カルゴ「…ここが、教師や生徒の送迎の時に通る通路。中途半端に高い台地に学校があるからね、少し急な坂になってるんだ、この校門」
慧音「小学校とやらとは仕組みが違うんだな…と思ったが、これは稀な例なのか?」
カルゴ「うん。普通、こんな所に作らないから。もう少し平地にしてから建てるからね」
懐かしき母校を見上げ1人で呟くように教える。
懐かしい。勉強や部活、抗争、ピアノなどの習い事に励んでいたあの頃の事が鮮明に思い出せる。
慧音「ふむ…しかしここは、二階建てなんだな。窓を見るに。…だが幻想郷の二階建てとは高さが全然違うな。三階建てじゃないのか…?」
校門は校舎から見て東側にあるので、校門から、西側にある校舎を見上げて、何階建てか気にするような素振りを見せる慧音。
カルゴ「そこは天井の高さの違いだな」
慧音「ああ、成程…」
カルゴ「んで、この校門さ、L字型に曲がってるだろ?その影の部分は不良の溜まり場なんだよ。今は朝だから誰も居ないけどね」
慧音「不良…あぁ、ならず者か」
カルゴ「俺も昔は、そのならず者の1人でさ…。確か石を彫って書き残した言葉があったはずだ」
慧音「彫る!?石壁をなにで彫ったんだ!?」
カルゴ「石工の道具が学校内にあるんだ。それを使って、トンカントンカン少しずつやったんだ」
慧音「授業をサボるのは良くないぞ」
カルゴ「ならず者にその言葉は通じないよ慧音。まぁ俺は、授業は受けてたんだよ。あくまでも、昼休みや休み時間に学校を抜け出して…少しずつ校門を掘ってたんだよね。本当はダメだけどさ」
慧音「ん?休み時間なのに、学校から出てはダメなのか?何故だ?」
カルゴ「そういう決まりなんだ」
慧音「よく分からないな……。授業さえ真面目に受けてくれれば休み時間は自由にさせてもいいと思うんだが…。私がおかしいのか…?」
カルゴ「ううん、慧音はおかしくないよ。ただ、子供を押し込めるその変な規則が変だと思うよ。で、校門前見てみ」
俺がそう言って指さす先には、白の自動販売機が2つ並んで立っている。ジョー○アだ。
慧音「? 自動販売機か?」
カルゴ「学校の前にあるのに学校帰りに飲み物を買っちゃダメなんだ。買い食い(飲み)禁止でさ」
慧音「は…?なら、何で学校の前にあるんだ?」
カルゴ「それは…わからない。あの誘惑に勝てるのは、一部の超優等生だけだ」
慧音「うぅ…手軽に飲み物を買えるのに、それがいけない事だとは…私は我慢できるだろうか…」
カルゴ「あったら買うよな?」
慧音「買うだろう…」
カルゴ「だよなぁ…」
そらみろクソバカ教員共!すげー真面目な慧音も我慢できないってよ!なんで自販機置いてんだ!ていうか俺が居た頃は自販機1つだったのに!!サラッと2つに増えてるじゃんか!…まさか今は買い食い(飲み)OKなんてワケじゃ無いよな!?
カルゴ「で、L字の裏に……やっぱ残ってたか」
慧音「本当だ、大きな文字が彫られているな…。少し風化しているが読めないことは無いな。何故寺子屋側はこれを直さないんだ?」
カルゴ「単純な話だ。お金が無いんだよ、ここ。貧乏学校でさ。掃除道具すらまともに無いから、生徒が各家庭から持ち寄ってる。教材等はどれも中古で、廃校になった所から貰ってるんだよ」
慧音「…そうなのか…」
少子高齢化の影響を受けるのは、都会ではなく、こういった地方の更に端にある田舎。もう学校の周辺には大して人間は住んでいない。交通の便が悪いのだからわざわざこんな所に引っ越してくる物好きも居まい。
カルゴ「彫られてる文字、読んでみ?」
慧音「えっ…と……」
零ㅤ神ㅤ愚ㅤ初ㅤ代ㅤ総ㅤ長
爆ㅤ走ㅤのㅤ狂ㅤ戦ㅤ士
エㅤスㅤカㅤルㅤゴㅤ様
こㅤこㅤにㅤあㅤりㅤ!ㅤ!
慧音「ゼロ…カミ…グ…?」
カルゴ「それでレーシングって読むんだ」
慧音「当て字か」
カルゴ「うん」
あ、そうか…〇中防衛無職少年愚連隊の部分は、これを彫ったあとに「なんかカッコよくね!?」みてーなノリでつけたから、彫ってねーんだ。
慧音「初代総長…?」
カルゴ「俺がチームの創設者だ」
慧音「ならず者グループのか…?何で、真面目なお前が…」
カルゴ「勉強からくるストレスが主な理由だね。やりたくない事をやらされてさ……だけど教師に逆らえば母さんにガッカリされる…。それだけは避けたかったからさ、表向きでは真面目な生徒を演じて、裏で密かに素行不良の生徒に声掛けて、十数人のちっさいチームを作ったんだ」
見た目真面目で成績も優秀な俺の誘いに、意外に思ったヤツが多かったんだよ…懐かしい。今頃、かなり老いてるか死んでるよな…。
慧音「…母親をガッカリさせたくない…か。だが教師にはバレなかったのか?」
カルゴ「バレなかったな。授業中に、どうしても抜けなきゃいけなかった時は、トイレに行くって言って抜けたからね」
慧音「あー……悪い奴だな、お前は。文字は?」
カルゴ「俺が通ってた頃はさ、ここに小さい木があってね。文字が丁度隠れてたんだよ。わざわざ木と壁に挟まれるヤツなんて居ないだろ?だから文字は伐採までバレることはなかった」
まさに、「秘密の溜まり場」だったからな。
慧音「爆走の狂戦士っていうのは?」
カルゴ「二つ名だよ。幻想郷にもあるだろう?」
慧音「あ〜」
カルゴ「この頃は『カッコイイ二つ名だぜ!!』
って思ってたけど…何か恥ずい…黒歴史かも…。雷速の吸血鬼、アマルガムの吸血鬼の方がまだカッコイイわ…」
ローバイで走るのが誰よりも早かったんだよな。
今の俺が乗ったら力加減できなくて壊すかもな。
細いもん、ロードバイクって。
慧音(あまり変わってないような…。ネーミングセンスは成長してないんだな…)
カルゴ「顔になにか付いてるか?」
慧音「いいや、何でもない。あと、チームなんて作って何をしていたんだ?」
カルゴ「主に、学校生活の愚痴を言ったり…他校から喧嘩売られたら買ったりだね。自分らからは絶対売らなかった」
慧音「里のならず者たちは無銭飲食を平気で行うと聞くが…」
カルゴ「俺らはしてないよ。こんな小さい町だ、そんな事をすれば噂はすぐ広まってバレるから。仮にバレなかったとしても犯罪は絶対しないよ。俺らが行う悪事は『校則違反』だけだからな」
暴行罪?ナニソレオイシイノ?
慧音「成程。自警団の者に捕まるような事はしなかったか?」
カルゴ「ああ。
慧音「はは……それなら良い。もししていたら、今ここで説教する所だったぞ」
カルゴ「別れを言い渡されるかと思った…」
慧音「悪い事をしていたのなら、それを正すのが彼女の役目だ。別れるなんてとんでもない」
カルゴ「…サンキュ。なんか、話して良かった」
慧音「?気が楽になったなら良かったよ」
どこまでも教師だなぁ、慧音って…。
生徒「はよーっす」
生徒「ういー」
慧音「ん?」
カルゴ「朝練にきた生徒だ。俺たちも移動しよ」
慧音「そうだな」
魔力回復薬を飲んだ俺は、第三の寺子屋…かつて俺が破壊した、高専へと瞬間移動した。