ある日俺は、前日の宿泊場所である永遠亭から、本日の宿泊場所である博麗神社に移動しようと、空を飛んでのんびり移動していた。が、あまりにのんびりとしすぎたからか、移動中に体内時計が昼を告げた。今神社に行けば、霊夢が「あんたの昼ご飯ねぇーから!」とキレそうだ。それなら、もっと早く行っておけばよかった…とは思うが、後悔先に立たずだ。もう遅い。
早すぎるのも考えものだが、こう中途半端な時間なのが一番面倒である。昼ご飯といえば、人里で定食を食べるのが俺の定番だが……
今日巫月は永遠亭に居た。つまり今日は寺子屋はお休みだ。そう思い立った瞬間、俺は慧音の家の前にスキマを開いていた。
カルゴ「慧音〜、昼ご飯食べに行こーぜー」
扉の前でそう声を掛けるも彼女から返事は無い。気配を探知しようとしたその時、中からドタバタと大きな足音が聞こえてきた。何もそんなに急ぐことは無いだろうに…と思っていると、勢い良く扉が開かれて、中から慧音ではない2人の少女が顔を出した。
少女1「お待たせしましたーっ!慧音先生に何か御用でしょーか?」
少女2「お昼のお誘いでしょ。って…おぉーっ!もしかして君、噂の女たらしで変態な吸血鬼!?先生から話は聞いてるよ〜?随分と派手に色んな女の子に手出ししてるんだってねぇ!」
カルゴ「え、あ……ん?家間違えたかな…?」
少女1「いやいや、当たってるよー!連れてくるからちょっと待っててね!」
カルゴ「あ、うん…お願い…」
珍しくノリについていけず、終始オドオドとして吃ってしまった。いや、今回ばかりは仕方ない。彼女の家に来たら知らない女子が2人出てきて、更に凄い勢いで話しかけてくるのだから。今のはゲームで言う所の初見殺しというやつだろう。
俺が知ってる限りでは、慧音は1人暮らしのはずだったが…。それに今の女子は十中八九人間だ。何故人里の外の慧音宅に人間が居るのだろうか。昔の教え子だというなら納得できなくもないが、あの慧音が昔の教え子を里の外に連れ出すという危険を冒すだろうか。…それは少し考えにくい。
「私がいるから安全だ」「昼だから大丈夫」なら割と納得もいくのだが。
そして2人が屋内に引っ込んだ数十秒後、今度は慧音がシンプルなエプロンを着けてやってきた。料理中ならばお昼に誘うのは無理だが、果たしてどう話せば良いのやら。
慧音「やぁエスカルゴ、どうしたんだ?」
カルゴ「お昼、里で一緒にどうかなって思ったんだが…もう作っちゃってるならまた今度誘うよ」
慧音「あいや、まだ作ってないぞ!今、着替えをしただけだから!この前も奢ってもらったから、今日こそ私が奢るぞ、さぁ行こう!」
下駄箱にエプロンを放り出し、拳を握った慧音。俺のプライドにかけて、絶対に奢らせはしない。最悪でも割り勘だ。
カルゴ「嬉しいけど、後ろの2人は?」
慧音の真後ろでは、先程の少女達が目を輝かせてこちらを見、会話に耳をそば立てている。しかも手には何か植物を持っている。
慧音「あっ…。うーん…今日はこの2人も一緒に連れて行ってもいいか?
カルゴ「…つーわけで、2人も飯食いに行くか?イキナリ知らない男と飯ってのもおかしな話かもしれんが…2人さえ良ければな」
何故かこの2人は俺の事を知っているらしいが…慧音経由なら知っていてもおかしくないだろう。それに、人里での俺の知名度的にも。…そちらはあまり考えたくない事ではあるが…。
少女1「はーいっ、行く行く〜!」
少女2「僕もー!」
カルゴ「よし、行くか!」
2人「おぉーっ!!」
慧音宅を出た俺達は、少し足早に人里に向かう。彼女の家が比較的里の近くで良かった。わざわざ里の人間に見られるかもしれないというリスクを負ってまでスキマを使わなくて済む。
そして、2人の前を歩きながら、気になることを幾つか彼女に質問してみる。
カルゴ「なぁ、慧音?この子達は一体…?」
慧音「一昨日だったかな。買い物帰りに里の外で拾ったんだ。当然自警団に連れて行ったんだが、行方不明者の情報も出ていなくてな…。しかも、何故か記憶を失っているらしいから、私が面倒を見ることにしたんだ」
カルゴ「記憶を?そんな感じしないけどな…」
慧音「あぁ、私もそう思う。だけど、仕方ない。疑っても始まらない。そうだろう?この子達は、記憶を失う前からこういう軽い性格だったのかもしれない。気にしない気にしない、みたいな…」
カルゴ「なるほど。でも俺の事は知ってるような口ぶりだったが…何言ったんだ?」
慧音「あっ…いや、と、特に何も言ってないが?女たらし吸血鬼が居るからお前達
カルゴ「お惚気かぁ…良いよねぇ。リア充サンは末永く爆発して、どうぞ」
慧音「お前が言えたことかっ!」
カルゴ「ははっ、言えねぇな。…で、何で2人はそこでダンスしてるんだ?」
空気の動きと2人の息遣いや、衣服が擦れる音で2人が踊っているのは容易に想像がついた。更に手に持っている植物を揺らしたりもしている。
葉を揺らしサワサワと音を奏でている。
少女1「何でだろ?」
少女2「何でかは分からないけど、
カルゴ「応援、ねぇ…」
慧音「あぁ、この2人ダンスが好きらしくてな。見てて癒されるよ」
カルゴ「俺も癒されたいかも」
慧音「全く…。あと、この子達は─────」
慧音によると、彼女達は自分の名前、生きる為の最低限の知恵は覚えているらしい。けれども家や親の名前、これまではどこで何をしていたのか、能力はあるのかなど、そういった記憶が全て抜け落ちているのだそうだ。何ともまぁ、都合のいい記憶喪失だ。どこかの誰かに、頭を弄られているような気がしてならない。
それと、種族はやはり人間で確定らしい。ならば能力は無いと考えて良さそうだ。小鈴などは少し特殊な例だからだ。能力があるなら、それすらも忘れてしまっているか…隠している事になるが。
カルゴ「着いたぜ。俺のお気に入りの定食屋だ。何でも好きなの注文するといいよ。ただし自分が食べ切れる分だけだぞ」
少女1「すっごーい!お兄さん太っ腹♪」
少女2「痩せてるけど太っ腹だね!」
カルゴ「ははは…」
店に入ると、いつも通り元気な店員が俺達を席に誘導してくれた。その際、やけにこの2人をチラ見していたが、それはきっと2人の髪型や服装が珍しいからだろう。
手に謎の草───慧音曰く茗荷の葉───を持つ子のサイドヘアは腰まで、後ろ髪はセミショートという髪型。風折烏帽子をかぶり、服は紅色のドレスのような服で、襟と前掛けは白く、そこにリボンの意匠が凝らしてある。
手に笹を持っている子のサイドヘアは腰までで、後ろ髪はショートヘアという髪型で風折烏帽子をかぶっている。服装は笹色のドレスの様な服で、襟と前掛けは白くリボンの意匠が凝らしてある。
つまり、この2人はとてもよく似た格好なのだ。姉妹だろうか。髪色の違う姉妹なんて幻想郷にはザラに居るし、姉妹と言われても普通に納得だ。
慧音「エスカルゴはまたアレにするのか?」
カルゴ「うん。俺はもう決まってる」
少女1「私も
少女2「んーと…何にしよう?食べたいの多くて僕迷っちゃうな〜♪」
慧音「…私は日替わり定食にしよう。迷った時はそれにするに限るな」
少女1「天丼にするー!!」
少女2「僕は牛丼!!」
カルゴ「おぉ、イイねぇ。店員さーん!」
とりあえず店員を呼び、4人分しっかり注文し、俺達は雑談に戻る。だが俺は、もっと大事な事を思い出した。まだ2人の名前を聞いていない。
カルゴ「自己紹介がまだだったな。慧音に聞いて知ってるらしいけど、念の為にな。エスカルゴ・
スカーレット、吸血鬼だ。改めてよろしくな」
慧音(そうだ、2人の名前教えてなかったな…。やれやれ、そこはかなり大事だろうに…)
すると、先に竹の茶髪の少女が元気に口を開く。
少女1「私は爾子田里乃!」
少女2「僕は丁礼田舞!」
2人「よろしくね、お兄さん!」
カルゴ「ああ」
どこかで聞いた名だが…2人とは今日が初対面のはずだし、きっと気のせいだろう。そして届いたスタミナ定食を食べながら、どうにかして2人の親を探せないかと、アレコレ考え始めた。
里乃と舞…どっちも好きですがどちらかというと里乃ですかね。ていうか、子供っぽくしすぎた?
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