※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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節分① 〜俺だってたまには〜

2月3日。今日は博麗神社にて、豆撒きがある。普段、こういった催し物は紅魔館で行うが、生憎レミリアは節分が嫌いなので、紅魔館の次に宴会の会場となる博麗神社で行うのだ。

尤も、恵方巻きや豆料理等の屋台は出している。豆撒き初体験のレイチェルは、豆撒きを本能的に嫌がっており、一応神社には来たものの弦月姫とバドミントンで遊んでいる。

 

霊夢「私はワクチンのおかげで大丈夫だけどさ、何でレミリア達はワクチン使わないのかしらね」

 

カルゴ「プライドがあるって言ってたよ」

 

霊夢「馬鹿馬鹿しいわ。そんなプライド守って、自分の生活をつまらなくしてるなんてね。特に、食べ物系は損しかしないしね」

 

馬鹿馬鹿しい…とまでは思わないが、概ね霊夢と同意見である。俺には、自分が損しても守りたいプライドなんて無いので、よく分からない。俺、霊夢、霊麗は、あらゆるワクチンを接種済みだ。なので生活には困らない仕様になっている。だがレミリアは頑としてそれを聞かないので、こんなつまらない思いをしているのだ。

それはフランも同じで、主に従う咲夜さん達も、ワクチンの接種は拒否している。しかし俺には、弱点を受け入れてしっかりと生活しているのが、何だか凄いなと思える。

俺にはそんな事は到底無理だ。どんな柵(しがらみ)からも解き放たれて、真の自由を手に入れたいからだ。

今の俺の弱点は、銀だけだ。また、ペンダントを外せば日光で気化するのは未だ変わらない。何を克服しようと、俺の肉体は吸血鬼のソレだ。

…確か霊夢と霊麗は、銀すら克服していたような気がする。やはり、永琳の技術はとんでもない。

 

霊愛「そーいえば、鬼役は?」

 

カルゴ「もう来るはずだが…まだかな?今年は、例年よりも気合入れてるって聞いたが」

 

霊愛「例年より?…あー…そっか、あの人だね。じゃあ遠慮無くぶつけて良いか」

 

霊麗「だねっ!ワクチン打っといてよかった♪」

 

霊麗がワクチンを打ったのは、去年だったような気がする。皆で楽しく豆撒きしている様を見て、羨ましいと感じたらしい。つまり、参加するのは今年が初めてである。

 

幻月「豆撒きねぇ…本でしか見た事ないわ〜」

 

夢月「生で見るの初めてだね!」

 

霊夢「ゲッ…アンタらいつの間にココに…?」

 

カルゴ「あれ、くるみとエリーは?」

 

姉妹「お・る・す・ば・ん♡」

 

少し色っぽく微笑んで、大きく口を動かして声を揃える姉妹。何故か、動きの一つ一つがエロい。

 

カルゴ「なんか可哀想」

 

幻月「可哀想〜?ダーリンったら優しいのね♪」

 

カルゴ「俺が優しいとか、なんつー的外れな…」

 

夢月「そうかなー?優しいのがお兄さんの良い所だと思うよ、私は♪」

 

カルゴ「優しさなんて良い所に入るのかねぇ…。甚だ疑問だね。それより、豆の準備しなきゃな。手伝ってくれるか?」

 

幻月「そんなの霊夢にやらせればいーじゃーん」

 

霊夢「あ゙?突然来たくせに何言ってんの?」

 

カルゴ「あ、幻月達は俺が呼んだんだよ」

 

霊夢「はぁ?何でよ?」

 

カルゴ「多い方が楽しくね?って思ってさ。身内だけでやるのもつまらないだろ?…地底は地底で豆撒きやるらしいから無理だって言われたがな」

 

勇儀に投げると嬉々として言ってたな、お空…。頑張ってくれ、勇儀…。

 

霊夢「地底の鬼の方が地上の鬼より鬼っぽいし、割と楽しそうね。てか呼ぶなら他の奴にしてよ、トラブルはゴメンよ?」

 

カルゴ「トラブルなんて起こさないよ。なぁ?」

 

幻月「そっちが喧嘩売らなければの話だけどね」

 

夢月「サクッと殺されても文句言わないでよね?私達からは手出ししないけどさ」

 

霊夢「アンタらねぇ…!!」

 

フフン、と胸を張る夢幻姉妹と袖からお祓い棒を取り出す霊夢は、視線を交えてバチバチと火花を散らす。一触即発の空気になり、その嫌な気配を感じたらしいその他参加者達は、こちらを見る。そんな空気が嫌いな俺は、3人の間に割り込む。

 

カルゴ「ハイハイハイ、どうどうどう…。全く、そういう喧嘩吹っ掛けるようなこと言わねーの!何で普通に返事出来ないのかなぁ?」

 

幻月「その巫女(ひと)、生理的に苦手でさー」

 

夢月「私も私もー」

 

姉妹「ねーっ」

 

何故本人の前でそれを言うのか。内心で頭を抱えながら、恐る恐る霊夢の顔色を伺ってみる。幸い気にしてはいない…いや、かなり気にしている。こめかみに青筋が浮き上がっている。お祓い棒がミシミシと音を立てている。それに加え、笑顔を作っている表情筋はピクピクと痙攣している。

 

霊夢「…はぁ〜……コイツらの相手は疲れるわ…面倒な事が起きたらあんたのせいよ…」

 

カルゴ「はーい…」

 

夢幻姉妹に呆れたらしい霊夢は、台所で豆を炒る(雑用を押し付けられた)魔理沙の元へ向かおうとするが、この姉妹は更に追い打ちをかける。

 

幻月「面倒な事なんて起こす気は無いってば〜。日本語通じてない?ていうか夫のせいにするとかサイテーじゃん」

 

夢月「通じてないんじゃない?まー別に、私達にとってはどうでもいいんだけどさ♪」

 

何故そうも執拗に煽るのだろうか。霊夢も煽りに乗るのは馬鹿らしいと考えたのか、首を振って、改めて屋内に向かっていった。

 

幻月「さーて、鬼役ってのが来たら、思いっ切りぶつけてやろーっと♪」

 

夢月「そだねー♪」

 

カルゴ「たく…ガッツリ喧嘩売ってるじゃんか」

 

幻月「あっ、そう?無自覚だったわ〜」

 

夢月「だよね。これくらい日常茶飯事だったし。幽香なんてもっと煽ってくるしね」

 

幻月「そーそー」

 

カルゴ「はは…は…」

 

幽香の煽りを間近で見た俺は、その言葉の意味をしっかり理解でき、苦笑いするしか無かった。

霊夢と豆の様子を見に行こうと、2人から離れた途端、耳にある女性の声が入った。

 

鈴仙「ね、ちょっと来て」

 

鈴仙だ。波長を操って耳元に声を届けたらしい。

これならヒソヒソ話なんて遠くからでもできる。

鈴仙の方を見ると、小さく手招きしている様子が目に入ったので、小走りでそちらへと向かった。

 

カルゴ「どした?」

 

鈴仙「何なの、あの2人…?冗談っぽく言ってたけど、本気も本気じゃないの、あれ…」

 

カルゴ「やっぱ伝わるの?そういうのって…」

 

鈴仙「波長を見れば、本気か虚勢かなんてすぐに分かるからね…。クリスマスパーティーの時から思ってたけどさ、あの2人ってヤバい…よね?」

 

若干ビクビクしながらそう問う鈴仙の耳はかなりシワシワになっている。因みにサグメは、右翼を隠す為に鈴仙の左斜め後ろに立っている。

 

カルゴ「かなりね。でも暴れないようにちゃんと言い聞かせてあるから大丈夫だよ」

 

鈴仙「けどさ、さっきも言ってたけど、売られた喧嘩は買う派だよね?」

 

カルゴ「まぁ…ね。でもここに居る皆は、相手の力量くらいは推し量れるから大丈夫でしょ。無闇矢鱈に喧嘩売る奴も居ないだろうし」

 

鈴仙「なら良いんだけど…少し胸騒ぎがしてさ。お師匠様も、今日は止めておけって言ってて…」

 

カルゴ「おっと?ちょっと待てぃ…。永琳先生が言うと一気に信憑性が上がるぞ?なぁ、サグメはどう思う?」

 

サグメ「…寧ろ、嫌な予感しかしない…。特に、あの時のメイド服の女が…」

 

カルゴ「夢月?…あー…翼コンプレックスか…。まぁ、それだけサグメの翼が綺麗ってことだよ。視界に入らなきゃ良いだけだし、大丈夫大丈夫」

 

サグメ「あの時逃げたのも、私じゃ勝てないのが直感的に分かったから…。今この神社に居る者であの2人に対抗することが出来るのは、きっと…あなたと博麗の巫女、あなたのお母様……くらいだと思う。紅魔館の吸血鬼では、若干力不足…。気を付けて…」

 

カルゴ「…オッケー。肝に銘じとく。…ところで巫月はどこだ?来てない感じ?」

 

鈴仙「上よ、上」

 

カルゴ「上?…おぉー、戦(や)ってる戦(や)ってるぅ」

 

神社の上空では、ロリスと巫月が、笑顔で弾幕を放ちあっている。しかし可愛らしい笑顔に反してその密度はとんでもない。俺の本気の通常弾幕と大して変わらない。巫月だけではなく、ロリスもそうなのだ。末恐ろしい2人である。

 

??「おっまたせ〜!鬼さんが来たぞぉ〜!!」

 

陽気な声で正面から堂々と神社に来たのは、鬼役である伊吹萃香である。今年はなんと、金棒まで装備している。まともな服は来ておらず、虎柄のパンツに加えて、ブラジャーしか纏っていない。マイクロビキニ並の最低限の布面積だ。しかし、その姿がとてもエロい。

 

カルゴ「寒くないの?」

 

萃香「寒くないよぉ!この程度で音を上げてちゃ鬼の名折れさ!…ところで、思ったより参加者が多いんだけど……全員から投げられるのかナ?」

 

カルゴ「俺と霊夢、霊麗以外の吸血鬼は除くが」

 

萃香「ヒエェ〜〜〜……」

 

その時、神社の襖が勢いよく開いた。そこには、大きなフライパンを持った霊夢、豆を沢山入れた一升枡をお盆に乗せて運んでくる魔理沙が居た。参加者数だけに枡の数も多い。これからは、萃香だけではなく俺の仕事も始まる。

 

魔理沙「おーい、豆の準備が整ったぞー!豆撒き始めよーぜー!!」

 

ワッと集まる子供達。1人1つずつ枡を取っては萃香の方へ向かっていく。ただし投げるのは全員揃ってからである。子供に続き、鈴仙や妖夢等の母親達も枡を持っていく。ちなみに、この大量の豆は、弦月姫が能力で用意した。俺が創造魔法で用意したワケではない。

 

霊夢「さぁ、鬼に豆投げつけてやるわよー!」

 

子供達「おおおおおーっ!!」

 

霊夢は、意外とノリが良いらしい。何故今までは魔理沙に任せていたのか…これも疑問だ。

 

カルゴ「霊夢はフライパンに入れたままなのか」

 

霊夢「枡に移すのが面倒臭かったからね。あと、しっかり仕事してよね?」

 

カルゴ「へいへい、分かってるよ。任せときな」

 

霊夢「頼んだわ。…よーし、せーのでいくわよ!せぇぇぇのっ!!」

 

一同「鬼はぁぁ外ぉぉぉっ!!!」

 

萃香を取り囲んだ者達全員で、掛け声と共に豆を萃香に投げつける。多数で幼女をイジめるとは、ある意味リンチみたいなものだ。しかし萃香も、やられっぱなしではない。手に持った金棒で豆を弾き返している。

 

萃香「オラオラオラオラァァ〜!!そんなんじゃ私には届かないぞぉぉぉっ!!!」

 

太くて重そうな金棒を、ただの棒きれを振りますかのように軽々と操る。そんな姿を見て、妖舞は小さく震える。

 

妖舞「いくら何でも、振るのが速すぎだ…。もうダメだ…お終いだぁ…」

 

妖夢「諦めないの妖舞!お爺ちゃんになんて報告するつもり!?」

 

妖舞「だって…あんなに弾かれちゃ届かない…」

 

幽々子「諦めたらそこで負けよ、妖舞くん?まだ豆は残っているんだから、豆が尽きるまで最善を尽くしましょう?」

 

妖舞「分かりましたッ!うおおお喰らえ鬼ィ!!枡ごとブン投げてやらぁぁっ!!!」

 

萃香「ぎょえええええええええっっ!!?!?」

 

大きく振りかぶって投げた枡は、萃香の振り回す金棒に当たって、金棒が枡を壊して豆が勢い良く飛び散る。それに驚いた萃香は一瞬戸惑い、皆の集中砲火を浴びることになってしまった───。

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