ババロア店を出た俺達は、今度は清蘭の団子屋へ向かい、清蘭も交えてアレコレ話しながら団子を食べまくった。気が付けば清蘭の店の団子はもう在庫切れをおこしていて、俺の腹は膨れていた。しかし、幽々子さんはまだまだイケる、またまだ食べたいと言う。ならばと思い、次は近くにある鈴瑚の店へと向かった。
そして彼女は、到着するなり超大量に注文した。
鈴瑚「そっかそっか〜、エスカルゴさんが大量に注文する時はこの人への手土産だったんだね〜。大人数で分けるのかと思いきや……まさか1人でこんなに食べるとは…」
幽々子「あなたのお団子、とっても美味しいわ♪
いくらでも食べられそう♪」
鈴瑚「へへっ…ありがたいお言葉です!」
頬に手を当て、本当に美味しそうに食べている。腹はとうに膨れているはずなのに、彼女が団子を食べる様子を見ていると、腹が減ってくるような妙な感覚に陥る。今は自粛せねば、夕飯に響く。それが分かっていてもついつい1本だけ注文してしまった。
幽々子「あっ、次はベリーベリーダンゴ10本で。もうすぐ食べ終わってしまうわ♪」
鈴瑚「早っ!?大急ぎで作りますッ!!」
幽々子「お願いね〜」
当然、そんなペースで食べていては、鈴瑚の店の在庫も直ぐに切れてしまう。段々と空も暗くなり始めた頃、鈴瑚はそんな訳で店仕舞いし、俺達もまた別な店を求めて里を徘徊する。
幽々子「そろそろお夕飯の時間ねぇ…。ね、少し早いけど、もうその定食屋さんに行かない?」
カルゴ「あれだけ食べてまだ食べれるんですか…相変わらずすごい食欲ですねぇ」
財布はとうにスッカラカンだ。早くも貯金を崩す時が来てしまったらしい。こうして食べ歩くのは楽しいので、文句を言うつもりは無いが…なんと言えば良いのだろうか。とにかく出費がヤバい。
幽々子「里で食べるなんて滅多にない事だしね、この機会を利用しない手は無いでしょう?」
カルゴ「なるほど。なら…またこうして、2人で里に遊びに来ません?」
幽々子「えっ…?」
カルゴ「あぁいや、幽々子さんさえ良ければの話なんですけどね!アハハハ…ハハ…」
幽々子「ありがと…嬉しいわ…///」
カルゴ「────ッ!?」
いつものように軽く「うふふっ、ありがと♪」と流されるだろうと思っていただけに、照れて顔を赤くさせてそう言った幽々子さんが意外すぎた。誘った側である俺が、思わず驚いてしまった。
いや、それだけならばまだいい。自分がサラッと女性をデートに誘ったとあって、それに気付いた俺は羞恥で顔を赤くさせてしまっている。まさか彼女でもない女性を誘うなんて、自分でも考えていなかったのだ。或いは変に意識しすぎなのか。
幽々子「…?どうしたの?顔真っ赤…」
カルゴ「あいや、これは…何でもないっす…はい…///」
幽々子(可愛い反応ねぇ♪)
カルゴ「そっ、そんなことより幽々子さん、もうその店に着きますよ!」
幽々子「あら♪」
露骨に話題を変えて、その店へ少し早歩き気味で入店した。元気のいい店員に席へと案内されて、お品書きを見る。今の俺にはいつものはキツイ。腹八分目とは言うが、今でほぼ七分目だ。もう、白飯と納豆と味噌汁一杯で十分だ。
幽々子「わぁ〜…!すごいわね、沢山あるわよ!どれにしましょう…んー、悩むわぁ〜♪」
今にもヨダレを垂らしそうなうっとりとした顔でお品書きを隅から隅まで見ていく。はしゃぐなど幽々子さんらしくない…とは思うが、今の彼女はテンションが上がっているらしい。
結局、トンカツ定食を食べてそれからまた考えるという結論に至った。複数食べるのはもはや確定事項らしい。まぁ、分かっていたが。
カルゴ「店員さーん!」
外の世界の飯屋ではないので、ピンポンと押して呼ぶ訳では無い。いつものように声を張り上げて近くの店員を呼ぶ。エプロン姿、しかしその中に着ている服で口元を隠しているちょっとシャイな店員さんがやって来た。
赤髪のショートヘアに、後頭部に赤い線が入った紫色のリボンを着けている。この子が俺の言った
「友達」だ。まぁ…人間ではない。
???「…今日は慧音とじゃないんだ?」
カルゴ「まーね。で、どうよそっちは。ここにはもう慣れた?」
???「注文を取るのが少し苦手…かも。いや、接客そのものが苦手…」
カルゴ「うん、何となくだがそんな感じするわ」
???「うっさい。あと私、そろそろ料理の方に戻らなきゃだから早く注文して」
カルゴ「はいはい、分かってますよ…。えーと、俺は白飯、シジミ汁、納豆をお願い」
???「あれ…今日はスタミナじゃないの?」
カルゴ「おやつ食べすぎてさ」
???「…そっか」
カルゴ「どしたの?」
???「んーん、何でもない。そちらのお客様は何になさいますか?」
幽々子「私はトンカツ定食の…大盛りで♪」
???「ご注文を確認します。白飯、シジミ汁、納豆、トンカツ定食大盛り…で宜しいですか?」
カルゴ「うん」
幽々子「合ってるわ♪」
???「承りました、少々お待ち下さい」
小さく会釈した店員は、厨房へと戻って行った。彼女はウエイトレス兼料理人だ。なんでも人手が足りないらしく、料理ができる人を増やしたいが為にこのような状況になったらしい。彼女はまだ練習中だと思っていたが、あの様子から察するにもう客に出せるほど上達したと見える。物覚えが良いらしい。
幽々子「ね…今の子って妖怪よね…?よく人間に囲まれている中でしっかり働けるわね…凄いわ。さっきの兎さん達とは違って、このお店の経営者では無いんでしょう?彼女はなんの妖怪?」
カルゴ「赤蛮奇はろくろ首ですよ。首は伸ばさず頭を飛ばすタイプの」
とある妖怪漫画で見た妖怪だと、ろくろ首というより飛頭蛮だと思うが…赤蛮奇本人がろくろ首と言うなら、そうなんだろう。
幽々子「ろくろ首の赤蛮奇さん…か。かなり仲が良さそうだったけどあの子も彼女さんの1人?」
カルゴ「いや、違いますよ。会えば喋る程度の仲です。ちょっと気になったから、食べるついでに様子を見に来たってだけで」
幽々子「やっぱりエスカルゴくんは優しいのね。お友達の様子をわざわざ見に来るなんて、あまりやらないことだと思うわ」
カルゴ「そう…ですかね。まぁ、友達ですから。俺が一方的にそう思ってたら悲しいですけどね」
幽々子「そんな事は無いわ。彼女、結構あなたに好意的だと思うわよ?」
カルゴ「またまた〜…アハハハ…」
幽々子「そこから恋に発展して…ふふっ、素敵な事じゃないの♪」
カルゴ「今までならあったかもしれないですが、これからはもう無いですよ」
幽々子「そうなの?どうして?」
カルゴ「まぁ…何となくそう思うんですよ」
無意識魅了も割と制御できるようになったので、そのように判断した。と言っても、吸血鬼本来の魔力量よりは圧倒的に少ないので、まだまだ俺は未熟者らしいが。
誰かと話す時は目を見て話したいので、早く制御しきれるようにしたいものだ。
そんなことを含め色々と話をしていると、複数の頭にお盆を載せた、ウエイトレス赤蛮奇が料理を運んできた。随分と話し込んでいたらしく時間が結構経っていた。
幽々子「あ、頭が何個も…?凄いわね…」
カルゴ「頭だけ分身させられるとか、ほんと器用ですよね。見る度思うけどスゴいです」
赤蛮奇「お待たせしました。白飯、シジミ汁と、納豆と…トンカツ定食です。……あと私、頭しか分身させられないだけだし器用とかじゃないよ」
カルゴ「あ、そうなの?まぁ、それしか見た事がなかったから、薄々そんな感じはしてたけど…」
赤蛮奇(頭)からお盆を受け取り、ついでに頭を撫でて頬をツンツンとつついてみる。相変わらず髪はサラサラで、頬は程よい弾力である。
カルゴ「あ〜、やっぱほっぺ柔らかいなぁ…」
頭蛮奇「だからほっぺた触るなっつーのっ!!」
カルゴ「イデデデデデッッ!!!」
赤蛮奇「バカ!」
カルゴ「あたっ」
赤蛮奇の頭が俺の指に噛み付くのも、普段通りの流れだ。そして、赤蛮奇本体が手に持ったお盆で俺の頭を叩くのも。
赤蛮奇「たく、隙あらばすぐ触りやがるんだからこの男は…。油断も隙もありゃしないよ」
カルゴ「いや、隙を見せるのが悪いってそれ一番言われてるから。あー痛てぇ…」
彼女に噛まれて血が滲む指を、熱いものに触れた時と同じように軽く咥えて、痛みを緩和させる。噛まれるのは割と痛い。
赤蛮奇「ホント、バカなの!?」
カルゴ「触るだけなら別に良いだろう?減るもんじゃないしさ」
赤蛮奇「こ、コイツ…開き直った…」
カルゴ「開き直ってなんぼさ」
赤蛮奇「うーわ…正直引いたわ。触った罰としてスタミナ定食大盛り持ってくるから」
カルゴ「待っ…それは無理だぞ!?食べれん!」
身を翻して厨房に戻ろうとする赤蛮奇だが、服の裾を掴んでそんな彼女を呼び止める。赤蛮奇は、振り返るなりイタズラっ子に似た笑みを浮かべ、煽り立てるようにこう言う。
赤蛮奇「はぁ〜?いつも大盛り食べてるんだから今日もイケるよねー?」
カルゴ「おやつ食べたんだってば!」
赤蛮奇「…またアレ注文すると思ったからさー、来た時に作り始めてたんだよね。アレ作るの時間かかるからさ、注文受けて作るよりいいでしょ?すぐ完成させるから食べてってよ。処分すんのは勿体無いでしょ。あ、お金は取るよ」
カルゴ「えぇ〜……」
幽々子「あらまぁ、それじゃエスカルゴくんのは私が食べてあげるわね♪」
カルゴ「あうあうあうあ〜…」
幽々子(全くもう…本当に鈍感ねぇ…。ここは、私が援護してあげないとね♪)
赤蛮奇「ニンニク増し増しにすれば、その萎えた食欲も復活するよね。エスカルゴって単純だし」
カルゴ「言うほど単純か?」
赤蛮奇「単純。…お客さんはどう思います?」
幽々子「単純ねぇ」
赤蛮奇「ほら」
カルゴ「解せぬ」
結局、白飯もシジミ汁も納豆も全て幽々子さんに食べられてしまい、俺は赤蛮奇の作ったスタミナ定食大盛りのニンニク増し増しを食べさせられる事になってしまった。…だが、彼女達の言う通り俺は単純らしい。ニンニク特有のあの匂いを嗅ぎとった直後、萎えた筈の食欲は完全に復活した。
勿論、何も残さず完食してしまい、幽々子さんも俺が食べている間に様々な定食、麺類を注文し…お会計は、6桁に達していた。
赤蛮奇「ありがとうございましたー。………私の作ったスタミナ定食、どうだった?」
会計を済ませて退店した後、赤蛮奇はどこか声を弾ませながら訊ねてくる。なんと答えようか少し考えてしまったが、頭の中で決めるより先に口が勝手に動いていた。
カルゴ「美味しかったよ。次に来た時も、ばんきちゃんが作ったスタミナ定食が食べたいな」
赤蛮奇「…気安くばんきちゃんとか呼ぶなバカ。そう呼ぶことを許してるのは、姫と影狼だけだ」
カルゴ「あぁ、こりゃ失敬」
赤蛮奇「次は特盛にしてやるから」
カルゴ「うーん、腹減らして来なきゃかなぁ…」
赤蛮奇「それなら2人前出そ」
カルゴ「うわぁ、これがホントの飯テロだぁ…」
赤蛮奇「…じゃ、もう仕事戻るから。またね」
カルゴ「おう。またな」
軽く手を振り交わした後、彼女は店に戻って俺は幽々子さんに合流する。何やらニコニコしながらこちらを見守っていたらしい。
カルゴ「すみません、お待たせしました」
幽々子「良いのよ。異性とも仲良しっていうのは素晴らしいことだわ。……今日はありがとうね、色々と楽しかったわ」
カルゴ「こちらこそ、ありがとうございました。話を聞いていただけて幾分かスッキリした部分もありますし……色々、良かったです…」
幽々子「何かあったら、気軽に相談してね?私で良ければ話くらい聞いてあげるから。悩みとかは溜めておいちゃダメよ?」
カルゴ「そうですね。その時は…お願いします」
幽々子「こちらこそ、ね。それじゃ、今日はもう解散にしましょうか」
カルゴ「もう夜ですし、白玉楼まで送りますよ」
幽々子「いいの?それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかしらね」
彼女を白玉楼まで送った俺は、限りなく満タンに近くなった腹をさすりながら、本日の宿泊場所へフラフラ飛んで行った。俺自身は太ったものの、財布は逆に痩せたなぁ、などと考えながら…。
マズイです。急性上気道炎になりました。昨夜は体温も37.0℃突破しました。とりあえず、今夜は深秘録などで大人しく暴れておきますかね……。
病院行ってないですけどこれは分かりますわぁ。完全に急性上気道炎です。皆さんも気を付けて。
(伝われ)
手料理食べてほしいばんきちゃん可愛くない??
ていうか今回ほぼばんきちゃん回なんだが、何故こうなった……?