「フー…ここらは粗方片付いたか?そろそろボス的なの出てきても良い頃合いだろうし、装備とか整えておこうぜ」
「そうね。魔理沙、妖夢。誰が何の動物霊を取り憑かせる?」
そう提案すると、すんなり頷いた霊夢。普段は頷く前にワンクッションあるので、やはり性格が丸くなったような気がする。性格が丸い霊夢も、これはこれで可愛いとは思うが、どこかしっくりこない。寧ろこっちの調子が狂う。
「今度はオオカミ霊を試してみたいな。さっきの妖夢、物凄い火力だっただろ。あれで私がマスパすれば、すぐに片付くんじゃないか?」
「そう簡単にいけばいいけど…。妖夢はどう?」
「うん、良いと思う。私も魔理沙のオオワシ霊を試してみたかった所だしね。カワウソは何か……あんまり変わらないような気がして」
「全くだ。さっき見ていた限りだと確かに守備は強くなるんだろうが、こういう異変は攻撃こそが最大の防御だぜ」
「なんかディスられてるような気がするけど…。まぁ、それでいいわ。私がまたカワウソ霊でも。幽々子はエスカルゴ専用でいいわよね」
「勿論」
幽々子さんのおかげで通常弾にもホーミングが混ざった。なら、直線ばかりの俺にぴったりだと言える。だが霊夢と幽々子さんが組めば、かなり強くなりそうだ。…性能としては、オオワシ霊と大差無いのだろうか?それとも先程のカワウソ霊のように、隠し技でもあったりするのか……。まだまだ、霊の力を借りるというのは謎が多い。
そして魔理沙と妖夢は霊を交換して、再び進み始める。
「魔理沙がオオカミ、妖夢がオオワシで、霊夢はカワウソ継続か。まぁ良いんじゃね?組み合わせ試してみるのも大事だろうし」
「試すのはいいけど、いつになったら向こう岸に着くのかな。迷ってない?これ」
「んー…死神の舟を使わなかったのは失敗だったかもしれないなぁ」
川の上を進んで暫く経ってからそう言われても時すでに遅しだ。あの世については詳しい妖夢に案内を頼んでいたはずだが、ここ暫くの俺達は、動物霊達を潰しまわっているだけだ。というか、
「失敗だったかも」なんてそんな投げやりな…。
…と、内心でそう焦っていると目の前に少女が現れた。黄の下着?水着?のような露出度の高い服に牛柄の上着を羽織っていて、頭の上には赤い2本の曲がったツノが生えている。
「
「むむ、何やつ」
「私は牛鬼。河を
「ぎゅっ…牛鬼…!?」
そう聞いた俺は、まさに肝を冷やした。すぐに逃げ出したくなる。某日曜朝アニメのおかげで、牛鬼には良いイメージがまるで無い。というか、主人公が牛鬼にされたとあって、俺にとって人生初めてのトラウマになった。それが牛鬼だ。
「ま、まさか……お前、俺達のことを牛鬼にするつもりじゃ…!?」
「はぁ…?なんだいそりゃ、そんな事しないよ」
「牛鬼ってこんな親切なのか…?」
「親切?……幻想郷で人間を襲うのを禁止されて久しいからねぇ、少し牙を抜かれちまったのかもしれないなぁ」
何だか、すごくのほほんとしている。今の霊夢ほどではないが、もしかしてかなり平和的な人物なのかもしれない。……それにしても、大きい。どこがとは言わないがかなり大きい。彼女は少女というよりお姉さん的な存在だろうか?さっきの少女が子供っぽく見えただけに、目の前の彼女がより大人っぽく見える。
「へぇ、牛鬼?人間を襲うのを禁止されてから、この三途の川で漁業を営んでいるそうねぇ。血の代わりに呑む三途の川の水は美味しいかい?」
「なんだ、お前は。挑発しているつもりか?私を牛鬼と知って挑発しているのなら私も遠慮せずにお前を川に沈めてやるぞ!」
好戦的な笑みを浮かべ、弾幕を発射する牛鬼。俺の思っていた牛鬼ではなく安心していたのに、妖夢が要らぬ挑発をしたせいだ。オオカミ霊には殺意が湧いてきた。これはその気になれば避けることの出来た戦闘だ。無駄なことはしたくない。スムーズに進められればそれでいいというのに。
少しずつ大きくなる弾幕を正面に放ち、左右と正面から黄色の連なった弾幕で移動を制限する。これにより俺達4人は寸断されてしまった…が、動物霊の力で強化された3人にはほぼほぼ効果が無いようで、相殺されたり、または一方的に弾を掻き消されたりしている。
俺の出る幕は無さそうだ。…割とマジで。来た意味が無いんじゃ、と少し寂しくなるレベルで、3人だけで彼女を押している。これぞ文字通りの
「ガンガンいこうぜ」だ。
「援護でいっか…操電『ボルトオペレート』!」
焦がさない、そして気絶させない程度の絶妙な強さに調整し、3人の後方から支援する。弾幕にホーミングが混ざったとあり、今の俺は普段より支援に向いている気がする。そして何故なのかは分からないが、前に出たいとは思わないのだ。
まさか、俺も霊の…つまり幽々子さんの影響を受けているのだろうか…。思えば幽々子さんは、表立って行動するというよりも後方支援及び暗躍する事の方が多い気がする。
「なんかビリビリするねェ……。お前さんかい?さっきからコソコソしてるのは」
「ッ!!」
「コソコソしてるなんて男らしくないね!そんな奴は押し潰されちまいな!石符『ヘビーストーンベイビー』!!」
「おいエスカルゴ、お前何アイツ怒らせてんだ!何か変なことしたのか!?」
「してねーよ!俺の事は良いから、魔理沙は前に集中しろって!」
「前ったって、弾幕放ってりゃいつか…うわっ、なんだこりゃあ!?」
「うおおぉ…やば…!」
俺達と彼女の間にはとてつもなく巨大な弾幕が幾重にも張り巡らされており、サリエル戦よりも
「弾幕の壁」という感じがする。というより、これは最早不可能弾幕なのではと思う。そうこうしている間にも、弾は巨大化し続け、グングンと目の前に迫ってきている。だが、少し周囲を見て気付いたが、霊夢と妖夢が居ない。
どうやら2人は、このスペルの穴を見つけて、そこを掻い潜っているらしい。今の俺では、その穴を見つける事すら困難だ。きっとこのスペルは彼女から離れていれば離れているほどキツくなるスペルだろう。離れれば、その分だけ弾が大きくなって、逃げ道が潰されるのだから。
「くっ……。流石、牛鬼を煽るだけあって無駄に強いじゃないか…!」
弾幕の壁の向こう側で、彼女がそう言ったのが聞こえてきた。どうやら霊夢と妖夢が押しているらしい。まぁ、あの2人が押されるとも思えないので、彼女には悪いが当たり前な展開と言える。
「これならどうだい!溺符『三途の淪溺』!!」
俺と魔理沙に迫っていた巨大弾幕の壁が消え、スペルを切り替えた牛鬼。三列の球体の弾幕は、先程と同じように大きくなり始めて、そこに青く小さい弾幕が追加で発射される。
「エスカルゴ、私の後ろに乗れ!」
「んっ?」
「ボヤボヤしてないで早くしろっ!美味しい所を霊夢と妖夢に持っていかれちまうぜ!」
「お、おう!」
箒に座り声を荒らげた魔理沙に気圧された俺は急いで彼女の後ろに乗る。箒の掃く部分にはあのミニ八卦炉が取り付けられている。…とすると、魔理沙が発動するスペルは…。
「私にタイミング合わせて、レーザー系のを発射してくれ!突っ込む威力を倍増にしてやる!!」
「おうよ!」
「行くぜっ!彗星『ブレイジングスター』!!」
「『エスカルゴ・スパーク』!!」
大きくなりつつある目の前の弾幕を、魔理沙の星形弾幕で相殺しながら、超スピードで川の上を飛翔する。重さと威力が上乗せされて、一般的な鴉天狗の飛翔速度程度のスピードは出せている。
「強行突破だと……ぎゃあああっ!!」
…そのままの勢いで、牛鬼に突進した。普通の妖怪なら死んでいるか、そのまま気絶して、川に落ちているところだろう。それを彼女は耐えた。後方に吹き飛ばされかけたが、川に落ちる刹那、彼女は川に視線を向けた。真下には巨大な魚影が映っている。それを見て、踏みとどまったのだ。それの意味するところ、もし彼女が川に落ちればあの魚に喰われる…という事かもしれない。
「チィッ、もう少しだと思ったんだがな」
「ちょっと魔理沙ぁ?なぁに後ろにエスカルゴを乗っけてんのよ?」
「フン、2人だけ前に出させるのは悪いからな、後ろでもたついてたコイツも連れてきたのさ!」
「ふーん…他意は無いの?」
「無いね、そんなモンは!」
「…戦闘中にお喋りとは、随分と舐められたものだな…!これでも喰らえっ!!鬼符『ハングリーデーモンシージ』!!」
後方及び上方、左右に、赤い弾幕を放つ。こちらには全く来ないな、と思ったその時。一定の距離まで進んだ弾幕はこちらに方向転換して、一斉に襲いかかってきた。
だが俺は…いや、俺と魔理沙は特に、こういう
「跳ね返って複雑化する弾幕」を経験している。フランの「QED『495年の波紋』」で。
それに比べたら、これはフランのあのスペルの下位互換としか言い様がない程の密度の薄さで、避けるのは極めて容易だ。
「まだまだね、牛鬼!霊符『夢想封印』!!!」
「「あっ、おい霊夢!抜けがけするなッ!!」」
霊夢が赤色だけの夢想封印を放つが、魔理沙と俺は同時にそうブーイングを飛ばした。妖夢は、弾幕を相殺したり回避するので手一杯らしい。
……見ていて思ったのだが、霊夢の夢想封印、カワウソ霊の効果なのか何なのかは知らないが、威力が上がっているような気がする。しかも弾の密度が普段の倍以上だ。こんなの絶対やられる。
これで終わりだと確信した俺と魔理沙は、肩を竦め大きな溜め息をついた………。
某日曜朝アニメとは5期の鬼太郎の事です。