「やっぱり食べ歩きは楽しいわね、ダーリン♡」
「そーだな。でも、ホントに夢月連れてこなくてよかったのかよ?後で喧嘩とかにならないか?」
「大丈夫よん。今日来ない代わりに、ダーリンはまた今度、夢月とデートするもん。でしょ?」
「あぁ…もう確定事項なのね。別にいいんだが」
今日は、朝も早いうちから幻月と魔界街中デートである。夢月は、今日は夢幻館で留守番らしい。理由としては「独り占めしたいから」だとか。
確かに、1人ずつ来ればその時だけは独り占めが可能になる。…よく考えたものだ。これならば、幻月も夢月もお互いに了承するだろう。あとは、くるみとも後程デートしてみたいものだ。
そして、魔界では様々な店で買い物や食べ歩きをしている。カフェ風の店やらレストラン風の店、スイーツ専門店などがあり、魔界の街は外の世界さながらの豊かさで、幻想郷の人里よりもデートにはもってこいの場所である。
勿論、買った商品は店を出るなりスキマで幻月の部屋に送っているので、俺達は常に手ぶらだ。
「ねぇ、ダーリン?くるみのどういうところが、ダーリンの性癖に刺さったワケ?」
「突然どうした」
「良いから答えて?」
「…クールなようで、甘えん坊なところかなぁ。お兄さんお兄さん…ってさ。抱きついてきたり、照れて顔赤くさせるとか…可愛いじゃん?最近はクールさ皆無だと思うけど」
「それでキュンキュンしちゃうんだ?」
ニヤケながらそう問いかけてくる幻月だが、俺はそれに対し頷いて答えるしかできない。事実で、否定しようがないことだからだ。
「チョロいわねぇ」
「うっせ…」
「甘えん坊な子が好きなんだ?」
「うん。…まぁ、甘えん坊な子
「あぁ…。ダーリンのストライクゾーン、物凄く広いものねぇ。皆の集まりとかたまに顔出してるけど、個性の塊って感じだし。あんなに全然違うのに皆をちゃんと愛してるとかホント器用よね」
「皆が全然違うのは…うん、そうだな。皆違って皆良いってヤツだ」
「そうね〜。……くるみの好きなとこは言えるんだから、私の好きなとこも勿論言えるわよね?」
「可愛い、柔らかいほっぺ、柔らかい足、天使、悪魔、イイ匂い、ケアバッチリ、ハグしやすい、エロい、強い、柔らかいお尻、下着がオシャレ、スベスベ肌、綺麗な翼、キス上手…とかかな?」
「所々引いたわ」
「えっ…」
「嘘だけど♡」
「そ…そっか…」
一瞬だけビビってしまったが、彼女が可愛らしくペロッと舌を出してそう言うので、思わずニヤケながら許してしまう。幻月にあんな顔されたら、何があっても許すしかない。
やはり悪魔、人心掌握など容易いらしい。いや、俺がチョロすぎるだけだろうか…?若しくはその両方だろう。
「フツーは恥ずかしがって言えないと思うけど…ダーリンのそういうフツーじゃないとこ好きよ♡一緒に居て退屈しないもん♪」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
手を繋いで街を歩いていても、里のような嫉妬の視線は飛んでこない。飛んでくるのは客引きの声だけだ。まぁ、「今でこそ」こうであるだけで、最初は里と大差無かったが、何回も来ると流石に覚えたのか、好奇の視線すらも来なくなった。
おかげで、魔界街中デートはかなり心が安らぐ。
「ちょいと、そこのお姉さんとお兄さん!暑さの対策はバッチリかい!?」
「え?んー…まぁまぁかしら」
「熱さまシートで事足りるかな」
疑問を投げかけてくるタイプの客引きには、軽く返事を返しておく。だが今回ばかりは一筋縄ではいかないらしく、矢継ぎ早に言葉を続ける。
「そんなんじゃー今年の夏は越せないぞ!俺には霊感がある!今年の夏は去年までよりと暑いと、今ここで宣言しようッ!」
「じゃーどうするのよ?」
「ノるな幻月…」
「ウチの日傘を使うといいぞぉッ!特殊な術式が施してあるから、傘の下はまるで涼しい夏の夜!快適なデートになること間違い無しだ!!今ならなんと、通常なら傘4本分の値段の特大日傘が、2本分のお値段で買えるッ!これでお2人も傘でカバー可能だッ!!」
「はっ、半額なの!?」
「そのとぉぉぉり!!!」
「買うわ!いや、買ってダーリン!!」
「………」
…恐らく幻月は、テレビショッピングですぐ電話注文してしまうタイプだ。何となくそう思った。今回の客引きには……仕方ない。ノるしかない。
「さぁさぁ彼氏さん、彼女さんが傘を所望だぞ!これは買ってあげるしか無い!日傘を買って男を上げようぜっ!」
「むぅ…」
「オ・ネ・ガ・イ♡」
「分かったよ…」
結局、幻月に言われるがままに買ってしまった。仕方ない。天使の上目遣いは反則にも程がある。サッカーで言うなら、レッドカード10枚+即引退レベルの超弩級反則+界隈内の歴史的大戦犯だ。それほどの反則である。だが悔いは無い。幻月の笑顔が見れたのだから、儲けたと…彼女の笑顔にお金を払ったのだと、そう前向きに捉えよう。
「あ、本当に涼しい!へー、内側に魔法陣が…。中々複雑な術式ねぇ、こんなの民間で開発できるモノなのかしら。魔術専門の技術者が商品開発に手を貸してそうね」
購入したばかりの日傘を開くと、内側に魔法陣が描かれているのが目に留まる。頭上に掲げると、確かに日傘の下は涼しいのがわかる。どうやら、本当の本当に効果アリらしい。魔法陣から直接、冷蔵庫の中のようにヒンヤリした心地よい冷気が溢れてくるように感じる。
「こりゃ、思いがけず良い買い物が出来たかも?でも財布が軽くなったな……」
因みに、魔界では日本の通貨は使えない。ならば俺はどうやって買い物してるかというと…そう、言うまでもなく母さんの協力によるものだ。
母さんも日本の通貨は持っていないので、魔界の通貨と日本の通貨で両替している。レートなどは不明なので、両替の基準は「何となく」である。
「お小遣い」として貰うことも、たまにはある。何せ俺と母さんは親子なのだから。
経済の仕組みそのものは変わらないので、使い方などは日本の通貨とほぼ変わらない。
日本円ならばカジノの一件で金持ちになったが、魔界のお金で言えば一般人と変わらない。なので魔界で買い物をするときは、財布としっかり相談しなければならない。いくら親子とはいっても、無闇にお小遣いを請求することはあまり好ましくないと考えているからだ。
勿論これは「俺が」請求するのが好ましくないと考えているだけなので、子供達が俺にお小遣いを求めても快く渡している。
「欲しいものもないし、あとはお散歩でもする?お昼の為にお腹も空かせておきたいし」
「あぁ…忘れてたけど今はまだ朝だった。朝から食べ歩きとか贅沢してるねぇ、俺達」
スキマを開くと、幻月はそこに傘を放り込んで、優しく微笑みながら俺の手を引いて歩き出した。どこか行きたい所があるのかと思いきや………。
「ついでに、何食べるかとか、どこの店でお昼を食べるかも考えておきましょ♪」
「それがいいな」
当然ながら、昼時になると飲食店は混み始める。だから、そのときになって店を探すより、前以て店を見つけておき、昼時が近くなってきたらその店に向かうのがいい。こうすると予約はせずとも早い内に入れる。ある意味デートの鉄則だろう。気ままなデートでも、食事の計画くらいは練っておかなければ。
魔界限定の珍味を楽しむか、洋食風か、はたまた中華風やそれらとはまた違うその他のジャンルにするか。歩きながらそう考えていた、その時。
歩いている先に、ちょっとした騒ぎを発見した。
魔界人(♂)が輪になるように集まっている。
「何だこりゃ、何の騒ぎだ?…」
「あれ?あの女、前に神社で見たことあるよーな気がするんだけど」
「んぇ?」
事態がどうなってるのかよく掴めないので、特に何もせず、かといって野次馬にもならずその場を離れようとしたが、幻月がそう言ったので男達に囲まれている女を野次馬に紛れて覗いてみる。
何やら険悪な雰囲気だ。
「地を這う雑魚魔界人風情が。天人たるこの私にナンパしようだなんて、100万年早いわよ。私の目の前から失せなさい、今直ぐに!」
「ンだとこの
「生意気だぞクソガキ!」
「何よ、
「クソガキには、大人の怖さをそのガキみてぇな身体に教え込んでやらねぇとなァ!」
どこかで見た事のある剣を構える、どこかで見た事のある少女。あの女は、間違いなくアイツだ。前と後ろが共に開発済みで、今となってはとても従順なペット……。そう、比那名居天子である。
「天子か!?アイツ、何で魔界に居るんだ…?」
「彼女なのに助けなくていーの?」
「彼女じゃないぞ」
「そうなんだ。…ホントに助けなくていいの?」
「あの程度、アイツならすぐにブッ潰せるだろ。バカだが力はバカみたいにある。多分大丈夫だ」
「予想もしない何かが起きた場合は、アイツらに犯されると思うけどね〜」
「ハンッ…。それを機に、俺から離れてくれれば言うことナシだぜ……クソが」
「本気でそう思ってる?」
「…何が言いたい?」
「んー?別にぃ?ダーリン、本当は助けたいけど余計に懐かれるのが嬉しいようなイヤなような、そんな複雑な気持ちなんだろーなーって思って?ほら、ついさっき、『甘えん坊な子も好き』って言ってたしぃ?何だかんだ言って、あの女の事も少しは気に入ってたりするんじゃないかな〜……とか思ったんだけど、どーなの?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
嫌っているヤツだとはいえ、自分に好意を抱いてくれていて、尚且つ何度も交わっている女性が、他の男に犯されるなど……イヤすぎる。しかし、ここで助けては今よりも懐かれるのも間違いないはずである。それもイヤだ。
流石幻月だ、付き合いはまだそんなに長くはないはずなのに、俺の事をよく分かってくれている。
「ニヒヒッ…♡ 迷ってるダーリン可愛い♡」
「あーもー、分かったよ!分かったから言うな!助けりゃー良いんだろ、助けりゃ…」
「そーそ、素直になってこそダーリンよね〜♡」
「チッ…ちょっくらアイツらブチのめしてくる。
オラそこのお前らァ!俺の女に───」
「ったく、ダーリンったら…こういう変なときは素直じゃないんだから…」
◆
「はぁ…何か無駄に疲れた気がするんだけど…」
「ありがと〜ご主人様ぁ♡ じゃあ、またあそこでエッチしよぉ〜♡」
「ったく、助けたと思ったら直ぐこれだ。今日はダメだ。愛しの彼女とデート中なのでな。てか、なんで魔界に居るんだ?どうやって来たんだ?」
野郎共を気絶させると同時に腕を絡めてこようとするが、俺はそれを躱して幻月と腕を絡める。
すると彼女は、腕を絡めるばかりか抱えるようにして、更には頬擦りまでする。その様子を横目でちらりと見た天子は、軽く舌打ちをして、魔界に来た理由を簡単に答えた。
「天界ツアーの為に下見に来たらしい旅行会社の連中に、連れてこさせたのよ。この私が知らない世界なんて、あってはならないんだから!でも、ご主人様が居るなら話は別!世界を見て回るのは二の次三の次!今日はどこでヤるゥ?♡」
はぁはぁと息を荒くさせ、身体をクネクネさせる天子。ヤる気マンマンらしい。だがそんな訳には行かないし、そもそも今はヤる気が無い。
「今日はダメだっての。また今度な。俺のペット自称するならこれくらいのお願いは聞いてくれ…また今度相手すっから…。な?」
「そーよ、ペットは大人しく犬小屋で丸くなって眠ってるといいわ♪ 永遠にね♡ アハハハハハハ!
ねーダーリ〜ン、そんなことより、早くデートの続きしよーよぉ?♡」
「ダーリン…?フンッ、お前のような悪魔風情がご主人様のような高貴な御方に似合うとでも?」
「あぁん?」
「
「高貴な御方に合うのは高貴な者のみ。そうっ、つまりこの私、比那名居天子である!!」
「あ゙?」
「直ぐにご主人様から離れろ悪魔!今このとき、ご主人様は私だけのものとなる!!」
緋想の剣を構えて、戦意を剥き出しにする天子。それに応えるかのように、幻月の気配が高まる。周囲の魔界人達は、すぐさま避難を開始する。
「何よ、
「おい2人共、お、おち、落ちちゅ、落ち着け!今ここで争っても、何にもなんねーから!な!」
「「
被ってるじゃないのよ!!だから真似を
「あわわわわわ…」
「「よーし!お前の運命は今、決まった!!私に潰されるという運命がなっ!!」」
「2人共キャラ変わってるぜ…」
「ご主人様を賭けて勝負だ、悪魔!!」
「望む所よ!ダーリンは私のものなんだから!」
「はぁ…。転移『
この2人の衝突は避けられないと直感した俺は、せめて被害を軽く抑えられるようにと誰も居ない氷雪世界へ2人を強制移動させ、自身もスキマでそちらへ移動した。
俺としては…幻月に勝ってもらって、天子の事はスキマで天界に送り返し、幻月とデートの続きをしたい。なので、幻月を応援することにしよう。
600話記念なのにエスカルゴが無能!
外の世界は「科学と技術」が発達していて魔界は
「魔法と文明」が発達しているという感じなので
公害とか温暖化とかそういう問題は無いですね。
パチェさんも言ってた通り「大抵何とでもなる」
のが魔法ですから、仮に有害物質が出ても封印や
消滅させるとか出来るでしょうし…。
(あくまで本作においてのみの「魔法」の扱い)
今回何か出てきた日傘ですが、裏設定?としては
「日傘を持ってる人の魔力をエネルギー源として効果を発揮する」ので、傘を開いて持っていたらジワジワと魔力が無くなっていきます(笑)
魔力ある前提のアイテムなので、魔力が無い者がこの傘を持っても、効果の無いただの日傘です。
魔力が多少減っても問題無いのって、本作では、パチュリーを始めとする魔法使い組、エスカルゴ以外の悪魔系ですかね。
傘の効果が分かりやすい名前を付けるとしたら、
「自家発電型持ち歩きクーラー」…かな(笑)
600話記念に本作制作秘話(誰得)を少し公開。
実は、椛のヒロイン入りルート考えてましたね。
犬の散歩プレイとかも良さそうだなーとか。まぁ天子というペットが居たのでその√はお蔵入りとなったんですが。(そもそもヒビキに女を与えるつもりは無かったからねマジで。見た目だけならエスカルゴより子供のくせに生意気だぞホント。忘れられてると思うけど、ヒビキの見た目中学生だからね。中学生。次いつ出す?いや、出す機会無いんじゃね。作る気もあまり無いし)