─────と、チルノと飛び込んだまでは普通に良かったのだが……。彼女があまりにも熱すぎるからなのか、周囲の水が一気に沸騰し始めた。
冷たかったはずの水は熱を帯び、ブクブクと泡が立ち始める。俺やチルノの吐く息以外の気泡だ。わかさぎ姫が、猛スピードで視界の隅を掠めた。湖全体の水温が急上昇しているので、急いで避難したのだろう。
「ん…んんっ!」
「ん…」
息苦しくなったのか、チルノは俺の服をギュッと掴み、苦しそうな顔をする。全然冷やせていないのだが、窒息しては元も子もない。結局、あまり冷やせないまま、熱湯の湖から脱出。彼女の熱によって全身は直ぐに乾いて、逆に真夏の日差しのような熱線により服が熱くなる。
「あ……う…ぁ………あ…つ……い………」
「近付けない…!チルノちゃあん!!」
「What!?さっきより熱くなってないか!?」
「そうだな…。リグル、冷たい虫とか居ない?」
「水で冷やせないのに虫とか無理無理!ていうか熱くて死んじゃうよ!」
「闇で覆うのは…多分ダメかな。日光じゃなくてチルノ本人が熱源だしね」
「ああ…。何か…何か方法は……」
「もう、多少は苦しくとも滝を繋げるべきでは?山にあるあの滝だったらすぐ冷やせるはずです。このまま魘されているのは…見ていられません」
「…だな。皆、少し離れてくれ」
全員が上空に避難したのを確認した俺は、真上にスキマを開いて流水をこちらに引っ張ってくる。途端に凄まじい水圧が俺達を襲うが、水は周囲を濡らさない。彼女に近付くと全て蒸発するのだ。
霊力で身体強化していなければ、俺の手も今頃は消し飛んでいる…まではいかないだろうが、只の火傷では済まない重度の火傷をしているだろう。
それでも尚、酷い暑さを感じる。
立ち上る水蒸気は、まるで間欠泉の湯気のように空高く舞い上がっていく。効果が無いのを見て、スキマを閉じる。やはり彼女から発せられる熱で周囲は瞬く間に乾いていく。
「はー…………はー…………」
本人も最早息も絶え絶えという様子だ。見ていてとても辛い。永遠亭に連れて行くべきだろうが、果たして永琳でも妖精を治療できるかどうか。
そもそもの話、こうなった原因はなんだろうか。
弾幕を凍らせていく毎に、彼女は疲労していた。いや、疲労というよりも、「熱くなってきた」と言っていた。ならば、弾幕を凍らせるという行為そのものが原因なのかもしれない。
「…しっかりしろ…」
「う………んん………」
何故、弾幕を凍らせるとチルノの体温が上がる?
何故、彼女が能力を発揮すると弾幕が凍り付く?
冷気を出すから?この現象は
様々な疑問が次々に浮かんでくる。だが、体温と観察結果などを合わせて考えると、1つの答えが弾き出された。
しかしその瞬間、チルノに変化が現れる。
「うっっ……!!」
胸を押さえながら短く呻くと、全身から光を放ち始めるチルノ。そして、全方位に凄まじい熱波が溢れ始める。
「─────ッ!!」
依姫が放つ、愛宕様の火のような熱さだ。思わず彼女から手を引っ込めて緊急回避行動をとった。それからしばらく、傍で待機していると、徐々に光が吸い込まれるようにして弱くなってきた。
チルノの姿を視認出来るようになったはいいが、そこに居た彼女はいつもとは違う姿をしていた。
「チルノ…ちゃん…?」
「ちっ、チルノが変色してる!?」
「あの日焼けみたいなのとは違う…」
「…?どういう事?」
その変わりように皆一様に驚きを隠せていない。俺もかなり驚いている。何せ目の前のチルノは、普段青い部分が赤く変色して、背中の6枚の氷の翼は、吹き出す炎に変わっている。
赤チルノ…と言えば分かりやすいだろうか。だがこの炎は本物だろう。先程までより熱などは落ち着いているが、熱した金属のような、じんわりとクるような熱気を感じる。
チルノのこの変身を見て、ついさっき思いついたばかりの「答え」を確信した。
吸熱反応だ。チルノは、凍らせたいモノから熱を奪う事によって、ああも凍りつかせていたのだ。
つまり、チルノの能力の本質は熱量操作…となるかもしれない。操作とは言っても普段は奪う一方だから、冷気を出して、凍り付かせているように見えてしまうのだ。
仮に「熱を奪う→熱を放つ」のような一方通行の能力なら、このように変化する事などないはず。彼女の中に抑えられていた熱がこうして放出され暴走が始まっている以上、チルノの能力の本質は
「熱を奪う⇔熱を放つ」なのかもしれない。
暴走という形ではあるが彼女は
つまり、「奪う⇔放つ」の式は成り立っている。もしかしたら…熱量操作が真の力かもしれない。
「チルノちゃん…?だ、大丈夫…なの…?」
「うんっ!もうね、全然苦しくないよ!あたい、もしかしてサイキョー!?」
何でそうなるとツッコミたいが、今はそれどころではない。目の前の彼女をどのように元に戻すか考えなければなるまい。
…背中の炎の翼?は、彼女の感情によって大きくなったり小さくなったりするらしい。特に元気な時は大きく太く、普通のテンションで話している時は少し落ち着く。感情によって変化するとは、まるで鈴仙の耳のようだ。
「うおおおおー!燃えるぞー!」
「…萌えるなぁ…」
「違う意味で言ってそう」
「うっせ」
自己燃焼するとは…ニトロセルロースのようだ。
熱を放出しきれば、自然と収まるはずなのだが…果たしてどのように熱を出させるか。これには、少しだけ方法に迷う。このまま暫く黙っていても放出するにはするだろうが、時間はかかるはず。
…とすれば、方法は1つ。
「チルノ。良い機会だから、その形態でも弾幕を発射出来るよう特訓してみないか?」
「弾幕ならフツーに出来るよ。そらっ!」
俺に手のひらを向けると、バラバラと大小様々な弾幕を発射する。それは火球だったり、若しくは単に熱い弾幕だったりする。この調子で力を消費していけば、いずれは熱を失って元の姿に戻れるはずである。
理屈としては、コップと水と同じだ。まず、空のコップを通常時のチルノ、水を熱と仮定する。
それが今の状態だ。ならば、中の
「凄いねチルノちゃんっ!」
「こんなの朝飯前だ!なんなら、大技だってもう披露できちゃうぞ!…どんなスペルにしよう…」
大技でも何でもいい。とにかく吸収した分の熱を放出さえしてしまえば…後はどうにでもなろう。そして、ついに大技を思い付いたらしい彼女は、ポンと手を打ち、じっと彼女を観察していた俺のそばに駆け寄ってきた。
「ねーね、折角だから複合スペルの練習しよ!」
(なっ……!?あたいだってまだ複合スペルとか作ってないのに、師弟関係なだけの2人がそんな進んでるのか…!?何か…何かムカつく……!)
「複合スペルの練習は別に良いけど、前に作ったアレはチルノがいつもの状態じゃなきゃ使えないじゃんか。属性的に」
「あっ…そっか。でもさ、エスカルゴが氷の役をやれば出来るじゃん!」
「…うーん…」
いつものように火の方なら火球でどうにか出来るのだが、氷ともなるとそうはいかない。氷属性の魔法は使えないのだから。しかしこれは、発想の転換である。考え方ひとつで、変わる事もある。
「誰か、俺とチルノの複合スペルを受けてみたいヤツいるか?手加減はするぞ」
「絶対キツいやつだ…」
「…私は遠慮しておきます♪」
「私もー」
「あたいは絶対ヤダね」
「だろうな。じゃあ…」
分身を生み出し、ただ黙って立っていろと指示を出した。口では反抗するが行動は9割以上従順なコイツの事だ、きっと大丈夫だろう。
「「炎&氷符『メドローア』!!」」
相反する属性は
だが、乗せ合う場合はまた違う。寧ろ、相乗効果によって勢いが増す事もあるのだ。タイミングは少しズレてしまったが、どちらの弾幕も、無事に分身の方へ向かっていく。
俺は氷属性の魔法は使えない。それでも氷属性の魔法っぽい
…因みに、創造魔法で火属性の弾幕は作れない。火には質量が無いからだ。火とは、現象であり、物質という定義は当てはまらないのだ。ならば、これまでの彼女との複合スペルはどうしていたかというと……そう、いつものアレである。強大なアークによる火球だ。
「やっぱり、チルノちゃんの氷の方が強いだろ。お前の氷とか、ただ質量あるだけだぞ。冷凍庫で作った氷かよ、クソザコナメクジが」
「んなっ…!?不慣れなだけだ!バーカバーカ!お前なんて壊れちまえー!」
だが分身の言う通りだ。弾速も遅く、炎の弾幕に幾度となく抜かされている。しかも創造の効率をまだ把握しておらず、魔力がガリガリ削られる。ついには、チルノの弾幕だけを残しメドローアは終わってしまった。
「くっそ〜…魔力0かよ…!」
「あーあ、なにチルノちゃんの足引っ張ってんだ先生サンよぉ〜。そんな弱っちい野郎に先生ヅラされるなんて、チルノちゃんも苦労人だなぁ〜」
「テンメェ…!俺が弱いなんて分かってんだよ!分かってっ事をいちいちしつこく言うんじゃねぇクソが!コノヤロォ、一息にぶっ
ヘラヘラとニヤケながら煽る分身を見て、ついに我慢ができなくなった俺は、砂鉄の翼を創造して分身の全身をメッタ刺しにする。腕を斬ったり、足を斬り飛ばし、目を突き、首を斬る。やはり、力を振るうのはスッキリする。
攻撃に耐えきれなかった分身はすぐに崩壊した。
「……。なんか悪いな…」
「ううん、大丈夫!ねーエスカルゴ、翼のやつ、あたいもやってみたい!真似して良い!?」
「あぁ…良いと思うよ?好きなだけやってみな。俺らは見守ってっから」
「うんっ!……はぁぁぁぁっ…!!」
チルノが力を込めると、背中の六筋の炎が、長く太く成長して、いよいよ翼らしくなった。そんな光景をどこかで見た事があるなと少し考えたが、意外と直ぐに思い出せた。妹紅がたまに見せる、フェニックスの翼だ。チルノの翼は、妹紅の上位互換に見えなくもない。
……しかし、俺達がチルノの翼を見守っていた、そんな時のことだ。
「……あれっ………あれれれ…?」
「「「翼が消えたァ!?」」」
翼が消えたのみならず、熱も全て消え、いつものチルノに戻った。傍から見ている限りでは、何の前兆も無かったので、本当に突然の事だった。
赤チルノから青チルノ…もとい、通常のチルノに戻れた。もしかしたら俺の予想通りに、先程取り込んだ熱を放出しきったからかもしれない。
「あーあ、元に戻っちゃったー。さっきのアレ、何だったんだろ?」
「偶然…じゃないかなぁ…?」
「実は、あたいの潜在能力が引き出されたのだ!
…なんてね!」
「ありそうで無さそうだなー、それ」
「偶然なのかなぁ…。みすちーはどう思う?」
「さぁ…私は何とも…」
(エスカルゴは妙に納得した顔してるけど…何か分かったことでもあるのかしらね?)
「よし!弾幕を凍らせる特訓の続きしよっ!」
「いやぁ〜…そろそろやめておいた方が…良いと思うんだけどな…?大ちゃんもそう思うだろ?」
「そうですね…私もそう思います…」
「大丈夫大丈夫!力も戻ってるしさ!」
「「………」」
結局その後、2回ほど全身が燃えることになったチルノ。学習しないのかもしれないと内心焦った俺だったが、彼女の表情を見るに、彼女は彼女で何か思うことがあったらしかった─────。
吸熱反応ネタは、非想天則の鈴仙のセリフである
「冷たくする方法は一つ、周りから熱を奪う事。貴方は内側が相当熱そうね」から取っています。少しずつなら兎も角、一気に熱を取り込んだので溜め込んだ熱を抑えきれず…みたいな感じです。溢れる熱を無理に抑えようとしたから、チルノはこうも苦しみました。溢れる熱に、最初から熱に身を任せていれば…すぐ変身してました。
氷帝形態、バーニング形態(仮)…。チルノも強化出来てきましたかね…?魔理沙みたいに。さて、バーニングチルノが今後どう影響するのか。
…昨晩、Twitterに置いてる質問箱にて、「霊夢を吸血鬼にさせる必要ありましたか?それもう霊夢じゃなくていいのでは…」っての見たんですよ。
ハッキリ言ってこれ見て凄く腹立ちましたね〜。
この小説読んでたらこんな事言えなくないです?
「霊夢+吸血鬼」だからこそ出せるものがある。
そうは思いません?
本作においては禍霊夢がわかり易い例ですよね。
(まぁ他にもありますけど、あくまでも一例ね)
「霊夢の狂気開放形態」って設定にしてるって、あの時の後書きにも書きましたよね。つまりそれ吸血鬼(エスカルゴの眷属)ならではですよね。
その質問見る前に、「自分の作品の東方キャラの設定」を(便乗して)ツイートしたのでそれだけ見てそう言ってきたのかな。もしそうなら、尚更腹立つ。作品について言ってくるなら読んでから言ってこいって。しかもそういう批判に近い事は質問箱という匿名でしか言えないの?というね。それとも質問箱があったから過去ツイ遡ってまで俺の質問箱に入れたの?どちらにしても…ねぇ。
「禍霊夢しか吸血鬼要素無いでしょ」とか考えたなら、そう思った人は創作ってものを知らない。
設定って、一度に全て出す必要はありますかね?
無いでしょ。1〜10まで、最初に説明しますか?
ここまでの胸kusoは久しぶりです。
アドバイスなら有難いんですが、これアドバイスじゃないですよね。極端な話、「アレンジなんて人の勝手でしょ?」syamuさんの言葉ですがね。
何が「霊夢じゃなくていいのでは…」だ。霊夢がそうなるからこそでしょーが。霊夢じゃなくて、とかじゃなく霊夢という存在がそうなるからこそ価値・意味がある。
自分でそう思うんなら自分の作品ではそのようにしたらいい。他人の作品にまで口出しをするな。そう言いたいですね。個々の思想による。それが二次創作(の醍醐味のひとつ)なのでは?
どうも、イラつきのあまり無駄に口数(文字数)
増えてしまいました。いや、別にね、深読みしろ
とは言わないし思いませんよ。でもこれは流石に
浅読みすぎですよ。(本当に読んでるとしたら)