鬼形獣編を更新する度、話を入れ替えます。
「イタタタ…。なんだ強いじゃないか…。折角、古代魚達の餌にしてやろうと思ったのに」
「妖怪には負ける気がしないんでね。何せ妖怪の身で妖怪退治の巫女をしてますから」
「そうかいそうかい。彼岸まではあと僅かだよ。渡しの代わりに、そこまでは送ってやろう。その代わり、土産話を楽しみにしているぞ」
「わーい、ありがとう」
被弾した場所を擦りながらも、牛鬼の女性は、俺達を彼岸まで送ってくれると言う。その言葉に対する霊夢の返事が、全く彼女らしくない。少し驚いた。
「あと…やっと思い出したぞ。お前さん、冥界のいつも暢気な庭師じゃ……」
「そうよ、今頃思い出したの?牛はトロいなぁ」
「いやなんか、そんな嫌な性格だったかなぁと」
「嫌な性格?アハハ、気のせい気のせい!」
「…まぁいいか。というより、何で冥府の使いがあの世への道に迷っているんだ?さっきからフラフラフラフラ…」
「ま、迷ってなんかないから!ちょうどいい敵がそこに居たから何となく襲ってただけだから!」
「やれやれ…」
確かに今の妖夢はかなり嫌な性格だ。妖夢は、彼女から「いつも暢気な庭師」と評されていたがやはり普段とは違って見えるらしい。
俺は、あの牛鬼の女性に会うのは初めてだが、妖夢は彼女と面識があったのだろうか。…いや、最初の口振りからして顔見知りにもなっていない
「見た事ある」程度だったのかもしれない。
そして、彼女に案内されて無事に彼岸に到着。沢山の彼岸花が咲き誇っており、とても綺麗だ。そんな中を動物霊達を潰しながら地獄へ向かって突き進む。圧迫感というか、何と言うか…。圧のようなものを感じる。あの世が近付いているかのような、妙な気持ち悪さが。
動物霊の中に、鶏のような美少女が紛れていたような気がしたが、あの世が近いからと幻覚でも見たのかもしれない。どうせ幻なら好きに襲えばよかった…と思うが、その場合俺に降りかかるであろう災いを考えたら、襲わなくて正解だった。霊夢や妖夢、幽々子さんを怒らせたかもしれないからだ。
「さて。今度は誰がどの動物霊を取り憑かせる?弾幕の質的に考えて、今回は正面突破が向いてるような気がするけど…」
「とはいえ、前ばっか集中してたら後ろとか横に反応出来なくなるかもしれないからなぁ…。って霊夢…お前まさか…」
「ええ、そうよ。カワウソ霊で身を守りながら、正面から突破したらと思ったんだけど…どう?」
「うーーーん……」
「美味しい所を持って行けるかもしれないわよ?折角のチャンスを逃すの?」
「よしそうするぜ!今回は私がカワウソ霊だ!」
「じゃあ、私は …やっぱりオオワシ霊でいいや。攻撃の強さはともかく、範囲は凄く広いしね」
「じゃあ私がオオカミ霊ね」
魔理沙:オオカミ霊→カワウソ霊
妖夢:オオワシ霊→オオワシ霊
霊夢:カワウソ霊→オオカミ霊
エスカルゴ:幽々子→幽々子
「……」
「何よ変態、ひとの顔ジロジロ見て」
「…なんつーか………はぁ…」
「溜め息!?私が何したって言うのよ!?」
「いやー…オオカミ霊だけに、犬耳とか生えてはこないかなーと思ってな…。まぁ、生えてこないなんてのは分かってたけど…」
「異変解決中に何考えてんのよ変態!!」
「今度は犬コスエッチしよっか。確か首輪と尻尾あったと思うし…」
「えっ♡」
「ふ…フン、あの世に近いこんなところでそんなヤラシイ話をするなんて、かの博麗の巫女も地に落ちたものね」
「なによ妖夢、あんたこそさっきからこのバカをチラチラ横目で見てるじゃない。同じよ、同じ。大方、魔理沙と組んでたのを見て、羨ましいって思ってたんでしょ」
「は、はぁ!?別に思ってないし!」
やんややんやと騒いでいると、俺達の行く手に1人の少女が現れた。先程俺が一瞬見た、幻覚の女の子だった。しかし、霊夢達もその少女を見ているとなると、あの少女は幻ではなく本物ということになりそうだ。
鶏冠のように赤くなっている部分に、ヒヨコを乗せている謎の鳥妖怪か何かの少女…。まずい、非常にタイプだ。
「地獄へ行こうとしているだけありますね。中々の腕前でございます」
「あんたは一体……?」
「私は、久侘歌。地獄の関所を見張っています」
「あ、ニワタリ様ですね。私は冥界の使いであります。今すぐ扉を開けることは出来ますよね?」
「私を知っているのですね。地獄に耐えられるかどうかの試験はこれからです。そんなに地獄へと行きたければ、私を倒してみせなさい。ただし、その他の方々は…私はそんな残酷な事は好まないのでここで大人しく帰って頂きたいと思います!もし拒否するのなら力ずくになりますが…」
四肢の露出の多い格好にスベスベしていそうな太もも。ぷりんとしていて服の上からでも分かるほどの安産型で丸い尻。二の腕なんて何とも触り心地の良さそうな肉付きをしている。
久侘歌と名乗った少女の目の前に行った俺は、できるだけ人の良さそうな笑顔をつくり、彼女に話し掛ける。
「初めまして久侘歌さん。出会ったばかりなのに不躾な申し出だとは思いますが、また今度2人でデート…お食事にでも行きませんか?」
「はい?」
ぱちくりと目を見開き、可愛らしく首を傾げる久侘歌。その仕草が、とてもキュンキュンする。凡そ男らしくない表現だろうが、生憎この感情を説明出来る言葉を持ち合わせていない。
「…ッ!エスカルゴが危ないッ!」
「どうしたんだ霊夢?」
「エスカルゴ、あの久侘歌ってヤツを手に入れるつもりよ!」
「はぁ!?初対面だろ!?」
「…だろうね…ニワタリ様出てきたらこうなると思ってたよ…。だってエスカルゴだもんね…」
背後で霊夢達が何か話しているが、大して耳に入ってこない。目も耳も、この少女に釘付けだ。あんまり見つめると変態的欲求の抑えが効かなくなりそうだが、目を離せない。
「…あっ。あなた、山の英雄ですよね?陰ながらいつも応援させて頂いてますよ」
「へ?」
「私、妖怪の山でも活動してますので、あなたを見る機会がそれなりにあるんですよね。ですが、だからこそ、あなたを地獄には行かせたくない。いくら不老不死とはいえど、魂を囚われれば地獄からの脱出は不可能なのですから。お食事は……あなたがここから引き返してくれたら是非!もしそれを拒まれた場合、強制的に排除致しますが…どうしますか?」
「うぐぅ……」
「閻魔様は大丈夫だと仰っていましたが、やはり危険である事に変わりはないですから。ここは、私の独断で通行を拒否させて頂きますね。勿論、巫女達も同様ですが」
「でもさっき試験って…」
「冥府の使いに向けて言ったのですよ、あなた方ではありません」
美少女とのお食事デートor霊夢達と異変解決。究極の選択だ。というよりも、この久侘歌という少女…俺を「山の英雄」と知りながら「強制的に排除致します」と言った。つまりは、山の英雄を倒せる自信があるのだ。天魔を倒したこの俺を。
という事はこの少女はとんでもない実力者かもしれない。油断すれば、すぐにやられそうだ。
「…仕方ないですね。お食事にはまた次の機会に誘う事にしますか…。心配してくれるのは嬉しいですが、今の俺達にはやらなければいけない事がありますから」
「分かりました、交渉決裂ですね。残念ですが、これも仕事の内…致し方ありません。恨まないで下さいね」
「あなたのような可愛らしい女性を恨むなんて、それこそバチが当たりそうで怖いですね」
「ふふっ、口が上手ですね。流石、多くの女性を堕としてきただけの事はあります。……が、私はそう簡単には堕とせませんよ?」
「堕としてみせますよ。今スグにでも」
「出来るといいですね。…では、排除致します。それが嫌ならすぐに顕界にお帰り下さい」
すると久侘歌は、赤と黄、それから白の弾幕を発射し始めた。赤と黄はそれぞれ斜めに連なり、白く遅い弾幕と斜めの同時回避を強いられる。
動ける範囲は極めて狭く、回避は少し困難だ。
…が、こんな時に役に立つのがアレだ。
「そら、いくぜカワウソ霊!私にもさっきの力を見せてくれ!!」
「霊扱いが荒い魔法使いだな……!良いだろう、少し早いとは思うが力を貸そう!だがその分早くキメてくれ、こんな所で余計な力は使えん!」
「ああ、わかったぜ!!」
久侘歌からの弾幕は、一瞬彼女の目の前で静止してから動き出すタイプだ。つまり動き出す前にカワウソ霊で掻き消すと、魔理沙より後方にいる俺達に弾幕が
「あっはははは!凄い、凄いぞこりゃあ!面白いくらいに弾幕が消えてくぞ!おーい妖夢ぅ、私がお前の代わりにコイツ倒しちゃっていいよな?」
「ちょっ、それは私の役割……」
「イくぜ!恋心『ダブル……」
「成程…。弾幕を消すとは、よく考えましたね。水符『水配りの上級試練』!」
「……ッ!!」
水色と黄色の、小粒で極めてランダムな弾幕が発射され始める。俺はランダム系の弾幕は比較的得意…のはずだが、弾速が少しばかり速く、服や身体に弾が掠ってしまう。
「その程度の弾、別な場所に
『冥道斬月波』!!」
暗黒斬月剣を抜き、移動式スキマを放つ。その動きは遅いので久侘歌は余裕で回避するが、弾は全て飲み込まれその場から消えた。…とはいえ、所詮は一時凌ぎに過ぎず、俺達と久侘歌の間は、すぐに弾幕で埋め尽くされてしまう。
「皆、死にたくなければ今すぐに伏せて!空観剣『六根清浄斬』!!」
楼観剣を振り回し極めて広範囲に斬撃を放つ。それらは久侘歌の弾幕を掻き消し、本人にも少々ダメージを与える。心做しか、攻撃力が高まっているような気がする。これは霊のおかげではなく本人の修行の賜物だろう。
「ふむ…これ以上は無意味、ですか。では…光符『見渡しの上級試練』!!」
すると左右に緑の弾幕が現れて、こちらの左右移動の幅を制限する。当たらないよう調整してるあたりイヤらしい。そして細いレーザーが発射、俺達の横を通り過ぎて斜め後方にてそれが爆ぜ、等間隔に並んだ細かい弾幕となって再びこちらに向かってくる。
「成程な。
「無理を言うな…。断続的になら消せるがあんなレーザーを丸ごと消すとなれば、私はどれ程早く回らなきゃならないんだ?」
「良いから回れって、すぐに終われば力の消費は少なく済むだろう?」
「…どうなっても知らんぞ」
露骨に溜め息をついたカワウソ霊は猛スピードで魔理沙の周囲を回り始めた。魔理沙の姿が見えなくなっているほどで、最早黄緑色の円盤にしか見えない。だがそのおかげでレーザーが途絶え、これまた「試練」が成り立たなくなった。
「今だ霊夢、妖夢、エスカルゴ!この隙にトドメ刺してやれ!仕方ないから今回は譲ってやる!」
「あら、魔理沙にしては気が利くわね!いくわよエスカルゴ、妖夢!」
「おう!いくぜェ!星符『オールトの雲』!!」
「いちいち指示しないで霊夢っ!天上剣『天人の五衰』!!」
「霊符『夢想封印』ッッ!!!」
俺の包囲系耐久スペルで久侘歌の動きを制限、そこに妖夢の五色の弾幕、更にダメ押しで霊夢の夢想封印を彼女に叩き込む。しかも真正面では、魔理沙が弾幕を放ちながらも久侘歌の弾幕を妨害している。
久侘歌はほぼ全ての弾幕をその身に受け、もう降参しそう…に見えたが。
「これが最後の試練です…心してかかりなさい!鬼符『鬼渡の上級試練』!!」
ここに来てまたスペル発動かと内心イラつき、舌打ちをしたくなった俺だったが、俺よりそれにイラついた者が約一名。……オオカミ霊によって性格が粗暴になった、霊夢である。
「あぁぁもうっ!しつっこいわねぇ!これでもう最後よ、大人しく私達に降参しなさいっ!!霊符『夢想封印 瞬』!!」
「えっ、ちょっ、このタイミングでそれは…!」
◆
「俺達の勝ちですね、久侘歌さん」
「…仕方ありませんね…。曲がりなりにも試験を突破しましたしね…イタタタ…」
「すみませんね、ウチの霊夢が…。加減が下手なもので、御御足に怪我をさせてしまったようで。治癒『
「加減が下手ってアンタには言われたくないわ」
「わっ…ケガが…。ありがとうございます」
「いえ、これくらいは。…で、どうです?俺達も通す気になってくれましたか?」
「…お見事でした。そこまでの覚悟があるなら、もう止めません…。地獄の業火で焼かれようと、針のむしろに叩き付けられようとも、私は貴方のことを忘れます。鳥頭ですから」
「貴方、もしかして正体はニワトリなんじゃ…」
「そうですよ。よく判りましたね」
「いやまあ、見た目で何となくね」
「そうそう、思い出しました。一つ大切な忠告がありました。閻魔様曰く、皆様方に憑依している動物霊を信用しない方が良いそうです。それでは地獄をお楽しみ下さい」
「地獄をお楽しみ下さい」。なんというパワーワードだ。こんなの一生で一度でも聞かない言葉だろう。楽しめないっつーの!とツッコムのは、野暮というものだろう。ここは彼女の言う通り…地獄を楽しむことにしよう。
次々回予告
五面は道中も描写してみます……が、原作通りのアレではありません。お楽しみに。