勇儀に見守られながらダイヤモンドを斬る練習をした俺は、彼女に礼と別れを告げて、更に地底の奥へ奥へと進んでいく。
次なる目的地は、彼女達の住まう地霊殿である。愛しの彼女に逢いに行くというのも勿論あるが、イチャつくより先に特訓だ。俺の中の優先順位が彼女達<特訓という訳なのではなく、お楽しみはあとにとっておく、という意味合いの方が強い。
カルゴ「こんにちはー……さとり、居るかー?」
広いエントランスには、当然ながら誰も居ない。怨霊はあちらこちらにフヨフヨと浮いているが、生物らしい生物の気配は無い。
このままエントランスで待っていても恐らく誰も来ないと思うので、断りはもらってないが、中に入って家主のさとりを探す事にした。もしくは、さとりのペットであるお空だ。彼女の放つ火球を斬る練習もしたいものだ。
一度は完全に我が身を消し飛ばした火球を、剣で斬る。簡単な事ではないがやってみたさはある。
妖夢や妖忌ならば、平然と斬り飛ばすのだろう。そこまではなれずとも少しは近付きたい。妖夢の夫としても妖舞の父としても、俺が劣っていては申し訳が立たないような気がするのだ。
カルゴ「さとりー…あ、居た居た」
さとり「エスカルゴさん?!いつ地霊殿へ…?」
本を読んでいた彼女は、それを閉じて机に置き、小走りで図書室入り口の方へ駆けてきた。図書室を走ってはいけません…と言うのは野暮だろう。何せここはさとりの家だ。
カルゴ「ついさっきね。図書室なら居るかなって思ったんだけど、そのまさかで良かったよ」
さとり「…成程、剣術の特訓ですか。生憎お空はまだ間欠泉センターで仕事中なので………ええ、私で良ければお相手しますよ」
カルゴ「話が早くて助かるよ。あ…」
さとり「勝手に入っても大丈夫です。エスカルゴさんですからね」
カルゴ「そっか…なんかありがとな」
さとり「そもそも、この広い屋敷で私が図書室に居るのに、誰にどう許可を取るんですか。お燐やお空達が来るのを延々と待つつもりですか?」
カルゴ「はは、ご尤もだな」
さとり「…!そういえばこいしは…?いつもならここに来る時はエスカルゴさんと一緒ですが…」
カルゴ「今日はまだ見てないな。乗っかられてる感覚すらしないし」
さとり「気付いていないだけで、既に乗っているかもしれませんね」
カルゴ「ハハハ…それが有り得るから怖いよ…」
地霊殿から出た俺達は、それなりに距離を取って正面から向き合う。俺は両手に剣を装備し弾幕を斬る準備を整える。
さとり「私個人は特殊な弾幕は放てませんから…弾数が多かったり苦手そうなスペルを模します。剣術の特訓と言うなら、まずはスペルで処理するのではなく、普通に斬ったり斬撃を飛ばして処理してみましょう。それでいいですね?」
カルゴ「オッケー!」
さとり「準備は…良さそうですね。いきますよ。想起『天人の五衰』!」
カルゴ「これは妖夢の…っ!」
黄、橙、赤、青、紫の綺麗な弾幕が現れ、それが一気に散開する。俺狙いという訳でもなく、多少まとまりがある弾幕だ。それなりに広がるので、斬り甲斐が有る。
カルゴ「避けるんなら割と得意な部類だが…斬るとなると案外っ……フンッ!!」
右手で妖魔雷霊剣を、左手で暗黒斬月剣を闇雲に振り回し、一歩たりとも動かずに迫り来る弾幕を斬り裂く。第二波、第三波、第四波……繰り返し放たれる弾幕を、斬り方を変えて捌いていく。
弾速は早めのスペルだが、何度も繰り返されると流石に目は慣れてくる。緊張の糸は切れ、剣捌きすらもおざなりになりかけてきてしまう。そんな俺の心の緩みを見抜いたさとりは、緩み切る前にスペルを変更する。
さとり「想起『殺人ドール』」
カルゴ「うッ……!」
咲夜さんと弦月姫のこのスペルは実際にナイフを投げてくるスペルであるが、当然ながらさとりはナイフを所持していないので、ナイフ弾をかなり高密度に発射する。しかもこのスペル、突然方向転換する。これが苦手ポイントだ。
避けたと思ったら方向が変わる。サラリと苦手な部分を特訓に織り込むとは、流石さとりである。
カルゴ「なぁ、もうこれスペル使って良くね!?ダメか!?ダメなのかー!?あうちっ」
両肩甲骨あたりにナイフが刺さった。あまり深くなかったが、チクチクどころではない痛みに軽く顔を顰めてしまう。身体を揺すって、急ぎそれを払い飛ばす。深かったら、こうはいかなかった。
さとり「剣捌きの練習にならないと思いますが、それで良いのであれば。口ではそう言ってても、あなただって分かっているのでしょう?」
カルゴ「ま、そーなんだけどさっ…やっぱ自分に嘘はつけねーか!」
さとり「そもそもあなたは、嘘が下手ですしね」
カルゴ「そんな言うほどか!?」
さとり「こんな言うほどなんです」
カルゴ「うへぇ…」
斬ったときの金属が擦れたような音は、本物かと思うほどにリアルだ。しかし、斬られた後にそのナイフ弾は消えるので、やっぱり偽物なんだなと思わされる。本物ならば斬られても残る。
さとり「嗚呼…やっぱり、弾数が多いと中々大変そうですね…。うふふふ……ふふふっ…♪」
カルゴ「ちょっと…?どうしたその黒い笑み…」
愉悦の笑み…いや、どこかウットリとしている、しかし黒さが伺える笑みを浮かべるさとり。勿論彼女は可愛いのだがそうではなく、どこか背筋がゾクッとするような寒気がした。
さとり「今日はこれで仕上げにしましょうか…♪
想起『夢想天生』…♡」
カルゴ「ふぎゃああぁああああぁああっっ!?!
や゙め゙でえ゙え゙え゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙っっ!!!!」
御札か弾幕かの判別もつかぬまま全身を撃たれた俺は、そのとんでもない速さに勢い負けし、吹き飛ばされてしまった。グワグワと歪む視界と思考の中で、「夢想天生」のヤバさを改めて強く思い知った俺であった……。
令和最初の更新!です!
さとりんは隠れSでエスカルゴはMもイける…。案外良いかもしれないなー…とか思いました。
夢想天生(非想天則Ver.)はエスカルゴの剣捌きレベルじゃ絶対無理ですよね。絶対に。
三月精2期の2巻と3巻、やっとゲットです…。
1期は無理ですね、発行されてないし希少価値がえげつないです。新品厨の俺氏絶賛絶望中です。