2月某日。俺はこの日が1年のうちで1番嫌い…いや、苦手である。どこに行っても、閉め出しを喰らってしまうからだ。…理由は分かっている。次の日に控えているバレンタインデーの準備だ。別に気にしないのだが、閉め出されている以上、余計な事は言わない方がいい。
門で美鈴と話そうと思ったのだが、今年は美鈴も中に居るらしく、門はガランとしていた。門番がこれでいいのか…?とは思うが、侵入者が来ればメイド母娘が屠るので大丈夫なのだろう。門番の意味が…とは言わない方がいいか。
カルゴ「命蓮寺は白蓮居て…よりによって今日は寺子屋休みで……あ、衣玖さんとこ行こっかな」
ポケットからにとり特製トランシーバーを取り出して、目盛りを
カルゴ『もしもーし、衣玖さーん』
衣玖『あらご主人様、どうされましたか?』
カルゴ『ちょっとまとまった時間取れたからさ、今から遊ばない?そっちが暇なら』
衣玖『…申し訳ありません、これから総領娘様とお買い物の予定がありまして…』
カルゴ『あー…そっか。まぁ、急に遊ぼうなんて言われても…予定あるよなぁ…。スマン』
衣玖『いえ、そんな事ありませんよ。お誘いありがとうございました。また後日…お願いします』
カルゴ『うん、分かった。んじゃな』
衣玖『はい』
カルゴ「…はぁ…」
上海「フラれちゃったね、ドンマイ♪」
カルゴ「なんで嬉しそうなんだよ…」
さっき紅魔館を出る時に上海を連れてきていて、本当に良かった。もし1人だったら寂しすぎる。このまま上海と弾幕ごっこでもしようか。いや、それもそれで寂しい。
母さんからは魔界出入り禁止令を喰らっていて、姉ちゃんからは魔法の森の出入りを禁止されて、紫さんの家に行こうとしたが、家の座標を完全にズラされているので行けない。華扇さんと芳香に会いに行こうとも思ったが、華扇さんの家の座標までも変化していたので、そちらにも行けない。
カルゴ「俺の行動範囲内でまだ試してないのってあと5ヶ所くらいあったよな?」
上海「そだねー。命蓮寺行けば?白蓮からお説教してもらえばいいのに」
カルゴ「…それは最終手段だな」
守矢神社はダメだと言われている。ならば、後は純狐の仙界も試してどうだかだ。試しにスキマを開くと、こちらは普通に繋げることが出来た。
???《ちょっと待つのよんっ!!》
カルゴ《ッ!?》
だから喜び勇んで飛び込もう…と思ったのだが、また別なあの神様の声が頭に響いたので、足を…いや、翼を止めた。
ヘカT《今日はダ〜メ♪》
カルゴ《ちぇー…》
ヘカT《欲しいでしょう?純狐からのチョコ♡》
カルゴ《欲しい》
ヘカT《素直でよろしい!じゃ、そういう事で!今日だけは出禁よん♡》
カルゴ《はぁーい…》
ヘカT《どうしても暇ならピースを行かせるけどどうする?純狐に純化してもらえば、あなたとも渡り合えるレベルにはなるし》
カルゴ《おぉ、それいいかも》
ヘカT《あっゴメン、ピースに拒否られた》
カルゴ《えっ》
ヘカT《ピースったらここに残りたいってさ〜♪
じゃ、1人で頑張ってね!暇すぎて破壊行動とかしちゃあダメよん♪》
カルゴ「はぁ…」
小さく溜め息をついた俺は渋々スキマを閉じた。ならば、次に試すのは地霊殿だ。地底だったら、バレンタインという風習も伝わっていなさそうなので、何とかイケるかもしれない。
そう思った俺は、地霊殿の前にスキマを開いて、間髪入れずに飛び込んだ。しかし、門の前に立つ大きな立て札が俺の視界を独占した。
お兄ちゃんへ
今日は立ち入り禁止だよ♪
こいしより♡
どうやら普通にダメらしい。薄々勘付いていた。
そしてその立て札の下には何人かの地底妖怪達が居て、立て札の前で棒立ちの俺に近付いてきた。
勇儀「やぁ、本当に来たな!だが生憎、お空達はナントカデーってやつの準備をしているよ!」
ヤマメ「あ゙ーっ!それ、さとりから言うなって言われてたやつ!何サラッとバラしてんの!?」
パル「チョコレート貰えるなんて…妬ましい…」
キスメ「…でも、『出禁の理由は察せるだろう』とも言ってたから、別に変わらない気がする…」
ヤマメ「いやそうだけどさぁ!流石に言わなくていいじゃん!」
相変わらずヤマメはツッコミ役らしい。お疲れ様としか言い様がないと思う。ボケが勇儀なのも、いつも通りだ。地底のメンバーはボケツッコミのバランスが取れていていい。
カルゴ「…暇すぎて死ぬ…ちょっと相手して…」
勇儀「おうとも!相手してやるさ!!元からそのつもりでここで待ち構えていたんだからな!!」
ヤマメ「しょうがないなぁ。手加減してよね?」
キスメ「…お手柔らかに…」
パル「パルパルパルパルパルパルパルパル……」
ヤマメ「パルスィの言語機能死んだ!?」
カルゴ「っしゃオラァ!最初から全力で行くぜ!雷極『夢想封印・迅雷』!!!」
ヤマメ「手加減してってばあああああっ!!!」
4人vs1人の大乱闘は、およそ30分ほど続いた。今日はいつもよりも勇儀との殴り合いが楽しく、つい長引かせてしまったが、いつも通り紙一重で俺が勝利した。昼時だからか、勇儀からは昼食を共にしないかと誘われたが、酒を勧められるかも…と思ったら、ホイホイとついて行くのは気が引けたので、別な所で食べると言って地底を後にした。昼食なら人里で事足りる。
…が、どうせなら誰かと食べたい。なので、ふと思い付いた所にスキマを繋いで、移動した。
カルゴ「霖之助ぇ〜、昼メシ食おーぜー」
霖之助「ん?…エスカルゴか。丁度ご飯が炊けた所だが、足りるかどうか…」
どこかからか拾ったらしい外製の炊飯器をパカッと開くと、白い湯気がブワッと立ち上る。
カルゴ「ゴツゴツのアハンッッッッ!!!!!」
霖之助「どこかに頭のネジを落としたのかい?」
「ちっがぁぁぁぁう!!」とツッコもうと思った俺だったが、暖簾をくぐってきて出てきた少女を見て、そんな言葉は引っ込んでしまった。
???「霖之助さーん、お椀は2つで良いんですよね?2人だし」
霖之助「あぁ、丁度お客さんが来たからもう1つ頼むよ」
???「はぁーい」
綺麗な翼を翻して、暖簾の向こうに引っ込んだ。何故炊飯器だけ店側にあるのか全く意味不明だ。霖之助の事だから、手元に置いておきたいという考えだろう。
カルゴ「霖之助…今の子は…?」
霖之助「あー、拾ったんだ。名無しらしいから、彼女の背中と頭に朱鷺色の翼が生えてる事から、朱鷺子と呼んでいるよ」
カルゴ「うわああああああああん!!!!リア充爆ぜろおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!!」
霖之助「えぇっ!?それは君だろう!?えちょ、どこに行くんだい!?ご飯は!?」
カルゴ「うるへ~~~~~~~~~!!!!!!しらね~~~~~~~~~~~〜!!!!!!」
その場にスキマを開いた俺は、そこに飛び込んで香霖堂から飛び出す。何処かに行くアテは無い。バレンタインの前は夢幻館への出入りも禁止されている。節分の時に言われた。夢幻館の手前で、くるみと吸血し合おうか。まぁ、最終手段の一歩手前の手段として選択肢に入れておこう。
カルゴ「はぁ…。もう疲れたよ上海…」
上海「お疲れ様。膝枕してあげる?」
カルゴ「頭で潰されたいのな?」
上海「ヤダヤダ」
カルゴ「ホントにどこ行こうかな…」
上海「エッチする時に使ってるあの小屋は?」
カルゴ「なんで俺と上海で行くんだよ…あそこはヤる時専用だっつの」
上海「そういえばそんなことも言ってたような。じゃあ屋台とか?」
カルゴ「そーいや、獣道抜けた先にミスティアの屋台あったような気がする。ナイスだ上海」
上海「シャンハーイ☆」
上海を頭に乗せて獣道の真上を飛び、向こう側へ移動する。屋台は発見したが、何故かガヤガヤと賑わっている。目を凝らしてみれば、チルノ達が屋台に集まって何かしているのが分かった。館の前で遊んでいなかったので、少し珍しいな、とは思っていたが。
カルゴ「おーっす。何しとるん?」
チルノ「ゲッ、エスカルゴ!?何でここに!?」
カルゴ「『ゲッ』てなんだよ傷付くなぁ…」
るみゃ(なんで頭に人形が…)
リグル(人形だ…)
チルノ「あ…えーっとだな…ここは、あたい達の秘密基地だぞ!入ってくるなら退治してやる!」
カルゴ「いや、屋台でウナギ食べたいなぁと…」
みすち「今日はお休みでーす♪」
カルゴ「そんなぁ…」
大妖精「あの、すみません!今日は私達で屋台を貸し切りにしてもらってて…」
カルゴ「貸し切り…なら仕方ないか。んじゃの」
くるりと背を向けた俺は、その場から飛び立ち、大人しく人里で昼ご飯を食べる事にした。今日は上海とデートと決め込もう。今夜は永遠亭だが…帰るのは夜遅くになりそうだ。