カルゴ「…ここが、俺が最後に通った寺子屋だ。正式名称は長すぎて、俺自身が覚えてないから、その説明は省かせてもらうけどね」
慧音「うおおおおおっ…何だここは、今までとは全然雰囲気が違うぞ…っ…!!」
学寮の屋根に瞬間移動した俺は、そこから慧音に敷地内を一望させる。見渡す限りの建物、建物、建物である。大抵、どの建物も五階建てだ。
どれも新しく綺麗で敷地内はアスファルトで舗装されている。この学寮が二階建てから三階建てになっているのには驚いたが。
それに、どの建物も俺がいた頃より比較的新しいようにも見える。何故だろうか。総とっかえでもしたのだろうか。
慧音「一体何だ!?寺子屋がここまで大きい必要なんてあるのか!?」
カルゴ「ここは、主に16歳から21歳まで通う国で運営している特別な寺子屋なんだ」
主に、と付けたのは、毎年留年生が多いからだ。
高専は、進級するためのレベルが少し高いのだ。
慧音「5年間通うにしてもここまで規模が大きい必要があるようには思えない…。砂の広場なんて2つもあるじゃないか…」
グラウンドか。まぁ普通は1つだからな。
カルゴ「聞きたいことは沢山あるだろう。何から聞きたい?知ってる範囲なら全部話すよ」
慧音「国で運営している…と言ったな?寺子屋は主に里全体や個人で運営するものでは無いのか?運営の規模が大きすぎる」
カルゴ「ここは優秀な人材を育てるための施設。それだけのために、国そのものが動いて、規模が大きい施設を作って、
慧音「優秀な人材のため…か。ただ勉学を教えるだけでは無いのだな…。だが何の分野での優秀な人材なんだ?分野にも種類があるだろう」
カルゴ「この寺子屋では、医学に近い『化学』、河童の技術に近い『機械』、機械に似てるが少し専門的な『電気・電子』、建設の為の『土木』、英語と日本語を追求する『ビジネスコミュニケーション』、略して『ビジコミ』。この5つの分野での優秀な人材を育ててるんだ」
慧音「聞き慣れない言葉ばかりだな…」
カルゴ「まぁね。他には?」
慧音「うーん…気になる物が多すぎてな…何から聞けばいいものやら迷っている…」
カルゴ「それもそうだな。…それじゃ、そろそろ授業が始まる頃だから、潜入してみよっか」
慧音「はぁ!?サラッと何言っているんだ!?」
カルゴ「授業風景、ついでに見ていかないか?」
慧音「き、気にはなるが…どうやって…?」
カルゴ「この光学迷彩スーツを慧音が着て、俺が蝙蝠になって案内すればいい。簡単だろう?扉があればそれは慧音が開けてくれればいい。それか教室には入らずに、外から覗く程度で、とかさ」
慧音「む、むぅ…。では、外から覗こう…。あ、今のうちに聞いておくが、声は隠せるのか?」
カルゴ「いや、隠せないよ。あと俺を見失うな。気配で追えるからと油断しないでくれ。ここは、本当に入り組んでいるからな。俺が知ってる構造だったらの話だがな」
慧音「わかった、気をつけよう」
カルゴ「隠密『スカーレットデビル』」
それからおよそ4時間、俺と慧音はただひたすら各クラスの授業風景を窓の外から観察した。
気配で慧音をそばに感じ、時々休憩を挟みながら見学してまわった俺たちは、昼飯を食べに学食へやってきた。念のために慧音に光学迷彩スーツを着せ、俺自身はそれの模造品を纏っている。
漆黒のローブを纏う2人など怪しさ満点…だが、高専なら大丈夫だ。
慧音「な、なぁ…普通に入っているが、部外者が勝手に入っても良かったのか?」
カルゴ「高専の学食は、ほぼ常に解放してるよ。現に入口まで来てるのに何も言われないだろ?」
慧音「ま、まぁな…」
それとも、学生に思われているのかもしれない。
俺も慧音も、見た目は高校生〜大人だ。だから、もしそれならそれで、嬉しい勘違いだ。
カルゴ「入口前に券売機ってのがあるからそこで券を買って、中に持って行くんだ」
慧音「え…。お金は?」
カルゴ「券を買う時に払う」
慧音「券が食べ物の代わり…ってことか?」
カルゴ「うん、そういうこと」
造りはガラッと変わっているが、券売機がある所を見るとそこは変わっていないらしい。
カルゴ「俺は〜…天丼にしよ」
慧音「私は…チキンカレーにしよう」
カルゴ「お、慧音はカレー?ここのは美味いぞ。まぁどれも美味いんだけどさ」
迷わずボタンを押した慧音。カレーなら紅魔館で行ったパーティー等で食べた事があるのだろう。
そして、券を料理番のオバサンに渡そうとした、その時。またもや、予想だにしない出来事が俺と慧音を襲った。
受付「学生証の提示をお願いします」
カルゴ「???」
レジで商品をピッとするT字の道具を取り出し、そんな事を言われた俺たち。当然困惑する。
カルゴ「あ、自分ら一般なんですけども…」
受付「あらま…。一般の方は、数年前から学食の使用は禁止ですよ?」
カルゴ「えー…日本の友人にここの学食は美味いと教えてもらったんですけど…」
動揺するも、それを全く出さずに会話を続ける。
一般利用が禁止なら貼り紙などが欲しかった…と心の中で八つ当たりしてみる。
受付「あら、あなた外国の方?そういえば、目が凄い色してるわね。
カルゴ「それは…わかりません。クォーターやら何やらよくわかりませんが、色んな血が流れてるらしくって…目が変色してるっぽいんです」
受付「へぇ〜…色んな血が混ざると目が凄い色になるのねぇ…。流石にそんな人体実験紛いな事はお偉いさんもしないから、世界に知れ渡ってないんじゃないかしら」
カルゴ「あ、あははは……」
受付「んまぁ……2人共見た目若いから、学生で通るかしら。老けた学生もいることだし」
カルゴ「すみません、ありがとうございます」
慧音「お願いします」
券を渡し、近くの席に腰を下ろす。どうやら俺と慧音は外国人で通るらしい。
慧音「焦ったじゃないか…」
カルゴ「悪い…俺もこれは知らなかったんだ…。まぁいざとなったら瞬間移動で逃げたけどさ…」
慧音「悪用だな…」
カルゴ「ははは……。あとさ、食べ終わったら、行きたい所があるんだけどイイかな?高専からは出ることになるけど…」
慧音「ああ、大丈夫だぞ。もう粗方見たからな。ただ、体育というのは興味深かったな…是非とも私の授業にも取り入れたい」
カルゴ「おー」
生徒たちが仲良く話しながら食べている中、俺と慧音は少しイチャつきながらもまったりと天丼、チキンカレーを食べ終え、食器を返却する。
カルけね「ご馳走様でした」
受付「今度からは気を付けるんだよ」
カルゴ「はい」
学食から出て、建物からも出た俺たちは、近くに誰も居ないことを確認した上で屋根の上に跳ぶ。
カルゴ「ふー、食べた食べた…」
慧音「悪いな、また奢らせてしまって…幻想郷に帰ったら返すから…」
カルゴ「良いっての、お金とか気にすんな。まだそんなに使っちゃいないよ」
慧音「そう…なのか…?幻想郷とは物価がかなり違うようだが…」
カルゴ「大丈夫だって。奢らせて?」
慧音「う…ん……わかった、甘える事にしよう」
カルゴ「サンキュ。じゃ、次行こうぜ」
慧音「どこに行くんだ?」
カルゴ「んーとね…ここの近辺にラブホテルっていうのがあってさ」
慧音「鈴奈庵のゴシップ誌で読んだことあるぞ…大人しか入れない聖域だろう?」
カルゴ「聖域!?」
慧音「そう書かれていたが」
カルゴ「いやー…ラブホテルっていうのは、主にアレをする所なんだよね…」
慧音「アレって……アレか?前に、ミスティアと3人でヤッた…アレ?」
カルゴ「そうそれ」
慧音「っ…な、成程…つまり、私とヤリたいと…そういう事だな…?///」
カルゴ「そうなる。…実は俺、入った事ないんだよね、ラブホテル。大人になる前に幻想入りしたからさ」
慧音「! 初めてなのか?」
カルゴ「うん」
慧音「…私がお前の初めて…ふふっ、そうか…。よし、行こう!」
カルゴ「よっしゃ!じゃあ、案内するから慧音はまた光学迷彩スーツオンにして、ついてきて!」
慧音「わかったぞ!」
高専は、小・中学校とは違って、比較的市街地にある学校だ。電車は通っているし、バスも通るしタクシーも通っている。同じ県とは思えない程の格差である。ましてや、あの小・中学校周辺には信号機すらありはしないのだ。
しばらく迷いながら飛び、ラブホテルの入口付近に着地して、人型に戻った。やはり時が流れれば潰れたり新しく建ったりするだろう。
カルゴ「こ↑こ↓」
慧音「如何わしい看板だな……。料金高っ!?」
カルゴ「これが普通だよ。…今の世の中ではね」
慧音「ほ、ほう…」
手を引いて2人で中に入る。媚薬を飲んだときのように、途端に心臓が強く脈打ち始め、どうにも緊張を隠せない。
受付「…いらっしゃいませ。お休みでしょうか?お泊まりでしょうか?」
現在、14時。外に来たのがだいたい6時だから、この時点で8時間、外で過ごしている事になる。だったらキリよく過ごして帰ろう。
カルゴ「休憩、4時間で」
受付「……?申し訳ございません、うちは3時間刻みでございまして…」
カルゴ「あっ…」
そういや看板には3時間毎に料金書かれてたな…恥ずかしい、赤っ恥じゃないか。
受付「一旦お入りになりましたら、30分単位での延長は可能ですが…」
カルゴ「じゃあ3時間、休憩で」
受付「承知致しました。ではウォーターベッドとキングとダブルと、SM専用とありますが…」
カルゴ「…どうする?」
慧音「だ、ダブルでいいんじゃないか……?よくわからないが…」
カルゴ「じゃ、ダブルで」
受付「承知致しました。それでは8階の890号室をお使い下さいませ。何かありましたら各部屋に備え付けられているお電話でお申し付け下さい」
カルゴ「ッス。行こうぜ」
慧音「ああ…。緊張してきたな…」
カルゴ「俺もだ…」
受付(初々しいカップルだな…)
廊下の端にはやはりエレベーターがある。ボタンを押すと、静かに分厚い扉が開いた。
慧音「なっ、なんだこれは!?壁に穴が!?」
カルゴ「簡単に言えば上下に移動ができる箱だ。動力は電気ね」
慧音「ボタンが沢山あるぞ…。非常用とは?」
カルゴ「非常用は、何か不具合が起きた時とかにそれを押しながら、壁にポツポツって空いてる穴に話しかけると救助が来るんだよ。えーっと…遠隔会話するみたいな感じかな」
慧音「なるほど…。B1とは?」
カルゴ「地下1階」
慧音「B2は?」
カルゴ「地下2階」
慧音「Bは地下を表しているんだな」
カルゴ「そういう事。俺らが行くのは8階だから8のボタンを押すんだ。押してみ?」
慧音「っ…お、光った…」
電子音「ドアが閉まります。ご注意ください」
慧音「喋った!?」
カルゴ「注意を促すためにね」
ドアが閉まると、またも驚く慧音。
慧音「わわっ、何だこれ…フラつく…?」
カルゴ「上にあがる時って変な感じするよね」
自分で飛ぶのとはまた違うからな。懐かしいな、この感覚。幻想郷にこういう仕組みがくるのは、多分数百年後とかなんだろうな。
カルゴ「ほい8階」
チーンとドアが開き、俺たちはエレベーターから降りて赤い床に立つ。高級なホテルらしい。
慧音「固くない…フワフワしてる…」
カルゴ「ここは899…890だから近くだな」
エレベーターは奥にある。なら、エレベーターの近くは後ろの番号が来るだろう。つまり俺と慧音の部屋は近くだ。
慧音「…いやに静かだな。昼間なのに」
廊下を歩きながらキョロキョロと見回す。慧音が腕を抱えるので、ムニッと柔らかい感触がする。
カルゴ「違うよ、慧音。本当はどこよりも煩い」
慧音「え…だってこんなに…」
カルゴ「逆に考えてみ?ここは主に何する所?」
慧音「…セッ…クス…?///」
カルゴ「そ。でも、ヤる時って声出るだろ?」
慧音「出ちゃうな…///」
カルゴ「壁で防音してるってワケだ」
慧音「…壁で防音できるほどの技術があるのか…本当に驚かされてばかりだな、外の技術には…」
カルゴ「多分これより凄いモノが部屋にあるよ」
慧音「…?」
自分たちの部屋に到着した俺たちは、高鳴る胸を押さえながら、淫靡な雰囲気の漂う部屋へと入室した─────。
エロシーンはカットしますがエロ会話はします。