ヴィナの廃墟・教会前にてぶつかり始めた俺達とエリス。彼女は、いつも俺を見ていただけあって俺の苦手なパターンを熟知しているようだった。螺旋、カーブに加えて、速度変化系…全く、迷惑極まりない弾幕ばかりだ。
カルゴ「チッ……クソ、苦手なヤツばっか…!」
神綺「ほらほら、イラつかないイラつかないっ!怒ったら敵の思う壷よ?」
カルゴ「分かっけどさ…!」
エリス「えっと〜…スペルカード、だったっけ?まだそれ作ってないんだよね、無くてもいい?」
カルゴ「始めてから言う事じゃねぇよなそれ…。別にどっちでもいいよ、俺も強気で行くから」
エリス「はいはーい!そぉぉ…れっ!!」
カルゴ「ッッ……!」
右回りや左回りを描く極めて小さい弾幕、的確にこちらを狙う幾重ものカーブなどが、あちこちで交わったり爆ぜたりして、非常にやりにくい。
不規則な弾幕は比較的得意だ。しかし規則的でもカーブの場合は距離などを測りにくい。空間認識能力が低い俺は、やはりまだこれが苦手だ。
神綺《…何があっても、気をしっかりもってね》
カルゴ《うん?どしたの急に。隣に居るのに頭で会話する必要あるのか?聞かれたくないから?》
神綺《ええ。あの子は負の感情を自在に操るの。もし、あなたの心の闇をあの子に操られたら…。想像しただけで怖いわね》
カルゴ《争いを起こすんじゃないのか?》
神綺《争いとはいつでも、負の感情が根底にあるものよ。彼女はそれを自在に操って、神も人も、手玉に取るの》
カルゴ《ケッ…可愛い見た目して、やる事成す事えげつねぇのな。ハーレムには、絶対に入れちゃいけないタイプだよね》
神綺《神話に精通してるカルちゃんなら聞いた事あるでしょ?トロイア戦争。それね、実はエリスちゃんが起こしたのよ。その頃は不和の女神とか呼ばれていたらしいわね。まさに神の力を宿した悪魔よね。少しカルちゃんと似てるかも?》
カルゴ《似てないよ、戦争起こすようなヤツと。
…トロイア戦争か…本でしか読んだこと無かったけど、実在してたんだな。あとでへカーティアに聞いてみるよ。…けど、やっぱいけ好かねぇな、アイツ。思ったよりも危なすぎる…》
神綺《…とか言って?》
カルゴ《ぜってぇエリスゲットするわ。…あっ、監視するって意味だよ。問題起こさないように》
神綺《何が起こっても、お母さん知らないわよ》
カルゴ《久しぶりに支配欲ってのが湧いてきた。どうにかして押さえつけて、俺のものに…って、母さんに何言ってんだ俺》
神綺《今に始まった事じゃないわ。でも、それによって新たな争いが生まれる可能性がある事も、ちゃんと分かっているんでしょうね?》
カルゴ《そんなん起きねーさ。俺がエリスの心を完全に支配すれば良いだけのことだしな。多分…俺ならできる。根拠は無いけど》
神綺《…そう上手くいくと、信じてるわ。何せ、エリスちゃんは筋金入りのワルだから心配で…》
カルゴ《戦争起こしたヤツを“ワル”って…そんな軽いモンじゃないだろ。ま、過去の事だから別に気にしないけどさ、俺は。過去よりこれからだ》
神綺《そうね。まずはあの子を制圧しましょう》
カルゴ《もちろんそのつもりさ》
俺は、可愛い子に悪い奴はいないと思っている。つまり性根から腐ってるヤツは居ない。今でこそエリスは荒れているが、異変を起こしたり戦争を起こしたりするのは彼女が退屈していたからだと思う。ならば、その退屈をどうにかして無くしてやれば彼女の悪行も収まるはずである。
エリス「あっそうそう!赤い館の2人さぁ、まだ元気にしてるぅ?」
細いレーザーを全方位に放ちながら、世間話でもするかのような軽さで訊ねてくる。赤い館とは、恐らく紅魔館の事だろう。
カルゴ「2人…って、誰だよ?」
エリス「名前なんて知らないよ〜。結構そっくりだけど、髪色が違う子供の吸血鬼かな」
カルゴ「あー…フランとレミリアか。元気だが、それがどうかしたか?」
エリス「ふーん。プリン程度で喧嘩するからもう絶交してるかと思ってた〜♪」
カルゴ「プリン………あっ!あれもお前か!?」
エリス「どんな些細な事でも、決して見逃しちゃダメよ?メイドと組んで暴走を止めるので精一杯だったなんて、片腹痛いわ♪」
カルゴ「っせぇ!俺ァあの頃とは違ぇぞ!何倍も強くなってんからよ!闇符『
心の闇を具現化させた、漆黒の弾幕を発射する。それはかなり高密度ながらも、エリスはスイスイ軽く避けていく。そういえば、チルノにも普通に避けられていたような気がする。少し、魔法式を改良した方が良いのかもしれない。
エリス「うんうん、知ってる知ってる。だって、幻月と単体で戦って勝ったレベルだし?そりゃあ今のあなたが弱いわけ無いよね。てワケで、少し強気でイキま〜す!」
すると、ポンと音を立てて、エリスが変化した。蝙蝠化した俺より数回り大きい蝙蝠にだ。彼女は悪魔らしいが、どうしてこうも悪魔は蝙蝠に変化出来るのだろうか。吸血鬼と普通の悪魔の境界がもうよく分からない。
カルゴ「お前も蝙蝠になるのかよ…」
神綺「チャンス…なんだろうけど、的が小さくてまるで当たらないわね…っ…」
彼女がバサバサと羽ばたけば、その分だけ多くの弾幕が降り注ぐ。しかしこちらからの弾幕は一切当たりはしない。確か俺は、こんな光景を前にも見た事がある。レミリアやフランと弾幕ごっこをしていた時の事だ。対策は…大体出来ている。
幸い、今回はスペルカードルールではない。ならそれを利用して、禁じ手でも使ってしまおう。
カルゴ「母さん、創造頼む。エリスの後方左右、それから上下。俺やると詠唱が必要でさ…」
神綺「任せなさい!ラストは2人で、カッコよくキメちゃうわよっ!」
カルゴ「…うんっ!」
神綺「悪いわね、エリスちゃん…!これからカルちゃんはホワイトデーの準備で忙しくなるの…。あなたに構っている暇は、あんまり無いのよ!」
母さんがそう叫ぶと、エリスの前以外の全方向に壁が現れ、彼女を包囲してしまった。困った時の
そして、囲まれたエリスは前方に…つまり此方に向かってくる。直方体の箱の中に入れられた様なものなので、弾幕で壊れなければ、そうするしか逃げる術はない。
カルゴ「ンな妖夢みたいに言わんでも…」
神綺「あら、バレちゃった♪」
カルゴ「そりゃ、嫁の名言だからねぇ。…よし、逃げられる前にキメよ」
神綺「実戦で使うのは初めてね♪」
カルゴ「…そういやそーだった…」
2人「『創聖のスーパーノヴァ』!!!」
通常弾幕が消えた数瞬の後、俺と母さんから目を疑うような超高密度の弾幕が溢れ出した。種類も豊富だ。石や木などの物質や、神力弾や魔力弾、電力弾、霊力弾…例を上げればキリがない程だ。ほぼ全て…いや、全ての力を弾幕として、彼女に向けて発射している。
エリス「ッ…キュゥ〜……」
弾幕の雨を浴びて、地面に落ちた蝙蝠エリスは、小さく呻いて人型に戻った。目立つ怪我は無い。擦り傷や切り傷はあるものの、すぐ治るだろう。
カルゴ「どーよ、エリス?少しは言う事聞く気になってくれたか?」
エリス「はぁ…?何で効かないのよ、私の力…」
神綺「私に状態異常系は効かないし、カルちゃんにはあなたの能力の影響が出ないように、新たに特性を付与したわ」
エリス「何それ…ずっるいわねぇ…」
カルゴ「これに懲りて悪事はもうやめるんだな」
エリス「別にぃ…私、悪い事をやめる気…無いんだからぁ……イタタ…」
カルゴ「やめねぇんなら、お前が悪い事する度に俺が止めてやる」
エリス「…ふふっ…それであなた…私をどうするつもりなの…?」
カルゴ「監視下に置くって建前の下で…エリスも俺の愛人……いや、彼女の1人になってよ。俺がハーレム作ってるのも知ってるんだろ?エリス、ケッコー俺の好みなんだよね♪」
エリス「えぇ〜……。ま、近くであなたを見れるって考えれば、それでもいっかな〜…。私、別にあなたのこと嫌いじゃ無いし…」
カルゴ「へへ、そりゃいい。俺も隠れてコソコソ見られるより堂々と見られる方がいいし…」
エリス「ハイハーイ、分かったわよー。ただし、付き合ってもエッチな事はダメよ〜?私が誘ったとき以外はね♪……ま、誘わないけどさ♪」
カルゴ「へいへい。そんじゃこれからよろしくなエリス。今度はサシで弾幕ごっこしようぜ」
エリス「そーね、それはイイかもね♪」
もう少しエリスと話そうかな、と思ったその時。母さんがクイクイと裾を引っ張った。
神綺「…カルちゃん、そろそろ」
カルゴ「うん…分かってる。キッチン借りるよ」
神綺「ええ、好きにしていいわ。エリスちゃん、改めてよろしくね。次荒らしたら許さないわよ」
エリス「…はーい」
カルゴ「じゃ、またな。転移『
瞬間移動でパンデモニウムのキッチンへと行った俺は、すぐさま手洗いうがいを終わらせ、即座に調理に取り掛かった。
積極的だな。
ホワイトデー…明日かと…。
エリス(ヴィナの廃墟)についてのオリ設定
神の力を宿した大悪魔。ギリシャ神話に出てくる不和の女神エリスその人。不和を司るというより
「負の感情を増幅させて空気を険悪化させる」に近い。外の世界出身だが神の力を持っているので異世界(魔界など)への侵入も何のその。
ElisとErisで表記が違うのは、「ゼウス=ユピテル=
ジュピター」の様に別な呼び方や表記のされ方が
あるからであり、lとrのどちらでも正確である。
トロイア戦争後、魔界を気に入って住み着いたは
良いが、ふとした思い付き(暇つぶし)で戦争を
起こしたら、1つの集落が潰れた。それが現在の
ヴィナの廃墟。
へカーティアと顔見知り。仲はあまり良くない。
神様って色んな呼び方があるでしょう?なので、
分かりやすく同一人物として扱うことにします。
そうなると、悪魔と神という異なる2つの実体を
持つことになるので、「神の力を宿した大悪魔」
という結論に至りました。昔って何でもかんでも
神様扱いしたでしょ。日本も外国も。
同名での表記違いはその名残と思って貰えれば。
因みにユピテルは、主にローマ神話でのゼウスの呼び名です。ゼウス、色んな神話に出てますよ。
ユピテルはラテン語で、Jupiterと書くんですが、
これを英語読みすると今度はジュピターになるん
ですよね。なのでジュピターとも呼ばれているの
だそうです。
筆者は、ギリシャ神話、ローマ神話、北欧神話、日本神話、バラモン教は少しずつ齧ってます。
まぁ豆知識程度にしか覚えてないので、書く時はその都度調べているんですけどね(笑)