人間「きゃあああああああッ!」
人間「うわっ、倒れた!!」
人間「血!!デコから血ィ出てる!!」
慧音「え…あれ?ちょっと強すぎたか…?」
やってしまった…。まさか、羞恥心からここまで力んでしまうとは。それにしても、かなり頑丈なエスカルゴでも気絶するのか…。何だか意外だ。
コイツの事だ、「痛ったァ〜……ちょっと今のは強すぎるぞ慧音ぇ〜…」とか言って、平然と食べ続けるものと思っていたんだが…。
人間「鈍器だろこれ!いくら石頭でもこんな風になる訳ねぇ!大の男が気絶だぞ!?」
人間「けっ、警察だ警察!」
人間「ていうかこの男の背中の膨らみは何だ?」
まずい、それは吸血鬼の翼だ!
慧音「触るな!!」
人間「ヒィィィイイッ!!!」
声を張り上げると、その男は顔を青ざめさせて、私から勢いよく後ずさって、尻もちをついた。
人間「ちょ、ガチの殺人現場に居合わせちまったんじゃねーかコレ…」
慧音「殺じ…違う、殺してなんかない!」
まずいことになった、このままだと私は罪人扱いされて二度と幻想郷に戻れなくなるのでは…?
兎も角、早くエスカルゴを起こさねば。ったく、いつまで眠っているんだか。
慧音「そろそろ起きてくれ…よっ!!」
ドンッと机が揺れ、ぽてと、ばぁがぁの包み紙、ジュースが一瞬だけ空中に舞う。力加減はした。テーブルも壊れてはいない。ヒビは入ったが。
人間「うわぁまた頭突きした!?」
人間「追い討ち!?ちんたらしてんなよ警察!!マジで早く来いよ!!」
慧音「おかしいな…」
人間「いやおかしいのはアンタだよ!?」
慧音「何?」
人間「ヒィィィッ!」
しかし次の瞬間、机に突っ伏していた彼の肉体が気化し、血の跡も残さずに全てが消えた。
人間「えっ!?今何が…」
人間「全部消えた…!?」
慧音「あ……!」
その時、カウンター上に、バチバチと放電する、巨大な蝙蝠が出現した。
んーと、どういう状況なんだろうな…。一旦気絶したからよく覚えてないんだが…人混みが凄ェ。逃げようとしなかったのか?
人間「うわああああ!こっちにいるぅぅぅ!!」
カウンターに仁王立ちする俺に気付いた人間は、今度は慧音から目を離してこちらに目を移した。さて、何と言えば誤魔化せるだろうか…。もう、こうなったら適当に言うしかないだろう。ノリと勢いでピンチをチャンスにだ。
カルゴ「瞬間移動のイリュージョン、驚いた!?驚いたよなぁ!」
人間「い、イリュージョン…?」
人間「タネがわからない…。テレビでやるのと、流れも何もかも違うぞ…」
人間「そもそも今の黄色い蝙蝠は…?」
当然の反応ですねわかります。苦しい言い訳ならもう思いついた。普通の嘘は苦手だがその場凌ぎの嘘なら割と得意だからな。
カルゴ「あー…えっと、まず、さっきテーブルに倒れていた俺、あれは残像だ」
人間「残像!?いやいやいやいや、そんなわけが無いだろう!あんな鮮明な残像があるかよ!!」
カルゴ「残像って言い方は適切じゃなかったか。立体ホログラムだ!」
俺が居た頃は立体ホログラムなんてアレだったが今の世の中なら通じるはずだ。
人間「なっ、なら、投影機はどこにあるんだ!?それにあの音、女の動き、全部リアルだった!」
カルゴ「音は録音、動きは練習したから!自信が無きゃ、こんな所で出張公演しないだろう?」
人間「ま、まぁ……確かに…」
カルゴ「投影機は、テーブルに置いてある彼女の帽子だ!不思議な形だと思っただろう?」
人間「なるほど…!!」
人間「でもさっきの黄色い蝙蝠は何だ?」
説明出来ない。そう思った時、慧音がフォローをしてくれた。
慧音「彼の背中の膨らみ、それが仕掛けだ」
人間達「な、なるほど……」
カルゴ「突然の事で、困惑もしてるだろう!だが良い反応を貰えた、諸君には感謝する!ついでにネットにアップしてくれても構わないぞ!」
人間達(もうしてるし…)
人間「目が紅と黄色って何なの…?」
カルゴ「カラコンだ!」
人間「今どきそんなの売ってなくない?」
人間「ねぇ?」
カルゴ「えっ」
人間「着色に使われる色素が目に悪影響を与えることが発覚して数十年前から販売終了して、即刻回収されたはずだけど…」
人間「ずっと昔の製品を今更…?」
えっえっ…あ…ヤバくね!?そんなん知らんよ!
カラコンが販売終了してるの!?意味わかんな!
慧音「いっ、異国で買ってきたんだ!私も彼も、日本人ではないからな!ほら、私の髪を見れば、一目瞭然だろう?」
人間「それ地毛だったの!?」
慧音「地毛だ!」
人間「日本語うますぎじゃん!」
人間「ていうか異国なんて言い方する…?」
人間「しないしない…」
慧音「えっ」
どんどんボロが出てくるよおおおおお!これもうどうすりゃいいのかわかんねぇ!俺ら大ピンチ!
内心で焦っていると、パトカーのサイレンが聞こえてきた。先程呼ばれた警察が来たらしい。
カルゴ「えーと…だな……。よしっ、最後に姿を消すイリュージョンでおさらばしよう!」
人間「おい、逃げんのか!?」
客や店員達の注目を浴びながら、俺はカウンターから飛び降りる。
カルゴ「アシスタント、帽子を持って此方へ!」
慧音「あ、あぁ…」
カルゴ「それでは皆さん、ご機嫌ようっ!!また逢う日まで!転移『
慧音の手を取り、声高々にスペルの詠唱をして、俺と慧音は次の目的地である中学校の屋上へ瞬間移動した。
人間「うわぁ消えた!?」
人間「何だったんだ今の…」
警官達「警察だ!…あれ、犯人は…」
人間「今消えた!おせーんだよ警察!」
警官「消えた!?」
人間「オマワリさん、こいつらだよ、こいつら!写真撮ってたから私!」
人間「俺も俺も!ほら!」
警官「ん……?この男の顔、どこかで……?確かずっと前にニュースで見たような……」
警官「北朝鮮、軍の基地、破壊…」
一同「!!!」
年配警官「待て…それよりもずっと前……第三次世界大戦を引き起こしたあの破壊生物にも…?」
一同「!!!!!」
カルゴ「あー…すげー焦ったぜ…」
慧音「全くだ…異国という言葉はそんなに珍しいものなのか?」
カルゴ「普通外国って言うからね。今もらしい」
慧音「成程…。殺人罪を着せられる所だったぞ…恐ろしい…」
カルゴ「頭突き強すぎたんだよ…。あ、そーだ、ポテト取り寄せて…っと」
スキマでトレイごと取り寄せた俺は、生暖かい風に吹かれながら朝食を再開した。
慧音「スキマ開いたとき、破壊生物だの何だのと聞こえてきたが…何なんだ?」
カルゴ「知らね。勝手に言わせとけ」
慧音「ふふっ、そうだな。…所でここは?見た所高い建物の上らしいが…」
カルゴ「食べたら来る予定だった、俺の中学校…第二の寺子屋だ」
目の前の錆びた緑色のフェンスの下には、狭めの校庭がある。消えかけた野球の点数板、1つしかないサッカーゴール、校庭を
四方は山に囲まれていて、北側には太い川が一筋流れている。まさに山の中の学校である。ここは盆地なので、夏は最悪だ。しかし、虫取りはよく出来る。良くも悪くも田舎である。
慧音「そうなのか…だがそこに扉があるぞ、誰もここに来ないのか?」
カルゴ「鍵かかってるから安心していいよ。扉の立て付けもクッッソ悪いから。体当たりしないと開けられないんだ、ここ」
慧音「ほ、ほう…。随分と野蛮だったんだな……体当たりだなんて…」
カルゴ「……その辺は、食べ終わったら話すよ」
慧音「ああ、楽しみにしてる」
食べ終わった俺達は、朝練組が来る前にとっとと案内を済ませようとまずは校門に降り立った。
食べ終わったトレイは、スキマで先程使っていた席に運んだとさ、おしまい。
ていうかまたネットが騒がしくなるよねこれは。
破壊生物・エスカルゴ…。人間の記憶には根強く残っているぞ、あの悲劇…w