※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

497 / 1140
賢者は堕ちて愚者となる

数日後。私は、考えて考えて考え抜いた計画を、とうとう実行に移した。その間、会議に出席しろという、賢者による呼び掛けが何度もあったが、居留守を使ってそれをやり過ごした。もう…月に居る誰にも、私の姿を見せることは無いだろう。

 

サグメ「さようなら、月の都」

 

もう未練なんて無い。漸く、自分のやりたい事や生きる意味を見つけたのだ。穢れれば寿命が発生してしまい、いつまで生きていられるのかは全くわからない。しかし、残りの人生を、好きな事に使おう。死ぬのは怖いが…仕方ないと受け入れるしか無いのだろう。この数日間、蓬莱の薬を服用する他に不老不死になる方法を模索したが、全く見つからなかった。技術等が月よりも遅れている地上に、不老不死になる方法がある訳が無い。

 

 

 

サグメ「本当に…来てしまった……」

 

地上に到着した私は、開口一番そう呟いた。家はそのまま残し、私物のみ持参してきた。当然箱やカバンに入れて持ってきた訳ではなく、月にある技術を駆使して圧縮して持ってきた。今、私の手には、スケッチブック一冊とペン一本しかない。

確か今日は、奴が八意様の元…永遠亭に宿泊する予定の日だったはず。適当に里を彷徨(うろつ)いていればごく自然な流れで、里で彼に会えるはずである。八意様に報告に行くのはそれからでも遅くない。

 

サグメ「……あ」

 

カルゴ「か〜な〜しぃ〜みの〜、向こ〜ぉ〜へと〜♪」

 

何やら笑顔で歌いながら上空を飛んでいる。晴れている空に黒を基調とした服はよく目立つので、直ぐに姿を見つける事が出来た。

追いかけようと、私も上空に飛び上がるが、彼は私の姿に気付き、その場で急停止した。

 

カルゴ「よっ、サグメ」

 

相変わらずの優しくて人懐っこそうな笑顔で手を上げる。月の民の事は嫌っているはずの彼だが、どういう訳か、私にはこう笑顔で接してくれる。

そして、やはりどこか心が安らぐのを感じる。

 

サグメ「…久しぶり」

 

カルゴ「久しぶり?…久しぶりかなぁ…この前も会ったばかりのような気がするけど」

 

しまった、全然久しぶりじゃないだろう、私…!

月から脱走が成功したからと浮かれているな……まだ全てが終わった訳では無いというのに…。

 

サグメ「…私にとっては久しぶりだった。精神が疲れきっていたからかもしれない」

 

カルゴ「(やけに喋るな…。)何か…あったのか?俺で良ければ話聞くけど…」

 

サグメ「…聞いてくれるだろうか…?」

 

カルゴ「うん」

 

それから、この数日で起こった出来事を簡単に、しかし「月から逃げてきた」とは言わず、いつも通り「観光に来た」とそこだけ改変して言った。彼を試す訳では無いが、反応を見てみたかった。

…それにしても、「話を聞くだけ」なのに茶屋に入って団子を奢ってくれる彼は何なのだろうか。

「食べたそうな顔してた」と言っていたが、私がそのよな顔するのだろうか。否、する訳が無い。なのに彼からの誘いを普通に受け入れている私が居る。これは一体、何なんだろう。自分で自分の行動がわからない。けれど、彼からのその誘いを少なからず喜んでいる感情だけは少し分かった。まぁ、私は地上の団子が好きだからだろう。

 

 

 

カルゴ「酷いなそれは…。何でサグメが月の都を裏切っただなんて…」

 

サグメ「仕方ない」

 

カルゴ「仕方なくねーだろ…。だって、月の為にずっと尽くしてきたんだろ?鈴仙からも永琳先生からもそう聞いてるぞ。なのに、そんなサグメに対して…はぁ?何なんだよそいつら…。(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…)」

 

今目の前に座っている彼の眉間の皺は、刻まれたように深く、何を考えているのか、心を読めない私にはわからないが、それでも暗いことを考えている事くらいは手に取るように分かった。

 

サグメ「話しておいて申し訳ないんだけど…私は月に、つまりあなたの敵に尽くした側の者。何故あなたは私に同情するの?」

 

カルゴ「何故ってそりゃあ……サグメの………」

 

サグメ「私の…何?」

 

カルゴ「…んーん、何でもね。(精神的に弱ってる今それを言うのは卑怯だよな…。弱味に漬け込むみたいで、何か嫌だな…)」

 

サグメ「…?」

 

こんな風に言葉を濁すのは凡そ彼らしくないが…まぁ、特に気にすることは無いだろう。

 

サグメ「…1つ、聞きたい事がある」

 

カルゴ「ん、何?」

 

サグメ「私は…笑っているだろうか?」

 

カルゴ「…?今ってこと?今は、無表情のままでハの字に眉毛が下がってるけど…」

 

サグメ「今ではなく、これまであなたと居た時」

 

カルゴ「ああ、これまで?普通に笑ってるけど?主に団子を食べてる時な」

 

サグメ「……そう、なのか…」

 

カルゴ「何で?」

 

サグメ「ふと気になっただけで深い意味は無い」

 

カルゴ「それ、さっき言ってた『写真』関連?」

 

サグメ「っ…あまり関係ない」

 

カルゴ「……オッケ」

 

サグメ「何か?」

 

カルゴ「うんにゃ、何でもね」

 

何故だろう…今日の彼は、やけに言葉を濁す…。

私の嘘が、もう既に見抜かれているのだろうか?

まさか…とは思うが………まさか…?

 

カルゴ「サグメさ…そんな裏切り者ばかりの月に戻るつもりしてんのかよ?」

 

サグメ「それは…仕方のないことである。私は、地上に長居してはならない」

 

カルゴ「賢者だから、か?」

 

サグメ「そう」

 

カルゴ「…だったらもう…月なんて捨てて、俺のそばに居ろよ」

 

サグメ「それは…どうして?」

 

カルゴ「俺なら運命を都合よく運べる…サグメが何を言ったとしても何も関係ない。…いや違う、俺が言いたいのはそんなんじゃなくて……!!」

 

ガシャガシャと荒々しく髪を掻きむしり、言葉に詰まる。言葉選びに苦心しているらしい。

 

カルゴ「俺は、ぜってーにサグメを裏切らねーってことだよ… !俺も結構前に…そんな感じの事になった事があるからさ…裏切られる辛さは、多分誰よりわかる…。俺の場合は好きな人からだったけどさっ…サグメの場合、長年過ごしてきた仲間からの裏切りだろ…?そんなのさ…もう、そんな奴らの傍に居たくないと思うのが自然だろ…?」

 

サグメ「!!」

 

カルゴ「だから…月は捨てて、地上に居ろっ…!サグメが苦しむ姿…見たくない…」

 

そこまで言った彼は、過去の出来事を思い出したからか、一筋だけ、涙を流した。それに気付いた本人は、ゴシゴシと強く目元を拭う。力を込めて拭いたらしく、目の周辺は酷く赤くなっている。本人は、それを知ってか知らずか、無理に笑顔を作っている。到底、嘘泣きには見えない。

涙を流すほど共感し、同情してくれた…らしい。

八意様の言っていた通りで…確かに、どこまでも甘い男だ。しかし、そんな彼の甘さが、私の心を救ってくれた…。それに、やっと彼に対するこの想いの正体が掴めた気がする…。

 

サグメ「しかし…戻らなくてはならない…」

 

カルゴ「月なんて不自由なだけだろっ…それなら俺のそばに居てさ、好きに喋ってくれよ…どんな悲惨な運命でも、俺が捻じ曲げてやるから……。クソ、語彙力ゼロかよ俺……頼む、伝わってくれ…っ」

 

いや、漏れてる漏れてる…心の声漏れてる…(汗)

それより、「そばに居て」ってまさか…?

 

サグメ「それはもしや……プロポーズ…?」

 

カルゴ「…の……一歩手前……」

 

まさかとは思っていたが…そんな…そんな事が…あるのだろうか…?

 

サグメ「あなたは……私が好き?…本当に?」

 

カルゴ「…ああ…」

 

サグメ「…本当に馬鹿な人…。あなたは今まで、私に色々言われてきたでしょう…?」

 

カルゴ「それがどうかしたかよ…何言われたとかそんなの関係ねー…好きだから好き、それ以外に理由なんて無いし、要らないだろ…?」

 

…なるほど。確かにあなたらしい答えだ。恋愛に意味を求めず、心が動けば身体を動かす…自分の心に恐ろしく忠実な人……。

 

サグメ「……私も、あなたに言いたい事がある。心して聞いてほしい」

 

カルゴ「…うん、わかった」

 

サグメ「私の為に…未来永劫、スケッチブックを創造してほしい。もしあなたが傍に居なくても、普通に話せるように…」

 

カルゴ(私の為に…未来永劫?それ、まさか…)

 

サグメ「伝わった…だろうか?」

 

期待と不安を込め、彼の目を真っ直ぐ見つめる。

1秒1秒ごとに、心臓は速く、強く脈打つように感じられる。できるだけ、早く答えて欲しい。

 

カルゴ「…両想い…って事かな…?」

 

サグメ「…答えるのが遅い…///」

 

カルゴ(マジかよ…ヤベェ、めっちゃ嬉しいな…どうしよ、照れる……あぁぁぁ〜…)

 

サグメ「…さっきの話…1つ、嘘をついていた。それを謝らせてほしい」

 

カルゴ「どこの部分?」

 

サグメ「『帰らなければいけない』の部分。私はもう、月に戻るつもりは毛頭無い」

 

カルゴ「そ……そっか…!」

 

途端に、顔が明るくなった。そこまで私が地上に残ることを喜んでくれるとは思わなかった。私も自然と頬が緩んでしまう。

 

カルゴ「うん…やっぱ、笑ってた方が可愛いよ、サグメ。無表情も可愛いけどさ」

 

サグメ「逆にどういう顔は可愛くないと思う?」

 

カルゴ「…本気で、悩み苦しむような顔。見てて辛くなるような顔…」

 

サグメ「あなたが傍に居れば…これから先、私がそんな顔をする事は無い。…改めて…これからもよろしくね、エスカルゴ」

 

カルゴ「ああ…よろしくな、サグメ♪」

 

想いを伝えあってスッキリした私達は、すっかり冷えてしまったお茶の入った湯のみを、静かに、カチャンとぶつけ合った。




「毎朝俺の為に味噌汁作ってくれ」的な告白…w

サグメの翼が右だけである理由は、「白鷺+右+
玉兎」で右鷺(うさぎ)っていう言葉遊びだったり?w

あと、サグメの片翼が先天的か後天的かってのも割と重要だよな。原作において…ではなく、特にこの作品において。
先天的、つまり生まれつきって訳で、遺伝子異常もしくは元々片翼の種族なのか、後天的で後から左翼を失ったのか。
もしも後天的なら、遺伝子上は「両翼」な訳だ。
生まれた時は「両翼」だったから。

ここまで言えば、何を言わんとするか伝わった?
通貨単位さん(隠語w)になら通じただろうね。

もしくは、サグメも「唯一無二の種族」っていう可能性も無きにしも非ず…かも?(その場合も、先天的か後天的かは気になるところ)

唯一無二の種族と考える根拠:サグメは、「種族としては『神霊』という部類に入るが、神様とも鬼とも精霊とも付かない特異な性質を持つ」。
そんなアヤフヤな性質の種族が、果たして、存在するのだろうか…?という疑問から。
(カギ括弧内はpixivより引用)

あと、本作品のサグメは、エスカルゴと2人きりの場合のみ、普段以上に口で喋ります。それは、彼が運命を都合良くイジるからです。
(その理屈で言えば、レミリアとでも喋れるが、レミリアは運命を変えることをあんまり好まないので、実質エスカルゴのみ。)



最後に………。
エスカルゴの方から告る(告ろうとした)場合の女性の共通点、そろそろわかりましたか?現時点では、フラン、幻月、サグメの3人のみですが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。