カルゴ「今日も良い天気だな…気持ち良いぜ…」
永遠亭から出た俺は、朝から博麗神社に向かう。
今朝はとても良い目覚めだった。まさかサグメと抱き合って目覚めるとは。尤もこれは、お互いの寝相のせいなのだろうが。目覚めた時のサグメの照れようったらなかった。熱まで出すほど最高に照れていた。照れ屋なサグメらしい。
そして、そんなサグメに見送ってもらって、俺は博麗神社へ飛び立った。スキマ使うほど急いではいないし、道中で魔理沙や他の誰かと会うという可能性も考えたからだ。
カルゴ「あー!」
神社が見えてきた頃、ある鬼にばったり会った。
子供のフリタイムの開始だ。
萃香「おっ?エスカ…じゃないな…。えっと〜…知り合い、だっけ?」
カルゴ「んーん?何となく、鬼さんだーって!」
萃香「そ、そーなのか…。ていう事は…えっと…初めまして、かな?」
カルゴ「うん!初めまして、エスカルゴだよ!」
萃香「ファッ!?た、確かにエスカルゴが小さく可愛くなった感じするけど…。(気配は準大妖怪の彼の規模で、あんまり変わってないけど…口調や態度が子供そのもの…これは一体……?)」
カルゴ「鬼さんのお名前は?」
萃香「伊吹萃香!エスカルゴは可愛いから、萃香って呼んでくれて構わないぞっ!」
わーお…可愛いからって呼び捨てOK?しかも、タメ口なのに口調の注意無しかよ…。鬼の威厳はどこへ行ったんだ萃香よ…。
カルゴ「うん!ねーねー、萃香はどこ行くの?」
萃香「あそこの神社に遊びに行こうと思ってね!実は今日はね、君にすっごくそっくりな吸血鬼のお兄さんがお泊まりに来る日なんだ!だから少し遊ぼうかなってね!」
カルゴ「エスカルゴってお酒飲めないって聞いた事あるよ?」
萃香「おっ…と…何でお酒だってわかったの?」
カルゴ「鬼さんはお酒が好きなんだって聞いた事あるから!」
萃香「あぁ〜、そういう事か〜。じゃ、一緒に…いや、流石に子供はムリか…。ね、エスカルゴは今何歳なの?あ、今言ったエスカルゴはお兄さんエスカルゴじゃなくて君の事ね」
カルゴ「俺まだ4歳なんだー」
萃香「4歳ィ!?4歳でこんな準大妖怪クラスの妖気ってどういう事!?」
カルゴ「さー?それより準大妖怪ってなーに?」
萃香「んー?準って事はそれより下の事。つまりお兄さんエスカルゴと君は、もう少しで大妖怪に届く…かもしれないって事!」
カルゴ「幻想郷ってクラス分けされてたっけ?」
萃香「ううん、ランク付けなんてされてないよ。私が勝手にそうしてるだけ!」
カルゴ「そ、そうなんだ…。どうすれば大妖怪に成れるのかなぁ…。俺、大妖怪になりたいなー。なんかカッコイイし」
萃香「エスカルゴ達、力は大妖怪クラスだと思うけど…まだまだ大妖怪には及ばないね。年季が」
カルゴ「あ、あははー…」
そりゃー無理だわ〜…長生きしろってことね…。
死なないからクソみたいに長生き出来るけどさ。
萃香「ん?4歳?」
カルゴ「うん!」
萃香「てことは、霊麗と同い年だね!」
そういやそうだな…。うわ、霊愛が姉ちゃんに?
年齢詐称しときゃ良かった。どうせ、515歳でも通用するんだし。
カルゴ「次代の巫女の妹が?そうなんだ!」
萃香「…?やけに知ってるねぇ。君、何者…?」
えー…こんな流れでバレるのはちょっとなぁ…。
仕方ないな、小さな嘘ついちゃうか…?いやー、萃香相手に嘘はアカンわな。
カルゴ「実はね、エスカルゴが薬で小さくなった姿が俺なんだよね」
萃香「私は鬼だ、嘘は嫌いだよ。…本当かな?」
カルゴ「うん。それで、今から子供達にドッキリ仕掛けようと思ってるんだけど、俺と話合わせてくれない?」
萃香「霊夢にじゃないの?」
カルゴ「霊夢には前にもこの姿見られてるから、多分すぐに察せると思うんだ。だから……ね?」
萃香「ふーん…。ま、霊夢なら見抜けるか。で、どんな話で合わせるの?」
カルゴ「うーんとねぇ…たまたま会ったばかりで名前しか知らない的な?」
萃香「ほぼ空っぽのストーリーだねぇ。まぁ別に良いけどさ」
カルゴ「どんなストーリーにしよっかな〜♪」
萃香(本当に本物なの…?気配はそのままだし、見た目は幼くなった感じだけど…幼くなるなんて何を考えてるんだろう…)
疑ってるんだろうなぁ、と萃香の心境を推し量りながら、俺は博麗神社の縁側に直接着地し、何の躊躇いもなく屋内に入る。
カルゴ「こーんにーちはー!」
霊夢「!?」
霊愛「誰!?妖舞…じゃ、ないか…」
霊麗「…?お父さん…?」
驚いた。まさか霊愛の口から妖舞の名が出るとは予想だにしていなかった。まぁ、妖舞が俺に似ているということは、俺が幼くなれば妖舞に似る、という事だ。おかしい所は無い。
カルゴ「久しぶり、霊夢!」
霊夢「あんた何でm…じゃなくて、ここに?」
何でまた、と言おうとした霊夢に目配せすると、
すぐに言葉を切りかえた。流石霊夢だ。長年(?)
一緒に居るだけある。
霊麗「知り合い?」
霊夢「あ、いや…」
カルゴ「ちょっと、脱走してきちゃったんだ♪」
設定を思い付いた俺は、すぐに完全なアドリブで話を続ける。アドリブ万歳。
霊麗「脱走…?」
霊夢(ちょ、どう合わせれば良いのよっ!)
霊愛「あ!まさかお父さんのアレ!?」
霊麗「隠し子?」
霊愛「違う、そうじゃなくって、アレだよアレ!お母さんとお父さんが話してたヤツ!」
霊夢「(あっそうだ、その手があった!)まさか、脱走するなんてね…エスカルゴのクローン…」
霊愛「そうそれ!
霊麗「あー…そういえば、永琳と開発してるってお父さん言ってたね。でも、臓器単位でしか作らないってこの前…」
実は、俺と永琳は、クローンの研究をしている。
勿論人体錬成の為ではない。里に住まう人間が、臓器の移植が必要になるほどの大病を患った時に備えて、臓器単位でクローンを作れる技術を確立させておこうという図らいだ。
俺はその実験台だ。短時間で臓器クローンを作る技術を開発する為に。俺の細胞は吸血鬼のもの。人間には移植出来ないというのが永琳の見解だ。もしそんな患者が出たら、本人の細胞を採取して短時間で臓器を作り、それを移植するつもりだ。流石は永琳、個人で技術を開発しようだなんて、常人には思いつかないだろう。
尤も、俺の血を仙人霊夢に流した事もあるので、もしかしたら可能なのかもしれないが…。人間の身体には負担が大きいかもしれない。
霊夢「あの永琳がそれで満足すると思う?私は、もう完成してると思ってたわ」
霊愛「…満足、する訳ないね…」
霊麗「だね…。でも、クローンは本当は作っちゃダメって聞いた事あるよ?巫月お姉ちゃんから」
霊愛「マッドドクター永琳…おっかないね」
霊麗「おっかないねー…」
萃香(クローン……?もしかして、こっちが本当なんじゃないのかな…?)
霊愛「抜け出していいの?バレたら…」
カルゴ「どうなるかな?自分でもわかんないよ。でもまぁ、消されるかもしれないけどね。だって存在してはいけないんだしさ。知られた時点で、違反してる訳だし」
霊愛「じゃあ、永琳に突き出さなきゃ」
霊麗「即決だね…」
霊愛「次代の巫女として、見過ごせないからね。ましてやお父さんのクローンなんて」
カルゴ「へー。いいよ、やろうよ、弾幕ごっこ。俺が勝ったら、幻想郷から逃げさせてもらうよ。まぁ、オリジナルと違って、そこまでの力はまだ無いけど…霊愛なら倒せるかな」
霊愛「トーゼン、霊麗も混ざるよ」
霊麗「うん!」
カルゴ「え…。そ、そっか…いいよ、それでも。言っとくけどね、オリジナルよりかは弱いけど、オリジナルの技は全部コピーしてるよ。記憶も」
霊愛「はいはい、クローン、お喋りはそこまで。表出な」
カルゴ「はーい♪」
境内に出た俺達は、ある程度の距離を取って正面から向き合う。11歳と4歳…年齢差はあるのに、霊愛と霊麗の身長差はあまりない。吸血鬼の血のせいだろう。身長測定はしていないが俺とあまり変わらないと思う。
霊愛「えっと、どっちかが気絶したら終わりね。あんたが気絶したら、永遠亭に運ぶから」
カルゴ「はーい。どっちが気絶するかなー?」
霊愛「あんたでしょ。やるよ霊麗!」
霊麗「うん!」
息ピッタリに合わせ、弾幕を発射してきた2人。
霊麗は妖怪であるにもかかわらず、霊夢とあまり変わらない純粋な霊力を扱う。扱い方にかけては俺よりも長けている。
俺も2人の弾幕を避けながら電力弾を発射する。
カルゴ「オリジナルが言ってた通りだ!小さい体だと、スイスイ避けられるね!」
霊愛「吸血鬼の身体能力だからでしょーが!てかオリジナルって言うなウザったい!!お父さんをそんな呼び方しないで!!霊符『夢想封印』!」
ほほー…霊愛からそんな言葉が出るとはねぇ…。お父さん嬉しいよ。もし本人だと知ったら霊愛はどう思うんだろうな。照れるか?
カルゴ「オリジナルの技借りるよ!そーだねぇ…閉鎖『カオスワールド』!!」
霊愛「えっ……」
霊麗「あちゃー…」
漆黒のドームに包まれた姉妹。中ではレーザーや弾幕が飛び交っている。
萃香「ねぇ霊夢?彼さぁ、ホントに何者?」
縁側でその戦いを見守っていた2人。萃香は隣の霊夢に、メインの彼について訊ねる。
霊夢「わかんない?本人よ、本人。永琳の薬で、幼児化したの。それがアレよ」
萃香「それは聞いたよ。でもホントかなぁ?」
霊夢「ホントよ」
萃香「何で幼児化する必要あるのさ?」
霊夢「あいつ…甘えるのが好きだからね」
萃香「……何でだろ…納得出来ちゃったよ…?」
霊夢「でしょうね。ドッキリ仕掛けようと思ったって所なんだろうけど、まさかの展開になった…とか考えてそうね、あいつ。クローンだなんて、有りそうで無さそうな紛らわしいこというから、こんな事になるのよ…」
萃香「クローン開発は本当なワケ?」
霊夢「医療用のって話だから大丈夫よ。臓器ね」
萃香「あ〜…。あの医者の考えそうなことだね」
カルゴ「ヘイヘイヘ〜イ、どぉしたのかな、霊愛ちゃん霊麗ちゃ〜ん??」
ドームが解除されて、巫女服がボロボロになった2人が出てきた。呼吸は荒く、ふらついている。そんな2人を、軽く煽ってみた。
霊愛「闇の力…深い…」
霊麗「気持ち強くもってなきゃ呑まれそう……」
カルゴ「楽しい時間はあっという間だよねぇ〜♪
もう終わらせちゃうよ、巫女ちゃん達♪」
霊愛「チョーシ乗ってんじゃ無いよクローン!!霊麗、お父さん来る前にコイツ片付けるよ!!」
霊麗「うん!!」
姉妹の力が高まる。キメ技を放つつもりらしい。
これさえ跳ね除けて、俺の技を叩き込めば…この勝負は俺の勝ちだ。
姉妹「姉妹符『緋想封印』!!」
カルゴ「『雷………?」
しまっ…妖魔雷霊剣を永遠亭に置いてきてた!?
…そーだ、この身長だと背中に掛けられないから置いてきたんだった……!
霊愛「…?霊麗、この1発でキメるよ!!」
霊麗「わかってるっ!!」
俺の焦りを見抜いた2人は更に力を込めて弾幕を発射する。しかし俺はポケットに手を突っ込み、折りたたみナイフを取り出す。
カルゴ「『
霊愛「何でナイフなんてっ…!?」
小傘に改良してもらった外製の折りたたみナイフを開いて、それを2人に向けて太めのレーザーを発射する。それは全く拮抗する事無く、一方的に弾幕を掻き消して、2人を後方に吹き飛ばした。
カルゴ「っとと…危ない危ない…」
階段まで吹き飛ばされた2人を、空中でキャッチした。透過レーザーなので、痺れ以外のダメージは与えていない。
霊愛「うご、けない……」
霊麗「嘘でしょ…1発で…」
カルゴ「俺の勝ちだね!じゃ、中入ろっか!」
霊愛「…わかったよ…」
萃香と霊夢も屋内に入り、俺はとうとう、娘2人にもネタばらしを始めた─────。
紛らわしいと騙されやすいんだよね。
冗談言う時はそこら辺も考慮しようね(笑)