『…もしもし。ご主人様、通じてますか?』
昼間のうちに紅魔館から永遠亭へと移動しようと幻想郷の上空を飛行していた俺は、ポケットから聞こえてきた女性…竜宮の使いである永江衣玖の声を聞いて、トランシーバーを取り出す。
「はいはい、通じてるよー。どしたの衣玖さん、久しぶりにヤリたくなってきちゃった?」
衣玖とは身体だけの関係…所謂セックスフレンドというやつである。天子…アイツはペットという位置付けで良いだろう。俺と衣玖を引き合わせた本人ではあるが、それとこれとはまた話は別だ。
『それもありますけど…少しお話がありまして。あぁ、総領娘様の事は大丈夫です。今はお上から時間をもらってますので』
「お上直々から時間を……?分かった。それじゃいつものとこで…この後すぐかな?」
『それでお願いします。私はそろそろ到着しますので…。それでは』
「ほーい」
もうすぐ到着するという事は、もう魔法の森の中には居るだろう。女性を待たせる訳にはいかないので、小屋の傍にスキマを開いて移動した。
「おや…丁度ですね、ご主人様♪」
「おっ、ピッタリか」
玄関前でバッタリ鉢合わせた。スキマで移動して正解だった。もし歩いたり飛んだりしていれば、短時間とはいえ彼女を待たせてしまっただろう。
「………」
「……ん?」
いつもなら、服の上からでもわかるほどに豊満な胸や、柔らかそうな頬に目が行きがちなのだが、今日は違う。衣玖は1人の女の子を連れている。可愛らしい子だ。紅い目、ショート…というよりミディアムヘアに、2本のアホ毛、飛ぶには少し小さい蝙蝠のような翼。首元には赤いリボンで、黒いスカートの端には赤いフリルが付いている。衣玖に似ている……と言われれば似ているように見えるが、そこまで似ていない。親戚だろうか。
「話というのはこの子の事で…」
「…?なるほど。とりあえず中入ろうぜ、ここは空気が悪いし」
「ですね」
先日、椅子を三脚と机を創造したので、ある意味丁度良かったかもしれない。人数もピッタリだ。中に2人を通して座らせた俺は、紅茶を創造して2人に出した。ここにはティーポットなんて物は無いので、少し無機質だが創造するしかない。
…と、俺はそう思っていたのだが、子供はやはり
「何も無い所から何かが出てきた」ということが面白く感じたのか、目を輝かせて歓声を上げる。
「すごーいっ!かっぷとこーちゃがでてきた!」
「はははっ、そうだろそうだろー、凄いだろ?」
「うん!のんでいーい!?」
「勿論だ。今回は俺の好きなアールグレイだぞ。
…にしても、反応が子供らしくて可愛いなぁ…」
「まだ生後半年くらいですからねぇ…。目に入るもの全てに興味津々…みたいな感じなので、手に負えないこともしばしば…」
興味津々、手に負えない…という言葉を聞いて、末っ子のレイチェルを思い出す。あの子も少し、手に負えないところがある。走るし飛ぶし壊すし暴れる事がある。
「だろうな…こっちも少し大変だよ。レイチェルなんてさ、俺の髪の毛ブチブチ抜いちまうしな。俺が思うに、生後3週間〜9ヶ月くらいが大変な時期かな。情緒が安定すりゃ、もっと早く収まることもあるけどね」
俺が茜に召喚されたもの、茜がまだ生後数週間のことだった。あの時期はわんぱくさが凄いのだ。しかしそれに比べたら、この子は全然大人しい方だと断言出来る。今もこうして、大人しく椅子に座ってられているからだ。上の4姉妹は早い内にこのように落ち着いていたが、下のレイチェルと下の4人なんて、このようにはいかなかった。
「成程…。あっ、そうですわ。この子についての話なんですけど…」
「そうだった。…君、お名前は?」
「わたし、ながえみく!」
「ながえ…永江?やっぱ衣玖さんと同じなのか」
「分かりますか?」
「まぁね。何となく衣玖さんと似てるし、予想はしてたよ」
「そうでしょうか?ご主人様にはよく似ていると言われますけど…」
「…ご主人様?」
「ええ。艶のある黒髪、強靭な肉体…。何より、この吸血鬼の翼と整った目鼻立ちが、ご主人様にそっくりで…♪」
「ご主人様って…俺の事?」
「ええ、勿論。他に誰が居ますか?」
「えっ…チョットナニ言ッテルカワカラナイ…。衣玖さんの親戚とかじゃないのか?みくちゃんは一体…誰の子なんだ?」
「私とご主人様の…ですよ♡」
「な…ッ!?」
「魅玖は、今年の年始に生まれたばかりです♪」
「で、でも、バレンタインデーの時は何も…」
「言おうとしてはいたんですけどね…総領娘様が居て、あんまりお話も出来ない感じでしたし…。そこは申し訳ありません…」
「あー…」
確かに、天子が居る所で子供の話なんてしたら、話に割り込んできたり邪魔をしたりと…まともに話は出来なさそうだ。そう考えると衣玖の判断も妥当だとは思う。
「でも、あの時魅玖ちゃんはどこに居たんだよ?連れて来てなかったじゃないか」
「天界には子供を預けられる施設があるので…。仕事中や地上に降りる時には、預けていますね」
「なるほどなぁ」
魅玖は今年の年始に生まれたばかりらしいので、末っ子はレイチェルから魅玖へ更新するようだ。尤も、レイチェルは10月生まれなので凡そ3ヶ月しか差が無いらしい。
「先日のライブにも連れて行ったんですよ♪」
「マジか」
「その前にだって、にとりんレイディオに2人でお便りを送りましたし♪」
「ねー!」
「えっ」
「『わたしはだれでしょう』さんっておなまえでだしてみたー!」
「あっ……」
聞き覚えのある
◆
「それじゃあ、また次もお願いします♪…今度は総領娘様も交えて♡」
「ばいばーい、おとーさまー♪」
「じゃーな、衣玖さん、魅玖ちゃん」
衣玖親子と別れた俺は、その足で人里に立ち寄りにとりんレイディオへ投書した。…内容は勿論、
「12番目の子供」についてで…これもまた、夜の幻想郷を大きく騒がせることとなった。
…因みに、今回の騒動を経て、俺と衣玖はセフレという関係を解消して、正式にお付き合いをするようになった。できちゃった婚に似た今回のこの展開に、少しは女遊びを控えようと思い始めた。
まぁ衣玖の計画通りなんですが。…誰かの計画に乗せられてばかりのエスカルゴェ……。
幻想郷は相変わらず誕生日という概念はあんまり無さそうなので、衣玖は魅玖の誕生日についてもそこまで深くは気にしていません。3月9日でも良かったですけど、2月14日に孕ませて3月9日だったらリュウグウノツカイにしても早すぎると思ったので、年始に生まれたばかりとしました。孕んだのは割と前にヤッた時ですねw
(そもそも、竜宮の使いとリュウグウノツカイは別物だろって話)
そして、最初は「他人の子」だと思ってたので、魅玖の事だけはちゃん付けですね。自分の子だと知っても、今更感が(と言うより違和感が)あるので、魅玖だけはこれからもちゃん付けです。
由来としては、魅了の魅と衣玖の玖からですね。
彼の
語感的にも一文字目の母音はiにしたかったです。
(隠し子設定やっと出せたー。外の世界ならこうスッキリ済まないね。幻想郷だからこそだよね)
今回出てきた挿し絵も、またまた友人のAHさんに描いて頂きました!(更新後に書き足すアホ)
@AH77915382←Twitterフォローしてねっ!