その男は、見た目は人間だった。髪は、縛れるか縛れないかというほどの絶妙な長さだ。色は黒でやはり人間的だ。瞳の色は茶色。日本人は大抵、黒か茶色だ。誰がどう見ても日本人…なのだが、その男の纏う気配が、彼が人外だという事を切に周囲に知らしめていた。
人間では、纏いようが無いほどに禍々しい気配、しかし大妖怪などには決して遠く及ばない、酷く中途半端な禍々しさだ。
俺はその男に歩を進める。男はぎこちない笑顔を浮かべたまま、動こうとはしない。笑顔もだが、動きもどこかぎこちないように見える。
ガチガチに緊張していると手足が震えて口の形も変な形になりそうなものだが、まさにそのような感じだった。
カルゴ「よう。俺に何か用?」
男「いや…特に何も…」
話しかけてみたが声も震えている。そして、俺が普段、彼女たちや子供たちの誰に対しても「俺に何か用?」などと言わないからか、周囲の視線が俺とその男に集まってくる。
レミィ「えっ、あの2人…ええっ!?」
ピース「Wow!ドッペルゲンガー!?」
てゐ「エスカルゴが2人居るウサァァァッ!!」
そう、この男は俺にそっくりなのだ。ただ、翼が無くて目が茶色であるというだけで。それこそ、双子やドッペルゲンガーに思えるほどに。
すると、騒ぎを聞き付けたらしい霊夢が、御札とお祓い棒を持って駆け付けた。
霊夢「何よアンタ、このバカの偽物?そうなら、即座に抹殺するけど」
男「ちがっ…おい、アンタからも説明してくれ!また巫女にやられちまう!」
カルゴ「ははっ…」
あまりの慌てように思わず笑いが漏れてしまう。俺が慌てると、あんな感じなのだろう。どうにも自分を見るというのは可笑しいものだ。
カルゴ「違うよ、霊夢。コイツは俺の分身だ」
霊夢「は?何で分身があんたの人間の姿みたいになってんのよ。気配も全然違うけど?」
そもそも、俺の分身なら「巫女」じゃなく「霊夢ちゃん」と呼ぶだろうがな。
カルゴ「正確には、『俺の分身に憑依した別人』だがな。前に感じたことあるだろう?この気配」
霊夢「ん〜……?」
その男を睨み、考える素振りを見せる霊夢。全く覚えていなさそうである。そして周囲は緊迫した表情でこちらを見ている。何が起こるか、まるで分からないといったようすだ。
カルゴ「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
男「お、覚えてたのか?」
カルゴ「当たり前だろ…」
男「良かったァ……。俺の占術によると、お前は
『疑わしきは罰せよ』のタイプだ、もしもお前に疑われたら一巻の終わりだと思ってたよ…」
カルゴ「相変わらず当たるなぁ。確かに俺はそのタイプだよ。ていうか、わかってたんならなんで逃げなかったんだよ?」
男「もちろん、逃げようとは思ったが…逃げても捕まるし、怪しいだけだからな…」
カルゴ「あー、それもそうだな」
するとそのタイミングで、考え込んでいた霊夢が声を上げた。
霊夢「あーっ!そうか、あの時のアイツね!」
カルゴ「誰だかわかったのか?」
霊夢「占術とくればアイツでしょ、易者!」
カルゴ「正解だ」
易者が姿を変えるための器として、人間に似せた俺の分身を与えてやったのだ。懐かしい。確か、去年の夏頃の話だった気がする。
易者「…って、巫女にバレた!?マズイ、すぐに逃げなければ…」
と、身を翻す易者の肩を軽く掴んで引き止める。
カルゴ「大丈夫だ、俺がお前を復活させたことはあの日のうちに伝えたから」
易者「ええええ……。まぁ、助かるのなら何でも良いんだがな…」
霊夢「まだ占術やってんの?本物の易書は、このバカが持ってたはずだけど」
カルゴ「うん、持ってる」
易者「ああ、確かに本物は預けてある。だが自分で書いた本の内容くらいは自分の頭の中にある」
やっぱ、頭は良いんだよなぁ、易者って。人間の頃からかなりの勉強家で、ドンドン占術に磨きをかけていったっていう話だしな。
霊夢「そ。で、何しに来たの?」
易者「相変わらず酷い物言いだな…。これからも無事に過ごせるように、御参りに来たに過ぎん」
霊夢「あら、じゃあお賽銭も入れてくれるのね?素敵な賽銭箱はあっちよ」
易者「里の外で暮らす俺に、何故金があると…」
霊夢「じゃあどうやって生きてるのよ」
易者「腹が減れば必要な分を狩る。それだけだ」
霊夢「へー、大罪を犯した割に殊勝な心がけね。雨風はどこで凌いでんのよ」
易者「木の下で事足りる」
霊夢「野生ねぇ」
カルゴ「野生児かよ…」
易者「目的は達したから帰る」
霊夢「せいぜい、その顔で犯罪をしないことね。うちの旦那が疑われかねないから」
易者「姿形で分かるだろうがな。じゃ」
最後は爽やかにニコッと微笑み、階段から下りて放浪の旅を再開した。
霊夢「…人間のあんたに似せる必要あった?」
カルゴ「誰に似せようか迷ったから俺に似せた。俺、イチから人間の顔なんて思いつかないしな」
霊夢「なるほどね。……あんたの人間の姿って、爽やかじゃない。何でモテなかったのか不思議」
カルゴ「そう?てか前に見た事あるだろ」
霊夢「あの時は黒い笑顔しか見れなかったし…」
カルゴ「あー」
霊夢「あれはモテないわねー。ドス黒い内面が、顔に出てたもの」
カルゴ「ははは…」
そんな話をしていると、話がひと段落したと判断したらしい巫月が話しかけてきた。
巫月「そろそろ餅つきやるから手伝って!あと、羽根突きもやろっ!さっき約束したでしょ?」
カルゴ「おう、もちろんだ」
霊夢「羽根突きってあんまやったことないわー。落としたら負けだっけ?」
カルゴ「俺も知らん。そうじゃね?」
いや、それだとバドミントンと変わんないんじゃないか?霖之助なら知ってる?…知らなそうだ。
そして、境内にて俺と鈴仙と巫月による餅つきが始まった。参拝客の皆は、俺たちが餅つきをする様子を見ている。俺が水を足して、鈴仙と巫月が交互に餅をつく。
巫月「ぺったん♪」
鈴仙「ぺったん!」
カルゴ「つるぺったん♪」
巫月「幼女♪」
鈴仙「よ、幼女!?」
カルゴ「つるぺた幼女♪」
萃香「つるぺたって言うなぁ〜!」
魔理沙「そうだぜ!幼女じゃないけど!」
レミィ「フン、まだ甘いわね、魔理沙。胸なんて気にしてたら生きていけないわ♪」
魔理沙「お前だって前は気に…し、て………」
レミィ「あらあら、どこを見ているのかしらね?レディの胸元を見るなんて、はしたないわよ♪」
魔理沙「レミリアお前…!わ、僅かに胸が…!?膨らんでないか、それ!?」
レミィ「ウフフフッ、私だって1児の母親よ?」
魔理沙「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
純孤「何の話をしてるのかしら…?」
ヘカT「純孤は知らなくていいわよん」
ピース「巫月とエスカルゴマジfuck…」
ヘカT「巫月ちゃん…将来有望かしら?」
ピース「何でもう胸があんだよぉ、巫月はぁ!」
ヘカT「巫月ちゃんと交流あったかしら?」
ピース「ええまぁ、チルノを通して…」
ヘカT「まぁ!イイわね!」
霊愛「お姉ちゃんんん〜!」
霊麗(お姉ちゃん、最近気にし始めたもんね…)
良い意味でも悪い意味でも、ワイワイと賑わった初詣。建御雷が言っていた事はいつまで経っても俺には理解不能だった。しかし、その者は確かに俺を「見ていた」。
擬音は想像やリアルで音聞いたりして書いてるんですけど、赤ん坊の泣き声って、どう頑張っても文字にできないんですよねー……。オギャーでもホギャーでもないまた別な何か…ホント難しい。
(だから赤ん坊の時期はほぼ飛ばしてる…)
どうにも形容し難い。