カルゴ「あー、頭が…」
妖夢「まだボゥッとする?」
カルゴ「少しだけな…」
目覚めてから色々話を聞かされた彼は、上半身を起こしたまま痛みを発するらしい頭を押さえる。熱盛の記憶はまるで残っていないらしいが、記憶以外の何かが、彼の中で未だに燻っている事が、頭痛の原因では無いかと思っている。記憶の混濁ならばその片鱗はあるだろう。しかしそれが無いという事はやはり記憶以外の何かが残っていると考えていいだろう。簡単に言えば、拒否反応だ。
前世の何かが今世の肉体に残っているが、肉体が拒絶しているか、または馴染めていないのだ。
カルゴ「ま、すぐ治るだろ。それより華扇さん」
華扇「はい?」
カルゴ「迷惑をかけてしまって……すいません。記憶が流れ込んだ時混乱しちゃって…取り乱した隙に、前世の俺に、人格を乗っ取られたんです。前世の記憶は残ってませんが、倒れる直前の事は覚えてるんですが…」
華扇「いいえ…迂闊にあなたに記憶を戻させた、私の責任です。だから…どうか、気にしないで。それより、お礼を言うのなら…」
カルゴ「妖忌にですよね。やっぱり、剣じゃ全く適わないな…」
華扇「…そうね」
熱盛が剣の手練である事は間違いない。その熱盛ですら妖忌に負けたのだから。剣だけなら、彼は妖忌に勝ち目は無いだろう。
妖夢「これからどうするの?」
カルゴ「あー…どうしますか華扇さん。あそこ、行ってみます?墓地」
華扇「…そうですね…」
建前は、エスカルゴに記憶を戻させたのは「彼の願い、私の興味」だったが、本音は少し違う。
まずエスカルゴに前世の記憶を戻させる。それを利用して、芳香と熱盛しか知りえない事を言って芳香の記憶を呼び起こそうと思っていた。地獄に無いなら、芳香の記憶は本人にある筈だからだ。しかし、熱盛の記憶が完全に消えた今では、その方法は使えなくなってしまった。ならば、まずは本人に会うしか無いだろう。このままでは映姫を言いくるめたあの苦労が水の泡になる。
私は、そういった術には疎い。ハッキリ言って、専門外なのだ。芳香を復活させた青娥娘々なら、何か知っていたり…もしくは、青娥が黒幕だとは思うが、どこに居るのか分からない。
私の見立てでは、十中八九、青娥が黒幕だ。
動機としては「言うことを聞かせやすい」などの理由だと思う。そうでは無いにせよ自分が芳香を都合良く扱う為の措置なのは間違いない。
カルゴ(でも…何だろな…。前世の記憶の中で、何か大事な事を知ったような気がするんだよな…何だったかな…?華扇さんが実は鬼なのは、元々知ってたし…)
華扇「…?どうかしましたか?」
カルゴ「いえ、何も。でも不思議ですね。芳香と前世の俺は結婚してて、俺は生まれ変わってまた芳香と出会うってのは…。向こうはキョンシーになってましたけど」
華扇「そうですね…不思議な縁ですね」
カルゴ「華扇さんの事だから、嘘はついてないと思いますが…何度話を聞いても、にわかには到底信じられないですよ。というか、その理屈なら、華扇さんとも縁があるって事ですね。妖忌とも」
華扇「そう…なるのかしらね」
妖夢「お爺ちゃんと縁があったって事は、私とも縁があったって事だよね!」
えへへ、と可愛らしく微笑んで、そんな事を言う妖夢。妖忌の血縁だし、間違ってはいない…か。少しばかり遠いような気がしないでもないが…。だとすれば妖夢と私も…いや、こんがらがるからこれ以上はやめよう。
カルゴ「だな。…それじゃ、そろそろ爺ちゃんと幽々子さんに挨拶してもう行くよ。ありがとな」
妖夢「もう?もう少し休んで行ったら?」
カルゴ「今夜は博麗神社だからご飯作らなきゃ」
妖夢「あ〜…そっか、それならしょうがないか…残念…」
カルゴ(残念がってくれるだけでも嬉しいな…。ていうか芳香の件はどうするんだ?)
華扇「エスカルゴさん、今夜時間はありますか?もし大丈夫でしたら…」
カルゴ「芳香に会いに行く…ですね?時間なら、多分大丈夫だと思いますよ。……多分。(大事な事なので二度言いました…なんてね)」
華扇「そうですか。…では、夕御飯を食べ終わるあたりを目安に、博麗神社に迎えに行きますね」
カルゴ「すいません、お願いします」
数時間後、私とエスカルゴはまた合流し、今度は墓地へ向かう。霊夢もエスカルゴの前世の記憶に興味があったらしく、それが聞けないことに少しガッカリした様子だった。霊夢は、芳香について
「アイツロクに話通じないし、邪仙の手先だし、放っておいたらどう?」と言っていたが、そうもいかない。エスカルゴは、「リケダンの
カルゴ「墓地到着です。夜の墓地は怖いですね」
華扇「…あの…。どうして、私に協力してくれるんですか?あなたには、メリットは無いはず…。追求したい…本当にそれだけですか?」
カルゴ「ん〜……何だろうな…事情を知ったら、芳香が心配になって……みたいな感じですかね?よく分かんないですが。そもそも、芳香が人間に戻りたがっているのか……死にたがってるのか。それにもよりますよね?」
華扇「っ……」
カルゴ「ま、友達だった華扇さんとしては、人に戻してやりたいんでしょう?」
華扇「……ですね。私の意思としてはそうです。しかし私は、彼女の意思を尊重しますよ。彼女が死にたいと言った時は…仕方なくではありますが受け入れるしかないと思っています」
カルゴ「同意です。………あれじゃないですか?芳香、普通に居ません?」
暗闇の中、どこかを指さすエスカルゴ。その指の先を見てみれば、いつか守谷の巫女がやっていたラジオ体操なるものに似た動きをしている芳香の姿があった。しかしその動きはとてもぎこち無く体操には程遠かった。
華扇「本当に、居たのね…芳香…。しかも、何か臭いがする…っ…」
芳香「おー?なんだー、お前ー?」
芳香が首を傾げると、バキッと大きな音が響く。関節が鳴る事はたまにあるが、骨折のような音が聞こえるなんて只事じゃない。しかも────。
華扇「…呪いが掛けられている…」
カルゴ「あー、防腐の呪いですよね、確か」
華扇「それもだけど…他にもいくつか…」
カルゴ「見ただけで分かるんですか…流石です」
華扇「あの御札が呪いの依代…という訳でも無いらしいわね。一体何が…」
カルゴ「アレ剥がしても青娥の支配から放たれるだけで、呪い自体は解けませんよ。てことはこの近くに青蛾が居るはず…」
芳香「せーがー?…あー……おー…誰だっけ?」
華扇「芳香…?」
カルゴ「主の事すら忘れてるんですよ、たまに。呼ばれたら行く程度で」
華扇「…酷いわね…」
カルゴ「…あれだと、生きたいのか死にたいのかすらも考えられない…もしくは答えられないかと思いますよ。どうしますか?」
華扇「なら…呪いを解けば人として蘇るはずね。呪いの中には、人からキョンシーとする呪いまで掛けられているから…」
私のレベルでわかるのは、「防腐の呪い」「人をキョンシーとする呪い」だけだが、恐らく記憶や魂を奪った呪いも掛けられているはずだ。
カルゴ「魔法みたいで何でもありなんですね」
華扇「まぁ……ね。魔力を使わない魔法と捉えていいと思うわ。でも、呪いなんてそう易々と手を出していいものでは無い。やはり邪仙ね…。私が呪いを解いてきます」
カルゴ「おっ…解除出来るんですか…。だったら俺を呼んだ意味が無いんじゃ…」
華扇「向こうは水鬼鬼神長から逃げ遂せるほどの手練。万が一戦闘になった場合は…あなたの力を貸してほしく…」
カルゴ「なるほど。芳香の為ですし…喜んで力を貸しますよ。弾幕ごっこですよね?(…あれ?何で芳香の為だなんて…?やっぱ前世の何かが残っているんじゃねーかな…。ふと口をついて出てきた感じがする…)」
そう…普通ならごっこで済ませる。しかし相手は死体を弄ぶ外道。それに、地獄からお迎えが来るほどの悪人…らしい。安らかに眠る芳香の眠りを妨げ、死体を弄んだ罪は大きい。そういう意味で青娥は芳香の仇討ち。報復だ。
誰かにその敵討ちをやらせるならば………。
華扇「トドメは────私が殺る」
カルゴ「やるって…まさか…?ていうか仙人って導くのが使命?なのでは…?あいや、そこら辺はよくわかりませんけど…私情が絡んでも良いのかどうなのか…」
華扇「私の大事な友人に手を出したのですから…私情が絡むのは仕方ないでしょう?」
カルゴ「(うっわ、ドス黒い笑顔だ…。)仙人って人殺しして良いんですかね…?仙人殺しか」
華扇「どうせ地獄からも狙われている邪仙です…なんて考えている時点で、私もいつかは、青娥と同じく地獄に落ちるのでしょうね」
天界に昇るよりも…友人のために尽くした方が、私にとってはずっといい。
カルゴ「俺が…殺りますよ。華扇さんが手を汚す必要はありません」
華扇「あなたこそ…」
カルゴ「どうせ俺なんて人殺しだ。今更、誰かを殺す事に躊躇は……ないです。…顔見知りでも」
華扇「……」
いいや…ここで私達が殺す必要は無いか。寧ろ、奴にとっては地獄よりマシだと思われるだろう。ならば最高の地獄を与えよう。
文字通りの地獄送りにして。
華扇「作戦変更です。私達は奴を拘束し、死神に引き渡します。地獄で裁きを受けてもらいます」
カルゴ「…そうですね。地獄に送れるならそれが良いですね。(やっぱ顔見知りはちょっと…ね…。殺しにくいっていうか、何ていうか…。殺さずに済むのならそれが一番か。散々誰かを殺してきた俺が言うのも、アレなんだけどな…)」
華扇「では…あの御札を剥がしてきます」
カルゴ「はい」
芳香「おー?
華扇「戦うつもりは無いわ。額に貼った御札を、剥がさせてほしいの」
芳香「いーけど剥がせないぞー?」
華扇「大丈夫よ」
芳香「んーぅー」
絵に描いたキョンシーのように、前に突き出していた両手を下げる。そのまま包帯を巻いた右手で御札に手を伸ばす。
華扇「キャッ!」
芳香「うーあー」
バチッと小さく火花が散ったので、御札に触れることすら出来なかった。
芳香「ほーら出来なかったー」
華扇「…大丈夫よ……私が今、青娥からあなたを解放してあげるから……」
と、再び御札に手を伸ばすが。
芳香「いただきまぁーす」
華扇「えっ─────」
大きく口を開けた芳香は私の右腕に噛み付いた。
無論、そこに腕があるワケではないので、痛みは無いが…。
芳香「んー?…うえー……腕が無いぞー…?」
華扇「あなた…今、何を…?」
包帯を巻き直しながら問い掛ける私。すると芳香の真上に、水色で袖が膨らんだ半袖のワンピースを纏い、羽衣や髪型など特徴的な容姿をした邪仙がふわりと現れた。
青娥「あらあら〜、包帯を巻いていたのは右手の方だったのね〜♪ うろ覚えだったから、うっかり間違えちゃったわ♪」
華扇「…青娥…!芳香に一体何を…」
青娥「御札のやる事リストにね、あなたの右腕に噛み付いてあなたを一時的なキョンシーにしようとしたのよねー」
そういえばキョンシーは、噛み付いてその相手に致命傷を与えたらキョンシーに変えられたはず。そしてその咬傷が致命傷には至らずとも、一時的なキョンシーにはなる性質があった。
華扇「なるほどね…。私が御札を剥がそうと手を伸ばすのも、あなたの計算のうちだったのね…」
青娥「そうなるかしら♪ でも、詰めが甘いわー。どうせなら、抱きついて首に…の方が、もう少しイイ感じになったのかしらね♪」
華扇「答えなさい。あなたは何の為に芳香を人間からキョンシーにした?」
青娥「何の為?おかしな事を聞くのねぇ…部下を欲しがるのに理由がいるのかしら?」
華扇「じゃあ…何故、芳香を選んだ…っ!?」
青娥「手懐けるなら男より女の子の方がイイし…どうせなら頭のイイ子がイイからねぇ…。まぁ、どっちにしろ良いようにイジくるんだけど♪」
そんな言葉を聞いた私は、思わず、青娥に対する嫌悪感を顔に出してしまう。本当に、倫理も何も無いらしい。この邪仙は。
華扇「この子の…芳香の記憶、魂は何処?」
青娥「さぁ、何処でしょう♪ 口ばかりではなく、力ずくで聞き出してみては如何かしら?」
華扇「っ…!良いわ、あなたを倒して真相を聞き出してやる…!エスカルゴさん…どうか、力を…貸してください…!」
カルゴ「ええ…。今の話を聞いてたら、ちょっと胸糞悪くなってきましたよ…。力で抑えますか」
華扇「殺さぬ程度にお願いしますね?」
カルゴ「分かっています」
青娥「ああ、私の可愛い部下の芳香…!腐ってて可愛い芳香…。一緒に蹴散らしましょう、私達の邪魔をする邪仙と吸血鬼を…♪」
華扇「邪仙ですって…!?あなたに言われたくはないわね!」
青娥「そうそう…良い顔よぉ〜…♪ さぁ、開戦と行きましょうか、山の仙人様♪」
…こうして、私とエスカルゴさん、青娥と芳香の2対2のタッグ戦が始まった。死体を弄び、好き勝手な事をする青娥を、私は決して許さない。
必ず、芳香を青娥から解放してみせる。
月まで届け、不死の煙…みたいなね(汗
霊夢が1位で安心したなう(2019/02/03 02:27:54)
しかし旧作1位が幻月ではなく神綺母さんで……どちらも大好きな俺としては、喜ぶべきか悲しむべきか、非常に複雑な気持ちです…。イチオシは幻月にしましたがね。
やっぱ悲しい。
妖夢3位おめでとおおおおおおおおおおお!!!
節分ネタはもう少し後にー!