「う〜…お母さぁん、お腹空いたぁぁ……」
「我慢しなさい、今にエスカルゴ来るから……。そしたら急いで夕飯作ってもらいましょ」
「今来たとして、お父さんが急いでも少なくとも30分は掛かるよね…。お姉ちゃんはともかく私はもうキツいよぉ…」
「大丈夫よ、人間だって1食抜いたくらいじゃあ死なないんだから。ましてや妖怪がこれくらいで死ぬわけないわ。もう少し耐えなさい」
娘達が夕飯を要求しても、霊夢は頑として要求を跳ね除ける。面倒臭いというのもあるだろうが、一番は「あいつの仕事だから」というのが大きいだろう。一度でも任せたら何があってもやらせるというのがこの霊夢である。
「でもこんなに遅いのっておかしくない…?里で慧音とお昼ご飯食べたにしたって、いつもは夕方にはちゃんと帰ってくるのに…」
「どーせ慧音の家でヤッてんでしょ、時間忘れて2人仲良くねっ!それとも、そろそろハーレムに妹紅加入かしらね?あーあ、モテる上に浮気性な男が旦那だと気苦労が絶えないわー」
「お母さんも誤魔化すの下手すぎじゃない?まぁ今に始まったことじゃないけど。…ホントは割と心配してるんでしょ」
「あー?何の事よ霊愛ー?」
「………。埃が舞うから室内で翼動かさないで」
「は?…あ…」
完全に無意識だったのだろう。霊愛に指摘された霊夢は、勝手に動いていた自分の翼を見て今度はちゃんと意識してそれを止める。
心の中のイライラや焦燥が、貧乏揺すりのような感じで翼に出てしまっていたらしい。
「お母さんお腹空いたー。ご飯作っていーいー?お母さん作らないなら私作るー」
「私も…」
「…作ったら2人で食べてなさい。完成前にあのバカの首根っこ掴んで連れてくるから」
「「はーい」」
霊夢達3人の中では比較的家庭的な霊麗が料理を作ると言い、体を起こすと、霊愛も便乗して起き上がる。尚も夕ご飯を作りたがらない霊夢だが、どこか諦め気味に体を起こし、異変解決に行く時のように装備を整える。
やっと動き出した母を見た霊愛と霊麗は、台所へ向かいつつ「やっとか」安心の溜め息をついた。
「行ってくるわ。火と来客には気を付けなさい」
「「はーい」」
オレンジと漆黒の夕闇の美しいグラデーションとなっている空へ、縁側から勢いよく飛び立った。向かう先は勿論、慧音の家だ。
そして、里近くの慧音の家に到着するなり、扉を荒々しく叩きながら声を荒らげる。
「オラァ慧音ェ!!早くこの扉を開けなさい!!そんでもって早くアイツを返しなさい!あんたが開けないなら私が開けるわよ、ヤッてる途中でも問答無用で返してもらうからね!」
霊夢が扉を開けようと扉に手をかけると、自然と扉が開いた。中から慧音が開けたらしく、思わず驚き、ビクリと体を震わせてしまった霊夢。
「うるさいぞ霊夢。エスカルゴなら、私の家には来ていない。それどころか今日はアイツの姿すら見ていないぞ。寺子屋にも来なかったしな」
「あー?だったらどこに居るってのよー…ホントあのバカはバカなんだから…ったく……」
「今日は博麗神社で昨日は永遠亭だろう?だから探すならそっちが先じゃないかと私は思うんだがそこの所はどうなんだ?」
「…巫月ちゃん、今日寺子屋には?」
「えっ?勿論来ていたぞ。巫月は優秀だからな、毎年皆勤賞さ。でも今日のエスカルゴは迎えにも来なかったが…」
「迎えにも来なかった…か。まさか朝から昼まで鈴仙とヤリ続けて…?ましてや永遠亭には輝夜も居るし…しかもサグメまで住んでるんだっけ…。あー、悪かったわね慧音、何となく分かったわ」
「誤解が解けたんならそれでいいよ。それじゃ、アイツに宜しく伝えておいてくれ。…嫁のお前に頼むことじゃないとは思うがな」
「はいはい、伝えとくわよ。じゃーね」
「くれぐれも気を付けて行くんだぞ、あの竹林は空でも迷いやすい」
「分かってるわ」
その場から即飛び立った霊夢を見送った慧音は、屋内に戻って夕飯の準備を再開した。
一方で霊夢は、既に永遠亭を視界に捉えていた。里(の近く)から永遠亭まではそれなりに距離もあるが、何故このように素早く移動できるのか。それは、夜も近くなってきて吸血鬼としての力が強くなっているのもあるが、そもそも吸血鬼とは
「人里を一息に翔け抜ける速度」を出せる、化物じみた身体能力の種族である。彼の眷属となった霊夢とてその例に当てはまっている。人間や仙人だった頃の単なる《空を飛ぶ程度の能力》では、ここまでの速度は出せなかっただろう。
そして永遠亭に到着した霊夢は、先程と同じ様に強く扉を叩いた。…勿論、暴言と共に。
「鈴仙輝夜サグメぇ!!早くここを開けて、あのバカを返しなさい!今日はこっちの日なんだから早くしなさいよねっ!!」
扉が開いた。目の前に居たのは鈴仙でも輝夜でもサグメでもなくまたもや永琳だった。前にここに来た時も永琳が出てきたような…と霊夢は記憶を掘り返す。
「相変わらず乱暴ねぇ、壊れたらどうするのよ。それで何の用?そろそろご飯の時間なんだけど」
「あのバカを出しなさい」
「あのバカ?…エスカルゴなら朝のうちにここを出てどこかへ向かったわ。詳細は知らないけど。
(あの時みたいに暴走してるって訳ではなさそう?何にせよ迷惑だけどねぇ…全く…)」
「は?朝のうちに?鈴仙と輝夜がアイツとアレな遊びを今も継続シテるんじゃなくて?」
「うどんげは夕飯を作ってます。姫はゲーム中、てゐは竹林のどこかで遊んでて、他の兎は部屋でグータラ中、巫月ちゃんはサグメに勉強を教えてもらってるわ。そして私はクレーマーの対応中。何か質問は?」
「アイツの行方を知ってるのは誰?…って、誰がクレーマーよ!?」
「そりゃあ…彼の行方を知ってるのはウドンゲや巫月ちゃんでしょうねぇ。霊夢も知っての通り、彼ってその日の予定を軽く教えてくれるから」
「じゃ、聞いてきてくれる?私が聞くより素直に答えてくれそうだし。その代わり、あんたは私に嘘をついてはダメよ」
「自分達のタメにならない嘘はつかない主義よ、安心なさい」
(嘘はつかない、とは言わないんだ…)
ピシャンと霊夢を閉め出して屋内に戻った永琳。腕組みして永琳からの返事を待つ霊夢だったが、そんな彼女の前に1人の妖怪兎が現れる。
「お困りのようウサねぇ?ウサササッ♪」
「あー?あんた、何だって夜の竹林に居るのよ」
竹林で遊んでいたてゐである。今日も今日とて、大量の落とし穴の製作に精を出していた…のかもしれない。
「そりゃあ、妖怪兎だからウサ」
「はいはい」
「…エスカルゴなら朝は紅魔館に行ったウサよ」
「何であんたが知ってんのよ。ていうかあんたは嘘ばっかつくから信じられないわ」
「あれれ?霊夢、昨日の夜のにとりんレイディオ聞いてなかったウサ?チルノがまたエスカルゴに特訓を頼んでたウサよ?」
「んなっ…!?」
「まぁそれは朝のことだから、夜となった今ではどこで何をしてるか皆目検討もつかないウサ〜」
「でも、紅魔館だったら美鈴が見てるはずね…!何か手掛かりは掴めるはず…。ありがとうてゐ、たまには役に立つじゃない!」
小さな爆音がする程強く地面を蹴って飛び立ち、風切り音と共に紅魔館の方角へと向かった霊夢。その姿が見えなくなって、てゐは小さく呟いた。
「…ま、嘘なんだけど」
くくくっ、と小さく笑った彼女は、永琳が戻ってくる気配を野生の勘で察知し、再び闇に鎖された竹林へと姿を消した。
「お待たせ霊夢、どうやら彼は魔か……あれ……霊夢………??」
霊夢が姿を消したので流石に少しは困惑した永琳だったが、嘘常習犯のてゐがこの近くに居る事を思い出し、霊夢が消えた経緯を悟った。
そして彼女は、大きな大きな溜め息をつきながら永遠亭の中へと戻って行った…。
余談ですが霊夢はラジオを聞いてません。
またオリキャラだらけの話書いても良いですか?原作キャラも勿論数人出ますが出番は少なそうです。
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勿論OK
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出来れば暫く控えてほしい