※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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隠滅

カルゴ「さて、と…サグメはこれからどうする?月から逃げたはいいが、住む所が無いだろ?」

 

サグメ「っ…確かに…家の問題はある…」

 

永遠亭に……と考えていたが、果たして八意様がそのような甘えを許して下さるのだろうか……。何故だか今になって不安になってきた…。

 

カルゴ「やっぱ永遠亭か?月といえば永遠亭だ。けど永琳先生が許してくれるかなぁ…輝夜は割とすぐにOKしてくれると思うんだけどさ」

 

…彼は心が読めるのだろうか。そう疑いたくなるほどに、私の考えを的確に当ててくる。彼こそが賢者に相応しい…と考えるのは、早計だろうか。

 

カルゴ「アポは?」

 

サグメ「取っていない」

 

カルゴ「だよなぁ…」

 

サグメ「もしも拒否されたらどうしようか…」

 

カルゴ「ん?『拒否る』っつー運命があるなら、俺が捻じ曲げてやるよ。だから心配すんな」

 

他の誰かの発言ならば、「責任を取れない発言はしないでほしい」、「根拠の無い自信は嫌いだ」などと言って、その言葉を一蹴するだろう。だが他でもない彼の言葉だ。

その言葉を信じて、素直に甘えさせてもらおう。

 

サグメ「頼りにしている」

 

カルゴ「おう♪」

 

素直に甘えてみると、子供っぽく爽やかに微笑みへへっと笑った。彼が笑うと、私までもつられて笑ってしまう。それから、「俺も説得する」と、2人で八意様を説得する事になり、私達は茶屋を出て、永遠亭へ向かい始めた。

彼からの誘いにより、手を繋いで飛行する。少し気恥ずかしいものの、喜びが勝り、私より1回り大きな彼の手をすんなり受け入れた。これが彼と共に過ごす時間…。これまでのどんな時間よりも楽しくて、尊くて、胸が高鳴る。能力のせいで、常に無言、無表情で過ごすうちに、どうやら私は感情を忘れていたらしい。だが彼は、その忘れた感情(モノ)を思い出させてくれた。

彼には本当に感謝しかない。だから、未来永劫、彼について行こう。願わくば、私も八意様の様に不老不死となり…吸血鬼という極めて不老長寿の彼と、永い永い刻を過ごしたかった………。

 

 

 

カルゴ「なぁ」

 

サグメ「何?」

 

迷いの竹林上空まで来た時、彼は少し不機嫌そうな声で話しかけてきた。何かあったのだろうか。

 

カルゴ「マジイラつく…どこまでついてくんの?殺されたいのかな…いい度胸してんね」

 

サグメ「え…?」

 

今にも殴りかかってきそうな程険しい表情の彼。一瞬自分の事かと悲壮感に苛まれた私だったが、次の瞬間、彼は振り返って、何も無い空中にこう叫んだ。

 

カルゴ「コソコソしてねーで出てこいよ、ド変態ストーカー賢者サンよぉ!!」

 

サグメ「…?」

 

しかしそこはただの空中、返事するものなど何もありはしない。眼下では、竹がサワサワと優しい音を奏でている。竹の緑、空の青、雲の白。ただこれだけの景色の中に、何があるというのだ。

 

カルゴ「…ダンマリか。賢者が聞いて呆れるな」

 

サグメ「??」

 

ダメ、彼の考えている事が全く以てわからない。

一体彼はさっきから何を言っているのだろう、

 

カルゴ「混合武器『雷刀&雷銃』不可能Ver.!」

 

彼は、1枚のスペルを発動させた。空中に黄色い球が浮かぶだけのスペルを。いいや、違う。球に見えたのはあまりの密度故。よく目を凝らせば、1つ1つがナイフの弾幕だという事がわかった。すると球の中心で、赤と茶色の服を纏った何かが唐突に現れ、それもまた叫び声を発した。

 

賢者「貴様、何故儂の居所がわかったっ…!?」

 

サグメ「お前は…!」

 

会議中、やたら私に突っかかってきたあの賢者。名前なんてものは一切覚えてはいないが、顔と服くらい一致している。その者は手に立体録画機を携えている。どうやら私達を写していたらしい。

立体録画機とはその名前の通りで、平面ではなく立体での風景の録画・閲覧が可能な、月の都産の録画機だ。空中に立体的に写し出すその動画は、立体ホログラムより鮮明で、その場に居るような錯覚に囚われる事さえも多々ある。

 

カルゴ「お前、俺とサグメが合流した時にはもう近くに居たろ」

 

賢者「ッ!?」

 

まさかという表情になる賢者。しかし私はそんな気配なんて全く感じていないのだが…。何故彼は奴の気配に気付いたのだろう。

 

カルゴ「ずっと、おかしいなと思ってた。何故か澄んだ気配が2箇所から発せられていたからな」

 

サグメ「澄んだ気配…どういう事?」

 

カルゴ「月の民は穢れていない。だからその者が纏う気配も地上人の気配とは異質なものになる。サグメと対峙した時、もう1箇所…別な所から、それを感じ取った。ただそれだけだ」

 

サグメ「何故その時に言ってくれなかったの?」

 

カルゴ「普段のサグメみたいに、ただ観光に来た可能性だってあるから、それを考えた。だけど、ここまでついてきたからその可能性を消した」

 

サグメ「…それで、変態ストーカー、か…。中々面白い事を…」

 

くくくっ、と腹の底から笑いが込み上げてくる。

別段可笑しい訳でも無いというのに、何故か私は笑わずには居られなかった。しかし、それでも、まだ疑問は尽きない。

 

サグメ「私は奴の気配を察知できなかった」

 

カルゴ「多分……サグメは、澄んだ気配に俺より慣れてるからじゃないかな。俺は、慣れてない。だからこそ、空間に異物が入り込んだかのように容易に察知できた。例えるなら、『暖かい部屋に冷たい空気が入ってきた』くらい分かりやすい」

 

サグメ「なるほど…確かにそれはわかり易い…」

 

そしてその気配を囲むように球を作った…いや、ナイフで囲んだ、という事か。密度が濃すぎて、姿が霞んで見える。もしあんなのを博麗の巫女に見られたら、色々と文句を言われそうだ。

 

賢者「ぬぅ…!儂をどうするつもりだっ…!」

 

カルゴ「…サグメを裏切り者に仕立て上げたのはお前だな?」

 

賢者「ならばどうする。ここで殺すか?」

 

カルゴ「分かりきったことを聞くな」

 

瞳に静かな怒りを湛えながら、彼は指を鳴らす。

すると全方位に配置されたナイフが一気に中心へ向かい、奴の全身を突き刺す。集中攻撃により、爆発が起こって、竹林に爆風が吹き荒れる。

 

カルゴ「んー……?手応えがねぇ…」

 

サグメ「…あ……あれは…」

 

カルゴ「ほー、流石は賢者サンだな。一筋縄ではいかないってか?」

 

煙が晴れて、奴の姿を見てみれば、赤いマントのような何かを身に纏っているのが分かった。私はその物品を、月で見た事がある。

 

賢者「ハッハッハッハッ!!これはなぁ、火鼠の皮衣なのだよォ!!戦争の際、貴様が殺した男が

使用していた鎧より頑強だ!!(チィッ…光学迷彩だけではなく気配を消す機能も付与しておくべきだったか…?しかしそれでは金が…)」

 

カルゴ(火鼠の皮衣…輝夜が持って来させようとしていた伝説の物品か?何でアイツがそんなもの持ってるんだ…?)

 

火鼠の皮衣。それは名前の通り、火鼠の毛で作成された衣の事。しばしば伝説の品と扱われる事があるが、実際はそんな事は無い。

何故なら、火鼠の毛で衣を作れば、それは火鼠の皮衣となるからだ。つまり、火鼠の皮衣は量産が可能な品ということである。当然、購入するにはとんでもない額の金銭が必要となるが…。賢者の資産ならば不可能では無い、か。

 

賢者「何事にも備えておくのが賢者!姿がバレる事すら、儂は予想していたのだよ!!」

 

カルゴ「予想してた。だから何だ?」

 

賢者「!?」

 

カルゴ「予想してようが予想してまいが、結局、行き着く運命(さき)は同じだ。お前はな」

 

賢者「フン、世迷言を…」

 

カルゴ「アイツが裏切りの主犯…だな?サグメ」

 

サグメ「そう」

 

カルゴ「どうするよ、アイツ。手に何か持ってるけど…サグメが地上に残るって発言した証拠でも持ってるんじゃないか?」

 

手に持っている物の正体(立体録画機)は分からない筈なのに…何て勘が良いんだろう。八意様が言っていた通り次代の巫女の細胞(チカラ)を取り入れた結果…だろうか?

 

サグメ「…間違いない。証拠隠滅、した方がいいだろうか…?」

 

カルゴ「サグメの汚名が広まる可能性があるならしておくべきだ」

 

サグメ「ならば私が消す────」

 

弾幕を展開すると、彼が私の前に手を出してその妨害をする。

 

サグメ「何故…?」

 

カルゴ「サグメが手を汚す事は無い。俺が殺る」

 

サグメ「殺しが確実、か。私は、あなたの手こそ汚させたくない」

 

カルゴ「優しいな。でも大丈夫だ。俺は、無心で敵を屠るからさ」

 

サグメ「ならば…私は見届けよう。あなたが奴を殺しきるまで」

 

カルゴ「ありがとう」

 

するとその賢者は、目を向いて唾を飛ばしながら喚き散らす。

 

賢者「なっ…裏切るのか貴様!?同胞を見殺しにするというのか!?」

 

サグメ「裏切る?同胞?最初に私を裏切ったのはお前。私がどうしようと、それは私の自由」

 

賢者「ち、血迷ったか…地上の穢れにアテられて狂気に堕ちたかっ…!」

 

カルゴ「これ以上俺の女とは喋らせねぇぞ雑魚」

 

私の手を離して、大きく羽ばたいて一気に距離を詰める。伸ばしたその手は、奴の腹を抉るように殴る。

 

賢者「ごっ……はァ……!!」

 

奴は苦しげな呻き声を漏らすが、彼は逆にそれを訝しむように眉をひそめた。

 

カルゴ「おかしいな…内臓が出ない…」

 

いや、出る方がおかしいと思うのだが。

 

カルゴ「火鼠の皮衣の防御力か…。まさかお前、不死身じゃねぇよな?」

 

胸倉を掴み上げ、凄みながらそう訊ねる。しかしソイツがまともに質問に答えるはずも無く…。

 

賢者「ハハハハッ!愚か者め、我ら月人は貴様ら穢らわしい穢土の住民とは違い死ぬ事など無い!ハーッハッハッハッ!!分かったらさっさとその穢い手を離すがいい雑魚め!!」

 

何を言っているのだろう、この賢者(?)は。

 

カルゴ「…なぁ、サグメ?月人が死なないのは、穢れによって…つまり、寿命で死ぬ事は無い(・・・・・・・・・)って事だろう?」

 

チラリと胸倉を掴まれている愚者を見ると、私を見て首をブンブンと横に振っている。「言うな」という事だろう。月人も「不老不死」ではない。死ぬ事はある。ただし、病死も無い。病もまた、穢れによって発生するものであるからだ。

ならば月人の死因は何だろう。それは、物理攻撃による死亡だ。武器での刺突、斬撃、絞首などが主な死因がと言えよう。つまるところ、月で戦争でも起こらなければ、月人はほぼ死なない。

 

サグメ「誰かが死ぬ様子を見たことは無いから、私からは何とも言えない。けれど…穢れによって寿命が発生するからその説は当たっている。月人だって何らかの要因で死ぬ事がある」

 

きっとこの時点でコイツが死ぬ運命は逆転して、死なない…つまり逃げ切る運命になっているはずである。だが、それを覆すのがこの彼だ。

私が何を言おうと彼の前では彼の思い通りにしかならない。しかも意識的に捻じ曲げるのではなく

「いつの間にか」変わっているのだ。

彼は、「俺が捻じ曲げてやる」と言っているが、具体的にどこをどうすれば良いのか、彼はそれを知らない。それなのに運命は変わっている。

それの意味するところ、「意識せずとも、運命を変えることが出来る」ということだ。恐ろしい。

 

賢者「きっ、貴様ァッ…よくもそんな口をっ…」

 

カルゴ「うる、せぇっ!」

 

賢者「はっ…ぐぉえっ……」

 

掴んでいた皮衣を引き寄せ、頭突きで鼻を潰す。

グチュッと気味の悪い音がした。奴は鼻血を出しそれが着くのを嫌がった彼は少し距離をとる。

 

カルゴ「フー…。そういやぁ月の都って、神様をどうこうしようとしてたな?」

 

賢者「何の、話だっ…!?」

 

カルゴ「地上で神を喚んだだけで依姫を疑ったりだとか…神関連で何かしてるのは間違いねぇな。例えば……管理してたり、とかな」

 

賢者「っ……」

 

カルゴ(管理してなきゃ、神が喚ばれてることが誰かに知られることは有り得ないからな。依姫は神を喚べるから、依姫個人が神の増減を見る事が出来るとしても、依姫は『謀反を疑われる』、と言っていた。つまり神の増減は依姫以外でも見ることが出来るっつー事だ。なら、『どうして神の増減を見る事が出来るのか』?その答えは『神を管理しているから』だと思う。罰当たりだな…)

 

賢者「もし、管理していたらどうする…?神をも抑える月の技術を前に、貴様が私に勝つなどどう考えても不可能なのだ…!大人しく投降せよ!」

 

カルゴ「俺は日本神話最強の雷神の眷属。お前に神の怒りをぶつけてやろう。眷属『擬似神化』」

 

サグメ「なっ…何…!?」

 

彼の力が急激に高まり、頭上には帯電する光輪が現れる。こんなの聞いていない。エスカルゴは、神の眷属だった…?無闇矢鱈に吹聴することでもないので、聞かされてなかった事には何の文句も無い。しかし、この力の高まりようは異常だ。

 

カルゴ《母さん、タケちゃん、頼む》

 

神綺《もう一度、神様に成っちゃうのね!?》

 

カルゴ《成らないよ…》

 

建御雷《他の神(アイツら)は好かんが…まぁ、月の都に神の怒りを教える良い機会になるだろう。絶対に奴を逃がすな》

 

カルゴ《ああ》

 

突如、彼を中心にして、真っ白い光の柱が天高く立ち上る。感じられる力に、妖気だけではなく、神独特の神聖な力までも混ざってくる。

 

賢者「何なんだ貴様はァッ!!」

 

カルゴ「創造神の息子、雷神の眷属。名も知らぬ月の賢者よ、今からお前に神の裁きを下す」

 

創造神の息子!?彼は元々人間だったはずだが…一体どういう意味だろう、理解が追いつかない。ただ、1つだけわかることがある。今の彼には、私が本気を出したところで、万に一つも勝ち目が無いという事だ。

 

賢者「妖怪風情が、賢者様に適うと思うなッ!!ウオオオオオオオオオッッ!!!」

 

黒と灰の弾幕をバラバラと発射する賢者。しかし彼は落ち着いてそれに対処する。

 

カルゴ「聖行『神明裁判』!!」

 

賢者「ぬぅ…」

 

サグメ「くっ…!」

 

彼が放った閃光が、辺り一帯を包み込んだ。光が収まると、奴の放った弾幕は消えていて、更に、奴自身にも変化が起こっていた。

 

賢者「…あ?そっ、そんな、火鼠の皮衣がっ…!消えている…!?」

 

サグメ「一体、何が…?」

 

カルゴ「俺が『消したい』と思った物を全て消す神の光。創造神と雷神の、合わせ技だ。(ま、目を潰しても良かったが、目を集める方にばかり集中してると被弾しかねないからな)」

 

賢者「な、な、な、な…何て事を…するのだ…!一体どれほどの金が掛かったと思ってる!?」

 

カルゴ「知るか。そして選べ。苦しんで死ぬか、一思いに死ぬか」

 

賢者「どこまでも舐め腐りおって……!!」

 

カルゴ「2択で聞いてるんだ、その中で答えろ。それ以外で答えたから俺の好きな殺し方にする」

 

賢者「図に乗るなァァァァァァ!!!」

 

カルゴ「フン、賢者風情が眷属に適うと思うな。

『雷霤撃波(らいりゅうげきは)』ッッ!!!!」

 

背中にある二振りのうち片方の剣を抜き放って、そこからとんでもない太さのレーザーを発射。

それはあっという間に奴の肉体を跡形もなく吹き飛ばして、呆気なく決着がついた。

 

カルゴ「終わったよ」

 

サグメ「ありがとう。これで、私の裏切りが月に知れ渡ることは無い」

 

カルゴ「ああ。…じゃあ、永遠亭に行こうか」

 

サグメ「もし何かあったら…八意様への説得を、お願いできるだろうか…?」

 

カルゴ「任せとけって」

 

サグメ「…それにしても…さっきのは怖かった。突然、『マジイラつく』と言うから…。もしや、私に言ってるのかと…」

 

カルゴ「あ、あぁ…悪かった。あの賢者の気持ち悪い視線がさ、気になって気になって…。つい、口が悪く…」

 

サグメ「まぁ、あなたは女にそういう事を言う人では無いから、少し考えればすぐわかったが…」

 

カルゴ「自分で言っちゃうけどさ、嫌いな奴とかムカついた奴には口悪いよ、俺」

 

サグメ「ほぅ……中々、興味深い…」

 

カルゴ「そんな事に興味持たなくていいよ…」

 

サグメ「…興味の有無に関わらず…これからは、あなたのことを近くで見ていくから……きっと、あなたのどんな些細な事でも自然にわかるようになるだろう。何となく、そんな感じがする」

 

カルゴ「お、おう…!?(もしかして…アレか!?サグメのデレか!?デレなのか!?)」

 

これからは、あなたという人物を、もっと間近で見れる…。その事が、今の私にとって、何よりも楽しみで仕方ない。あなたはきっと、私の生きる意味そのものなのだから─────。





因みに、エスカルゴの守備範囲はクソ広いです。
ロリ〜お姉さんまで。
そして考察してくれたとある方がね…どうやら、エスカルゴから女性を好きになる場合の共通点をもう見つけたっぽいんですよ。
具体的には聞いてませんが8割当たってますよ。
いやー、恐ろしいね。
フラン、幻月、サグメとしか言ってないのにさ。

500話記念は考えてませんがとあるリクエストの消化をしますのでお楽しみに。
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