紫に歓迎の言葉を言い渡された私は、とりあえず諏訪子と早苗の観察を終え、下山する事にした。天狗に見つかると色々と面倒だとよく聞くので、来た時と同じように細心の注意を払った。
文の仕事場にも行ってみたかったのだが、場所が分からない上に昼間は居ないだろうという予想に基づき、今回は文の観察を見送ることにした。
山の麓には、魔法の森が広がっている。下山したあとは、彼の姉であるアリス・マーガトロイドを観察するべく、森の上空から彼女の家を探す。
だが、ここはとても空気が悪い。大自然の中とは思えないほどだ。きっと、森の中に自生している植物が普通のそれとはまるで違うからというのもあるのだろう。なので、観察はごく短時間の内に済ませなければならない。
サグメ「…あれか…?」
早速森の中に一軒の建物を発見した私は、窓から見えない死角に降り立ち、足音に気を付けながら窓に近付き、中を覗く。けれども、外から見える範囲は本や紙等で散らかっており、生活感はあるものの、人の気配は感じられなかった。
どうやらハズレらしい。ここは、魔理沙の家だ。
泥棒に荒らされたかのように滅茶苦茶だが、確か魔理沙の家はかなり汚いと彼が言っていたような気がするので、これは泥棒ではなく魔理沙自身が片付けをサボっていた結果だろう。
埃まで被っているところを見ると、そこそこ長い期間そのままにしておいたのが窺える。
サグメ「…魔法の森のどこにある…?」
アリスの家を目指して飛び立った正にその直後。魔理沙と彼の気配が、魔理沙宅の前に突如として現れた。私は反射的に方向転換して、できるだけ2人に悟られない…と思われる距離に着地した。
2人で何か話している。盗み聞きは気が進まないとは思うが、そんなのは今更だ。何か手掛かりが掴めるかもしれない。
カルゴ「はぇ〜、すっごい…魔理沙の瞬間移動は別世界間でも可能なのな」
魔理沙「まーな!お前なら出来ると思ってたが、どうやら私の方が上らしいな!ハッハッハー!」
カルゴ(この前母さんから貰った能力使えば可能だけど…魔法による瞬間移動では出来ないしな。不便なんだか便利なんだか分かんねぇな…)
魔理沙「ところで、さっき聞き損ねたが、今日は何の特訓してたんだ?妹は見てただけだったが」
カルゴ「魔理沙が来る前は2人で特訓してたんだけど、アリスの魔力が暴走しちまって、魔力が切れたらしくて。だから母さんに色々と創造してもらって、斬る練習とかしてたんだよ」
魔理沙「練習熱心だなぁ。妖夢に教えてもらう…のは、ダメなんだったっけ?」
カルゴ「キツイ。マジでキツイよ。俺って自分に甘いからな、アレは本当に無理だ」
魔理沙「自分に甘い…のか?ま、まぁさ、それはおいといてだ。自分に甘いと分かっているなら、直しとこうとか思わないのか?」
カルゴ「ねぇ、なんでそんな正論ぶつけるの?」
魔理沙「やっぱ分かってんのかい…。でも魔法の練習もしてなかったっけ?チラ見しただけだが」
カルゴ「見られてたのかよ、恥ずかしいなぁ…。この前パチュリーに、修復魔法教えてもらったんだけど、その練習でね。母さんが創った壁とかを斬りとばして、それを魔法で修復するんだ」
魔理沙「斬られた部分は?」
カルゴ「残る」
魔理沙「だから残骸の山が…」
カルゴ「そゆこと」
…話を聞くに、彼が魔界で特訓している所に丁度魔理沙が立ち寄ったらしい。何故魔理沙も魔界にという疑問は残るが、今の私にそんなことは心底どうでもいい。
カルゴ「パチュリーが言うにはさ、修復魔法には2つの種類があるらしい」
魔理沙「と言うと?」
カルゴ「1つは、修復したい物体の時間を戻す。壊される前にな。でもたとえ物体が相手でも時を戻すなんて俺には出来ないからさ…。もう1つの方法でやってるよ」
魔理沙「あ〜………なるほどな。そのもう1つはシンプルに再生させるって感じか」
カルゴ「そゆこと。複数に分かれた場合、魔法で繋ぎ合わせるのは再生させる方に入るらしくて」
魔理沙「まぁ、それはすぐ分かるぞ。怪我とかもそうだろ?例えば切り傷なら、切れた皮膚が繋ぎ合わさったら『傷口が再生した』とか言うしな」
カルゴ「あぁ、言われてみればそうだな…」
魔理沙「身近な例に置き換えて考えるとな、理屈とかは案外簡単だったりするんだぜ。パチュリーなんかは説明がまどろっこしいから理解しにくいのかもしれんが」
カルゴ「俺の理解力が乏しいだけ。普段の説明は割とすぐ分かるぞ」
魔理沙「ほー。で、修復魔法は完成したのか?」
カルゴ「んー…壁とかの建造物とかはイけるよ。これなら、もしも紅魔館が崩れた時とかに創造し直さなくて済むよ」
魔理沙「その為に覚えるのか」
カルゴ「それが主な目的かなぁ。美鈴と戦うと、かなりの高確率でどこかしらぶっ壊れるからな」
魔理沙「格闘戦はおっかないな」
カルゴ「そう?俺は結構楽しいと思うよ。勝てばもっと楽しいだろうな〜」
…何故だろう。魔理沙と彼が話しているのをこうして聞いていると、何故だか寂しくなってくる。鈴仙と彼、姫と彼が話していたりするのを聞いていても、特に何も感じないというのに。しかも、胸まで痛い。こちらはきっと穢れのせい…だろうとは思うが、あまり気持ちのいいものでは無い。そして気付けば私は、拳を固く握りしめ歯を食いしばっていた。ギリギリと音が出そうなほどに。
サグメ「……。何をやっているんだか…私は…」
怒りでも悲しみでもない。それらとはまた違う、謎の感情。私はこの謎の感情を言葉で表せない。私にとってはこれが初めてのことなのだ。こんな妙な感覚に陥るなんて。
私が知っている言葉の中では…「悔しい」が近いような気がするが、やはり違うような気もする。何に対して悔しいと感じているのか分からない。彼と魔理沙が仲良さそうに話している事に対してだとしたら………これは嫉妬?
しかし鈴仙と彼が話していても微笑ましく見えるだけなのだが…今のあの2人を見ていても、全くそうは感じられない。不思議だ。鈴仙と魔理沙の違いなんて、彼と付き合っているか否かくらいの違いしかないというのに。
こんな嫌な思いをするくらいなら今すぐここから離れてしまいたい。けれど、私の足は動かない。まるで私の身体が、彼から離れるのを全力で拒絶しているかのように。
魔理沙「…もう昼だが、これからどうするんだ?何なら、魔理ちゃんが手料理振る舞ってやっても良いんだぜ?」
カルゴ「魔理沙の手料理は食べてみたいけど……悪い、今日は無理だわ」
魔理沙「あ〜…やっぱ霊夢のことだし、遅れると飯抜きとかされるのか?」
カルゴ「普通にされるよ。そういう容赦ねぇ所もスゲェな可愛いんだけどよ。んじゃまた今度な。家の片付けはこまめにしとけよ?」
魔理沙「うっ……分かってるよ!じゃな!」
顔を赤くさせた魔理沙は家に駆け込み、勢いよく扉を閉める。一方彼は、腰に手を当て、ふぅっと大きなため息をついた。
カルゴ「……サグメ?近くに居るんだろ?」
サグメ「……ッ!!」
木陰に隠れている上に、気配も最大限隠しているはずなのに、彼はそう言った。まるで背後に目があるような探知能力だ。しかし、彼はこう言う。
カルゴ「探知能力はあんまり無いけど、サグメの気配くらいは俺だって分かるんだぜ。やっぱり、惚れた女の1人や2人くらい、探せなくちゃな?
(穢れってやつの影響なのかは知らねーけど、綺麗だった気配も少し濁ってるような気がするな…。不老不死は望んでるようだが、決意はまだらしい
からね…。俺はいつだって準備万端なんだぜ?)」
サグメ「………」
意を決した私は、木影から彼の前に姿を見せる。そんな私を見た彼はニッコリと微笑んだ。
カルゴ「たく…こんなとこに来て大丈夫なのか?ここ、幻想郷の中で一番ヤバいと思うぜ?
サグメ「それは分かってる。けど………」
カルゴ「…けど?」
サグメ「何故か…離れたくなかったの。きっと…あなたがここに居るから…///」
カルゴ「お…おぉ…!?(いつにも増してデレデレじゃないか?ヤバい、可愛すぎる…!!)」
サグメ「…あなたを付け回すような真似をして…ごめんなさい」
カルゴ「あぁいや、別にそこは大丈夫だよ。寧ろフェイバリット!」
サグメ「えぇ…」
カルゴ「そうだ。どうせ会ったんだし、飯食いに行かないか?もう昼近いしさ、丁度良いだろ?」
サグメ「でも…博麗神社で食べるんじゃ……?」
カルゴ「魔理沙との会話も聞いてたんだな。でも今日の昼を博麗神社で食べるとは言ってないぜ」
サグメ「まぁ…そうだけど。私は嬉しいけれど、神社で食べるのは決定事項だったはずでは…?」
カルゴ「…魔理沙と食べるの断ったのはサグメを昼飯に誘う為なんだぞ?居るの分かってたしな。で、どう?行かない?」
サグメ「っ…!行きたい!」
カルゴ「Exactly as planned……♡」
サグメ「え…?何?何て言ったの…?」
カルゴ「んふふふ…♪」
サグメ「…?」
今日…彼に言おう。私も不老不死になりたいと。決して、軽々しく決めた訳では無い。けれども、これから先もずっと彼と生きていきたい思いは、幾ら時が流れようと、たとえ喧嘩をしようとも…絶対に変わることは無い。
飯シーンはいつも通りなので省くとして、ちょいデート編としますデス。なんで今回で終われると思ったのだろう。
俺にそんな才がある訳ないのにw
Exactly as planned:計画通り