※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

522 / 1140
輪廻転生

芳香と熱盛の事を思い出した私は、少しだけ暗い気持ちになってしまった。2人の事は大好きだ。勿論、友人として。熱盛との付き合いはそこそこ短かったが、それなりに友人関係を積めたと私は思っている。幻想郷成立以前に異種族交流など、とても稀な例だと思う。しかし、だからこそだ。だからこそ、芳香と熱盛の2人は、私にとっては特別な存在で、そんな2人を失った過去はとても暗い思い出となってしまった。

 

華扇「…霊夢の所にでも行こうかな…」

 

良い意味で能天気な霊夢と話していれば、少しは気が楽になるだろう。

 

 

 

 

 

カルゴ「アァァツモリィィィィィッッッ!!!!失礼しました、熱盛と出てしまいました」

 

霊愛「はっ、下らな………ぷふっ…」

 

霊麗「あっははは、別人みたーい!」

 

神社に行くと、霊夢の夫が境内で、1人漫才?をしていた。かなりのハイテンションで叫び、突如真顔で冷静な口調で頭を下げる。

変わり身の早さ、テンションのギャップで笑いを取っているらしい。普段クールな霊愛すらも少し笑っていた。私には何が面白いのかまるで理解ができなかった。それは、単にギャグがつまらなく感じたというのもあるし、その叫んでいた言葉があの「熱盛」だったからだ。

 

カルゴ「ん?おお、華扇さん。お久しぶりです」

 

華扇「え、ええ…」

 

…あれ?エスカルゴ、誰かに似ているような…?

誰…だったっけ?

 

霊夢「華扇じゃない。久しぶりね」

 

縁側でお茶を飲んでいた霊夢は、湯呑みを置いて私にそう声をかけた。春の花見以外ではほとんど会わないし、霊夢と会うのも確かに久しぶりだ。頻繁に博麗神社に通っていた数年前が懐かしい。永い時を生きた私だからか、数年前のことでも、昨日のことのように鮮明に思い出せる。

 

霊夢「今日はどうしたの?あと、素敵な賽銭箱はあっちよ」

 

華扇「相変わらずねぇ…。今日は、御籤を引きに来たのよ。引かせてもらえるかしら?」

 

霊夢「わかったわ、ちょっと待っててね。納屋でそのままになってるから今持ってくる」

 

華扇「そのまま…って、あなたねぇ…」

 

相変わらずガサツな霊夢に、思わず苦笑いする。

 

カルゴ「よーし、喉が死ぬから、次がラストな!アァァァァツモリィィィィィッッッッ!!!!!失礼しました、熱盛と出てしまいました」

 

霊麗「あははははははっ!!下らないのになんかクセになっちゃうコレ!はははははっ!」

 

霊愛「くっ…くふふふっ……!あーダメだ、全然我慢できなかった…。あっ、そうだ!次の宴会で妖舞にやらせてみない!?」

 

霊麗「良いね!宴会芸、宴会芸♪」

 

華扇「─────ッ!!」

 

思い出した。そうだ。熱盛とエスカルゴは、少し似ている。瓜二つとまではいかないが、雰囲気や顔付きが似ている気がする。

そしてこの「熱盛」という言葉。もしかして…?

 

華扇「…ねぇ、エスカルゴさん…?」

 

カルゴ「ケホッ……はい?」

 

華扇「その『熱盛』とは…?」

 

カルゴ「あぁ、これですか?外の世界で、『熱く盛り上がった』の略として、『熱盛』って言葉が使われているんですよ。俺が幻想入りする前の話ですから、今はどうなのか分かりませんけどね」

 

華扇「そう、なんですか…」

 

前世の記憶が生まれ変わりの彼に戻った…とか、そうではなかったか。やはり、他人の空似か。

これまでも、誰かに似ている別人なんていうのはザラにあったし、特に不思議でも何でもないが。

 

カルゴ「何でですか?」

 

華扇「何でもないですよ」

 

カルゴ「そうすか」

 

いや。目の前の彼からは今まで感じたこともない何かを感じさせる。…少しカマをかけてみよう。

 

華扇「…ところで、宮古芳香という女性をご存知ですか?」

 

もしも彼が本当に熱盛の生まれ変わりで、記憶を戻しているのなら、「前世の俺の妻」とか何とか言いそうなものだけれど…。

 

カルゴ「芳香?知ってますよ」

 

華扇「え」

 

普通に答えた!?

 

カルゴ「宮古芳香って、あの子ですよね?たまに墓地で見掛けるキョンシーの女の子」

 

華扇「は…?」

 

キョンシー…芳香が?これは一体…?

 

カルゴ「あれ、もしかして別人でしたか?確か、俺の知ってる芳香は元人間らしいですけどね」

 

華扇「!?」

 

同姓同名…女の子…元人間…死…キョンシー…?

これはもしかすると…もしかするかも…?

 

華扇「エスカルゴさん、その宮古芳香について、少し話を聞かせて……」

 

霊夢「持ってきたわよ〜」

 

っ…タイミングの悪い…。まぁ、御籤を希望したのは私だから、霊夢に当たるのは良くないか。

 

華扇「ゲッ、大凶…」

 

○願い事:驚く事あれど慌てねば叶う

○待人:来るでしょう

○失せ物:近くにあるでしょう

 

この3つ以外はどれもこれも最悪か…。これは…引かなければ良かったかもしれないな。段々と、気が滅入ってきてしまった。

それにしても…芳香の件、気になって仕方ない。

 

華扇「霊夢。ちょっと彼借りるわね」

 

カルゴ「カレー?」

 

霊夢「ダ・ン・ナ・で・す!!!」

 

華扇「あ、あぁ、そうだったわね…」

 

誰と結婚していて、誰とまだ付き合っている段階なのか、全く区別がつかない…。覚える気がないからなのだろうが。

 

霊夢「借りてどーするのよ?」

 

華扇「2人で話したい事があって」

 

カルゴ(ええ…?説教だろコレ絶対…。咲夜さん以外の説教とかマジ勘弁だから…フケっかな…)

 

霊夢「ふーん。ま、あんたならいいかな。ただし夜までには返してよね。夕飯係なんだから」

 

カルゴ(霊夢ぅぅぅぅぅ!!!)

 

華扇「はいはい、わかっているわよ。それじゃあエスカルゴさん、仙界までついてきて下さい」

 

カルゴ「俺なんか悪い事しましたか…?或る意味心当たりしかないですけど説教ならせめてここでお願いします…」

 

そんなに私と2人きりになるのが嫌なのか。少し心に傷を負ったような気がする。というか、娘と妻が見ているこの場での説教を求めるとは一体?

 

華扇「説教じゃありませんよ。話したい内容は…ここでは言えませんが、説教ではないことは断言出来ます」

 

カルゴ「じゃあ…はい…観念します…」

 

ここまで嫌われるような事を彼にしただろうか。全く心当たりがない。小さくため息をついた私は指笛で鷲を呼び、足に掴まり境内から飛び立つ。霊夢の旦那は暗い表情のまま黙ってついてきた。

 

華扇「ここが私の家です」

 

カルゴ「和風…いや、どこか中華っぽい…?」

 

華扇「そうですね。どうぞ、上がってください」

 

カルゴ「…お邪魔します…」

 

とりあえず彼を客間に通し、お茶とお団子を用意して、話を始めた。

 

華扇「急に家に呼び込まれて、驚いたでしょう?申し訳ありません」

 

カルゴ「…いえ。それで、お話とは?」

 

華扇「先程話していた、宮古芳香についてです。その元人間のキョンシーが少し気になりまして」

 

カルゴ「そうなんですか。と言っても大した事は知らないですよ?」

 

華扇「どんな些細な事でも構いません。知ってる限りの事を教えて頂けませんか?」

 

カルゴ「はい…俺の知ってる情報で良ければ…。彼女は夜行性で、夜に多く見かけます。昼間でもごくたまーにだけ。御札を貼ってる時は、近くに青娥が居ることが多いですね」

 

華扇「青娥…邪仙の青蛾娘々ですか?」

 

カルゴ「そうです」

 

華扇「この2人の関係は…?」

 

カルゴ「えっと…確か、青娥が芳香をキョンシーとして復活させたんですよ。既に死んでるから、もう死なないし…攻撃にも怯まないってことで。下僕…道具として使ってるように見えて、あんま良い気持ちはしませんね。ましてや芳香は…その何ていうか…遺体ですから、特に…」

 

華扇「青娥が…?それは確かですか?」

 

カルゴ「確かですよ。神子が復活した時の異変で霊夢達が青娥本人から聞いたそうなんで」

 

華扇「ふむ…」

 

成程…邪悪ね。あなたの言ってた通りね、小町。あの時の言葉の意味が、ようやくわかったような気がする。これでは邪仙に堕ちるのも仕方ない。

 

華扇「芳香は墓地に居るんですよね?」

 

カルゴ「ええ。主に夜に」

 

華扇「青娥がどこに居るのかはご存じですか?」

 

カルゴ「それはちょっと…俺は分からないです。そもそも青娥に家があるのかも分かりませんし」

 

華扇「…成程」

 

…ものはついでだ、彼についても聞いてみるか。

 

華扇「武者小路熱盛という名前を聞いた事は?」

 

カルゴ「むさ苦しそうな名前ですね…と言っては失礼でしょうが……。聞いた事ないです」

 

華扇「私も最初は同じ事思いましたよ。…色々、参考になりました。ありがとうございます」

 

カルゴ「いえいえ…」

 

華扇「また何かありましたら、こうして話させて頂いても宜しいですか?」

 

カルゴ「…説教で無ければ」

 

華扇「ふふっ、分かりました」

 

カルゴ(え、もう終わり?家に来た意味あるの?いや無いだろ…立ち話で良かったやん…)

 

華扇「あと…申し訳ありませんが、もう少しだけ詳しく聞かせて頂けませんか?」

 

カルゴ「あ、はい…。(えーと、何から話せば…?よく分からんな…)」

 

 

 

 

 

その日の夜。私は、自宅の屋根の上で、考え事をしていた。内容は勿論、芳香と熱盛、それから、青娥、エスカルゴについてだ。

どうも、青娥だけではなくエスカルゴもこの件に深く関わっているような気がしてならない。だが彼は元人間、この件には関われようはずもない。それでも尚、関係してそうな気がしてならない。

 

華扇「…居るんでしょ?分かってるわよ」

 

小町「あちゃー、バレてた?」

 

華扇「普通にね」

 

背後にはいつの間にか、三途の川の渡し守である小野塚小町が居た。何となく分かってはいた。

 

華扇「博麗神社の御籤、意外と当たるのかもね」

 

小町「何の話だい?」

 

華扇「ううん、こっちの話よ。あなたにちょっとお願いがあってね。あなたを待ってたの」

 

小町「へーっ!あんたがあたいにお願い?珍しい事もあるもんだね!何だい、聞かせてくれよ!」

 

華扇「…とある人物のね、生まれ変わりと思しき人物を見つけたのよ。前世の記憶を思い出させる方法とかあるのかしら?それを聞きたくてね」

 

小町「あ〜…あるにはあるけど、ちょっと面倒な案件だねぇ。でも答えはイエスだ」

 

華扇「面倒?どうして?」

 

小町「詳しい事は知らないけどさ…ほら、人って生まれ変わる時に記憶を無くすだろう?そして、生まれ変わって新しい記憶を作っていく」

 

華扇「そうね」

 

小町「無くなった記憶はどこに行くと思う?」

 

華扇「…………難しい質問ね…。消滅するのか、はたまた何かの形で残るのか…」

 

小町「いいや、案外単純なものさ。人の記憶は、しばしば『台本』と見られる事がある。『歴史』

というドラマの、何より正しい台本さ。記憶は、記録と違って偽りようがないからね。洗脳技術があるなら兎も角…あってもそれは例外中の例外」

 

華扇「……」

 

小町「役を演じた後、すぐに台本を捨てるかい?記念にとっておかないか?」

 

華扇「……まさか?」

 

小町「そうさ。残ってるんだよ、書類としてね」

 

華扇「しょ、書類なのね…」

 

小町「生まれ変わる際、魂と記憶は分離される。そして記憶のみが保存される。…生まれ変わりと言うと、魂は生まれ変わる前と同じ。もし本人がその『台本』を手にすれば、記憶はたちまちその生まれ変わった体に戻るんだ。その際『台本』は消えてしまうが、新しい体の中に存在するなら、問題は無い。問題は、完全に消えてしまう事だ」

 

華扇「中々興味深い話ね」

 

小町「面白いよねぇ。ところで、何で急にこんな話を?誰かの記憶を復活させたいとか?」

 

華扇「少しそれに近いわ。ねぇ、誰の『台本』がそちらにあるのか確認って出来る?持ち出したりとか…」

 

小町「確認はともかく、持ち出すのは難しいよ。四季様に見つからないでサボるくらい難しいね」

 

華扇「あら、簡単じゃない」

 

小町「あたいはそうもいかないんだよっ。…で、どうするのさ?」

 

華扇「宮古芳香という少女、それから、武者小路熱盛という男性のを持ってきてくれるかしら」

 

小町「何に使うんだい?…なーんて、もはや聞くまでもないね。オッケー、あたいに任せなよっ!明日の夜、ここに来るよ!」

 

華扇「ありがとう、小町」

 

小町「ああ、そうだ。それ手伝うのはいいけど、終わったら結末を話してくれるよな?」

 

華扇「ええ、話してあげるわ。お礼としてね」

 

小町「へへっ、そりゃ楽しみだ!」

 

ニカッと笑った小町は、勢いよく飛んで行った。

サボり癖はあるが優秀な小町だ、きっと明日にはその「台本」を持ってやってくるだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。