2対2のタッグ戦が始まり、しばらく時間が経過した。しかし、流石は1400年以上もの永い時間を生きた仙人。付け入る隙がまるで見当たらない。更に芳香とのコンビネーションが絶妙に上手い。いや、芳香が好き勝手やって、青娥が合わせてる感じに近いだろうか。先程の会話からは、青娥をサポートできるほどの知能は感じられなかった。主従関係こそあれど、普通のそれとは少しばかりカタチが異なるらしい。
青娥「邪符『ヤンシャオグイ』!」
2つの、白く大きめのホーミング弾を発射する。そのホーミング弾の追尾機能は凄まじく、いくら細かく動いても、中々追尾をやめてはくれない。それだけにとどまらず、レーザーのように長い、水色の弾幕も全方位に放ち始めた。左右を挟まれ私もエスカルゴも狭い中でのホーミング弾回避を強いられてしまう。更に、そのホーミング弾は、段々と数を増してきた。ジワジワと袋小路に追い詰めるつもりらしい。
カルゴ「チッ、しゃらくせェ!消しゃーいーだろこんなの!『雷神拳』!!」
四肢に雷を纏った彼は、周囲を飛び交うその白い弾幕を殴って掻き消そうと試みるが、その弾幕は消せず、逆に彼にダメージを与える。
カルゴ「うぇっ……消せない!?イテテテッ…」
青娥「芳香、あなたもやっちゃいなさい♪」
芳香「おー。毒爪『ポイズンマーダー』」
芳香が多数のクナイ弾を引っ掻き傷のような形に展開すると、そのまま発射される。様々な方向に飛ぶので、これもまた行動を制限されてしまう。
華扇「ちょっ…これはルールに違反してるんじゃないかしら!?不可能弾幕でしょ!」
青娥「そんな事は無いと思うわよ〜?その証拠にあなたの相方はちゃんと避けてるわ♪」
華扇「っ!?」
チラリと彼の方を見てみると確かに避けている。普段彼が相手にしている者が実力者故か、かなり手慣れている感じはする。時々弾幕を発射して、相殺もしているが。
青娥「うふふっ…♪ 自分の未熟さを他人のせいにしちゃイケナイわ♪」
華扇「っ…呆れる正論ね!さっさと倒して芳香を解放してみせるっ…!!」
青娥「芳香、引っ掻きなさい♪」
芳香「うーぉー」
弾幕を発射しながら接近してくる芳香。指先には長く鋭い爪が生えている。アレで引っ掻くつもりらしい。
芳香「行ーくぞー。高速移動だー」
華扇「!!」
キョンシーらしくピョンピョンと飛び跳ね、勢い良く私に真っ直ぐ突撃してきた。殴ろうにもその相手は芳香、私は手を出すのを躊躇ったが、次の瞬間、目の前に黒い何かが現れ、私と芳香の間に立ち塞がった。そう、彼だ。
カルゴ「芳香を無力化させます。なので今だけ…青娥の方をお願い出来ませんか?」
華扇「わかったわ…そちらはお願いするわね」
カルゴ「ええ。(青娥と芳香とは前にも戦った事がある。だから、対処の仕方はもう分かってるぜ。こっからどうするつもりだ、青娥…?)」
芳香「じゃーますーるなー。うーおーー」
カルゴ「雷壁『雷纏反撃壁』!」
芳香「ぎゃばばばばば…」
引っ掻こうと突っ込んでくる芳香の目の前に雷の壁を作ると、そこにまんまと突っ込んで感電した芳香。避けるという思考が働かないらしい。
芳香「効かないぞー」
カルゴ「あれ…神経麻痺させりゃ制圧出来たハズなんだけどな…」
「出来たハズ」という事は、以前にもその戦法を使ったという事だ。もしやと思い青娥を見ると、困惑する彼をニヤニヤと見ていた。対策済みだと言わんばかりに。
カルゴ「ま、いっか」
何がいいんだ、とツッこもうとしたその時。彼は背に掛けている二振りの剣のうち一振りを鞘から抜き、切っ先を芳香に向けた。
華扇「まさか、斬るつもりじゃっ…」
青娥「すぐ修復出来るわよぉ〜」
華扇「修復が出来るとか、そういう問題じゃないでしょうがこの邪仙!!エスカルゴさんちょっと待って!!」
カルゴ「────『冥道斬月波』!!!」
黒き剣から飛び出したるは、黒くて巨大な球形の物体。それはゆっくりと真っ直ぐに進み、芳香を飲み込まんとする。普通なら、走れば避けられる速度だが、動きが遅い芳香はそれが出来ない。
青娥「芳香、逃げて!」
芳香「間に合わなーい…」
ピョンピョン跳んで移動する芳香だったが、その黒い球体に呆気なく捕まり飲み込まれてしまう。芳香を飲み込んだ後は、球体も縮んで消えた。
青娥「なっ…!?芳香に何をしたの!?」
華扇「…隙あり!包符『義腕プロテウス』!!」
青娥「しまっ…!!」
右腕の包帯を使い、青娥をグルグル巻きのミイラのようにして締め付けて、ブンブンと風切り音がするほどに勢いよく振り回した。しかし、そんな包帯に穴が空き、バリッと破れてしまう。
青娥「穴があけば脆いものね♪ 小さい穴だけでも破れて脱出出来ちゃった♪」
華扇「っ……!!」
どうしようかと一瞬行動に迷ったが、彼がそんな私の左腕を引いて、自分の後ろに下げた。
カルゴ「下がって。操電『ボルトオペレート』」
先程の仕返しとばかりに幾つものホーミング弾を青娥に放つ。ただし、自動追尾では無いらしく、指は忙しなく動いている。
そんな中でも、彼の左手は私の腕を掴んでいる。離さない所を見ると、何か、考えがあるらしい。まさか、ボディータッチが目的では無いだろう。
青娥「こんなヘロヘロ弾じゃ、いつまで経っても私には届かないわよぉ♪」
カルゴ「知ってるよ。だがお前は、まんまと俺の術中にハマった。終わりだ」
青娥「っ!?何だって…?まさか地面に何か…」
カルゴ「霊符『二重結界』」
彼が、自分と私の頭上に結界を張ったその刹那。青娥を貫くように一筋のとても太い雷が落ちた。頭上に結界を張ったのは自分達…主に私に被害が出るのを防ぐ為だったらしい。その証拠に、雷が落ちた直後に、手は離してくれた。
青娥「う……ぁ…な、何故、雷が…!?スペルの詠唱はしていなかったはず…」
地面に這い
カルゴ「少し強めの通常弾幕を放つだけなのに、詠唱が必要なのか?」
青娥「な…嘘よ、通常弾幕でこの威力がっ…」
カルゴ「通常弾幕の難点は、破壊力が低いこと。だけど、透過力はスペルのよりも効率的なんだ。どう?電流が身体の中を突き抜けた感触。痛い?気持ちイイ?」
青娥「突き抜け…っ…」
カルゴ「雷に打たれて痛い、動けない…じゃなく突き抜けたからこその苦しみ。しばらくは上手く動けなくなる。…さぁ、芳香の呪いを解くんだ」
青娥「…誰が可愛い部下を手放すものですか…。私は、解除なんて事はしないわよ…!」
カルゴ「華扇さん。呪いの類って、術者を殺すか圧倒的格上が解除するかで、対処できますよね?封印とかと同じく」
華扇「ええ…私の知る限りでは、そうですね…」
青娥「ふふっ…うふふ………あっははははは!!この狭い幻想郷の何処に、私より格の高い仙人が居るというの?誰も解除なんて出来やしないわ!あの子は永久に私のモノよ!」
カルゴ「解除出来ないなら殺すしかないのかな。死ぬ覚悟は?俺は、殺す覚悟は出来てる」
青娥「えぇ〜?そんなの出来てるわよ?鬼神長の襲撃で死にかけたからね〜」
カルゴ「…華扇さん。どうしますか?」
後ろを振り返り、青娥の処遇を私に訊ねてくる。
どうしますと言われても困るだけである。きっと私にはどうする事も出来ない。私にあそこまでのレベルの呪いは多分解けないだろう。
華扇「……あらっ?青娥は?」
カルゴ「え?」
青娥が先程まで居た地面には、大きな穴があけられていた。少し私達が目を離した隙に、まんまと逃走されてしまった。
さて、この後の流れは…多分読まれてるよね…。
自分の想像力のNASAに困る。