「…暇だねぇ」
「…暇かねぇ?」
「暇だよぉ〜…」
守矢神社の屋根で寝転がって、俺と諏訪子は絶賛日向ぼっこ中だ。だが彼女にはそれが暇らしく、暇だよと愚痴を零している。
「何する?アレする?」
「いやいや、それ昨日の夜ヤッたばっかでしょ。少しは休ませてちょ」
「ちぇ〜っ」
昨晩は激しかった。布団がびしょ濡れになるほど潮を吹き、寝落ちというより意識が飛んだようになってそのまま眠りについたのだ。諏訪子と夜にヤる場合は高確率でこのようにヤリ寝落ちする。
当然、俺だって沢山搾られている。愚息はとうに準備完了だと言えそうだが、身体の節々が痛い。
つまり休みたいわけである。
諏訪子のスベスベ肌の頬を撫でながら、これからどうしようかと考えていると、突然目の前の空にフッと大きな鳥のような影が現れた。
いや、鳥というより人体に鳥の翼が生えた鳥人間とでも言うべきか。そして、唐突に現れたソレは降下を始めて、神社の屋根に降り立った。
「よォ、器、諏訪子。相変わらず、怠惰な日常を過ごしているようだな?」
「…これまた急な登場だな、建御雷」
鳥人間のようなソレの正体は、ショタの姿で生活している八百万の神、武甕槌命である。彼の雷の翼は鳥を模しているのだ。
「暇なのだよ、我も。なぁ、どうだ?3人で交戦するというのは」
「えーやだー、建御雷ってバカみたいに強いし」
「同じくだ。まともに戦える気がしねぇもんな。力の差がありすぎる」
強敵とは戦いたい。だが建御雷が相手ではそんな気が起きない。それほどまでに、俺と建御雷には圧倒的な力の差があるのだ。もしかしたら紫さんよりも強いのでは…と思う。この2人が戦うなどそんなことは起こり得ないだろうとは思うが…。
「ほぅ…。じゃ、賭けをしようじゃないか。ん?器が好きそうな賭けだぞ」
「俺が好きそうな賭けェ?」
「お前が勝てば、我の得物を器にくれてやるわ。神話にも登場する、由緒ある剣だ」
「武甕槌命…剣…………まさかアレか?でも国が国宝として保管してるはずじゃあ…」
「ハンッ。あんなモンは劣化版に過ぎんわ。我が使用する其れは、神代の頃そのままの力を保ち、尚且つ我に近い力を秘めている。ま、その面ではお前の妖魔雷霊剣もそうだが。神の剣を得られる機会なぞ、そうは無いぞ?」
「万が一…いや、億が一にも俺が勝った場合は、俺がそれを受け取る事になる…かもしれないが、そんな事をして建御雷に何のメリットがある?」
「損得ばかりで物事を考えるな。禿げるぞ」
「禿げんわ」
「…我が得物を持っていてもな、使う機会がもう無いのだよ。それならば我が認めたお前に渡した方が、得物も喜ぶ。だがそれにはな、我が認めるだけではなく、神の得物を持つだけの強さも兼ね備えていなければならん」
要らないから戦わない、と言ってしまえば、話が進まないだろうし、見捨てられるかもしれない。神の得物には興味あるし…欲しいかもしれない。
「俺と建御雷で、か」
「いいや?早苗と樹里愛以外の4人で、だ」
「私もぉ!?」
「4人でバトルロイヤルかよ?」
「違う。我と神奈子、お前と諏訪子だ。どうだ、これなら力の差があろうと文句あるまい?お前は諏訪子という協力者を得、一方我は神奈子という枷を得るのだ」
「誰が枷だコラァッ!!」
屋根の真下に位置する縁側から、神奈子様の酷い怒声が聞こえてきた。話を聞かれていたのか、と一瞬ドキリとしたが、思い返してみれば建御雷は
「枷」の部分だけ強調していた。下に聞こえても仕方ない。
そして、こめかみに青筋を浮かべた神奈子様が、屋根に飛び乗った。注連縄と御柱も装備済みだ。やる気…いや、殺る気満々である。
「良いだろう、ノった。だが私もエスカルゴ側に付かせてもらう。諏訪子と同じチームなのは少し解せんがな」
「おいおい、3対1か?不平等にも程があるぞ。まァ、守矢の神社が崩れても構わんのならそれで良いのだがな」
「おま…卑怯だぞ!?私の神社を盾にするか!」
「元々は私の神社だけどネー。ていうか、2人で十分だからさー、神奈子はそっちにいってよ〜」
「アイツに一発喰らわせてやらにゃ気が済まん!足を引っ張るならまだしも、枷呼ばわりは…」
「いやそれ同じでしょ」
「俺もそう思います」
「!」
思わず、諏訪子に同調してツッコンでしまった。しかしこれは本心だ。枷呼ばわりはダメなのに、何故足を引っ張るならば良いのか。いや、俺には同じとしか思えなかったのだ。
本人もそれに気付いたのか、言われてみれば…と言いそうな顔をしている。そこに建御雷が執拗く追い討ちをかける。
「我がお前を枷呼ばわりするのも仕方ないだろう神奈子よ…。我らの戦績を、この10万年分くらい思い返してみよ。何勝何敗、何分だ?」
「0勝0分……何度負けたかなど数えんわッ!」
「数え切れぬほど負けたというだけだろ。まぁ、そんな瑣末な事は捨て置け。今は勝負の時ぞ」
「瑣末だと!?……くっ…仕方ないな、今だけはお前の思惑にノってやる。お前に暴れられては、始末に負えないからな…」
「そうそう、分かっているではないか神奈子…。流石、我が選んだ枷…いや、パートナーなだけはあるぞ」
「伊達に付き合いが長いワケじゃないからな…。お前を野放しにするのがどれほど危険か……身に染みて分かっているしな」
何だかんだ言いつつ、この2人は仲が良さそうに見える。というより、建御雷がやっていることが
「好きな子にはちょっかいをかけたくなるアレ」
にしか見えないのは何故だろうか。
小学生程の子供は、想いを上手く表現出来ずに、ちょっかいをかけるという行動に出る事で好きな子の反応を見たがる習性がある。
今のショタ建御雷の見た目も相まって、寧ろもうそれにしか見えなくなってきている。
「よし…建御雷に言いくるめられたこの鬱憤は…諏訪子、お前にぶつけてやる!」
「どぅえええ!?何で私なのぉ!?」
「大丈夫。諏訪子の事は、俺が絶対に守るから」
「うんっ…守られちゃうねっ♡」
守ると言いながら彼女の手を握ると、神奈子様の怒りの色はあからさまに濃くなって、その怒りの矛先は俺にも向いた。そして、顔を赤黒くさせた神奈子様は大声で喚き散らす。
「だーっ、もう!お前もだエスカルゴォ!!そう人目も憚らずにイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ!!傍から見ているとそれが鬱陶しいったらありゃしないッ!!」
「と、非リアが申しておりまぁ〜す。やれやれ、嫉妬は見苦しいよ、神奈子?」
「嫉妬などしておらんわ!!!」
何故諏訪子まで神奈子様を煽るのか。この2人、仲は普通に良好なはずなので、今のこれは単なるじゃれあいだと思うが…。それから、早苗ならばまだしも、諏訪子が非リアという言葉を使うと、どうにも拭いきれない違和感がある。
「ほらほら、無駄話ばかりすな。もう始めるぞ。全員、武器を取れ」
「はーいっと」
「分かっている」
「え…」
諏訪子は鉄の輪を、神奈子様は御柱を1本、装備した。諏訪子のは分かる。だがまさか神奈子様の武器が御柱だとは、夢にも思わなかった。あれは鈍器だ。しかも攻撃可能な範囲が広い。恐らく、割と厄介かもしれない。
「どれ…我も武器をとるか。もしも器が勝てば、
「ッ…!?」
正円のスキマを開く建御雷。そこから取り出した
のは、妖夢の楼観剣を超える長刀だった。全長が
85cm程の内反りで、柄頭に環頭が付いている。
「クックック…驚いたか、器?これぞ我の愛剣…
「スッゲ…。なんか、力をビシバシ感じるぞ…?そんなの、所詮一妖怪の俺が受け取っていい代物なのかよ…」
「言ったろう、お前はもう普通の妖怪ではない。神に認められ、力を分け与えられし眷属だ」
「……有り難い…のかな。よく分からねーや…。スゴく有り難いんだろうけどね…」
「有り難いだろうさ。まァ、今は分からずとも、いつか分かるようになるさ、お前ならな」
「買い被りすぎだぜ…」
「だから、我だけではなくこの剣にもお前の事を認めさせよ。力を示せ。力で証明しろ。神の眷属たるお前には、その義務があるのだよ」
「っ…分かった」
俺は妖魔雷霊剣を構え、神奈子様と建御雷を正面から見据える。2人のリーチは広い。そして俺と諏訪子のリーチは広くない。寧ろ狭い方だろう。弾幕でカバーしながら戦わなければならない。
決意を固めた俺は、奴の懐へ飛び込んで行った。
屋根で戦い始めるとか危険すぎでしょ…。(呆)
誰が喋ってるの分かりますか?作者は当然そこは分かってますけど…読者さん目線だとどうなのか少し不安です。
本作においては「建御雷>紫」。以前この2人は戦ったけどエスカルゴはそれを知らないからね。知ってるのは当時者2人と神奈子のみ。諏訪子や早苗達は博麗神社に行ってたから知らないね。
十拳剣について
日本神話において天津神の神々が所持し使用して
いる神剣であり、多くの場面で登場。「十束剣」
「十握剣」「十掬剣」とも書かれる。
由来は10束の長さ(1束で拳1つ分の幅)の剣であることからきている。
なお、神剣は霊剣とも呼ばれることがあるとか。
武甕槌命も天津神…?あっ、ふ〜ん(察し)
楼観剣も長刀ですが十拳剣と分類されるほどではないと思うので、長さ的には「十拳剣>楼観剣」ということにします。
以下、小説関連で少し愚痴ります。
無自覚系難聴鈍感主人公ってそんなにダメかな?
無自覚系ってのがよく分からないから、俺からはあんまり言えないけど、難聴鈍感は引っかかる。
聞こえない程小さい声で呟いたってだけでしょ。
難聴主人公と馬鹿にする人はどんな小さな声でも聞こえる耳なんですかね?地獄耳なんですかね?風音があろうと物音があろうと、宴会の喧騒でも相手の声を的確に100%聞き取れるんですかね?
聞こえない声はあるでしょ?ただそれだけの事がなんで分からないのかな。当たり前の事じゃん。
鈍感主人公と揶揄するのもそうだよ。
「この反応…!もしかして○○○、俺の事が好き
なのか……?」とか考えたら、ただの自意識過剰
野郎だと思うんですがどうですかね?
その子に好かれてるとでも思っとるんか?(笑)
何故、恋愛モノでは鈍感系が多いのか分かるか?自意識過剰野郎の方が、読んでて鈍感よりも不快だからだ。(個人的意見)
「アイツ俺の事好きっぽいな〜♪」とか言ってる自意識過剰系主人公、よほど作者の技量が無きゃ好かれないでしょ。ある意味振り切れてるから、そういう意味では好かれそうだけど。
鈍感系で不快に思う人も当然いるだろうからね、ここはある意味ではおあいこなんだけどね。
無自覚も誰にでもあると思うんだけど。あなたは自分の全てを100%自覚してるの?自分ではない誰かに言われて、初めて気付いた事とか無いの?
…あ、それとも誰もあなたについてなんて言ってくれないから、気付けないのかな?(笑)
ハイ、愚痴失礼しました。批判する前に色々置き換えて考えてみることをオススメします。ハイ。普通に話してて聞こえていないのは、紛れもなく難聴だと思いますがね。小声や、周囲がうるさい描写とかあるなら、難聴だの何だの批判するのはやめてほしいですね。見てるだけでも不快です。