でもするとは言ってない」
建御雷「フン、おかしな奴だ。…あぁそうそう、隕石衝突直前まで世界の終焉に気付かなそうな程愚鈍なお前に、神の言葉を告げてやろう」
カルゴ「そんなに愚鈍じゃないが…何?」
建御雷「『見られてる』ぞ、お前」
カルゴ「…誰に?」
建御雷「クハハッ、どこまでも鈍感な奴よの…。
…まぁ、あの姉妹よりかはマシだろうが…な」
ワケの分からない言葉を残した彼は、雷で出来た鳥のような翼を背中に出して、どこへともなく、飛び去って行った。
魔理沙「何だアイツ…」
カルゴ「さぁ…。まぁ神の言うことなんてあんま真に受けてもなぁ…」
魔理沙「だよなー」
神綺《へぇ〜…?》
カルゴ《あ、いや、母さんは別だよ、別!》
神綺《ふぅん…。でも、あの神様が言うことも、尤もかもしれないわ。警戒なさい》
カルゴ《母さんまで…。わかった、気を付ける。何に気を付ければ良いのか分からないけど…》
神綺《それを見つけるのもまた特訓よ》
カルゴ《はーい…》
単純な俺はキョロキョロと周囲を見てみる。だが俺を見ている者なんて誰1人居やしない…というワケではなかった。こちらに目を向けているのが3人、境内に居た。赤と黒を基調とした振り袖の着物がとても可愛らしい…というか綺麗だ。
カルゴ「あけましておめでとう、へカーティア、純孤、ピース。今年もよろしく」
ヘカT「あけおめよん♪」
ピース「A happy new year!今年もよろしく!」
純孤「あけましておめでとう、エスカルゴ君…///
ど、どうかしら、この着物…?」
カルゴ「似合ってるよ。百合の装飾も綺麗だね」
純孤「ありがとう…///」
ヘカT「んもーっ!新年早々、私たち非リア充に見せつけてくれちゃってー!」
ピース「そーだそーだー!」
純孤「ヒ?リアジュウ…?」
ヘカT「あなたたちみたいなアツアツな2人を、外ではリア充と呼んでるのよん♪それでね、私達みたいにそうじゃない奴を非リア充と言うの!」
純孤「あ、アツアツ…っ///」
ヘカT「もー純孤ったら照れちゃって可愛いー!エスカルゴ君から奪いたくなるわぁ!!」
純孤「え、え、ちょっ、へカーティアっ、なにもここで抱きつかなくてもっ…///」
ヘカT「ここじゃなかったら良いのかしらぁ?」
純孤「そっ、そうじゃなくってぇ!///」
そんな様子を見せられている俺とピースは、ただ苦笑いするばかりである。
ピース「…何か、ご主人様がゴメン…」
カルゴ「良いよ…百合は大好物だ…」
ピース「えぇ…」
その時、妙な視線を感じた俺は、チラッと屋台の方向を見てみる。屋台の周辺は未だに、お御籤を引いた者たちで賑わっていたが、その中に1人、俺でも妖忌でも妖舞でもない見慣れぬ男が居た。その男は、俺と目が合うなり、どこかぎこちない動きでニタリと顔を歪めて笑った─────。