ある日俺は、蝙蝠になり梁にぶら下がっていた。
いつも通りの、抜き打ち授業参観である。しかし抜き打ちとは言っても、俺の強い妖気は隠しようがなく、寺子屋にいるおよそ半数の者は、それを感知して俺の存在に気付いていた。
慧音、巫月、ルーミアがこれに当たる。または、ミスティアも気付いている……のかもしれない。慧音は、彼の存在に気付いてから知らず知らずのうちに頬が緩み、巫月はより一層、元気になる。ルーミアは、気付いていないフリをしているが、内心では「また来てるのね、親バカさん♪」と、考えていたりする。
慧音「今日は射命丸文の所じゃなかったか?」
子供たちが帰り、授業の片付けをしながら、未だ梁に居る俺に問う。文の所に泊まる日は、昼間は基本的に時間がある。里に取材中なのだろうが…里には極力行きたくはない。もしも文や穹に手を出せば、その人間だけ〆るだろう。
カルゴ「昼間は、割と時間があるのさ。だから、3人の様子を見に来たんだよ」
人型に戻った俺はポケットに手を入れながらそう答える。人数が減ったからか熱気があまり無く、少し寒い。
慧音「成程。その3人というのは、巫月と私と、ミスティアの事だろう?」
カルゴ「ご明察」
慧音「たく…幼子にも平気で手出しをするとは、本当に恐ろしい奴だ…」
教卓で資料をトントンと揃えながら、苦笑混じりにそう感想を漏らす。
カルゴ「幼子っつってもよ、見た目だけだろう?中身はそこまで言うほど子供じゃないさ。…
慧音「そうかもしれんな。それで、今日は巫月を送らないのか?」
カルゴ「ああ。ちょっと、慧音に用があってさ。突然で驚くかもだけど…」
慧音「…?」
カルゴ「デートしないか?慧音の好きな所でさ」
慧音「でっ…でで、デート!?デートってその…あれか!?手を繋いで共に外出するという!?」
カルゴ「あ、ああ…」
あまりの慌てように少したじろいでしまった俺。ここまで平常心を乱すとは予想していなかった。
カルゴ「ほら、付き合ってから恋人らしい事ってあんましてないだろ?思い返してみりゃまともに会った回数も他の彼女らに比べたらまだ少ねぇ。そこで俺は思ったんだ。デートはどうかなって」
慧音「うぅ……あ、改めて言われると…何だか、ちょっとばかり気恥ずかしいな…///」
整えた資料を置いて、モジモジと指を絡ませる。
慧音は押せばオチるタイプなのでガンガン押す。
カルゴ「で、どうよ?行かね?」
慧音「嬉しい誘いだが…その…ほぼ毎日寺子屋はあるし、私の休日がそっちの暇な時と被るとは、到底思えないんだが…」
カルゴ「それなら心配するな。今から行くから」
慧音「え゙っ…急だな…」
やっぱりそうか〜…そうだと思ったよ…。いや、ここで引いてはならん、もっと押せ押せ!
カルゴ「外の世界…ならどうだ?前、外の世界の寺子屋を見てみたいって言ってたろ?」
慧音「それなら尚更、ゆっくり見たいんだが…」
カルゴ「…ここだけの話、幻想郷と外の世界では少し時間の流れ方が違うんだ。だからこっちでは昼間でも向こうでは夜だったり朝だったりする。今からでも十分に見学出来るんだ」
慧音「そ、そうなのか?そんなのは初耳だな…。しかし、行ったり来たりなんてして、時差ボケは大丈夫なのだろうか?」
カルゴ「あぁ、結界を越えた時点で体のリズムは行き先のリズムに変わる。俺が幻想入りした時、すぐに幻想郷のリズムに順応出来たのも、それが原因だ」
慧音「便利すぎやしないか…?」
カルゴ「まー、二重に張られてるしなぁ。それに結界を張った本人も外に行ったりしてんだから、そういう風にしないと自分のリズムも崩れる」
慧音「あぁ、結界を張った者が『自分のために』設定したものを、私達が利用するというわけか」
カルゴ「そ。だから向こうで長時間過ごしても、こちらではそんなに時間が経ってないって事さ」
慧音「それは良いな。資料を家に置いたらすぐに出発したい。直ぐに置いてこy……あれ?」
カルゴ「もう居間に置いといたよ。この前慧音の家に行って、ある程度は把握してるからね」
慧音「おお…!では直ぐに行こう!」
カルゴ「おぉーよ!」
手を取り合った俺と慧音は、俺が開いたスキマを越えて、外の世界へと飛び出した。
12時台に確認した時、UAが114515でしたw