※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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絶望の再来

「────ここが、天狗の里の入口となります。どうです?どう見ても、普通の獣道でしょう?」

 

「ああ…。でも、天狗の妖気も何も感じないな。ホントにここが天狗の里なのか?」

 

「勿論です。我々天狗にしか認知出来ない特殊な結界があるんですよ。私の目には写ってますが、あなたの目には何も写っていないでしょう?」

 

「うん…どー見てもただの道だしな…」

 

「じゃ、行きましょうか。準備はいいですね?」

 

「文こそ」

 

「万全ですよ。では……いざっ!」

 

文に案内をしてもらい、里の入口だと言うただの獣道へとやってきた。流石に疑いたくなるほど、里とは掛け離れた風景だ。しかし文に手を引かれ獣道を進むと、山の中とは思えない広大な空間が広がっている場所に到着した。獣道からここへ、勝手に瞬間移動したかのような錯覚すら覚える。

所々に高い建物があるのは、さながら俺の出身の田舎のよう。そして広場につっ立っている一段と高い物見櫓のようなものは、何故だか穴だらけになって、今にも崩れ落ちそうになっている。穴のサイズと数から察するに、あの野戦砲による散弾でも放たれたのだろう。

 

「どうです?中々広いで────ひゃあっ!?」

 

「うおっ!?」

 

入口に来たばかりだというのに早速攻撃が来た。だが、今回はあの戦車ではない。軍用ドローンのようなものが数十台〜数百台上空を飛んでいて、こちらを狙って弾丸を発射してくる。

 

「危ないです、ねぇっ!!」

 

能力を使用し強烈な風を巻き起こす文。その風に煽られたドローンは、建物の壁に叩き付けられて爆発したり、風を喰らっただけで爆発したりと、次々に壊れていく。

これはきっと、河童の技術だ。いや、これも(・)だ。

そして製作の指揮は大天狗に違いない。…一体、どこまで河童の技術を盗もうとしたのだろうか。大天狗の事だ、脅迫紛いな事でもしたんだろう。

想像しただけで虫唾が走る。

 

「うーん…こうして見ると、私も電気系の能力が良かったですねぇ。指先一つで弾丸回避とか凄く楽じゃないですかぁ…」

 

「金属の弾だからこそ使えるってだけだよ。てか文はその能力無かったらそんなに速く飛べないと思うんだけど。役に立ってるんなら、どっちでもイイじゃん?」

 

「まぁそうですけどね。それと、能力を応用してこんな事も出来ます…よォッ!!」

 

天狗の団扇を利用して風を起こして、能力で極限まで風を強め、炎の渦を巻き起こした。こんなのパチュリーやここあ姉妹の魔法、フランの炎の剣(レーヴァテイン)でしか見た事がない。

空気との摩擦熱が火の元になっているのだろう。

「空気が移動するのが風だ」とは聞くが、まさか

空気と風で…つまり空気と空気で摩擦熱を起こすなんて、思ったよりもヤバい能力らしい。

やはり、鍛えればどんな能力でも昇華するのだ。

 

「さ、エスカルゴさんは天魔様の救出に向かって下さい!天魔様のご自宅は見ればわかります!」

 

「あれ、文も行くんだろ?」

 

「ご冗談を。私は、あくまでも案内役ですから」

 

「何でさ?」

 

「天魔様の救出という事は当然ながら建物の中に入らなければなりませんね。しかしそれだと私は身動きが取りづらくなってしまうのですよ。逆に足でまといになるのはゴメンです」

 

「足でまといになんてならねーよ、文だもん」

 

「なるんです。私のホームグラウンドは空中…。室内戦には不向きすぎる。紅魔館にある戦う為の部屋とは、訳が違うのですよ。ほら、早く行って下さい。天魔様は大怪我をなさっていますから、救出の際に治癒魔法も掛けて下さいね」

 

俺も狭い所での戦いは苦手…とは言えなかった。

苦手なら尚更、文を連れていくべきではないし、そもそもサラと初めて戦ったのは狭苦しい洞窟。文の前で、狭い所での戦いを披露していたのだ。なのでこれ以上何か言うのは自然と躊躇われた。

 

「…分かったよ。じゃあ、1人で助けてくる…」

 

「はい、お気を付け────危ないっっ!!!」

 

「えっ───」

 

俺ではなく、俺の背後を見て目を丸くした文は、俺を突き飛ばして「回避」させる。一体今何から回避したのか俺には知る由もなかったが、遅れて聞こえてきた複数の「あの音」で全てを察した。

里の中にも、あの戦車が居たのだ。

 

「まずいですね……どこに隠れているのか、皆目見当がつきません…!しかも、アレは…っ!!」

 

里の様々な建築物から出てきたのは、夥しい数の天狗達。鴉天狗も白狼天狗も、その他見慣れない天狗も多くいる。数としては数百程度だろうが、その人口密度故に多く見えてしまう。

彼らは手に刀や太刀を持ってこちらを見上げる。

里に囚われて、大天狗の言うことを聞くしかない状況に置かれてしまった天狗達だろう。大天狗に歯向かいたくても、戦車がどこから狙ってくるか分からない以上、どんな命令でも従うしかない。

 

「チッ…まずはアイツらを蹴散らしてから天魔様救出に行くしかねーな。魔符………」

 

「こっちよりも天魔様を優先して下さい。あんな有象無象に負けるほど、私は弱くありませんよ」

 

「けどあんな人数じゃ…戦車だってあるんだし」

 

「…あのですねぇ…!いいから早くして下さい、事態は一刻を争うんですよ!今こうしてる間にも天魔様がどんな拷問を受けてるか分からない…!もしもあなたが行かなければ、この地獄はずっと続くんです!!さぁ、私の事はいいですからすぐ行ってください!!」

 

珍しく声を荒らげた彼女に驚くが、時間があまり無いのは事実だ。ここはやはり文に従って二手に分かれる方が得策だと思われる。……不安だが、文だって実力者だ。この程度の数の差は、大した負担でもないだろう。

それを分かっていても尚不安なのは…そう、まず間違いなく、あの戦車と軍用ドローンの存在だ。

天狗達の相手をしている隙に撃たれでもしたら。

…音速より速い弾など、早めに気付かなかったら回避なんてまず不可能だ。

 

「せめて、これを纏ってスイッチオンにしてて」

 

「これは確か、光学迷彩スーツ…」

 

漆黒のローブを手渡し、スイッチの位置を簡潔に伝える。そして、無言のままでコツンと拳を突き合わせ、俺と文は二手に分かれた。

大天狗の妖気は、下っ端に比べるとかなり強い。だから、それが集まっている場所…つまり天魔の家なんて、たとえ家の見た目が派手じゃなくとも発見が極めて容易なのだ。

下っ端に里への侵入者を襲わせ、自分達は多勢に無勢で大怪我を負った天魔を追い詰める。やはり大天狗はやり方が汚い。

戦車を操縦しているのはきっと、大天狗に逆らう気持ちすらも潰えた者だろう。そうでなければ、大天狗が居ない今なら、戦車の操縦をサボっても奴らにはバレないからだ。逆らう気があれば操縦しないはずだ、と俺は見た。

それとも、「大天狗達がこちらを見ているかも」という恐怖に支配されているのかもしれない。

…構うものか。俺は正義の味方じゃない。ただのボランティア。娘に頼まれたから来ただけ。己の命を狙われているのなら、天狗達にも命を懸けてもらおうではないか。俺が不死身とかそんなのはどうでもいい。一度でも死ぬか死なないかの二択なのだから。

とはいえ、あまり無闇に殺すのも考えものだ、と年末の人里襲撃の時に思い知った。今回は、人間ではなく妖怪が相手なのだが……一方的な殺戮は避けた方が良いかもしれない。

今回だけは、半殺しで手を打とう。また母さんに泣きついたり殺したのを後悔するのはゴメンだ。何より、母さんに心配させたくない。

まぁ尤も、今回は殺しても後悔しなさそうだが…母さんの言う「慈悲の心」で許そう。あの天狗を罰するのは俺ではなく天魔の仕事なのであって、俺の領分ではない。

その代わりに俺は、何回死んで構わない。やはり不平等にも程があるが我慢するしかない。それと結界にも気を付けねばならないので、決して着地してはいけない。

敵対する大天狗は半殺しに留めつつ、地面に足をつけずに天魔を救出する。

ルナティック並みの難易度だろう。天魔は屋内に居るというのにこれは酷い。………考えはある。だが多少の損害は覚悟してもらわねば。

 

「…あっ。魔理沙の薬が…」

 

ここにきて、クリスマスプレゼントで魔理沙から貰った魔力回復薬が残り3粒という悲劇。困った事になったが、俺が複製しやすいように魔理沙が薬を調合してくれたので、あまり問題は無いかもしれない。

薬の問題は置いといて、今はこっちだ。

あの頃の俺の魔力を1000だとしたら、今の俺は

1500。強化系スペルによって拡張すれば15000。

(パチュリーは測定不能なレベルだと思われる)

……もし、薬を複数飲めばどうなる?満タン以上にはならないのか?それとも、一時的には限界を突破するのだろうか?試さなければ分からない。なら、いつそれを試す?…そう、今でしょ。

 

「魔空『魔力増幅(キャパシティレイス)』!」

 

魔力の容量を増やしながら妖気が集う天魔の家へ向かう間も、戦車による砲撃が俺を襲う。しかし不規則に飛ぶ俺に当たるのは、散弾の小粒だけ。しかも薄っぺらい翼だ。翼に穴が空いたところで秒速で再生してしまう。

そして、天魔の家から数百メートルという所で、周囲に結界を張った俺は空中で静止する。

やはりと言うべきか、ここぞとばかりに戦車達の集中砲火を浴びるが、結界にヒビが入る程度だ。その中で俺が何をしているかというと……。

そう、魔力の回復だ。

 

「薬物過剰摂取(オーバードーズ)…へへへへッ……」

 

力が漲ってくる。成功だ。本当ならば現時点での俺の魔力は「15000/15000」のはずだが、3粒も飲んだので今は「45000 /15000」になっている。これで、姉ちゃんにすら隠していたあの大魔法が使える。

パチュリーに言わせれば大魔法(笑)だと思うが。

 

「壊滅『惨劇の巨人』」

 

あちこちに稲妻が降り注いで、そこに幻想郷中を騒がせた化け物…巨人が現れた。俺が巨人を創造しても、「命の無い肉人形」。動かない。しかし

「影を仕込ませた肉人形」なら、話は別である。

闇の力で生み出した影は(例外は幾つもあるが)取り憑いた者の動きを操作することが可能。あの巨大な肉人形とて、例外では無い。

それから、「大魔法」とはこれのことではない。

 

「────行け、巨人共。大天狗を引きずり出しどんな手を使ってでも半殺しに留めろ。男は玉を潰せ。玉を噛みちぎれ。去勢しろ。女は知らん。脳震盪でも起こさせて、そこらに放置しておけ」

 

女だけ甘くしてる訳では無い。ただ俺が、半殺し程度の苦しみを与える方法を知らないだけだ。

 

周囲にはあの戦車がある。そして巨人の弱点は、あの事件の時に報告済み。つまり、アイツらでも巨人と戦えてしまう。

という訳で、今回は鎧の巨人を数体生み出した。

とはいえ、ライナーの“鎧”そのままではないが。

これなら生半可な攻撃は通用しない。あの世界のあの国の野戦砲は対巨人用だが、こちらの世界はせいぜい対妖怪レベルだろう。音速を超えた弾を被弾させても、砕く前に爆発して終わりだ。

 

「さぁて、狩りの時間だぜ……!!」

 

俺は、「大地の悪魔」ではなく「大空の悪魔」になってやる。




考えがすぐ「殺す」方に傾くエスカルゴも少しは成長するんです。…少しは。


これを書いてる現在(2019/08/05 01:09:41)は割と
心身共に回復してます。
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