幻月「幽、香ァァァァッッ!!!」
夢月「潰す潰す潰す!!アアァァァッ!!!」
悪魔の恐ろしい本性を剥き出しにし、宿敵である幽香へ向かっていく2人。しかし幽香は、余裕の表情を浮かべたままで、手下にしたエリーたちに静かに指示を出す。
幽香「…殺りなさい♡」
エリー「っ…はい…」
くるみ「……」
下唇を噛み締めて、2人は渋々飛び出す。もしも逆らえば、幽香の強大な力によって殺されるか、良くて半殺しにされる。それがわかっていたからこそ、2人は幽香に逆らわずに従っていた。
エリーは逆刃の鎌を投げながらも弾幕を発射し、くるみも共に弾幕を発射し始める。
幻月「くっ……!」
真正面から鎌と激しくぶつかり合いそうになったその時、鎌は磁石に引き寄せられる鉄片のように勢いよく地面に落ち、地面に開いていたスキマにそのまま飲み込まれた。
エリー「なんで…キャアアアッ!」
くるみ「きゃっ………飛べ、ないぃぃっ…!?」
鎌を追おうとしたエリー、それからくるみも下に開いたスキマに飲まれ、俺の前に落下する。鎌もそこにある。飛べなかったのは重力の能力により強く引き寄せられていたからだ。幻月らに向かう鎌を引き寄せたのも同じくこの能力だ。
カルゴ「よっ、久しぶり」
くるみ「邪魔しないでよお兄さん…」
エリー「そうだよ、邪魔しないで……。私たち、殺らなきゃダメなの…。幻月と…夢月を…」
カルゴ「そんな事よりさぁ。俺たちは俺たちで、3人で楽しまねーか?」
2人「…?」
カルゴ「かかってこいよくるみ、エリー。仲良く3P楽しもうぜ?」
抱き締めるように手を広げ、色とりどりの弾幕を展開する。弾速が比較的速い、電力弾だ。
エリー「やだね、すぐに向かうよ。抜かったね、ここからなら幻月たちの背中が狙えるよ…!」
鎌を拾って投げようと構えるエリー。
カルゴ「させると思うかよ」
くるみ「エリーの邪魔はさせない!」
弾幕を発射するが、俺とエリーの間に割り込んできたくるみも弾幕を発射して、相殺してしまう。
カルゴ「へぇ…。悪戯っ子は嫌いじゃねーぜ?」
くるみ「エリー、今よ!」
エリー「わかってるっ!えぇいっ!」
カルゴ「重符『
2人「ッ…!?」
素早さ、つまり移動速度を抑える補助スペルを、2人に向かって発動させた。丁度動きにくくなる絶妙な強さの重力だろう。各個人によって耐える事の出来る重力は違うので、個人によって掛かる重力は違う。耐える力が強ければ強いほど、強く抑えつけられる仕組みだ。
投げられた鎌は再び地面に落ち、エリーはそれを拾いに向かうが、身体が思うように動かず、結局拾うのを諦め弾幕の発射に転向した。2人とも、立つのがやっとという感じだ。
カルゴ「そーそー、俺を倒せば体は軽くなるぜ。頑張って倒してみな」
エリー「身体は動かなくっても…私たちの弾幕で倒してやる…!」
くるみ「でないと、私たちが…!」
幻月と夢月と殴りあっている幽香に目を向ける。幽香に殺されるとでも言いたいのだろう。そして当の幽香は、片手に傘を持っているにも関わらず2人の攻撃を大して受けておらず、足で払ったり傘で刺突したりなど、巧みに攻撃を加えている。格闘戦は少々幻月らに分が悪いのかもしれない。だが、そんなことは幽香と戦っている本人たちがよくわかっているだろう。何か幽香を倒す作戦があるのかもしれない。
カルゴ「幽香の事は
くるみ「ダメだよ…昔も戦って、結局幽香に……負けちゃったんだから…」
カルゴ「…幽香にも勝てるほど、今の幻月たちは一人前さ。なんたって2人だからな」
2人「……?」
幻月「殺す!殺す!!殺す!!殺してやるっ!!何度も何度も楯突いて!目障りなのよアンタ!」
夢月「粉々に打ち砕いてやるッ!!」
叫びながら、2人は幽香に拳による攻撃を浴びせていく。しかし幽香は黙って微笑を湛えたまま、2人の攻撃を受け流して逸らし、偶に反撃する。
双子なだけありとんでもなく息ピッタリなコンビネーションだが、それでも幽香には及ばない。
幽香「ピーピーうるっさいわねぇ…」
真一文字に閉じた傘を振るう幽香。幻月はそれを飛んで回避するが、初速より勢いのついた攻撃を夢月はその腕に喰らってしまう。
鬼に勝るとも劣らない力で振るわれた傘は夢月の腕に大ダメージを与え、腕はミシミシと耳障りな音を出す。
夢月「っっ……腕が…っ!」
幻月「夢月ッ!…お前ええええええええっ!!」
悪魔の肉体すら悲鳴を上げるほどの幽香の怪力。
その出処は不明だが、これでもまだ本気ではないことを、2人ともわかっていた。過去に敗北した時と比べると、これでもまだ弱い。
しかし、弱いからこそ幽香が本気を出さぬうちに倒そうと幻月は蹴りを繰り出す。狙いは正確だ。それ故に幽香は幻月の足の軌道を読み、頭突きでカウンターをする。
幻月「痛ッ…なんて石頭なのっ…」
幽香「うふふ……今回は楽しまず殺すわぁ♡」
幽香は傘を広げ、空中でバランスを崩した幻月にその先を向ける。先端には、ポウッと青白く淡い光が灯る。
幻月「やっば……」
幽香「さようなら♡」
夢月「姉さんッ!!!」
夢月は、持てる力を全て振り絞って幽香に…否、幽香の傘へ手を伸ばして飛びかかった。レーザー発射と、夢月が傘の向きを変えるのと、どちらが早いか─────。
幻月「来ないで、夢月うううううっっっ!!!」
夢月「─────ッッ!!!」
極めて太いレーザーが傘から発射された。夢月の肢体は、レーザーと共に空高く打ち上げられた。その後、ドチュッと嫌な音が響いた。水か何かに濡れた大きな肉を勢いよく地面に叩きつけたかのような、鈍くて重い音。
見れば、夢月は彼方の地面に倒れ伏して、彼女が傘に伸ばしていた右手は肘から先が消えている。そこからは当然ながら多くの血が流れていたが、右腕のみならず頭からも大量の血を流していた。
地面に落ちた夢月は、ピクリとも動かない。
幻月「そ……そん、なぁ…嘘でしょ…?」
レーザーを避けて着地した幻月は小さく呟いた。
涙で歪む視線の先には、血に濡れた夢月がいる。
幽香「あ〜あ、お姉ちゃんを殺し損ねちゃった♡
ま、どーせどっちも殺すから、順番とかどーでも良いんだけどね♡」
キャハハハ、とまるで可笑しいものでも見た時のように幽香は笑う。だがそれが逆に幻月の逆鱗に触れた。
幻月「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ッッ!!!」
彼女は先程よりも強く地面を蹴って、鴉天狗をも超える速さで幽香に殴り掛かる。
幽香「ただ殴るだけじゃ、華が無いわよ♪」
と言いつつも、幽香も幻月に拳を向ける。刹那、2人の拳はぶつかり合い、とてつもない圧が発生して2人の足元にクレーターを作る。
幻月「よくも夢月をっ!よくも、よくもぉぉ!!死ねっ!!死ねえええええっ!!」
金切り声を上げながら、超至近距離であの発狂弾を発射する幻月。全方位に発射されるので幽香に逃げ場は無かった…が、幽香は被弾しなかった。
幽香「危ないわぁ、傘広げてて良かった♪」
幻月「ッ…!」
傘を広げることには、大きく2つの意味がある。
1つ、レーザーを更に太くさせる事。面積を広くする事で発射口を広げるような意味合いがある。そうする事でただでさえ太いレーザーを極限まで太くさせたのだ。
2つ、面積を広くする事で、敵からの弾幕を受け止める為の面積を広げるという意味合いもある。この傘は、風見幽香の傘と同じく弾幕を掻き消すことが可能なほど頑丈な傘である。幽香の強大な妖力を浴びている内に、傘本体も変質していた。
幻月「相変わらず面倒な傘を持ってるわねぇ…」
幽香「これを突破できなければ、あなたに勝ちの目は無いわよ♪」
幻月「上等じゃないのッ!!そんな傘、グッチャグチャの粉々にぶっ壊してやるんだから!!!」
再び発狂弾を発射する幻月だが、やはり、幽香はその悉くを傘で受け止めてしまい、幻月の攻撃が全く彼女に届かない。
幻月(どうしよう…!こんだけ
幽香を倒す術を模索している中で、幻月の耳に、日本語ではない異国の言葉が入る。
カルゴ「
幻月(…逃げろ!?上に!?)
幽香「っ!?なんて言ったの!?」
幻月「『幽香の間抜け面!』って言ったのよ!」
幽香「何ですってぇ!?」
ニッと笑いながら真上に飛び上がる幻月。直後、幻月が居た場所は轟音と共に突き進むレーザー…超電磁砲が焼き払い、その超電磁砲は、そのまま幽香に突き進む。
幽香「ぐっっ─────!!」
当然、幽香は超電磁砲を傘で受け止めて、それによって幽香の傘は完全に破壊されてしまう。
幽香「チッ…何なのあれ……手が痺れた…っ!」
幻月「傘無しじゃあ防ぎようが無いわね!死ね、幽香アアアアアァァッッ!!」
叫ぶと同時に再び発狂弾を発射する。今の彼女にとっては、これが最高の攻撃だ。
幽香「ぎゃああぁあぁぁあああぁぁっっ……」
幽香「っ…痛たた……あ?」
決着がついてから数分後、幽香は目を覚ました。
全身をロープで雁字搦めに縛られた状態で。当然ながらくるみとエリーも縛られてある。こちらは軽くだが。
幻月「やっと目覚めたのね」
夢月「……」
夢月の腕は治癒魔法によって再生している。俺は黙って3人のやり取りを聞いている。今回の事に俺は、あまり関わってはいけないような気がするからだ。
幽香「……何よ。殺すとか息巻いてたくせに」
幻月「死にたいなら殺してあげてもいいわ。でも気絶してるところ殺しても意味無いしぃ?まぁ、あんたが目覚めるまで待っててやったのよ。もし死にたいんなら、今ここで殺すわ」
夢月「選んで。今ここで死ぬか、二度とここには来ないと誓って別な所に行くか」
幽香「……………」
幻月「早く答えてくんない?私たちだってさぁ、そんなに暇じゃないんだけど?」
夢月「死にたいってさ。お兄さん、剣貸して?」
夢月に妖魔雷霊剣を鞘ごと放る。そして、鞘から抜いた剣を幽香の首筋に当てる。
夢月「3秒以内に命乞いしたら、助けてあげる。3、2、い…」
夢月の手に力が入る。刹那、幽香は口を開いた。
幽香「…命を…助けて…」
満足そうに頬を緩めた夢月は剣を鞘に収め、俺にそれを返却する。
幻月「二度とここには来ないと誓うわね?」
幽香「…ええ、誓うわ…館も手下も返す…」
夢月「いやそんなの当たり前だから」
幽香「…ふふっ…そうね…。でも、どこに行けば良いのかしら…」
幻月「そんなの私らの知ったこっちゃ無いわぁ。でもここに、とんでもないお人好しが居るのよ。その人に助けてもらったらどーお?」
わざとらしい口調でそう言った幻月は、俺を見てパチンとウインクした。俺の事らしい。
カルゴ「『幻想郷』の事は知ってるか?そこに、風見幽香っていうお前にそっくりなヤツがいる。その幽香とお前は…多分何不自由無く戦えるから暇しないだろう。幻想郷に来たらどうだ?」
幽香「……私にそっくりな…か……。紹介…してもらえるかしら…?」
カルゴ「ああ、良いよ。ただし幻想郷にはこっちにはない厳しめのルールがある。それを幻想郷の幽香に教えてもらえ」
幽香「ルール……わかったわ」
カルゴ「それじゃ……転移『
幽香の縄を掴んだ俺は、転移魔法で幽香の家へと赴き、こちらの幽香を紹介して共にルールの説明などをした。ルールについては、割と普通に承諾してくれた。「不死身相手なら好きにしていい」という、風見幽香の説明のおかげだと思われる。
それから、意気投合した幽香と風見幽香は、共に風見幽香の家で住むという事で合意したらしい。
それからスキマで夢幻世界へ戻った俺だったが、そこに夢幻姉妹、くるみ、エリーの姿は無く…。
試しに夢幻館の前に行ってみれば、中から4人の楽しそうな笑い声が聞こえてきたので、俺は静かにその場から退散した。
スペルカードルールは、あくまでも幻想郷独自のルール。だから、月人である依姫は、その存在を知らなかった。(漫画版儚月抄でそれがわかる)
鈴瑚と清蘭は地上と関わりがあるから、スペルを持ってたり作ってたりするのは不思議では無い。
(団子屋を地上で売り出したのは紺珠伝前だっけ後だっけ?…後だった気がする…覚えてない…)
ならば何故サグメはスペルを持ってるのだろう。
そこについて考えた俺は「地上への興味の表れ」だと捉えました。
なので本作品のサグメは依姫より多角的に物事を捉えられる良い人です。そんでかなり美人です。
近々、慧音とのデートを書きます。