鈴仙「…え?今、何て…?わた…しと?結婚…、してって…言ったの……?」
あまりにも唐突なプロポーズに、鈴仙は目を丸くさせてそう呟く。俺はそれに言葉は返さず、その代わりに頷いてみせた。それからも暫く、俺達は見つめあっていた。鈴仙は、何が起こったのかと頭を必死に働かせていたらしく、ようやく事態を把握した途端、ハッと目を見開き、俺の手を強く握り返してくれた。
鈴仙「…はいっ!」
カルゴ「ふぅ〜……断られるかと思った…」
鈴仙「ええっ、なんで!?」
カルゴ「間がすごかったし…」
鈴仙「あ〜…迷ってたんじゃなくて、本当か嘘か考えてたの。でも結局どっちにしろOKするし、あなたは嘘でこういう事言わない人だから、ただビックリしてて…えへへ…♪」
カルゴ「まーね…こんな大観衆の中でプロポーズなんてビックリするよな」
鈴仙「2人きりでも、かなりビックリするよ?」
カルゴ「でも硬直するほどじゃないだろ?」
鈴仙「う〜ん……多分?」
カルゴ「式はいつにしよっか?」
鈴仙「ふえぇっ!?あ、そっか…。私達も結婚式挙げるんだね…うふふふ…♡」
唐突のプロポーズだったものの、鈴仙はしっかり喜んでくれたし、顔はすっかり緩みきっている。ストレスを感じた耳はしわくちゃになるが、今は嬉しそうにブンブンと振っている。そのリズムはとても早く、吸血鬼の目でもブレて見える程だ。
鈴仙「結婚…結婚……ふふっ…うふふふふっ…♡
…ねぇ…ギュッてしてもいーい…?」
カルゴ「勿論♪」
するりと脇の下に滑り込んでくる鈴仙の手。更に俺も鈴仙の背に手を回し、抱き合いながらキスをしようと顔を近付けたそのとき。観衆の中から、パチパチと手を叩く音が聞こえてきた。しかし、祝福の拍手ではない。水を差す拍手だ。
レミィ「ハイハイハイハイ!ラブロマンスは後で2人きりで楽しんで頂戴ねっ!!今は、折角皆が集まってるんだから宴会でもしましょ?」
鈴仙(っ!!皆が見てるの忘れてたっ…!でも…チューしたかったなぁ…)
咲夜「いけませんお嬢様、もうお昼の時間です」
レミィ「ここで食べれば良いでしょう?」
咲夜「妹様がお留守番中なのですが…」
レミィ「だったら今すぐにフランを連れてきて。あの子のことだから、すぐに来てくれるはずよ」
咲夜「御意」
早苗「家族間だけの宴会も楽しそうですね〜!」
妖夢(作り置きしてて良かった〜…。幽々子様とお爺ちゃんには言ってあるから、大丈夫だよね)
霊夢「ちょっとー?ここで宴会していいなんて、私言ってないんだけどー?」
未だに寝間着姿の霊夢は、準備を始める一同へとそう声を張り上げるが、それに耳を傾ける者は、娘を除けばただの1人として居ない。
霊愛「いつもの事だし別にいいでしょ。それに、もう茣蓙敷いて準備始めてるし」
霊夢「はぁ……」
誰も茣蓙なんて持ってきていなかったが、全員が手ぶらである事をわかっていた俺は、皆が納屋に向かい始めるよりも早くスキマを開いて、茣蓙を境内に持ってきて、宴会の準備を始めた。
ふと皆の方を見てみたが、エリスはいつの間にか居なくなっていた。近くに妖気も感じられない。どうやらどこかに行ったか帰ったらしい。余計な争いを起こさない事を祈ろう。
神綺《皆の前でキスしようなんて、大胆ね♪》
唐突に話しかけられたので、思わず肩をビクリと大きく震わせてしまった。母さんを見てみれば、ニコニコ微笑みながら俺を見ていた。相変わらず母性溢れる優しい笑顔だ。
カルゴ《プロポーズは周りも見てんの分かってたけど、それ以降はぶっちゃけその事忘れてたよ。2人の世界に入った…的な?ふふふ…》
神綺《もう、カルちゃんったら♪ お母さん、嫉妬しちゃうわ〜♪》
カルゴ《せんでくれ》
諏訪子《私そっち行かなくて良かったー。目の前でイチャイチャ見せ付けられるとか、できるなら避けたいことだしー》
建御雷《ほぉう?それならば諏訪子も、我の前でイチャつくなよ?別に嫉妬はせんが、だらしない神を見るのは嫌だし、何より見苦しいのでな》
神奈子《これには建御雷に同感だな》
早苗《諏訪子様〜、それブーメランですよぉ〜?私の前では堂々とイチャついてるのに、なぁにを言ってんですかねェ〜?》
諏訪子《皆して酷くない!?》
ヘカT《はいはい、諏訪子さんは発言する前に、自分の行動を思い出してねー》
諏訪子《あ゙〜ゔ〜…!!》
ワーワーとうるさい神々の会話。意識を脳内から現実に戻し、茣蓙を敷き終える。後は料理だが、20人以上居るのに今から昼ご飯の準備なんてしていられない。ここは、神に頼るしかないだろう。
カルゴ《母さん、宴会料理お願い出来る…?俺も創造は出来るけど、魔力の痕跡を消す技術がまだ未完成で…。時間がかかっちゃうんだ。料理から魔力を感じるなんて、食事楽しめないし…》
神綺《大丈夫よ、お母さんに任せちゃって!!》
次の瞬間には、何の力も感じない普通の料理が、一面に並べられていた。流石は魔界神。この程度造作もないらしい。
カルゴ《ありがと。今度お使い行くよ》
神綺《じゃあお母さんと行きましょっか!アリスちゃん達には内緒でね!お散歩お散歩〜♪》
カルゴ《…仰せのままに》
弦月姫「お手数おかけしました、神綺様…。私が準備しなくてはいけないのに…」
神綺「この程度は何でもないわ、気にしないで。さぁ、2人が来たらお昼ご飯にしましょう!」
お昼ご飯と聞いて子供達のテンションは上がり、中でも巫月と弦月姫、茜の3人は母さんが能力で創った料理を前にして目を輝かせている。色々と気になるのか、興味津々らしい。
レーテ「おひるーっ!わたちからーげたべるー!めんたまやきもー!」
レミィ「め!だ!ま!や!き!」
レーテ「めんたま〜♪」
レミィ「クッ…何て事…!フランが余計な冗談を言わなければっ…!」
カルゴ「まぁまぁ…。大きくなれば自然と正しい方で覚えてくれるさ」
レミィ「だと良いんだけどね……って、何年後の話よ、それ…」
カルゴ「少なくとも3年か。…あ、噂をすれば。フラン達来たぜ」
レミィ「やっと来たのね、フラン!!あのねぇ、あなたのせいでねぇ──────」
フランと咲夜さんが境内に着地するなり、怒りを思い出したレミリアはフランの方へ駆け寄って、罵詈雑言の数々を浴びせるが、彼女の方はそれをスルーしてこちらに手を振ってくる。俺がそれに手を振り返していると、咲夜さんが何やら神妙な顔でこちらにやってきた。
咲夜「旦那様、パチュリー様から御託けを承っております。『大事な話があるから出来るだけ早く図書館に来てほしい』…だそうです」
カルゴ「パチュリーが俺に……?分かりました、ありがとうございます」
咲夜「確かに伝えましたよ」
カルゴ「ええ」
大事な話という言葉がやけに脳裏にこびりつく。本当ならば、宴会後は神社でまったりと過ごしていたかったが、出来るだけ早くという事なので、帰宅するレミリア達と共に紅魔館へと向かった。
アリス(大きい方)は来てないんだなー…。てか宴会始まる前に終わってるっていうね。今回ほどサブタイに悩んだことは無いよ。多分。きっと。