『─────こちら、発信者の河城にとり。無線届いていますか?どうぞ』
ある日、にとり達河童は、トランシーバーとある物を所持して、幻想郷及びその周辺の世界などに散らばって、密かに通信し合っていた。
『博麗神社、届いています』
『魔理沙さん宅の前、届いています……ゲホッ』
『冥界・白玉楼前、届いてます。…ひぇっ、幽霊冷たァっ!?』
『三途の川前、オッケーだよぉ』
『妖怪の山の反対側、届いてるよぉ〜』
『地底・地霊殿前…届いてますよ〜…暑いぃ…』
『人里・稗田邸前、届いています』
『あっ……迷いの竹林内…。私は迷いましたが、無事電波は届いています……。ふえぇ、永遠亭に行けないぃ〜…』
『守矢神社、オールグリーン!』
その他、各地に散らばる河童達から『大丈夫』の連絡が入り、それらを聞いたにとりはニッと歯を見せて笑った。実験を行う前から、実験の成功を確信したのだ。
『これよりラジオ放送のテストを始める!各自、ラジオをオンにせよ!では、成功を祈る!!』
『『『イエッサー!!』』』
皆からの発言がプツンと一斉に途切れ、にとりの居る工房…もとい、仮のスタジオには、束の間の静寂が訪れる。しかし次の瞬間には、放送機器の電源を点け、マイクに向かって話しかけていた。
『皆さん、こんにちはー!!幻想郷唯一のラジオチャンネル、にとりんレイディオっ!!ちゃんと届いてるかなぁ?聞こえてるかなぁ?』
『『『なんでチャンネル名がにとりんレイディオなんだよぉっっ!!!』』』
1つの無線に一斉に入ってくる河童達の声。だがこの返事は、ラジオ放送の成功を意味していた。成功を改めて感じ取ったにとりは、河童達からの苦言を軽くいなして、1人で仮スタジオで小躍りしていた。
◆
「やぁ門番!盟友は…おほん、エスカルゴは今、
「居ますよー。呼んできちゃいましょうか?」
「是非ともお願いしたい!」
「分かりました、少々お待ちくださいね〜」
紅魔館にて、美鈴に俺を呼ぶよう頼んだにとりはソワソワとやってくるのを待ちわびた。数分後、少し駆け足で門に到着。
「お待たせにとり。どした?」
「君の力量と知名度を見込んで、お願いがある!是非、我々河童に手を貸してほしい!」
「お、おう…それは良いけど、何すればいい?」
「まぁ待て。物事には、順序というものがある。順を追って説明させてくれ」
「ああ…」
いつもと違う口調に少しばかり困惑してしまう。何があったのかは分からないが、自信満々な様子なのが見て取れる。
「…我々河童は数年前、ラジオ放送に失敗した。と言っても、エスカルゴが幻想入りする前のことだから、きっと知らないと思うが…」
ラジオ放送と聞いて、昔地元で聞いていた放送を思い出した。ニュースを読み上げ、企業や店舗のCMを流し、届いたお便りを読み上げるアレだ。それから、リスナーに言われた音楽を流すというリクエストコーナーなるものまであった。
「それから我々は、いつか放送を成功させようと密かに計画を進めていた。…まぁ、河童は飽き性だからな、計画そのものが頓挫していたのが主な原因なんだが…。…で、つい先日、テスト放送をついに成功させた!これでラジオ放送が可能だ!凄いだろう!?」
「あぁ。やっぱり河童の技術力は凄いな。勿論、トランシーバーの無線通信とは違って一方通行の放送なんだろう?」
「当然!…そこで、だ。トランシーバーのように携帯が可能な媒体を大量に生産したから、それを幻想郷やその周辺の世界に広めてほしい!当然、外の世界は無しだがな。トランシーバーと同様、大結界は超えない特殊な電波を使用するから」
「でも周波数は?」
「…それは、チャンネルの増加の様子を見て改良して、また広めてもらうことになる。そもそも、ラジオ放送がいつまで続くか分からないからな。さっきも言ったが我々河童は飽きっぽい」
「あ〜…なるほど。時間とかは決めてあるのか?チャンネル数1で、24時間常に流すわけじゃ……ないんだろうし…?」
「そうだ。予定では初放送は明後日深夜0時だ。人間も聴ける、妖怪向けの放送だからな!だからエスカルゴには、里を含め幻想郷の各地、冥界、地底、天界…と、他にも数多く存在する世界に、ラジオ及びラジオ放送について広めてほしい!」
「面白そうじゃん。ノッたよ」
「本当!?やった!エスカルゴさえつけばもう、計画は成功も同然だぜっ!」
「おいおい、そんな買い被るなよ…」
「なぁに、心配は無いさ!………あっ。それらと同じくらい大事な事を忘れてた」
「ん?」
「ラジオ放送とは、リスナーから届いたお便りを読み上げるコーナーもあるらしい。故に、各地にお便り箱なるものを設置してほしい。これも既に100個くらい作ってあるから、紙とペンと共に、設置してくれると有難い。当然の事だがそれらは全て用意してあるから、心配は要らない」
「良いねぇ。喜んで協力するよ。目安箱みたいなもんだろ?河童の皆で回収に行くのか?」
「いや、箱の内部とスタジオを繋げてあるんだ。まぁここら辺は企業秘密だから、深くは言えん」
「な…なるほど……」
スキマみたいなものかな、と勝手に解釈したが、恐らく間違ってはいないだろう。もしくは、転送魔法を技術で実現させてしまったのか。どちらにしても、河童の技術力は凄まじい。月に勝るとも劣らないだろう。
「じゃ、報酬も用意しておくから、全ての用意が終わったら私に言ってくれ!」
「報酬ってなんだ?別に要らないけど」
「くふふっ…エスカルゴが喜びそうなものさ♪」
「え…団子?」
「何でそうなる…。女だよ。エスカルゴの好み、趣味、嗜好を、永遠亭の姫から聞いて分析して、尚且つエスカルゴにベタ惚れの河童を何人か用意してある」
「うん、やっぱ断るわ」
「ええっ!?ちょっ、それはないでしょ!」
「じゃあ無報酬でなら手伝うよ」
「くっ…無報酬は我々の沽券に関わる…!なら、私ならどうだ!?」
「ん?」
「私を好きにしていい権利をやるっ!」
「…考えておく、とだけ。とにかく、無報酬だと思っていてくれよ?これはビジネスじゃなくて、ボランティアだからな」
「…じゃあ…仕方ないが、あの子達は何とか説得しよう…。だが、完璧にラジオ放送の宣伝、してくれよなっ!立て札もあるが、本当にお願い!」
「分かった分かった…」
その後、今は仮のスタジオとなっているにとりの工房へ行き、携帯ラジオ、お便り箱、紙とペン、説明の立て札などなどの物品を受け取った。全てスキマに入れてしまい、俺は身体ひとつで移動。
あとはこれらを各地に設置し、追加で俺の口から説明すればそれで良いという手筈だ。
……そして数日後、予定通りに放送が始まった。
ラジオ、ラディオ、レディオ、レイディオ……。
読み方、多すぎやしませんかね…?Wikiさんより引用しましたけど…うん…思ったより多かった。
因みにラジオ放送が失敗したのは原作設定です。
書籍の文花帖の30ページ参照です。放送の方法は不明だったので、リアルのラジオみたいに各自で所持している媒体で聞くことにしました。資金はどこから来ているのか?……これまで儲けた分を兎に角つぎ込んでいるのです。