1年に一度のある日、紅魔館にて行われる小さな宴会がある。そう、7月7日の七夕である。身内のみならず、友人なども多数招待しているので、花見以上異変解決後の宴会未満というそれなりの規模の宴会になっている。…友人というか彼女が多いせいだが…。おかげで、宴会の度に参加者が増えているような気がしないでもない。何しろ、今回のには衣玖さんと魅玖も来ている。比那名居天子?…知らない子です。なんにせよ、野外でのパーティは素晴らしいものである。
「やっほ。来たよ、お父さん」
「来たよー♪」
「おー、来たか3人共。もう皆は揃ってるぞー」
宴会が始まってから会場に入ってきた博麗親子に対して、ピザを片手にそう笑いかける。チーズとベーコンという簡素なピザだが、俺はこういったシンプルなピザが好きである。しかも咲夜さんはチーズの匂いが苦手な俺に配慮して、匂いが弱いモノを使用してくれている。ありがたいことだ。重度なファザコンの巫月は、俺の隣で同じピザを食べている。
「お酒、持ってきたわよ」
「サンキュ」
「…今更だけど、よく
「霊夢のだからね、仕方ないね。いつも言ってる通りだよ」
「はいはい。変態もここまで来ると究極よね…」
「何だそりゃ。……あっ、そうだ。なぁ2人共、魅玖ちゃんとは上手くやっていけそうか?」
「私はまぁ……大丈夫だよ?妹が増えるなんて、いつもの事だしね。お姉ちゃんは?」
「大丈夫だよ。あとあの子、スゴく優しいよね。何回か話したけど良い感じの子じゃん。どこでもやっていけそうだね」
「そうだな。やっぱ、衣玖さんに似たんだろう。でもさ、他の子達に比べて、魅玖ちゃんは俺にも結構似てるよな。霊愛もそう思うだろ?」
「いや、そうだけどそうじゃなくてさ……。何て言えばいいのかよく分からないけど……何だろ、優しすぎて何か逆に心配になるっていうか…」
霊愛は横目で魅玖を見ながらそう呟く。心做しか頭のリボンが垂れ下がっているようにも見える。いつもの彼女と違って自信なさげで、あまり彼女らしくない。俺には彼女の考えがわからないので大雑把にだが彼女に追求していく。
「何で?どこら辺が心配なんだ?」
「上手く言えないって…」
「ふーむ……」
「『心配りがよく出来る分、自分の意見を後ろに回して自分の心を犠牲にしていそう。今は犠牲にしていなくても、将来的にそうならないかが少し心配』…ってことを言いたいんじゃないかな?」
「そーそー…流石お姉ちゃんだね…」
心を読んだかのような巫月の発言に、霊愛は少し驚きつつも素直に頷く。大方、巫月も同じようなことを考えていたのだろう。
「霊愛も少しは国語を勉強した方が良いかもね」
「うぐぐ…何も言い返せない…」
「本を読んで勉強するのにも限界はあるってことだね、仕方ないね。私みたいに勉強すれば?」
「寺子屋かぁ…ヤダなぁ…」
「エスカルゴに教えてもらえば?」
「…頼める?お父さん…」
「構わないよ。で、何を教えればいいんだ?」
「…やっぱいいや」
「国語って俺的には理数系と違って感覚な部分が多いから教えるのがムズいんだよ。漢字だったら教えられるが霊愛はもう読み書き出来るだろ?」
「まぁ、人並みにはね」
「あとは本を読んで語彙力身に付ければいいさ。今度、鈴奈庵行こうか」
「…うん…♪」
「なんか嬉しそうだね、お姉ちゃん♪」
「別にそんな事無いし…何言ってんの?」
「口元ピクついてるから」
「……///」
「お、霊愛にもデレ期到来か?」
「馬鹿なの?いくらお父さんでも引くわ〜。娘を相手に『デレ期到来か?』は引くわー」
「サーセン」
霊夢は既に、娘を置いて料理を食べ始めている。相変わらずの食欲だ。博麗姉妹は穹達と交じり、巫月は頬に手を当てて料理を味わっている。流石俺のことを長年見てきている娘だ。あの仕草も、俺の好みを分かってのことに違いない。巫月ならそうやりかねない。
「巫月はもう短冊書いたか?」
「勿論♪」
「そっか。…そんじゃあ俺は、そろそろ皆んとこ行ってくるよ。巫月も楽しんで行ってくれな」
「うん♪」
彼女も来ている。つまり純狐もクラウンピースも今回は来ている。そしてクラウンピースの保護者的な立ち位置のへカーティアもだ。妖夢と妖舞、幽々子さんは来たが、妖忌は留守番だとか。薄々そんな感じがしてはいたが、そのまさかだとは。もう少し俗世に馴染もうとすればいいものを…。
それから、今年からは─────。
「来たわよ、カルちゃん♪」
「お久しぶりです、坊ちゃん」
「お兄ちゃ〜んっ!」
「ははっ、アリスは相変わらずだなぁ♪」
母さん、夢子、ロリスも参加である。おかげで、かなり気分が盛り上がる上に、これによりアリス姉ちゃんを呼ぶ機会も増えた気がする。ロリスが抱きついてくるのもいつも通り。甘えん坊の妹がこの上なく愛くるしい。
「ちぇっ……妹だからって堂々と抱きついてやがるぜ…」
「ピースも行けばぁ?」
「私とへカーティアはここから2人を見守ってるから、私に遠慮しなくていいわよ♪」
「いっ、いいですよ別に!あっちの邪魔はしたくないし…」
「あら意外、あなたなら構わず行くかと思ったわよん」
「そうね…どういう風の吹き回し?」
「…もしあたいが誰かの邪魔をしたら…他の誰かもあたいの邪魔をするんじゃないかなって…。そう思うんです…」
「因果応報ってワケね。地獄の妖精とは思えない優しさねぇ。私としては複雑だけど、心持ちとしては良いんじゃないかしらぁ?ね、純狐?」
「ええ、良いと思うわ。流石ね、ピースちゃん」
「にへへっ…♪」
クラウンピース達3人は相変わらず固まって行動しているらしい。仲が良いのは良いことである。見ていてとても微笑ましい。
「…ていうか、今母さんどうやって登場したの?何も無い所から現れた…ように見えたんだけど。母さん、もしかして夢子に瞬間移動系の能力まで付与したの?それともアリスの新しい魔法?」
「あら、私だって空間に穴開けて別空間と繋げることくらいできるのよ?ほら」
「うぇぇ……」
済ました表情で、その場の空間に渦巻き状の穴のようなものを開ける。そこに手を入れている辺り本当に穴が開いているらしい。俺や霊夢、紫さんのとも違って、また異質な感じがする。
「これまで『迎えに来て』って言ってたのって、一体なんだったんだ…」
「勿論、カルちゃんと来たかったからでしょう?それくらいすぐ察しなさいな、おバカさんねぇ」
「あ…あぁ……///」
「次からも、お願いしたら来てくれるかしら?」
「勿論だよ母さん」
「うふふっ、ありがとう♪」
「別に…そんくらい普通だろ。息子…なんだし?せめてこれくらいはしなきゃな…///」
「照れるカルちゃん可愛いわぁ〜♪」
「照れてねーし!!」
「はいはい♪」
「ったく〜…」
「ねーお兄ちゃん。今更だけど七夕ってなぁに?皆で集まって宴会するの?いつもやってるような気がするけど……」
「まぁ幻想郷ではそんな感じかな。あと、短冊にお願い事を書いて笹に吊り下げるんだ。短冊なら笹のトコに準備してあるから、あとで母さん達もやってみるといいよ。皆もやってる頃だろうし」
それから織姫と彦星のエピソードを3人に話し、俺も3人と一緒に願い事を書くことにした。俺はまだ願い事が定まっていないが……これも毎年のことである。願い事を1つに絞るなんて、欲深い俺には難しいのだ。
「あらあら、結構皆書いてるわね…。夢子ちゃんアリスちゃん、私達も書きましょ♪」
「ですね」
「書こー書こー♪」
3人が書き終わる頃、やっと願い事が決まった。だがそれを書く前に、皆のを少し見て回りたい。
『子供達と魔界の皆、カルちゃんの家族の幸せ、魔界の発展』神綺
『坊ちゃんとお嬢様のタッグに1人で打ち勝てるようになりますように』夢子
『お兄ちゃんと息ピッタリに合わせられるようになりますように!』アリス
「…夢子にはまだまだ負けらんねー…これからも勝つさ、俺とアリスは…。剣だけでの勝負なら、下手したら負けると思うけど」
夢子と初めて会った時…。即ち咲夜さんと夢子が戦った時、夢子の剣の腕は相当なものだなと心底震え上がったものだ。この前も魔界の地面を剣で割っていた。俺にはここまで出来ない。だから、俺と夢子が剣だけで戦えば、或いは………。
「霊夢は相変わらずかぁ……。起きたら起きたで
『仕事増えた』って文句言うくせに。可愛いからなんでもいいけど」
『誰か異変起こせ』霊夢
『パチュリーに勝って私が幻想郷最強の魔法使いであることを証明出来ますように』魔理沙
『弟と妹と更に仲を深められますように。それと魔理沙は私のモノだから弟にも渡さない』アリス
『魔理沙とエスカルゴに負けないように、魔法の練習も頑張る!』フランドール
『最強の体術に磨きをかける』レミリア
『お嬢様方、旦那様の安全、健康』咲夜
『無病息災』美鈴
『喘息完治』パチュリー
『母としての威厳を取り戻せますように』小悪魔
願い事といえば「〜ますように」が定番のように思えるが、幻想郷の七夕ではそうではないものも多く見られる。今回もまた、幾つか「それ願い事じゃなくない?」とツッコミたいものがあるが、それは別に良いだろう。「常識に囚われてはいけないのですね!!」の言葉通りだ。
『幽々子様に武器の勝負で勝ちたい』妖夢
『お腹いっぱいの幸せ』幽々子
幽々子さんは武器を使うのだろうか。もしも仮に使った所で、妖夢が勝ちそうなものだが…。まぁ俺が見た事が無くとも、付き合いの長い2人だ。妖夢は、幽々子さんが武器を使ったところを見たことがあるのだろう。
『姫様と兎達の健康』永琳
『誰かを幸せにできるなら、私も幸せになっても良いような気がする』てゐ
『元気な子が生まれてきますように』鈴仙
『エスカルゴがエロイベントに対してノリノリになってくれますように♪』輝夜
『躊躇う心が無くなりますように』サグメ
鈴仙は相変わらずだ。優しい母親になるだろう。俺も彼女に見合うような男にならねばなるまい。
輝夜のは……これは論外だ。季節のイベント毎に何かエロイベントもあるとか、身体がもたない。尤も、断る理由としては「彼女達や娘との時間を大事にしたいから」なのだが。ソッチの意味での体力には、些か自信がある。
そういえばサグメは、先日のラジオの放送にて、
『覚悟を決めた』というお便りを出していた気がする。覚悟は決めていても躊躇う心はまだあるのだろう。あの放送でお便りを読まれたペンネーム
「兎の賢者」とはサグメのことだ。一体彼女は、何をするつもりなのだろうか。
因みに「兎」とは、彼女の二つ名である「片翼の白鷺」と「右」を合わせた言葉遊びだ。…多分。
「右」の由来としては彼女の片翼が右の翼だからだと俺は予想する。サグメが考えそうなことだ。
『たまにはエスカルゴに勝ってみたいかも』萃香
これは少し勘弁してほしいものである。一度でも勝った相手に負けると、霊夢にしばかれるのだ。悪くは無いが、霊夢のしばきは容赦が無い。咲夜さんのしばきとはわけが違う。何年か前などは、夢想封印で妖力を完全に封じられた事もあった。萃香のこの願い、叶えてあげたいのは山々だが…俺としては絶対に阻止したいものだ。…魔理沙に負けてもしばかれた事はないが、一体これは何故だろう。聞いたところで「しばかれたいのね?」などと言われそうなので、黙っておくが。
『エスカルゴのことを襲えますように』巫月
『お母さんとお父さんの夜の音が少しでもマシになりますように』霊愛
『平和が続きますように』穹
『羞恥心を捨てられますように』弦月姫
『父上とのゲームに勝つ』妖舞
『目指せ12人中第3位!』霊麗
『成長できますように』茜
『0祈祷で天気を操作できるようにする』樹里愛
『めんたまやきをおなかいっぱいたべたい!!!めんたまやき!!!!!』レイチェル
『暗記力を鍛えてお母様を見返す』ここあ
『魔法の練習をサボらず頑張りきれますように』シガレット
『やさしいおとうさまだったので、ねがいごとはもうありません』魅玖
妖舞とのゲーム…。幽々子さんを賭けるというか何と言うか…そんな感じのことだ。今年中に俺を一度でも殺せたら、俺は未来永劫、幽々子さんに手を出してはならないというものだ。まあ尤も、俺は心臓を刺されても死なないので、俺の勝ちはもはや確定事項なのだが。
「樹里愛はまさに、『天気の子』だよなぁ……。山では『神の子』って呼ばれてるみてーだが…」
今日は曇りだった。だが樹里愛が祈祷したお陰で今では綺麗な星空が顔を覗かせている。天の川も美しい夜空に煌めいている。不規則に流れてくる季節外れの流れ星が、とてもロマンチックだ。
地上から飛び上がり、紅魔館の屋根に飛び乗る。そのまま寝転がって一息ついた後、星空へと手を伸ばしてみる。
「…綺麗だな…」
天の川に触れてみたい。何も知らなかった子供の頃は、そんな風に考えていたこともあった。
いつからだろうか、俺の頭から夢が消えたのは。
夢さえあれば、俺はもっと─────…
「なーに黄昏てんのよ?」
「霊夢…」
声が聞こえてきた方に視線を向けると、そこには霊夢が居た。いつの間に居たのか、彼女もまた、俺のように横たわっていた。彼女は、気配を消すのが最高に上手だ。俺に気付けるはずがない。
「毎年こうよねぇ。あんたって、フラーっと会場から離れて、こうやって1人で夜空を眺めてる」
「毎年こうじゃ、流石に行動も読まれてる…か」
「そりゃあね。それとあんたね、あの時計台から覗かれてる事に気付いたらどう?」
「あぁ、気付いてる。エリスも来てるんだろ?」
「なんだ、気付いてたんだ…。あんたの事だから気付いてないかと思ってた。こんだけ人数も多く集まって、妖気もめちゃくちゃだし」
「
「それもそうね」
「つーかこの前、俺があいつのこと誘ったんだ」
「危険分子を誘うとか、あんたどうかしてるわ」
「そりゃどうも」
「褒めてない」
「……なぁ、霊夢?」
「何よ」
「これから先ずっと…一生さ…。俺だけの織姫で居てくれるか?」
「はぁ?何よそれ、そんなのゴメンなんだけど」
「えっ」
「1年に一度しか会えないとか嫌すぎるんだけど何なのよそれ?新手のプロポーズ?もしそうなら最悪なプロポーズだから、他の女の子に言うのはやめておきなさい」
「……ははっ……。あー、そりゃー嫌だなぁ…」
そう来るかと俺は思わず笑いを漏らしてしまう。やはり霊夢の考え方は、俺とは少し違う。
「前言撤回。これからも俺の良きお嫁さんとして傍に居てくれるか?」
「あんたが他の子に会いに行かなきゃずっと傍に居てやるわよ」
「あーもー…もう少しロマンチックな返し方とかねーのかよぉ…言ってて恥ずかしくなってきたぜ全くぅ……」
「フンッ。あんたが悪いのよ、この女たらし…」
「その女たらしを好きになったのは、一体どこの誰なんでしょうかね?霊夢さん?」
「潰されたい?」
「サーセン」
「…バーカ…///」
何だか、前にも似たようなやり取りをしたような気がする。まぁ、霊夢となら同じような会話でも何でも楽しめるだろう。例え、同じ一日が一年も百年も繰り返されたとしても。
「…じゃ、ちょっと休憩したから俺は下行くぜ。霊夢も来る?」
「そーね、あんたが居なくなったらこんなトコに用は無いし」
「はは…」
地上に降りた俺は、自分の短冊を片手に他の皆の願い事に軽く目を通していく。どうせ俺のも後で他の人に読まれるのだから、俺が他の人の短冊を読んでも構わないだろう。
『私の神徳が広まりますように!!』早苗
『信者よ、これからも増え続けてくれ』神奈子
『ヒモニートになれますよーに』諏訪子
『幻想郷にも強者が現れることを望む』武甕槌命
…まずい。早苗の神徳を軽く忘れている。確か、現人神だった頃の力が神レベルにまで高まったのだったか。ちょっとした幸運と軽い天気操作だ。神奈子様は相変わらずだ。諏訪子は…もうとうにそうなっているような気がする。ヤツに関しては論外だ。武甕槌命が言う強者が現れたとしたら、この幻想郷が穴だらけのチーズになるような気がしてならない。
『無双してやる!!』チルノ
『美味しい肉をたらふく食べたい』ルーミア
『バンド活動と屋台営業と彼との交際等、全てが上手くいきますように』ミスティア
『殺虫剤にはもう屈しない!!』リグル
『ライブが毎回満員以上になりますように』響子
チルノは非常にわかりやすい。今現在以上に鍛えあげれば、或いは…。未来はきっと明るいものになるだろう。偶然とはいえ諏訪子を倒したのだ、相手の隙を突けば可能だろう。
『私の新聞がもっともっと広まりますように』文
『総領娘様のワガママが、このままマシな方向に進みますように』衣玖
『何があろうとも里を守りきる』慧音
『守りたいものを守れるよう、己を限界以上まで叩き上げる』妹紅
文は自身の健康に気を付けてもらいたいものだ。新聞を早く仕上げるためには、と健康を顧みない事があまりにも多すぎる。
慧音と妹紅は…きっと、巨人襲来の時の事を気に病んでいるのだろう。あの2人の事だから容易に察しがつく。山だけではなく、被害が人里にまで及んだのは想定外だった。あの霊夢でさえも。
『嫦娥を殺す』純狐
『純狐にトコトン付き合うわよん』へカーティア
『2人っきりでデートがしたい』クラウンピース
『皆で幸せになれますように』さとり
『お兄ちゃんが私の思い通りになったらいいな。そうなればもっと楽しくなるのに』こいし
『お燐ももっと幸せになれますように!』空
『お空がもっと幸せになれますように!』燐
お空とお燐…互いを思いやる素晴らしい願いだ。思わず感嘆の溜め息を漏らしてしまった。尊い。この2人の間には決して割り込めない。というか割り込みたくない。遠くから眺めていたい。
クラウンピースは…今度、俺から誘ってみよう。
「…そーいや、幻月達は来ねーのかな…」
小さなスキマを開いて、夢幻館前に繋いでみる。くるみ、エリーは何故か外におらず、夢幻姉妹の気配すらも感じられない。おかしい。あれほどの強くて邪悪な気配なら、流石の俺でも容易に察知できるはず──────
「ちょっとちょっとぉ!何ボーッとしてるのかと思ったら覗きしてたのぉ?」
「ふふっ、お兄さんのヘンタイ♡」
「うおぉっ!?」
背後から声を掛けられ、思わず俺は飛び上がる。そうだった、今更ながらに思い出した。幻月達は気配を隠すのが普通に上手なのだった。くるみと俺が夢幻館近くでイチャついていた時に、気配を消して接近して驚かせてきた事があったのを思い出した。
「ちがっ…その、これはだな…!幻月達が来ないから、まだ夢幻館に居るのかなと今見た所で…」
「そんなの知ってるわよ。ダーリンだもん。ね、夢月?」
「うんうん♪」
「はぁ〜……驚かすなよぉ……」
「お兄さんなら覗きそうだとも思ったけどね♪」
「ちょっ、くるみ…」
「あ゙?くるみアンタ…今なんて言ったの?私の
ダーリンがそんな下衆なことをするとでも?別に
してもいいけどさぁ」
「貶めてるわけじゃないもーん。お兄さんだから何でもアリってだけだしぃー」
「くるみってば…!」
エリーが肩を掴んでまで止めているにも関わらずくるみは言葉を続ける。幻月の額には薄く青筋が浮き上がっている。夢月は笑顔で硬直している。それが堪らなく恐ろしい。
「お兄さぁん、
「ハネムーン!?」
「はァ?それさぁ、アンタの前に私なんだケド?それ忘れてもらっちゃ困るわよねー」
「えぇー?順番なんて決まってないもんねーっ♪幻月や夢月よりも前に、この私が先にお兄さんと結ばれちゃうから♡」
「「殺ス」」
ブチ切れた幻月と夢月は同時に地を蹴って彼女の喉笛へ手を伸ばす。凶悪なあの2人に同時に攻撃されたら、いくら強靱な吸血鬼や悪魔といえども致命傷を負いかねない。
俺は咄嗟に幻月達とくるみの間に割り込み、腕を広げて壁のように立ちはだかる。すると2人は、予想通り急ブレーキをかけ立ち止まってくれる。
「邪魔よダーリン、そこを退いてッ!!!もう、堪忍袋の緒が切れたわ!!」
「殺ス」
「仕方ねぇな……ったくよォォ…!俺の眼を見ろ幻月、夢月!!」
「はぁ?何でこんな…時に…………」
「っ……!?う…ぁ………///」
本日使わなかった分の魔力を全開にして放った。こうでもしなければ2人は止められないからだ。
「あっ……あぁあ…!だぁ…りん…///」
「おにぃ…さぁん…♡」
息を荒くさせた2人は、足がおぼつかない様子でフラフラと俺に歩み寄ってくる。抱きとめようとしたが、2人はそんな俺の手を振り払い……。
「ダメぇっ……今日は…まだダメなのぉっ!私、もう帰るぅ!」
「私も今日は…。ゴメンね…///」
「あっれぇ〜?2人共帰っちゃうのぉ?だったらお兄さんは私が貰っちゃうね♡」
「ダーリンはアンタより先に私を選ぶからっ…!だから大丈夫よっ!!」
「次こそは…殺すっ…!」
そう言い残した幻月と夢月はその場から勢いよく飛び立って、博麗神社の裏山の方角へ向かった。くるみはやれやれと肩を竦めて、エリーは逆刃の鎌を肩から下ろし大きな溜め息をつく。
「あのねぇくるみ!なんで最近はああやってあの2人を煽るの!?」
「煽りたくなるから。2人に負けたくないから」
「はぁ…くるみってば無駄に正直だよね…」
「っさいなー。ってお兄さん、何探してるの?」
「今の騒ぎの元凶を探してる。移動したらしくてさっきの所には居ないっぽいが…」
「へ?元凶?」
間違いなくエリスだ。アイツがまた、3人の負の感情を増幅させ、あんな騒ぎに発展させたのだ。ならばまたアイツをシメてやらなければ…。
「はい、エスカルゴ。コイツでしょ」
「キュゥ〜……」
「あ」
霊夢がエリスの首根っこを掴んでふわりと空から現れた。先程の騒ぎを聞き付け、霊夢がエリスをシメてくれたのだろう。
「ありがとう、霊夢。助かったよ」
「お礼は身体で払ってもらうわよ」
「引いた」
「あ?」
「嘘です」
「なら良し」
エリスにもう一度釘を刺した俺は、自分の短冊を飾ろうともう一度宴会場の笹へ向かう。
『いつダーリンに誘われても良いように、身体と心と下着の準備は常に万全にしておきたい』幻月
『姉さんよりも早くお兄さんと結ばれたい』夢月
『幻月と夢月より早くお兄さんとヤる!』くるみ
『くるみが最近おかしいので、少しは昔のように大人しくなってほしい』エリー
「おっ。なんだ幻月達、もう書いてあったのか。来てたの気付けなかったなぁ…」
それだったら、と俺はその下に自分の短冊を吊り下げる。恐らくほぼ全員分の短冊を見ただろう。あとは俺も、この宴会をトコトン楽しもう。
『吸血鬼本来の魔力量を取り戻して魔法を鍛え、少しでも多く長く、チートな魔法を扱えるようになれますように』エスカルゴ
神綺が空間に穴を開けられる(スキマ的用法?)のはどうやら原作設定っぽいです。怪綺談EDで空間に開けた穴で靈夢から逃げていました……。
どうやら俺の下調べ不足だったようです。ご容赦
下さい。…ていうか、弾幕や会話ならともかく、
EDだったら実際にプレイするか誰かから教えてもらわないと知ることができないよね!!!!!だから今回は仕方ないよ!EDをネットに流すのタブーなんダルォ!?許して!(開き直った)
教えてくれた方ありがとう!やっぱ神綺母さんは神だね!すっごいぜ神綺母さん!!大好き!!!