マッ○の中は、朝から行列ができていた。朝からここまで並ぶとは予想していなかっただけに俺も驚いてしまった。軽く3、40人はこえている。
カルゴ「何にする?」
カウンターの上のメニューを指さしながら、隣の慧音に問うてみる。メニューまでは遠いが、俺と慧音の眼ならば見える。人外ならではの視力だ。まぁ、今の慧音は人間形態だが…満月の夜に変身するのなら、彼女は半妖みたいなものだろう。
慧音「えっ、と…エスカルゴのオススメは…?」
カルゴ「フィレオとテリヤキかなぁ。フィレオはアッサリしててテリヤキは少し味が濃いめかな。まだあるみたいだから安心したぜ…」
人気商品は、ずっと残っているらしい。チーズも捨て難いが……フィレオとテリヤキには負ける。グラコロの季節では無いのが残念だ。
慧音「ふぃれお…てりやき…むぅ、迷うな……。どれも美味しそうだ…」
カルゴ「セットはどうする?LMS…大きいのと普通のと小さいのとあるけど。
へぇ、俺が居た頃とは違って、ポテトとハッシュポテトで選べるんだ。朝マッ○なのに。イイね。まぁ、普通のポテトがいい人も居るんだろうな。
慧音「えっえっ、セットもつくのか?あの円柱のパンのようなものだけではなく?」
カルゴ「メニューに書いてあるぞ」
慧音「あっ、本当だ…すっかり見落としていた…我ながら浮かれ過ぎだな…」
カルゴ「初めてだったら仕方ないさ。まだ考える時間は十分にある、ゆっくり考えようぜ」
慧音「そうさせてもらおう…」
なんて言ってる俺も、フィレオとテリヤキで迷うから早いとこ決めねーと…うーんどっちにしよ…テリヤキにしようかなぁ?
店員「ご注文は何になさいますか?」
カルゴ「テリヤキバーガーLセットの、オレンジジュース氷抜き1つ。慧音は?」
慧音「ふぃ、ふぃれおふぃっしゅ、の…えっと…彼と同じセットを1つ、で…///」
店員「えー…テリヤキバーガーLセットオレンジジュース氷抜きがお1つで、フィレオフィッシュバーガーLセットの、オレンジジュース氷抜きがお1つ…2XXX円になります」
カルゴ「…はい」
いくらなんでも高すぎるだろオイ。
店員「丁度、お預かりします。番号札はこちらになります、番号を呼ばれましたら隣のカウンターにてお品物をお受け取り下さい」
番号札を受け取り、俺と慧音はカウンター近くの席に座る。Lセットにしたが…果たして今の俺がL1つで足りるのだろうか。足りない気がする。
だが物価が高騰しているこの世の中で、あまりに多くの物を食べるのは、財布に良くない。いくら貯蓄が数百億あったとしてもだ。適当に使えば、一瞬で溶けて無くなるだろう。ガチャと同じだ。
店員「495番のお客様ー!495番のお客様ー!」
カルゴ「お。行ってくる」
慧音「早くないか?私が行く」
カルゴ「良いって、慧音は待ってて」
慧音「何事も経験だ。やらせてくれ」
カルゴ「…じゃあ俺も行く」
慧音「席がとられてしまうだろう」
カルゴ「あ」
結局、慧音がセットを取りに行った。俺はそれを目で追って、害虫が寄り付かないか、見張った。もし寄り付けば床伝いに電気を流して悶絶させたところだが、幸いにも害虫は寄り付かなかった。
慧音「お待たせ……よいしょっと…」
カルゴ「サンキュ。重かったろ?」
慧音「主にジュースがな。Lセット?というのはこんなにも重いんだな」
カルゴ「デカいからね」
慧音「ぽてととやらも、他の人が頼んでいるSやMに比べると、Lはかなり大きいのがわかるな。だが箸が無いな…もらってくる」
カルゴ「いや、これは手で食べるんだよ」
慧音「え…手で食べるのか?油がすごいだろう。この紙を見れば脂取りの紙のようになってるのがわかるぞ」
カルゴ「食べ終わったら手を洗えばいい。見てみ他の人。みんな、手を使って食べてるだろう?」
慧音「ふむ…。郷に入っては郷に従えと言うし、私もそうしよう。いただきます」
カルゴ「いただきまーす」
やっぱ慧音はどこでも礼儀正しいんだな…焦って忘れるかと思ってた。
カルゴ「先に食べるのは、バーガー…パンっぽいやつの方がいいよ。油物を先に食べると、そっちばかり吸収されて太りやすくなる。その間ポテトを紙の上に出して、油を吸わせるといい」
慧音「成程。先に食べれば、より先に消化・吸収されるからな」
カルゴ「そゆこと。あっ、バーガーは包みの紙を使ってこう持てるぞ」
慧音「ふむ…だがぽてとで手が汚れるんだろう?なら素手で食べるさ」
カルゴ「それもそーか」
トレイにペーパーを広げ、ポテトをザアッと広げバーガーを1口齧る慧音。
慧音「ん…美味しい…!!」
カルゴ「へへっ、そーだろ」
慧音「!中の四角の中に、何か白いものが入っているぞ?何だ、これは…」
カルゴ「その四角いヤツはフライだよ。白いのは魚だ。それはフィレオ“フィッシュ”だからね」
慧音「さ、魚をこんな風に加工するのか…本当に凄いんだな、外の技術は…」
カルゴ「だろ。けど、河童の技術もこれと同じかこれより凄いんだぞ?」
慧音「河童の技術がすごいのは知っていたが…、まさか外に及ぶとはな…」
全くだよ慧音、俺も同じ意見だ。ていうかある意味では外以上の技術を持ってるしな…。
カルゴ「口についてるぞ」
慧音「んっ…///」
向かいの彼女の口元にタルタルソースがついてるのを見た俺は、指でそれを拭って舐め取る。周囲の人間の目が鋭く刺さる。
人間「リア充アピール乙……クソッ」
人間「リアルでやるのかあれ…マジかよ…もはや漫画だろあんなの…」
人間「リア充爆ぜろ」
あーよく聞こえる…デビルイヤーはマジ便利だ。
小声で話してるのに普通に聞こえてくるねぇ…。
慧音は…聞こえてはいないか。なら、良かった。
カルゴ「お、長いポテト発見。15はあるわこれ」
慧音「長いのを見つけると、何故か嬉しいな」
カルゴ「だよな。どうせなら2人で食わない?」
慧音「え……あ、お前まさかアレか!?ポッキーゲームをこれで再現しようとしてるのか!?」
何で知ってるん…あぁ、ハロウィンパーティーで俺が他の子とやってるのを見てたんだな。
カルゴ「ダメ?」
慧音「ダメじゃないが周りを見ろ、こんな大勢の人が居る中でそんなこと…!」
カルゴ「じゃあしょうがないか、ポテトゲームは諦めよっと」
慧音「そうだ、ここでやるのは────っ!?」
小さいテーブルに身を乗り出し、軽く慧音の唇にキスをする。極めて短時間で、しかしその感触を楽しむ間は作った。時間にしたら1秒前後だ。
人間「うわっ、こんな所でキスしてるぞ…!?」
人間「女の方めっちゃ驚いてる…てか綺麗だな」
人間「こんな所でキスするなんて大胆すぎる…」
シャッター音めっちゃ聞こえてくるんだが…何かヤバいなこれ…。
カルゴ「相変わらず柔らかい唇だったよ、慧音」
慧音「お前は恥じらいというものがないのか…?何だってこんな所で出来るのか…疑問だ……///」
カルゴ「慧音の反応を見てみたくて。照れる顔はいつにも増して可愛らしいよ」
慧音「…何にせよ、突然キスしたんだ。私は…」
ガタンと席を立ち、その不思議な形の帽子を取りテーブルの空いてる場所に置いて、俺の頭に手を伸ばす。俺は抵抗せず、その両手を受け入れる。
人間「おっ!?次は彼女からか!?」
人間「アツいねぇお2人さん!ヒューヒュー!」
あるぇ…ノリのいい人も居る…。何れは幻想郷の人間もこんな風になるのかな。それならいいな。
カルゴ「えと…何するんだ?」
慧音「驚かせたバツとしてお前を頭突く」
カルゴ「ファッ!?」
慧音「覚悟はいいな?」
カルゴ「えちょ、待っ────」
次の瞬間、ゴスッともズガッとも聞こえるような鈍い音が店内に響き渡り、俺は一瞬だけ、完全に気を失った。