妖舞「なっ……その、武器は……?」
妖舞は、妖忌が幽々子に手渡した武器を見て目を丸くする。それは今まで自分が見てきたどの武器よりも異様に長く、何より初めて見るものだったからだ。持ち手と刃は同じくらい長く、尚且つ、幽々子本人の身長…いいや、この4名の中で最も身長のある妖忌よりも遥かに大きい武器なのだ。
妖忌「5尺7寸9分の、かなり大きな長巻じゃ。幽々子様は、剣よりも薙刀と長巻を得意な武器とされておる。妖舞は初めて見るか」
5尺7寸9分、およそ220cm…2.2mである。
刀剣の中では大きい方の楼観剣が、比にならないほどの差だった。そして、それを見て驚いているのは妖舞だけではない。彼の母、妖夢もまたその武器を見上げて驚いている。
妖夢「私も初めて見るんだけど…」
妖忌「おっ…そうか…。まぁ…幽々子様が武器を手に取ること自体、滅多に無いからのう…」
妖舞(ってことは…)
妖忌「だからと油断するな、妖舞よ。幽々子様はお主より長く、真剣に武器術に取り組んでおる」
妖夢(真剣に…?私ですら見た事ないのにそれは無いんじゃ…?流石に鈍るはずだし…)
妖舞「…分かった。本気でやる」
妖忌と妖夢は縁側に座り、庭で向かい合う妖舞と幽々子を見守る。リーチは明らかに幽々子に分がある。しかし妖舞には、鍛えた剣術や、吸血鬼の子ならでは瞬発力、動体視力等が備わっている。幼子ながら、吸血鬼に近い力だって有している。
そして、コンディションは2人とも通常通りだ。ある意味では、妖舞の方が有利に思える。
そのように、考えられる事を組み合わせて結果を予想した妖夢は、妖舞にも勝ちの目があることを信じて、祈るように見つめていた。
幽々子「ルールは簡単。私は弾幕禁止、あなたは弾幕有りで、首へ峰を当てることで決着とする。峰
それを聞いた妖夢親子は目を丸くするが、妖忌は唯一、顔を伏せて石畳に目を落とした。妖夢は、項垂れる妖忌に向かってこっそり耳打ちする。
妖夢「え…これってかなり有利なんじゃ…?」
妖忌「と、思うじゃろ。これは全然、有利になどなってはおらん。寧ろ不利にさえなっておるかもしれないほどじゃ」
妖夢「
妖忌「戯けた事を…。弾幕という手段を得れば、それに頼るようになってしまうじゃろう。剣への集中力が落ちてしまう。妖夢ならばいざ知らず、お前よりも未熟者の妖舞に出来ると思うのか?」
妖夢「…ダメだね…」
それでも何とか勝つ事を祈り、妖夢は息子に目を戻した。本人が内心どう思っているのか妖夢には分からないが、先程の妖忌の言葉が効いたのか、油断はしていなさそうである。
妖舞「……分かりました。そのルールで、お願いします」
幽々子「ふふふっ、主が尋ねているのに随分間があったわね。私が言ったルールを吟味して、よく考えてくれたのかしら。もしそうなら嬉しいわ」
武器を構える幽々子。彼女のその構えは妖忌以外には見慣れない、特異なものだった。一瞬僅かに気圧された妖舞だが、武器を構え直して、相手を正面から見据える。
幽々子「妖忌。開始の合図を」
妖忌「はっ。…これより、幽々子様と妖舞による模擬死合を始めます。……始めィッ!!」
主に呼ばれた妖忌は立ち上がって右手を掲げて、合図と同時に、空気を斬り裂くような勢いで手を振り下ろす。刹那、妖舞は後方に石を飛ばして、幽々子に立ち向かう。
妖舞「うおぉぉぉぉっ!!」
一撃で仕留めんとする勢いで武器を振るう。だが峰打ちにしても、普通に斬るのと同じような殺人的な勢いだ。峰打ちすれば勝ちなのに何故…と、妖夢は考えたが、妖舞の狙いは首ではなく、主の手に握られた長巻である。
相手の得物は大きい。それだけに、こちらからの攻撃を武器に当てるのも、普段に比べたら比較的容易なのだ。つまり妖舞は、武器と武器をぶつけ長巻を弾き、ガラ空きになったところを狙おうと考え、動いているのだ。
しかし幽々子も、そのままやられるワケが無い。武器の角度を変えて、彼の攻撃を軽く受け流す。
妖舞「うあっ……」
受け止めたのならまだしも、流されてしまっては体重が乗って勢いのついた彼は、バランスを崩し不安定な体勢になる。
幽々子「はい、一丁上が────」
妖舞「ヤベッ……ハァァァッ!!」
峰を首に当てようと武器を振る幽々子だったが、彼はバランスを崩しながらも弾幕を発射し長巻を僅かながらに弾いた。本来なら刃が通るであろう軌跡を逸らせたことで、彼は九死に一生を得た。
幽々子「ッ…!そうね、そう来なくては」
妖舞「ハァ…ハァ…、クソッ…」
構え直しながら、乱れた呼吸を整える。しかし、幽々子はそんな隙を逃さず彼に攻め入る。勢いはそんなに無く、普段の言動のような、どこかフワフワしている歩法だ。そこにまで幽々子の個性が存分に出ている。
妖舞(フワフワしてて掴みにくい…じーちゃんや母上みたいに、スピード系じゃねぇ…!動き方が違いすぎる…)
幽々子「ほぉら、動かないと負けちゃうわよ♪」
妖舞「ッ!!」
軽い口調とは裏腹に、鋭い一撃を放った幽々子。狙いは首ではなく、先程の妖舞と同様、武器だ。妖舞には届かない範囲からの斬撃。当然、妖舞は武器で受け止めるが、遠心力の関係で妖舞は軽く力負けし弾かれてしまう。金属が奏でる冷たくも美しい響きは、庭、敷地内を越え冥界中へ響く。
妖舞「う、手が痺れ………あれ、幽々子様は…」
幽々子「首、盗った♡」
妖舞「─────ッ!!」
彼の首に走る、金属特有の冷たい感触。気付けば彼の首には背後から長巻の峰が当てられていた。
妖舞が得物を振っても、掠りもしない距離からの一撃だった。
妖忌「…ここまでッ!!幽々子様の一撃により、幽々子様の勝利!」
妖夢「そんな…幽々子様が圧勝…?妖舞だって、最近はしっかり修行してたのに…。ずっと武器を手にしなかった幽々子様が、どうして…?」
妖忌「…本気で取り組んでおれば…理屈は忘れてしまっていても、身体が覚えているものなのだ。肉体の衰えにより、多少は動けなくなる事だってあるじゃろう。じゃが幽々子様は亡霊で、肉体を持たん。肉体による衰えが、0というワケじゃ。霊体が衰えるかの?」
妖夢「えぇ…何か意味が分からないんだけど…。これがエスカルゴの言ってた謎理論ってやつ?」
妖忌「『
妖夢「技術的な意味での『腕が鈍った』は…?」
妖忌「その武器を極めし者は腕が鈍る事が無い。それがさっき言った『身体が覚えている』…だ。
…妖夢。その発想に至るという事は…」
妖夢「『お前もまだまだ未熟者だ』……って事を言いたいんでしょ。誰より自分が分かってるよ」
妖忌「うむ」
2人がそんな会話をしている他所で、妖舞は刀を取り落として地に膝をついていた。一方幽々子はそれを見て満足気に長巻を離した。
妖舞「クソ……クソォッ…!何でだ、何で…何で俺はいつも負けるんだっ…!俺が弱いばかりに…幽々子様が…幽々子様がぁっ…!!父上とデートするなんて、そんなの…イヤだ…ッ!」
地面を殴り、ブツブツと壊れた人形のように呟く妖舞。その異常とも思える執念に、妖夢は密かに身震いし、幽々子と妖忌は何とも言えない表情を浮かべる。
妖舞「もっと強くならなきゃ……もっともっと…1人で誰でも殺せるくらい強く…。強くなきゃ、従者なのに主人も家も何も守れないじゃないか…強くならないと…強く強く………っ…うぅっ……くそぉぉっ……くっ…うぁぁ…」
強くならなければ、と何度も自分に言い聞かせる妖舞だが、負けた悔しさが込み上げてきて徐々に嗚咽を漏らすようになる。泣き虫の本質はあまり変わっていないようだ。
幽々子「いい?従者はね、強くなくてはいけないという訳じゃないのよ」
妖舞「え…」
幽々子「…だけど、自分が強くなければ、自分が守りたいものも守れなくなってしまうの。あなたのお父上を見れば…それが分かるはずよ?違う?」
妖舞「うっ、うぅぅ…ひぐっ…うう……はい…」
幽々子「何かを守るには…それを守るための力、強さなくてはね。…強さとは力、力とは強さよ」
妖舞「…はい…」
小さく頷き、返事をする妖舞。それを見た彼女は武器を妖忌に投げ渡し、話題を変えるかのような無邪気な笑顔、口調で話し出す。
幽々子「…と、いう訳でっ!約束通り、デートに行ってきま〜す♪ 妖忌、片付けはお願いね♪」
妖忌「はい」
妖舞「……はい……」
妖夢(そこって、結局は行かない流れじゃ!?)
幽々子「もう、あなたはいつまで泣いているの?従者は従者らしく、笑顔で主を見送りなさい?」
妖舞「…ひっく…うぅ…ぐっ…………わ、かり…まし…た………うぁぁっ……」
未だ涙が溢れる妖舞。しかし彼はそれを袖で強くゴシゴシと拭い、目元を赤くさせながら、主人の幽々子に無理に作った笑顔を向ける。
妖舞「行ってらっしゃいませ…幽々子様っ……」
「負けたら死」という意味でここでは「死合」を使用しています。でも本当の死合ではないので、模擬死合としました。
妖忌ならこういう意味で言いそう。剣士ですし。
前に見た、幽々子様が長巻(薙刀?)を持ってるイラストのお陰で、幽々子様の武器は剣ではなくこの二択になりました。
深秘録クリア〜イエーイ!(2019/05/05 02:30:48)
花映塚もめっちゃ楽しいですね。ハマるわコレ。
セットアップ出来なくて色々死にました…0(:3 )〜
パソコンに弱いとあまり触れられませんな。苦手意識も未だに払拭できていません…。
新作の1、2ボスの元ネタは簡単に察せますね。
3ボスの子は少しマイナー……かもです。教えて頂いてやっと分かりました。1と2の子は鬼太郎観てたり読んでた人は分かるかと。3ボスの子の妖怪は鬼太郎には出てなかった様な気がします。
2ボスは皆のトラウマ(多分)、あの妖怪です…。
5期鬼太郎の中でも、割と厄介な妖怪でしたね。
4(中)ボスは牛頭と馬頭で、5ボスは地獄の中の
誰かで、6ボスは地獄の中の上のヤツ、四天王の
4人目はEX辺りが良いな〜と勝手に思ってます。
5や6のボス、EXの道中で映姫やへカーティアが出ても良いかも…?いや、嫌な予感しかしない。
人生で初めてパンチングマシンなるものをやって
みました。116.459kgw、不良番長級でした。
人間エスカルゴよりあるんじゃない?(人間時はそこまで深く設定してないけどさ)