カルゴ「はぁ〜…食った食った。ご馳走様っと」
慧音「ご馳走様」
里乃「ご馳走様でしたー!美味しかったです!」
舞「ご馳走様ー……」
定食屋で昼飯を済ませた俺達は、膨れた腹を摩り幸せな溜め息をつきながら店を出る。それから、改めて思い知ったことがある。「慧音の知名度もハンパない」という事だ。
俺が幻想郷に来る前は人里で寺子屋の先生として働いていたというのは知っている。そのお陰で、里の中での知名度は霊夢や早苗より少し少ないか同じくらいはある。毎度のことなのだが、周囲の男共からの視線が痛かった。
しかし、今回は以前のようにイラついたり、闇を漏らすことは無かった。ルーミアに言われた通り
「開き直った」からだ。お陰でストレスは無い。
俺だって、学習や成長はするのだ。
むしろ、彼女と美少女2人と食事が出来たので、色々と癒されたし、何より充実した時間だった。
どうやら、スルースキルはネットだけではなくて幻想郷でも必要なスキルらしい。今の俺はそれを十分に身に付けられたと考えていいだろう。
舞「お腹いっぱ〜い…もう何も食べられない…」
慧音「おかわりすればお腹いっぱいにもなるさ。
…済まないな、また奢らせてしまって…。まさか財布を置いてきているとは思わなんだ…」
カルゴ「気にすんな気にすんな。好きでやってる事だしよ」
エプロンを脱いでそのまま出てきたのだ、財布を持っているはずがない。家の中で料理するのに、財布を常にポケットに入れておくか?否、普通は入れないだろう。だから慧音が財布を忘れたのは必然であり、当然だ。…まぁもっとも、俺はこの展開を読んでいたが。これは、日常生活においてかなり読みやすい方に入る展開だろう。
カルゴ「で、どうする?送るか?昼間だからって危険が無いワケじゃ無いだろ」
慧音「嬉しいが…大丈夫なのか?霊夢がまた何か言ったりとか…」
カルゴ「大丈夫大丈夫。霊夢だってそこら辺には理解あるんだぜ?前も『あっそ』で済んだしさ」
慧音「それなら良いんだがな…。(いや、それって良いのか?)」
カルゴ「あと、2人のご両親も探さなきゃだろ?どこから探しゃ良いのか検討もつかないけどな。戸籍とか調べられんのかな?」
慧音「それならもう私が調べたよ。だが、里には
『爾子田』『丁礼田』という苗字の家は、一軒も無かった。珍しい苗字だから、誰かしらは聞いて知っていそうだと思ってたんだが…見つからないばかりか、誰も聞いた事すら無いらしい」
カルゴ「えっ……。2人が行方不明になってから苗字を変えたとか?いや、でも聞いた事くらいはありそうだよなぁ…」
慧音「変える理由があるか?」
カルゴ「うーん…無いな」
子供と縁を切りたかったならば説明はできるが、子供がここまで成長している以上、親の顔は記憶しているはずだ。それは難しいだろう。まさか、里の外に追い出すことで妖怪に食わせようとしたのだろうか。…子供を育てる金が無く外に捨てるなど、理由は幾つか考えられる。
記憶喪失の理由にならないとは思うが…何らかの強いショックで記憶を失う事もあるらしいので、可能性は0では無いだろうが、多分違うだろう。
親が記憶を消せたり改竄できる能力者なら、他にやり方があったはずだ。
これらの事例から考えるに、2人の記憶喪失には両親以外の第三者が関わっている、と考えるのが妥当だろう。そしてその第三者は、記憶を弄れる能力も持っている。色々と厄介そうだ。
カルゴ「…事件の匂いがする」
慧音「やはりそう思うか。私もだ。何か、大きな陰謀が絡んでいるような気がしてならない」
カルゴ「大きな陰謀…か。霊夢にも聞いてみる。少しでも早く2人が家に帰れるようにな」
慧音「時間ある時で良いんだぞ?」
カルゴ「まぁまぁ、俺の余計なお節介って事で。
…なぁ2人共?前に居た所は覚えてないんだろ?どんな感じだったとかは覚えてるか?辛かった、楽しかった…とか、アバウトで良いからさ」
すると途端に顔を曇らせ腕を組み考え込む2人。その仕草もそっくりで、双子を思わせる。しかし苗字も違うし、姉妹では無いのだろう。それが、2人の思い込みや記憶書き換えで無ければだが。ここまでそっくりだと、長年一緒に過ごしてきたようにも思える。たかが数日一緒に過ごしたとてこうも双子のようにはならないはずだ。
里乃「…色々あったけど、楽しかった…かな?」
舞「疲れるけど、好きな事はやらせてくれてた…ような気がしないでもないような…?」
カルゴ「…良い家族だったんだな」
里乃「うん!…多分」
舞「多分ね」
今尋ねたことが家族を探すキッカケになる…とは思ってないが、失った記憶に思いを馳せることで何か思い出す事があるかもしれない、と考えたのだが…やはりそう簡単にはいかないらしい。
慧音「じゃあ尚更、早く帰らないといけないな。ご家族に心配を掛けてしまうだろう」
カルゴ「里の中で探すならこうして里を出るのは良くないと思うが…まずは探す方法を探さなきゃいけないな。戸籍が使いモンにならないのは割とイタイぜ…どうするよ」
慧音「今は、これといった案は浮かばないな…。とりあえずエスカルゴは霊夢に聞いてみてくれ。私達も私達で考えてみるから」
カルゴ「オッケー、分かった。じゃ、慧音ん家も見えてきたことだし、俺はここらで失礼するよ。またな慧音、里乃、舞」
慧音「ああ、またな」
里乃「お昼ご飯、ご馳走様でした!またゆっくりお話したいです!」
舞「あ、言われた!…僕もまた、お兄さんとお話したいな!慧音先生の知られざる顔とか、もっと詳しく知りたいし!」
慧音「こら、舞っ……///」
カルゴ「そうだな、話せる事なら話してやるさ。じゃっ!」
無意識魅了を制御して溜めた魔力で、3人に軽く手を振った後、直接博麗神社へと瞬間移動した。別にスキマでも良いが、何となくカッコつけたくなってしまった。可愛い子の前でカッコつけたくなるなんて、やはり俺もまだまだ子供だ。尤も、それを望んだのは他でもない自分自身なのだが。
カルゴ「ただいま〜、来たぞ霊夢ー」
霊夢「遅い。お昼はどうしたの?また慧音と?」
縁側から中に入ると居間で寝転がりながら煎餅を齧っている霊夢がいた。おやつにはまだ早いが…霊夢の体質上太ることは無いだろう。しかし少し気になる所ではある。
カルゴ「お、流石霊夢。俺の行動は筒抜けだな。霊夢こそ、ちゃんと食べたのか?…霊愛達は?」
霊夢「私は魔理沙んちで食べてきたわ。子供達は永遠亭で食べてるんじゃない?私が先に出たから知らないけど…帰ってきたら居なかったし」
カルゴ「え〜…まぁ12歳と5歳だし大丈夫かな」
霊夢「そーよ」
そう考えてみると、博麗姉妹は7歳も離れているらしい。歳は離れているものの息はピッタリだ。変質者が現れても、あの2人なら大丈夫だろう。
それより今は、娘よりもあの2人の事だ。
カルゴ「どーやら里で、不思議な事が起こってるみてーだぜ。博麗の巫女の出番かもしれないぞ。いや、正確には『里の周辺』になるのかな?」
霊夢「…どういう意味?」
カルゴ「里の外に記憶喪失の人間が2人現れた。戸籍を調べても形跡が無い上に、何も覚えてないワケじゃない。両親とか住んでた所とか、大事な部分だけ都合良く忘れてる。おかしくないか?」
霊夢「で、記憶を弄られたとなると人の仕業には思えないから、妖怪がやった…と考えてるのね。だから私の出番かも、と」
カルゴ「アハハー、読ミガ深スギマスネー」
霊夢「まぁね…人間で能力に目覚めるなんて凄く稀な例だし…記憶なんてモノを弄れるとしたら、相当強力な能力よね。でもそれって、犯人が妖怪だとしたら容疑者があまりにも多くなるわね…」
カルゴ「だろ。洗脳技術を
霊夢「その、記憶喪失の2人の名前は?」
カルゴ「1人は爾子田里乃、もう1人は丁礼田舞って名乗ってたぞ。まだまだ子供だったなぁ…。でも子供らしくて可愛かったぜ」
霊夢「え………?」
手に持っていた煎餅をポロッと落とし目を見開く霊夢。驚きのあまり物を落とすとは漫画的だが、今の霊夢はまさに漫画のように驚いていた。
カルゴ「あ、変な目で見たワケじゃないからな?ただ、俺の子供達には無いくらいの子供らしさ?みたいなのがあって、新鮮だったなって事だよ」
霊夢「いや、そうじゃなくて…え?爾子田里乃…丁礼田舞…?その2人が記憶喪失で………今は、どこに居るの?」
カルゴ「慧音が自宅で保護してるよ。一昨日に、慧音が里の外で拾ったんだってさ。…まさかとは思うが、その反応……2人を知ってるのか?」
霊夢「…ええ……知ってるわ。あんたが来る前に起こった異変で、戦ったことがある2人よ」
カルゴ「戦った…!?霊夢が…里乃と舞と!?」
俺の言葉に、確かに霊夢は頷いた。一方で俺は、まさかの発言に驚いていた。そのときの2人とは別人説を推したいが、こういう所では間違えない霊夢だ、それは無いだろう。
俺はそこに対する驚き、そして霊夢はその2人が記憶を失っているという事に驚いており、互いに黙っていた。
しかし、その次の瞬間。何かに気付いた霊夢は、畳を凹ませる勢いで跳ね起きて、唐突に叫んだ。
霊夢「まずい、霊愛達が危ない!!」
カルゴ「!?」
血相を変えて玄関に向かう霊夢を追うと、彼女は御札やお祓い棒などを用意し、妖怪退治の準備を始めていた。この焦りようから察するに、かなり非常事態らしい。ここまで焦る霊夢はこの16年で初めて見た。
カルゴ「おい、霊愛達が危ないってどういうことだよ?マジでちゃんと説明してくれよ!?」
霊夢「それより先に、後戸の国にスキマ開いて!急いで!早く!!少しでも遅れれば手遅れに…」
カルゴ「う、後戸の国だと?何だそりゃそんなの聞いたことないぞ?魔界みたいな別な世界か?」
霊夢「くっ…紫!紫ィ!!出てきなさい今すぐ!どーせどっかで聞いてんでしょ!?私達を今すぐ後戸の国に連れて行きなさい!!」
まるで別人ようなものすごい剣幕で怒鳴り散らす霊夢。あまりの声量に鼓膜が震える。声からは、焦りよりも怒りの方が強く感じられる。霊夢には犯人が分かったのだろう。
これまでの会話から察するに、里乃と舞の記憶を弄ったのは霊愛達を連れ去った者と同一人物で…霊愛達も記憶が弄られる可能性があるのでこうも焦っているという事だろう。
落ち着いて…いられるわけがない。
カルゴ「紫さん!今すぐ後戸の国とやらに俺達を連れて行って下さい!霊愛と霊麗が危ない!!」
霊夢「出てこないなら博麗大結界を緩める迄よ!それでも出てこないなら破壊しようかしらねぇ!巫女失格でも良いわよ、子供を見捨てたら親失格なんだからッ!!」
一瞬、「博麗大結界を破壊したら、この幻想郷が終わるんじゃ」という言葉が喉まで出かかるが、子が奪われる寸前の親の気持ちはこんなものだ。現に俺も、止めることを忘れその選択に従おうとしてしまっている。幻想郷が崩壊すればこういう生活も全て消え去るというのに。
そう分かっていても、「全てを投げ打ってでも」取り戻したいものがあるのだ。腹を痛めて産んだ我が子なら、さすがの霊夢でもそういった極端な思考に陥るのも仕方の無い事なのかもしれない。
霊夢「…だんまり決め込んでないで、何とか言いなさいよ紫ィィィッッ!!!」
そこまで言っても尚、うんともすんとも言わない紫さん。そもそも見ているのかすら分からないがこう言われたら出てくるはずだ。
俺は茜の事も呼んだが、やはり返事は無かった。
痺れを切らした霊夢は怒鳴ることを止め、結界を緩める為の祈祷を始めた。けれどもその数秒後、祈祷を中断して宙を睨みつける。
霊夢「紫の奴…結界をいつにも増して強く…!!結界が全然緩くならない……」
幻想郷が崩壊しなくて済んだという安堵の溜息をつく俺だが、すぐ気が付いた。紫さんを脅せないので、後戸の国への移動手段が消えた事に。
こうなれば、手段は1つしかない。絶対に嫌だと思っていたが、愛する娘には変えられない。
カルゴ《母さん頼む》
神綺《ええ、分かってるわ。《異世界への往来が可能になる程度の能力》を付与するわ。今すぐに霊愛ちゃんと霊麗ちゃんの所に行きなさい》
カルゴ《勿論》
神綺《移動は瞬間移動式にしたから楽よ。空間に裂け目を開く手間すら惜しいものね。『○○○に行きたい』と念じるだけで良いわ》
カルゴ《了解》
拳を固く握りしめる霊夢の手を取った俺は、無言のままで後戸の国へと瞬間移動した。
今年もまた、春例のお品書きがTLに流れてくる時期になりましたね。まぁ俺は例によって例大祭行けないんですけどね…。秋例は行きたいです。
眺めててふと思ったんですが、今回、旧作関連のお品書き少なくないです?気の所為ですかね…?小兎姫のアクキとかあったらめっさ欲しいです。アニメイトには売ってないんですよ………畜生。夢幻姉妹のタペとか想像しただけでヤバいです。軍資金が無いって辛いですね…。
魔理沙ルートの「生命担当の丁礼田、精神担当の爾子田。今ならどっちでも良いわよ」のセリフが妙に引っかかります。
ヤマザナドゥみたいに役職名なのか。
それとも「生命担当の丁礼田(舞と)、精神担当の
爾子田(里乃)。今(交代する)ならどっち(の子)でも
良いわよ」という意味なのか。
もし役職名なら本名じゃない事になるから2人の苗字は不明なままですね。原作設定でも親は既に亡くなっているようですし…重い設定だなぁ…。
隠岐奈曰く、後任が見つかれば人間に戻れるようですが…あの時は後任が見つからなかったので、人間には戻れませんでしたね。
しかし今回は…はい。人間に戻ってますね。
《異世界への往来が可能になる程度の能力》は…今後はあまり出番ありません。瞬間移動やスキマより勝ってるのは「行った(見た)事のない場所にも行ける」以外に無いですから。
結界も無効化するという点では勝ってますかね。
座標が不明なゆかりんの家や華扇の家に行ける?
行けます。
2人の性格、このままでOK?
-
OK!
-
少し大人っぽく!