アリス邸の前で繰り広げられる、霊夢と姉ちゃんによる弾幕ごっこは、時間が経っていくにつれて激しさを増していった。最初は美しかった弾幕も2人の心を映すかのように荒々しくなっていき、あちらこちらで相殺する際の光が瞬いている。
「やっぱり強いわね、霊夢。今回こそはイケると思っていたんだけど…」
「あんたは私には勝てないわ!そのバカは返してもらうから、黙って大人しく負けなさい!」
「と言われて、大人しく負けると思うのかしら。喰らいなさい霊夢、可愛い弟のこのスペルをね。祈祷『
祈るようなポーズを取らされ、俺のスペルを発動されてしまう。どうやら、俺のスペルまで使えるらしい。それもそのはず。身体の支配権は未だに姉ちゃんのものなのだから。
姉ちゃんが知っているスペルなら、
「残念だけど十字架は平気よ、他の軟弱な悪魔と一緒にしないでくれる?」
輝く十字架を機敏に方向転換して避けながらそう煽りを入れる霊夢。しかしそれに動じる姉ちゃんではない。澄ました表情でそれを聞き流した上、お返しとばかりに言い返す。
「無論、これで倒せるとは微塵も思ってないわ。私がそんな甘っちょろいヤツじゃないのはあなたならわかるわよね?」
「どうかしらね。どいつもこいつも、詰めが甘いからね。さぁ、次はこっちの番よ!符の壱『夢想妙珠連』!」
幾つかの綺麗な弾幕が、姉ちゃん目掛けて飛んでくる。緩やかなホーミングらしく、少し弾を引き付けてから回避している。煌めく十字架と綺麗な弾幕のやりとりは暫く続き、先にこちらの弾幕が止んでしまう。しかし姉ちゃんは、あのスペルを回避するコツを掴んでいるらしく、全く被弾せず最後まで躱していった。俺だったら何回かは被弾してしまいそうだ。
「じゃあ次は……少し早いけど、耐久スペルでも喰らいなさい!!閉鎖『カオスワールド』!!」
「しまっ……」
ドーム状の闇が霊夢を覆い尽くす。光すら返さぬ真の闇は、暗くなりつつある森の中でさえかなり目立つ「黒」である。ドームの中では、闇の弾幕及びレーザーが飛び交っていることだろう。この闇のスペルは、この系統のスペルでも一二を争う執拗さ、難度だ。霊夢だから大丈夫だとは思うが油断はならない。
「霊符『夢想封印』ッ!!」
「なっ……!?」
…と思っていた次の瞬間、闇のドームが弾けた。耐久なのでまだまだ時間はあるはずなのに、だ。どうやら、霊夢が力押しでこじ開けたらしい。
「あーもう、服が破れかけてる…。オトシマエはつけてもらうわよ、アリス!!これはエスカルゴじゃなくて、あんたに直してもらうわ!!」
「それは面倒ねぇ…。こうなったら森を焼き払う勢いでブチかますしかないかしら。えっと確か…
スペル名は……一閃『Mishap of Thunder』!」
「またアイツのスペル…自分のは使わないワケ?それとこのスペルは、とうに攻略済みよっ!」
姉ちゃんは俺に力を使わせ魔法陣を広げていく。しかし霊夢のその言葉通り、雷を召喚する前には回避行動を取って、誘導雷や側撃雷も喰らわずに平気な顔をしている。
「ふふっ、エスカルゴのスペルばかりを使うにはちゃんとした理由があるのよ?」
「どーせ『あの子と私は一心同体』…とか何とか言うつもりでしょ。その座は私のモノよ、絶対に譲らないわ」
「えぇ?そんなんじゃないわよ。操る対象に力を使わせると、より操りやすくなるの。こんなのは催眠や洗脳、乗っ取りの基本よ」
(しまった…!もしかして、このまま戦いを長く続けるとアイツを完全に手懐ける…なんてことにならないでしょうね…!?)
「闇の力は使い果たして、魔力は私が与えている分以外は尽きているし、妖力すらも削ってる…。雷の方は無尽蔵だから使い切れないけど…もっと操りやすくなるわ♪」
(今より操りやすくなるって…。今でさえ自我も無くて何も出来ないってのに、これ以上何をするつもりなんだよ姉ちゃん…)
「そう…。だったら一気にキメましょ。アンタは余計な事を言わずに、黙って抵抗して黙って私に退治されれば良かったって言うのに…。どうしてどいつもこいつも余計な事を言うのかしらね?」
「悪役の
「あらそ、悪役ってわかってるなら話は早いわ。正義は勝つ!!旦那は返してもらうわよ!!」
「弟は返さないわ…!エスカルゴ、あなたの力をお姉ちゃんに見せてちょうだい!!」
「シャンハーイ!!」
「壊滅『超弩級質量爆弾』ッッ!!!」
(ぬわー!それは使うな姉ちゃあああああん!!いざっつー時のために取っておいたのに!!!)
「えっ─────」
月明かりを遮って、地面には巨大な影が現れる。その形は人型。手足を動かさず、みるみるうちに地面との距離が縮まる。霊夢は影の中だが、その身体能力を活かして影の及ぶ範囲から脱出した。その直後、「質量爆弾」が地面に墜落し、鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が発生。「質量爆弾」墜落によって魔法の森の木々はなぎ倒され、森に住まう獣達が悲鳴を上げながら逃げ惑う。
「すごい地震ね……って、何なのよ…コレは…!何でコイツがまた幻想郷に……」
「あっはっはっはっは!良いわ、流石私の弟よ!新たな魔法の開発に余念が無い!!向上心だけは絶対に幻想郷トップよ!あははははははは!!」
地面に降ってきたのはダイダラボッチ…もとい、無縁塚から進撃し山や人里に甚大な被害を齎した怪物…「巨人」だった。
ただし俺は「生物」は作れないので、この巨人はただの肉人形だ。だから決して動かないし、項を吹き飛ばしても何の意味も無い。
物体が保有している質量と運動・位置エネルギーによってダメージを与える。…そう。誰が見てもわかる通り、これは弾幕ごっこのために用意したスペルではない。
先程姉ちゃんに訴えた通り「いざと言う時の為」に開発したものだ。まさかそれをここで使われるとは…油断していた。早く解放されなければ何が起こるかわからないだろう。もしもこのスペルの上位互換のスペルが発動されたら─────。
「…あれ…れれ…?」
「!?」
唐突に、力が抜けたかのように膝から崩れ落ちた姉ちゃん。霊夢は弾幕を放つのをやめて、警戒をしつつも心配する様子を見せる。
「…急にどうしたのよ?」
「あはは…私ったら熱くなりすぎちゃったわ…。魔力…使い果たしちゃった………」
「あっ…アンタ…!」
気付いたら俺は、いつも通りの姿に戻っていて、姉ちゃんの隣に突っ立っていた。毎回そうだが、意識して解除しない場合は自然と解除されるので俺自身気付かないことがある。目の高さが変わり視界が変わるので気付くというだけのことだ。
「ったく…心配させんじゃないわよ、このバカ」
「心配してくれたんだ?」
「しない方がおかしいのよ。ほら、帰りましょ」
若干顔を赤らめさせつつ、チラチラと姉ちゃんをチラ見して様子を伺いながら、手を差し出した。手を繋ごう、という意味なのだろう。小さく頷き俺はその手をとる。思わずニヤけそうになるが、それを何とか耐える。
「もー…折角の私の日なのにぃ…」
「そんなん知らないわ。私は、旦那を取り戻しに来たってだけなんだから。ボコられたいんなら、フルボッコにしてあげてもいいけど?」
「オーバーキルはんたーい…」
「あっそ。それじゃ、私達は帰るから」
「お好きにどうぞ。はぁ…また負けちゃった…」
「あと、巨人の始末はしておいてよね」
「はぁーい…。ゴリアテに細切れにしてもらって獣達のエサにでもしましょうかね…」
((獣でもあんなの食べたくないでしょ……))
◆
「おかえりー。丁度夕飯出来たよ、食べよっ♪」
博麗神社に到着すると、エプロンをつけた霊麗が出迎えてくれた。中を覗くと霊愛が食器を並べているのが目に入る。彼女もエプロンをつけているところを見るに、2人で夕飯を作ったのだろう。美味しそうな見た目と匂いで、食欲が唆られる。
「あれれ〜?おっかしーぞー?お母さんさっき、
『首根っこ掴んで』って言ってたのに、しっかりちゃっかり手ぇ繋いでる〜♪」
「っさいわね、コイツがどーしてもって言うから仕方なく手を繋いであげてたのよっ!」
「ファッ!?」
「はいはい、お母さんの中ではそーなんだねー」
「本当の事よ!」
「霊夢から手を出してきたんだけどな」
「やっぱりそーかー」
「あぁん!?そんな事言うなら、もう手ぇ繋いであげないからね!?ていうかさっきなんて、私が助けなきゃアンタずっとアリスの操り人形だったじゃないのよ、折角助けてあげたんだから文句は言っちゃダメよ、バーカバーカ!」
「えっアリスの操り人形?何それ興味ある」
「はいすみませんでした夕飯食べましょう!!」
「バカを探したせいで無駄にお腹空いたわ!ほら2人も早く席につきなさい!」
「「「「いただきまーす!!!」」」」
最後の謎の疾走感ェ…(笑)
へカーティアの動画のセリフを思い出しました。
助けると思って特定手伝って下さい…┏○┓
へカー「自分のお金で買った好きな洋服をディスられている!SNS上ではクソダサいだのみんな好き放題言いやがる!アイツら何なんだ!何も知らない癖に!」
純狐「服のセンスが悪かったんだ...」
へカー「悪かった!?私の時代はいつ来るんだ!少なくとも、ファッション誌には載っていた服だぞ!」
こんながセリフ使われてました。ツイ消しされてなければまた見たいです…(泣)