※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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鳥獣伎楽③ 〜明日のライブは大波乱〜

────ある夜に放送された幻想郷唯一のラジオチャンネル・にとりんレイディオは、それはもう幻想郷の各地に多大なる衝撃を与えた………。

 

『それじゃ〜お次は…ペンネーム「ヤツメウナギ売ってます」さん!うーん、誰かわかりやすい!

「鳥獣伎楽のミスティア・ローラレイです。次のライブの予定が決定しました!明日のこの時間にいつもの場所で、皆で思いっきり盛り上がっちゃいましょう♪」……おぉ〜、ついに来た続報〜!みんな〜!鳥獣伎楽のライブは明日だよっ!!』

 

『急だねぇ…。まぁ、あの鳥獣伎楽(ふたり)らしいけど。にとりも行くの?』

 

『もっちろん!雛はどうする!?』

 

『私はちょっと…。でもにとりが行くなら、この放送はどうするのよ?』

 

『…明日は放送お休み!皆で鳥獣伎楽のライブを楽しんじゃお〜っ!!ひゃっほぉ〜〜ぅ!!!』

 

『えぇ〜…大丈夫かしらこのチャンネル…。てかこれが本物って保証はあるの?匿名だから偽物の可能性だってあるわけじゃない?』

 

『チッチッチッ…甘いね、雛は。紙に残留してる妖気を感じ取れれば、本人かどうかなんてすぐに分かるのさ!ましてや鳥獣伎楽のミスティアとは知り合いではあるからね!縁日でショバ代払ってもらったこともあるし!』

 

『…匿名の意味…』

 

『あ。…え、えっとね、この放送を聞いてる皆が

「ペンネームだと誰が誰だか分からない」…って

意味の匿名ならギリ通るから!今放送を聞いてる

皆〜!大丈夫、私達は個人情報は守るからねっ!安心してお便り送ってね〜っ!!』

 

『無理矢理すぎる…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この放送の後、幻想郷中は暫くザワついていた。ペンネームで書いても読み手には筒抜けという、匿名性の異常な薄さ……に対してでは無い。

パンクユニット・鳥獣伎楽のライブの日が目前に迫っているという情報に対してである。幻想郷に住まうある者は恐怖心、ある者は嫌悪を…。またある者は、歓喜を覚えていたという。

そして、ラジオでそのお頼りが読まれた頃……。

鳥獣伎楽の2人と、ゲスト…つまり俺は、内部を不可視化&防音機能のある特殊な結界の中にて、次の日の為のリハを行っていた。

 

「『ガールズラブㅤ嗚呼素晴らしきかなㅤ百合畑

割り込むよりもㅤ傍観が良き』……っと。ふむ、我ながらイイ詩(うた)が詠めたな。これだったら短歌のコンクールで入賞出来たんじゃね?…無理か」

 

鳥獣伎楽のメンバー、ミスティアと響子が元気にハッチャけている様子を、ゲストの俺は舞台袖で眺めている。結界を張ったのは勿論俺だ。やはり女の子同士がただ仲良くするのも、ボディタッチまでするのも、それより更に進んでも……尊い。見ている限りだと、この2人は軽いボディタッチ程度までは進んでいるらしい。冗談交じりで胸を触り、仕返しとばかりに触り返す。素晴らしい。実に素晴らしい構図である。

俺らしくないと頭では分かっていても、ついつい詩を詠みたくなってしまうというものである。

 

「ふぅ〜っ。すっごく良い調子じゃんっ!これで明日のライブも成功間違いなしだね!」

 

「勿論!エスカルゴさんも居るんだし、大成功は約束されたも同然よ♪ ね、エスカルゴさん♡」

 

「おいおい、そんなに俺に期待しないでくれ…」

 

舞台袖に戻った2人は、サングラスを外しながらそんなことを言い合っているので、過大な期待を寄せられても困るぞ、という意味でそう返した。

…俺が2人を見て鼻の下を伸ばしていたのは一生秘密にしておこう。軽蔑は…されないだろうが、何となく秘密にしておきたい。

 

「期待しないでくれ…と言われても……ねぇ?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ!あっ、リハももう終わりだから、結界解いてOKだよっ!」

 

「はいよ」

 

本番にもこの結界は必要だろう。本番と違うのは結界のサイズだ。今消したリハーサル用の結界はサイズが一回り小さい。そして舞台袖に設置しておいた椅子…俺の隣に座り、顔を覗き込むようにして可愛らしく話しかけてくる。

 

「エスカルゴさんは…リハしなくて良かったの?一応本番前もちょっとやるけどさ」

 

「そだな…。身体的な意味では準備万端だけど、精神的に準備が整ってないから…今晩はイメトレだけに留めておくよ。大丈夫。明日の今頃には、緊張も解けてるだろうからさ」

 

「案外緊張に弱いもんね〜」

 

「2回目だから慣れないってだけだ。これからは(・・・・・)多分大丈夫だよ」

 

「もしも本番で緊張しちゃったら、その時は私のキスで解してあげますから、安心して下さいね♡

皆の前でも関係無いですから♡」

 

耳元でそう囁いた彼女は、そのまま頬に口付けをしてくる。あまりにも急な事で、俺はキョトンとしてしまうが、反対にいる響子はそうではない。

 

「あっ、みすちーだけずるい!エスカルゴさんは私のでもあるんだけど!?あるんだけどッ!?」

 

「何故にそこだけセルフエコー…」

 

「私だってチューするもん!」

 

腕を引っ張られ体勢を崩したところに、頭突きのように勢い良く、そして強く、頬に唇が押し付けられる。温かく柔らかいその感触に、意図せずに頬が緩んでしまう。

 

「それじゃもう1回♡」

 

「私もっ♪」

 

「ちょ…待って2人共……」

 

そう。この2人は、自分達は自分達で友達以上に進みながらも(そう見えるだけかもしれない)、

俺とは更に先にイッているのだ。それも変な三角関係では無く、2人の矢印は俺へと向いている。完成された百合には割り込まない俺だが、これは2人がこちらに向いているので、自分の主義には一応反してはいない…と思う。

……さて。2人のキスのおかげで緊張もすっかり消えたことだ。明日のライブは精一杯頑張ろう。

自分の終着点(ゴール)…いいや、新たな出発点(スタート)として…。

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