それかニュース見るとかさ。
「今日の新聞です、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は咲夜さんから新聞を受け取り目を通す。
もちろんその新聞とは文々。新聞だ。
今日は“あの宴会”の次の日。
1面を飾っているのはあの宴会のことだ。
やはり、“こことは違う幻想郷”からのゲストはかなりの注目を浴びたようで。
炎火もそうだが、新聞によると、妹紅もかなり話題になっているようだ。
まぁそれもそうかもしれない。
男勝りな妹紅があんなにデレデレ…というか、女の子っぽくなってるのだから。
こっちの妹紅はどう思ってる事やら…。
そして、次に大きく書かれている(1面と比べるとかなり小さい)のを見て、思わず紅茶を吹きそうになった。
見出しに、《新たに幻想入りした男》と書かれていたからだ。
内容は、
『“天狗になれる薬”を飲んで、ゲーム中に寝落ちし、気付いたら山のふもとにいて、彷徨っている所を拾われた』
と書いてある。
あれれ?
薬服用→寝落ち→幻想入り
って………俺と同じじゃね?
「どうかなさいましたか?」
「いえ…。この、新聞に書かれている天狗の話…俺と酷似してて…」
「そうですね」
「……興味あるな」
「興味…ですか?」
「ええ。面白そうじゃありませんか」
「私にはよくわかりませんが…」
「どしたのどしたのー!?」
フランが駆け寄ってきた。
どこ行ってたんだろ?
「おお、フラン」
「何が面白そうなの!?」
あ、そこか…。
「新聞に書いてあるこの“天狗”…面白そうだなって」
「え〜…なーんだ、そんなことか…」
「そ、そんなこととは何だ…。だって、俺とそっくりなんだぜ?」
「そうなの?」
「ああ。薬飲んで寝ちゃってからの幻想入り…まるっきり俺と同じだ。場所が違うだけで」
……多分、幻想入り“した”んじゃなく、紫さんが“させた”んだろうな。
俺は吸血鬼だったから紅魔館近くに、この男の場合は天狗だったから妖怪の山に…ってところだろう。
聞いてみっか。
「紫さ〜ん、居ますか〜?」
『!?』
フランも咲夜さんも驚く。
「はぁ〜い♪」
「きゃああ!!」
「…!」
スッと現れる紫さん。
フランは驚きのあまり悲鳴を上げ、咲夜さんはナイフを構える。
「おはようございます」
まずは挨拶だ。
「おはよ〜。それで、どうしたのかしら〜?」
「…この新聞に書かれている“天狗”…紫さんが幻想入りさせたんじゃないですか?…俺の時のように」
「…それを聞いてどうする気?」
「別に。ただ興味があるだけです」
「あらそう。…そうよ、私がやったのよ」
「やっぱり」
「理由はあなたの時と同じよ。あのままあそこにいると異分子として扱われ…ってことね」
「ふむ…」
「でも彼の場合は、犬耳がほかの人間に見つかってしまってね。1人でゲームしてる時に“眠らせて”、幻想入り“させた”のよ」
寝落ちじゃなかったのね。
というか、眠らせたのか…紫さん怖え…。
いやそれより…え?
「犬耳…?」
「その新聞には天狗としか書かれてないの?」
「ええ」
「その“彼”は白狼天狗よ」
「ほえ〜……」
白狼天狗…ああ、犬走 椛と同じか。
「あと付け加えるなら…」
?
「あなたがよく知ってる人よ」
「!?」
「ま、会ってからのお楽しみね♪じゃあねん♪」
スッ
「待っ……」
行っちゃった…。
「どういうことでしょう…」
「うーん………」
「どうするんです?」
「会いに行ってみようかな」
「えー!?私と遊んでよー!」
む。まぁ、最近遊んでなかったしな。
「ふふっ…良いぜ」
とりあえずはフランのことを満足させるか。
そんなこんなで1週間が経過した。
まだ会いに行けてない。
「なぁ…フラン?」
「なぁに?」
「少し出掛けてきても良いかな?」
「なんで?」
「この前言った、天狗に会いに行ってくる」
「わかったー。まぁ、昨日遊びすぎたから疲れてるし…うん…いいよ」
「そか。じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃ〜い。気を付けてね!」
「おう」
玄関から飛び立つ。
確か…俺がよく知ってる人…って言ってたっけ?
ダメだなぁ、全くわからん。
検討もつかん。
「ま、いっか」
どうせ、会えばわかることだ。
そう思い、スピードを上げる。
「ふぃ〜…」
着いた〜…。
「む、吸血鬼か。何用だ」
「最近来たっていう天狗に会いに来た」
「!!…貴様に会わせる義理はない。帰れ!」
は?
「ふーん…なら力ずくで…」
「ちょっと待って、エスカルゴ」
!?
「ゆ…紫さん…」
急に後ろから出てくるなよビビるから…。
「どうしたんです?」
「私の名前出せば通してくれるわよ」
「良いんですか?」
「ええ、いいわ」
「ありがとうございます!」
「ふふっ…じゃあね♪」
スッ…
「また消えた……」
神出鬼没にも程があるぜ…。
「あ、あれは…や、八雲 紫…!?貴様、八雲 紫と知り合いなのか!?」
尻もちついてカタカタ震えている雑魚天狗。
「そうだよ」
「し、失礼しましたァ!!どうぞお通り下さい!!」
頭を下げ道を開ける天狗。
え、紫さんすげぇ。
やっぱ、幻想郷内でも屈指の大物だからかな?
「どうも」
しばらく登山する。
どこだろう?
「あの…」
近くにいる天狗に聞こうとして思い出す。
前に炎火たちと妖怪の山に攻め入った時、椛はそこそこ頂上付近に居た(はず)。こっちでもそうかもしれない。それに、同じ白狼天狗であるその男も。
うん、きっとそうだ。
俺はそこへ早歩きで向かう。
数分後
俺は大体山の中腹辺りまで来ていた。
「はぁ…はぁ…」
吸血鬼なので、体力はあるが…やはり飛んだ方が良かったかもな…。
と、少しだけ後悔していた。
そのとき、1組みのカップルが俺の脇を通り過ぎる。
「なぁ椛、今日はどこ行く?」
「ヒビキとならどこでもいいよ♪」
なんだ、椛のやつ、誰かとデート行くのか。
ふふっ、楽しそうだ…。
ま、デートなら誰でもそんなものか。
また今度フランとデートしよう…か……な?
ん…?……ヒビキ?
「ヒビキだと!?」
俺は振り向きざまに声を上げる。
「誰だよ俺のこと呼ぶのぁ………え?」
その“ヒビキ”と呼ばれた男は、なんとなく見覚えのある顔立ちをしていた。
そしてヒビキは、俺と目が合ったまま硬直している。
「おいお前……ヒビキっつーのか…?」
「あ……え?」
俺はその名をよく知っていた。
「…ヒビキ、エスカルゴさんと知り合いなの?」
「“エスカルゴ”って………お前…まさか兄貴…?」
「お前…………俺の…弟か?」
「……え?」
「いや…信じらんねぇ!!」
え?新たに幻想入りした男ってのが俺の弟?
嘘だろう?
「ほんとに兄貴なの…か?」
俺もコイツもそればかりだ。
堂々巡りで話が進まねぇ。
「…よし。本当かどーか確かめてやる。…せーので言うぞ。…母親の名前と、父親のあだ名は?」
前のはともかく、後のは家族内でしか知らないことだ。
ホントに弟かどうか証明する為だ。
咄嗟に思いついたにしては、中々有効な手だろう。
『せーの……ユキ、J』
マジか…。いや、まだだ。
コイツがホントに俺の弟なら…。
「もう1つ。お前の兄貴は行方不明になった。…兄貴が何歳の時だ?」
「16歳」
「……………」
即答かよ…。
認めざるを…得ないな…。
目の前にいる白狼天狗・ヒビキは、この俺・エスカルゴの弟だ。
「………………久しぶりだな、ヒビキ」
「兄貴…!」
「…え?ヒビキってエスカルゴさんの弟?」
「…ああ」
「お兄さん居るなんて聞いてなかったんだけど…」
「あはは…すまない…」
「エスカルゴさんもですよ。弟さんが居るなんて初耳です。文さんからも聴いたことないですよ?」
「あはは…そっか…」
あいつ…椛に色々しゃべってんのか…。
あと…
「なぁヒビキ」
「ん?」
「お前と椛は…」
「うん。付き合ってる」
「…そっか。良かったな」
「兄貴は?こっちでも彼女出来ないのか?」
再会早々生意気だなコイツ。
「ド阿呆。3人おるわ」
『3人!?!?』
「あれ?椛は知ってるかと思ったが」
「い、いえ…初耳、です…」
「あーそーか、アイツ(鈴仙)とのことは文さんにも言ってねぇや…」
「兄貴すげぇ…」
「…まぁな。ところで、お前、何か能力あるのか?」
「椛にも言われたなそれ…。太刀とか盾とか使う程度じゃねぇのかな?」
「ほう…なら俺には勝てんな」
「いや、兄貴と戦うなんて無理だし」
「なんでよ?」
「クレーターの話、聞いたぜ。文さん、遠くから見てたってさ。椛を通じて聞いたよ。まさか兄貴だったとは…」
マジか。目撃者居たのか。
「見るか?」
「見てみてぇ!」
「お前が強くなったらぶつけてやんよ」
「うげっ…。まーいーや。いつか見せてもらお」
そこからはしばらく話をした。
「…おっと、つい話し込んでしまったな。デート中だったんだろ?すまなかったな」
『別に大丈夫だよ(ですよ)』
「そうか。また今度、ゆっくり話そうぜ」
『そうだな(ですね)』
息ピッタリだな。
というか、すげーそっくりだよコイツら…。
「まぁ……こらからもよろしくな、ヒビキ」
「…おう!」
「また来るぜ。いつがいい?」
「いつでも良い!」
「オケ。じゃ!」
俺はその場で飛び立つ。
もちろん行き先は紅魔館だ。
紅魔館が見えてきたところで、ふとさっきの光景を思い出す。アイツの見た目……中学生位だったぞ。
あれ?アイツって……小学4年生じゃなかったか?
幻想郷と外の世界は…時間の経ち方が違うのか?
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
「おかえり〜!どうだった?」
「どうだったって?」
「その天狗のことよ」
「俺の…弟だったよ」
『弟!?』
「ああ。驚いたぜ」
よもや…そんな事が…あるなんてな。
「へ…へぇ…」
「す、凄いですね…」
「へっ、犬耳生えてたぜ。しかも、なんか成長してたんだよなー。外の世界と幻想郷って、時間の経ち方が違うのかな?」
「恐らく…」
「そっかー。まぁ…うん。驚いた」
驚いたとしか言えねぇや。
「ねぇエスカルゴ」
「ん?」
「今日はもうやる事って無い?」
「無いね」
「じゃ、遊ぼ!」
「あれ?でも、疲れてたんじゃ…」
「エスカルゴが出かけてるあいだにゆっくり休んだから、もう大丈夫だよ!」
「そっか!よし、遊ぼう!」
「うん!」